第78話 空飛ぶハルカ。そして忍び寄る影
今日は1月4日。異世界で迎えた新年も四日目。僕の年末年始のお休みも終わり、今日から通常営業。そんな朝の一幕。場所はダイニング。ナナさんとテーブルを向かい合っての朝ごはん。
「ハルカ。わかっているだろうけど、今日からまた、修行を始めるよ。去年はまだ新米だったから、甘めにしてやったけど、今年はそんなに甘くないからね。この私、三大魔女のナナの弟子として、本格的に鍛えてやるよ。ま、当面は高速飛行をモノにするのが課題だね」
いつもの様に、お茶碗に大盛りのご飯をもりもり食べながら、言うナナさん。
「ナナさん、食べながら話すのは、行儀が悪いですよ」
ナナさんの行儀の悪さを注意するけど、ナナさんは全く気にしない。更に話を続ける。
「ごちゃごちゃ言うんじゃないよ。そんな事より、あんたが高速飛行を身に付けるのが大事。……この前の事、忘れたとは言わせないよ」
「……そりゃ、忘れてませんよ。でも、高い所は怖いですから……」
ナナさんが引き合いに出したのは、2日前、スイーツブルグ家での模擬戦。その二戦目、スイーツブルグ家、次女のエクレアさんとの勝負の事。
彼女が作り、自ら装着し、戦いに臨んだパワードスーツ。汎用型高機動魔戦機甲、デウス・エクス・マキナ。あれは恐ろしい兵器だった。装着すれば、超人的な戦闘力、空中を自在に移動できる機動力を得られ、更に登録された疑似魔法を使える上、学習機能により、経験を積むほどに自己改良を行う。装着者の防御も極めて強固。何より、誰でも使える。今はまだ試作段階らしいけど、あれが量産化されたら、世界の戦争が大きく変わるだろう。
自在に空中を舞い、不可視の重力攻撃を放ってくるエクレアさんに僕も苦戦を強いられ、切り札の『絶対凍結眼』を使うはめに。僕にとっては新年早々、苦い思い出だ。するとナナさんはバカにした口調で言った。
「ふん、情けない子だね。高い所が怖い? あんた、それでも私の弟子かい? 恥ずかしいったら、ありゃしないよ」
その言い方にさすがにカチンときて、反論する。
「そんな事言われても、怖いものは怖いんですから!」
僕の高所恐怖症は昔からだし、元々、僕は普通の人間。空を飛ぶなんて、それこそフィクションの世界の中だけの話と思っていた。でも、ナナさんはそれを許さない。
「ハルカ」
「何ですか?」
それまでとは一転して、冷たい雰囲気を纏うナナさん。……これはナナさんが真面目に話をする時だ。ナナさんはマグカップに淹れたお茶を一口飲んで、話を続ける。
「あんた、よく私に言うよね。恥ずかしい真似をしないでください。僕まで恥をかきますからって」
「はい」
確かにナナさんの言う通り、僕は度々、ナナさんにそう注意している。
「それは私も同じなんだよね。今まで言わなかったけど、あんた、魔女界じゃ笑い者なんだよ。あの三大魔女の一角、『名無しの魔女』の弟子のくせに飛べないって。引いては、私も笑われているんだよ。飛べない弟子を持つなんて、『名無しの魔女』も落ちたもんだって」
「そんな!!」
ナナさんから告げられたのは、衝撃的な内容。飛べないだけで、そこまで言われるなんて。更にはナナさんにまで迷惑をかけていたなんて。その事実に申し訳なさで一杯になる。
「ハルカ、恥うんぬんはまぁ良い。私は今さら気にしないさ。こちとら、屍山血河を築き上げてきた大量殺戮者だからね。そんなもん気にしていたら、三大魔女なんてやっていられないよ。でもね、飛べないってのは、明らかに致命的だ。それはあんたもこの前の勝負でよくわかっただろ?」
さっきまでの冷たい口調から、温かみの有る口調に切り替えたナナさん。気を遣ってくれたらしい。実際、ナナさんの言う通り、僕は飛べないせいで、空中を自在に舞うエクレアさんに苦しめられた。あれが模擬戦だったから、まだ良かったものの、実戦だったら、殺されていたかもしれない。……高速飛行、やっぱり身に付ける必要が有る。高い所は怖いけど、避けられない。僕の為にも、ナナさんに恥をかかせない為にも。
「はい、ナナさんの言う通りです。高速飛行ができないのは、致命的です。地上と空中では、やっぱり、空中にいる側にアドバンテージが有りますから。それに、ナナさんに恥をかかせる訳にはいきませんから」
そう答えるとナナさんは満足そうに頷く。
「よしよし。良い子だねハルカ。とりあえず、さっさと朝飯を食べちまいな。片付けが済んだら、行くからね」
「はい」
善は急げ。朝ごはんを食べるペースを上げる。頑張って、高速飛行を身に付けるんだ。ナナさんが僕のせいで、笑われているなんて嫌だし。
「お待たせしました、ナナさん」
「やっと来たね。よし、それじゃ、行くよ!」
朝ごはんの後、洗い物と洗濯を済ませた僕は、ナナさんの部屋へ。修行の行き先はいつもナナさんが決めるからね。ナナさんの差し出した手をしっかり握ると、周りの景色が一瞬で変わる。毎度お馴染みの空間転移で、修行する所に来たんだ。今回はどこだろう? 見渡す限り草原の広がる所だ。綺麗だなぁ。見事な景色に感心しているとナナさんの声。
「ハルカ! 何ぼさっとしてるんだい! 今日の修行を始めるよ。さっさと柔軟を済ませな」
「あ、すみません! すぐやります!」
いけない、いけない。僕は、ここへ遊びに来たんじゃない。修行の為に来たんだ。時間を無駄にはできない。まずは柔軟体操。きちんと身体をほぐして、ウォーミングアップをしないと。さっそく、柔軟体操を始める。
「ハルカ。前々から言ってるけど、これは修行だから、柔軟だの、ウォーミングアップだのできるんだからね。実戦はそんなに甘くないからね。いつ、いかなる時でも戦える様にしな」
「厳しいですね、ナナさん」
「私は当然の事を言っただけだよ。ほら、柔軟が終わったら始めるよ」
「はい」
柔軟体操を済ませて、いよいよ今年最初の修行開始。高速飛行の修行か、やっぱり怖いな。
「よし、まずは高い所に慣れないとね。私についといで!」
言い終わると即座に上空に向かって飛んでいくナナさん。僕よりずっと速い。僕も急いで後を追うけど、ナナさん程の速さは出せない。浮遊魔法でふわふわと上昇しながら、やっとの事でナナさんの待つ高さへ。
「遅い! 他人を待たせるんじゃないよ!」
元々が短気なナナさん。僕の上昇スピードが遅い事にご立腹。
「すみません、ナナさん。今の僕には、これでも一番速いんですけど……」
これ以上、ナナさんを怒らせるのは良くないし、実際遅いので謝る。
「全く……。まぁ、浮遊魔法ってのは本来、高所での作業用として開発された魔法。安定を重視し、速度は二の次だからね。遅いのは仕方ない。とはいえ、こんなあくびの出る様な遅さじゃ、実戦では使えない」
「そうですね。こんな遅さじゃ、狙ってくれと言っている様な物ですし」
呆れながらも一定の理解は示してくれるナナさん。浮遊魔法は実戦用の魔法じゃないし。だからこそ、実戦仕様の高速飛行が必要なんだ。
「それじゃ、始めるよ。さっきも言ったけど、まずは高い所に慣れてもらうよ。ちょっと、下を見てみな」
上に向かったナナさんに追い付く事ばかり考えて、下を見ていなかった僕。言われて下を見てみた…………高い!!!
ナナさんを追いかけて上昇している内に結構な高さまで来てしまっていた。思わず足がすくむ。そんな僕を見て、呆れるナナさん。
「ハルカ。たかが50メートルぐらいの高さでビビってるんじゃないよ。しゃんとしな。これぐらいでビビっていたら、高速飛行なんてできないよ」
「は、はい……」
ナナさんはそう言うけれど、やっぱり高い所は怖いよ~!!
「手始めに浮遊魔法と高速飛行の違いについて説明するよ。良く聞きな」
上空50メートルにて説明を始めるナナさん。ちゃんと聞かないといけない。高い所は怖いけど……。
「さっきも言った様に、浮遊魔法は作業用の魔法。大した速度は出ない。対して、高速飛行は実戦用の魔法。段違いの速度を出せる。私クラスともなれば、超音速に達する」
「うわ~、凄いです!」
超音速で飛べると言うナナさんに素直に感心。やっぱりナナさんは凄い魔法使いなんだな。そう思っていると、ナナさんに叱られた。
「バカ、話を最後まで聞きな。確かに高速飛行は速い。だが、速いって事はその分、リスクも色々有る。まずは風圧。超音速飛行ともなれば、大気との摩擦熱、衝撃波。これらを対処しないといけない。更には高速で移動する事に対処できる情報処理能力。何より、高速飛行を使える素質が必要なのさ。魔法ってのは、残酷な程、才能がものを言うからね」
「……だから、エクレアさんはパワードスーツを作ったのか」
ナナさんの言葉に先日戦ったエクレアさんの事を思い出す。
「そういう事だね。素質が無いなら別の何かで補う。それも一つの手だ。だが、幸いあんたには素質が有るからね。コツさえ掴めばできる様になる。自転車に乗る様なもんさ。じゃ、高速飛行の術式を教えてやるよ。こっちに来な」
言われてナナさんの元へ。そして、ナナさんが自分のおでこを僕のおでこにくっつける。
「知識伝達」
「う……」
ナナさんがそう言うと、僕の頭の中に何かが流れ込んでくる。僕の知らない何かが。軽い目眩がするけど我慢。じきに収まり、ナナさんがおでこを離す。
「よし、高速飛行の術式の知識伝達は済んだよ。具合はどうだい? 気分が悪いとかないかい?」
「はい、ちょっと目眩がしましたけど、もう大丈夫です」
「そうかい、良かった。気分が悪くなったとか言われたら、修行を中止しなきゃならなかったからね」
知識伝達。ナナさんの使う魔法の一つ。その効果は文字通り、自分の知識を別の誰かに伝える。ただし、相手側にその知識を受け入れられるだけの容量が必要だし、知識量が増えれば、それだけ相手側の負担が増える。下手すれば、相手側の脳を破壊し発狂、最悪、死ぬ事すら有るそうだ。それに、あくまでも、『知識』を伝えるだけ。『できる様になる』のとは違う。そこを勘違いするなとナナさんに以前、言われた。で、今回はナナさんから、高速飛行の術式を知識伝達されたんだ。
「よし、始めるよ。まずは飛行体勢を取る事からだ」
僕が無事に知識伝達を済ませた事を確認したナナさんは、さっそく高速飛行の修行を始める。僕は伝達された知識を元に飛行体勢へと入る。
「えっと、まずは身体を魔力でコーティング。その際には、自らを大気を切り裂く刃とイメージする事だっけ。それから、体勢を水平に。下を見るな、前を見ろ……か」
全身に魔力の防護シールドを纏い、その形を鋭い刃にイメージする。空気抵抗を減らすんだね。飛行機と同じか。空中に立っている姿勢から、水平体勢に移行。顔は前を見る。下を見ると怖いからね。
「よし。飛行体勢はできたね。それじゃ、ゆっくりで良いから、進んでみな。私の所まで来るんだ」
僕が飛行体勢を取ったのを見たナナさんは、次の指示を出す。今度は前進か。少し先で待つナナさんの元を目指す。
「姿勢制御良し、魔力シールド安定、速度はゆっくりめで、前進!」
始めたばかりなので、一つ、一つ声に出して確認。行くぞ。高速飛行、発動。すると、駆け足ぐらいの速度で前に向かって飛べた! そして無事にナナさんの元へ。
「やった! ナナさん、僕も高速飛行ができました!」
空を飛べた嬉しさに思わず大声を上げてしまう。浮遊魔法は文字通り、浮遊する感じで、今一つ空を飛ぶ爽快感が無かった。対して、高速飛行はスピーディーで、自分が空を飛んでいると実感できる。実戦とかを抜きにしても、凄く良い気分。車やバイクで飛ばしまくるスピード狂の人達の気持ちがわかる気がする。
「この程度の速度ではしゃぐんじゃないよ、子供だね。でも、筋は良いね。これなら、そんなにかからずに実戦レベルまで行けそうだね。さぁ、次行くよ。私についてきな」
高速飛行の体勢になり、空を飛ぶナナさん。僕も高速飛行でその後を追いかける。ナナさんは僕の速度に合わせて、ゆっくりめの速度で飛びながら、カーブ、上昇、下降、一旦停止、再発進と色々な動きをする。僕もそれに合わせる。そうして、お昼まで2人で空を飛び回った。アニメやマンガといったフィクションの世界だけだと思っていた、空を飛ぶ事。それが実現できて、凄く良い気分だった。……この時点では。
お昼になったので、一旦地上に降りて休憩。今回はお弁当ではなく、ナナさん特製のパック入りゼリーを飲む。二次元的、平面的な動きが中心の地上戦と違い、空中戦は三次元的、立体的な動きをする。その分、慣れないと酔ってしまう。固形物を食べると酔って吐いた際に、喉に詰まる危険性が有ると言われた。実際、吐いた物が喉に詰まってしまい、そのせいで、高速飛行の制御不能になって墜落死した人がいると。やっぱり、何事もリスクは伴う。それはともかく、ナナさんとおしゃべり。
「ふん、何とか自転車で普通に走るぐらいの速度は出せる様になったね」
「はい。でも、その先になかなか行けません……」
話題は当然、高速飛行の事。ナナさんの指導も有り、自転車ぐらいの速度は出せる様になった僕。でも、それ以上の速度を出そうとすると上手くいかない。飛行体勢が崩れ、墜落してしまう。地上300メートルで墜落した時は本当に怖かった……。幸い、墜落する度に、ナナさんが捕まえてくれたから良いものの、僕は壁にぶつかっていた。やっぱり高速飛行は難しいな。
「まぁ、気長にやる事さ。こういうのは、とにかく経験を積んで慣れる事。あんたも今までの経験から分かっているだろ? それに、私はできない事をやれとは言わないさ。そんな事を言うのは、ただの無責任か、現実の見えないバカぐらいかね。大丈夫、あんたならできる。私が弟子にしたあんたならね。私は人を見る目には、自信が有るんだ」
僕が壁にぶつかって、少なからず悩んでいる事を察したらしいナナさん。フォローを入れてくれる。
「ありがとうございます、ナナさん。そうですよね。何でもいきなり上手くいくとは限りません。頑張ります。必ず、高速飛行を身に付けます」
ナナさんの温かい励ましにお礼を言うと同時に改めて、高速飛行を身に付ける決意を固める。
「そうかい。だったら、きちんと高速飛行を身に付けるんだよ。私の目が節穴じゃないって証明しとくれ」
そんな僕を見てナナさんは、満足そうな顔をしていた。
「さ、ハルカ。もう少し休憩したら、また修行を始めるからね」
「はい!」
「さ、午後の修行を始めるよ。準備は良いね?」
「はい」
お昼の休憩も終わり、午後の部、開始。再びナナさんと一緒に上空へ。午前の部より高度を上げ、上空700メートルにいる。……下は見ないよ、怖いから。
「ほら、ついてきな。ただし内容は午前と変えるよ。あんたの場合、姿勢制御に難有りだからね。速度はひとまず置いといて、姿勢制御を重点的に攻めるよ」
高速飛行で飛び始めるナナさん。午前はわりと単調な動きだったのに対し、午後からは、姿勢制御を重点的に攻めると言うだけに、ジグザグ移動や、宙返り、急上昇、急降下といったアクロバティックな飛び方を披露する。速度はそれほどでもないけど、動きが激しい分、姿勢制御が難しい。ついていくのがやっと。特に急降下は怖かった……。
「おや? もうへばったのかい? 若いのにだらしないね」
空中で停止して呼吸を整えていると、そこへナナさんがやってきた。あれだけアクロバティックな動きで飛び回っても、顔色一つ変えない。
「はぁ、はぁ……ナナさんと違って……慣れていませんから……」
こちらは息も絶え絶え。ナナさんの動きについていくので精一杯。高い所が怖いのも有るし。ナナさんは、そんな僕の心を見透かしたらしい。
「……ハルカ。高い所が怖い気持ちは分かるよ。実際、高速飛行に失敗して墜落死した奴は大勢いる」
墜落死。その言葉に氷水を浴びせられた様な気持ちになる。そこへ更に話を続けるナナさん。
「でもね、ハルカ。怖がって何もしなければ、何も変わらない。何かを成すには、自ら踏み出すしかない。私は何より、あんたに一歩踏み出す勇気を持ってほしいのさ。その手始めが高速飛行。高い所に対する恐怖心を乗り越えてみせな。もちろん、高速飛行もモノにするんだよ」
ナナさん、そこまで考えていてくれたんだ。改めて、僕は素晴らしい師匠に恵まれたと思う。……これでもう少し、生活態度を改めてくれたら、なお良いんだけど。そこへ、ナナさんが新しい話を切り出す。
「ハルカ。せっかくだから、私の飛び方を見せてやるよ。良く見ているんだよ」
「はい、わかりました!」
ナナさんが飛び方のお手本を見せてくれるらしい。今まで、僕に合わせてくれていたからね。しっかり見て、学ばないと。当のナナさんは、僕から少し離れて距離を取る。
「行くよ!」
僕に背を向け、高らかに告げるナナさん。まずはまっすぐ前に飛び出した。……速い! 目にも止まらないという言葉を地で行く速さ。更にそこから、減速せず一気に方向転換。それも直角や鋭角で。慣性の法則を無視した動きだ。それだけでも凄いのに。
(まだまだ行くよ! 高速飛行の高等テクニックを見せてやるよ)
ナナさんから念話が届く。まだ何か見せてくれるんですか?! 驚きを隠せない。
(良く見てな。これが魔女の空中戦の動きさ)
ナナさんが見せてくれたのは、ただ速いだけじゃない。慣性無視の動きに速度の緩急を織り交ぜた、まさに変幻自在の動き。これが魔女の空中戦か。
「凄い! 凄いですナナさん!」
感激のあまり、大声を上げてしまう。
(さて、フィニッシュといくかい)
そう念話が来ると、ナナさんがこっちに向かって猛スピードで飛んできた! あっという間に目前に迫るナナさん。ぶつかる! そう思ったその瞬間。ナナさんは、瞬時に僕の後ろに回り込んでいた。
「驚いたかい? 言っとくけど、まだまだ私は本気じゃないからね。何せ、私は超音速で飛べるんだからね」
ここぞとばかりにドヤ顔で胸を張るナナさん。自慢の巨乳も揺れています。
「凄かったです。速いだけじゃなく、変幻自在の動き。あれは慣性の法則を無視していますよね?」
ナナさんの凄さを称賛すると共に、質問。気になる事は聞いてみる。
「あぁ、そうさ。慣性及び、重力の作用を制御し、自在に空中を舞う。それが高速飛行の極意。まぁ、今すぐ、やれとは言わないさ。とりあえず、今は姿勢制御を鍛えないとね。さ、やる……」
僕の質問にナナさんが答え、再び高速飛行の修行を始めようとしたその時。
「ハルカ!!!」
突然、大声を出して、ナナさんが僕を突き飛ばした! いきなり何をするんですか! そう言おうと思ったけど、できなかった。なぜなら、僕を突き飛ばしたナナさんが突如、飛来した漆黒のビームにお腹を貫かれたから……。
ナナside
それはまさに、一瞬の出来事。ハルカに高速飛行のお手本を見せ、再び高速飛行の修行に入ろうとしたその時。私は微かだが、確かにハルカに向けられた殺気を感じ取った。長年の直感が告げる。『危険』と。
「ハルカ!!!」
私は叫び、ハルカをその場から突き飛ばす! それとほぼ同時に、飛来した漆黒のビームが私の腹を貫いた。大した威力だ。私特製の黒ジャージ、更には私自身の防御魔力ごと、私を貫くとは。しかも、ご丁寧な事に、すこぶる強力な呪詛まで込められていやがる。魔力を練れないし、身体も満足に動かない。とどめとばかりに、荷重増大まで。推定10トン。結果、私は上空700メートルから、まっ逆さまに墜落中。
この高さから、魔力を使えない状態で地面に衝突したら、いかに私といえど、命は無い。正直、私自身はどうでも良い。過去、数えきれない程の罪を犯してきた私だ。どんな悲惨な最期を遂げようが、自業自得に過ぎない。それよりもハルカだ。あの子は無事か? 落ちていく中、何とか上を見る。良かった、無事だ。私はその事に安堵する。が、ハルカは大変な暴挙に出た。
私に向かって、急降下してきた!
あのバカ! 私を助ける気だ! よせ、逃げるんだ! あんたを狙った奴が、また仕掛けてくるかもしれないし、上空700メートルから落下している上、10トンの荷重を上乗せされている私を受け止めるなんて、無理だ。下手に手を出せば2人とも死ぬ。でも、声が出ない。身体が動かない。魔力も使えない。手詰まりだ。ハルカは何らかの方法で加速したらしく、距離を詰めてくる。
「ナナさん! 今、助けます!」
叫ぶハルカ。こっちに向かって手を伸ばす。しかし、敵はそうはさせないらしい。突然、私の落下速度が上がった。本当に念入りな奴だ。少なくとも、私は殺す気らしい。また、ハルカとの距離が離れる。
「ナナさん!!!」
ハルカの悲痛な叫びが聞こえる。すまない。どうやら、私はここまでみたいだ。最期を覚悟する。
(ハルカ、あんただけでも逃げ延びとくれ……)
死を目前にただ、それだけを願う。その時。
『私は白銀の閃光を見た』
ハルカside
突然の狙撃から僕をかばい、代わりに直撃を受け、落ちていくナナさん。あまりに突然の事態に、思わず呆然としてしまった。そして、それは致命的な時間の損失となる。わずか数秒の事とはいえ、その間にナナさんは、地上めがけて落ちていく。
助けなきゃ! 僕の心はただ、その一念で占められる。ぐうたらで、いい加減で、わがままで、セクハラ大好きで、いつも僕を困らせるナナさん。でも……突然、異世界に飛ばされ、行く当ての無い僕を受け入れてくれた。魔法、武術を始め、異世界で生き延びる術を教えてくれた。ツクヨにさらわれた時には命懸けで助けに来てくれた。何より、僕に惜しみ無い愛情を注いでくれた、大切な人。絶対に死なせてたまるか!
でも、僕の高速飛行では自転車で走る程度の速度しか出ない。それでは間に合わない。ならば……これだ!
高速飛行解除。それまで僕を空中に留めていた『力場』が消え、その結果、当然僕は重力に引かれ、落ちる。でも、それで良い。下手な高速飛行より、ずっと速い。高所恐怖症など忘れ、僕は落ちていくナナさんを追いかける。
「くっ、ダメだ。これじゃ追い付かない。もっと速く!」
ナナさんが先に落ちた分、追い付くには、それ以上の速度が必要。
「水魔奔流波!」
高圧の水の奔流を生み出す魔法を足からロケット噴射の要領で放つ。落下速度が加速され、ナナさんに近付く。僕はナナさんに向かって手を伸ばし叫ぶ。
「ナナさん! 今、助けます!」
もう少し、もう少しで手が届く。でも、突然、ナナさんの落下速度が上がる。再び引き離される。なんて事だ! これ以上の速度は出せないのに!
「ナナさん!!!」
どんどん地上が迫る。このままじゃナナさんが! でも、僕にこれ以上の速度は出せない。しかも考えてみたら、追い付くだけじゃダメだ。受け止めないと。でも、あの落下速度では受け止められない。何か、何か、方法は無いの?! 加速したナナさんに追い付き、受け止める『力』を得る方法は? 時間が無い!
『力』……そうだ! 『あれ』が有る! まるで、電撃の様に脳裏に浮かんだ方法。そうだよ、僕は『魔王の身体』を持つんだから。もちろん、その方法はリスクを伴う。ましてや、こんな状況で使うのは初めて。でも、他に方法が無い! ナナさんを助ける為なら、リスクなんか怖くない! 目覚めろ! 僕の中に宿る『魔王の力』!
『魔氷女王化!!!』
僕の中で何かが弾ける様な感じと共に、服装が変わる。青と白を基調としたメイド服から、純白のドレスに。頭のヘッドフリルは白銀のティアラに。そして、両腕に白銀の手甲、両足に白銀の具足。ツクヨと初めて戦った時以来の僕のとっておきの切り札。僕のもう1つの前世である、太古の魔王、『魔氷女王』に変身する能力。全ての能力が飛躍的に上がるけど、後で大きな反動が来るから、ナナさんから多用を禁止されている。でも、今こそ、その力が必要なんだ!
「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
全力でナナさんに向かって飛ぶ! 何か、光った気がするけど、今はどうでも良い。魔王の力は凄かった。一瞬でナナさんに追い付き、抱き止める。でも、止まらない! とてつもない重圧が襲い掛かってくる! 地上はもはや、目前!
ナナside
「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
白銀の閃光と共に聞こえたハルカの叫び声。直後、私はハルカに抱き止められていた。この姿、『魔氷女王化』を使ったのか。あれだけ、多用するなと言ったのに。しかし、なんて速さだ。私ですら見えなかった。だが状況は好転しない。むしろ、悪化した。
「ぐうぅぅぅぅぅぅっ!!! 止まれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
ハルカは必死に落下を止めようとするが止まらない。このままでは、2人共死ぬ! 私は何とか声を絞り出す。
「……逃げろ……私は見捨てろ……」
でも、ハルカは従わない。
「嫌です! 絶対にナナさんを助けるんです!!」
持てる力を振り絞っているのだろう。透き通る様な白い肌を真っ赤にして、落下を止めようとするハルカ。だが、努力むなしく、止まらない。すると何か意を決した表情でハルカが言った。
「予定変更です、着地します。しっかり掴まってください」
とんでもない事を言い出した。この状況で着地?! しかし、落下が止まらない以上、これしかない。……信じよう、ハルカを。私の自慢のメイド兼、弟子を。私はハルカに全てを託し、目を閉じる寸前、またしても、白銀の閃光を見た。
ハルカside
とっておきの切り札、『魔氷女王化』によるパワーアップでナナさんに追い付き、抱き止める事に成功した僕。でも、予想以上の凄まじい加速度と重圧がのし掛かってくる。全力で止めようとするものの、止まらない。何か強力な呪詛がナナさんにかけられているらしい。ナナさんは私を捨てて逃げろと言うけれど、そんな事はできない。でも、止まらない以上、このままじゃ2人共、地面に激突して死ぬ。何か、何か助かる方法は……。残り時間は僅か、必死に考える。ん? 『助かる方法』? ここで再び閃いた! そうだ! 最優先は『助かる事』、『落下を止める事』じゃない! 僕は即座に決断した。
『魔氷女王の力で全力の防御を展開して着地する』
ナナさんに着地する事を伝え、僕はありったけの魔力を防御に回し、僕とナナさんを包み込む。またしても、何か光った気がするけど、それどころじゃない。地上が目前に迫る。もはや、地面に激突するまで後、数秒だろう。ナナさんを抱き寄せ、激突の衝撃に備える。たとえ、この命に代えても、ナナさんを守る! そして……耳をつんざく様な轟音と、凄まじい衝撃と共に、僕達は地面に激突した……。
……まず見えたのは、えぐれた地面。僕を中心に広がっている様だ。そして、周囲が見えているという事は、どうやら僕は生きているらしい。何とか……着地成功かな……。そうだ! ナナさんは?! 慌てて、自分の懐を見る。そこにはちゃんとナナさんがいた。良かった、どこかに落としていなかった。その事に安堵すると共に、ナナさんをそっと降ろす。
「う……」
うめき声を上げるナナさん。まだ息が有るものの、お腹を貫通する重傷を負っている。一刻も早く治療をしないと!
「ナナさん、今、治療をしま……す…」
だが、そこへ『魔氷女王化』の反動、更には地面に激突した際のダメージが襲ってきた。身体中に激痛が走り、意識が遠ざかる。ダメだ、こんな所で。ナナさんに治療を……。でも、身体がいう事を聞かない。身体が重い……。
「ナ…ナさん……」
必死にナナさんに向かって手を伸ばした所で、僕は力尽きた……。
ナナside
着地する。ハルカがそう告げた後、白銀の輝きに包まれた私達。ハルカに全てを託し、地面との激突に備えた。その数秒後に凄まじい轟音と衝撃が起きた。それこそ、投げ出されていてもおかしくない程の強烈さだったが、ハルカは私をしっかりと抱き寄せてくれていた為、助かった。
周りは酷い状況だった。ハルカを中心にクレーターができあがっていた。いかに、地面に激突した際のエネルギーが凄まじかったか、物語っている。そうだ! ハルカは?! 満足に動かない身体でハルカを確認する。……良かった、生きている。ハルカは私をそっと降ろす。ここへきて、腹の傷の痛みを思い出す。
「う……」
その痛みに思わず、うめき声を上げる。
そこへハルカが私に治療を施そうとするが、力尽きて倒れてしまった。地面に激突した際のダメージ。更に、私がその危険性ゆえ、 多用を禁じた『魔氷女王化』。それを使ってありったけの魔力を使った反動。それらが一気に来たんだ。バカ! あんたの方こそ治療が必要じゃないか! 死なせてたまるか! ハルカの治療をしたいが、呪詛込みの重傷を負わされたせいで満足に動かない身体と魔力。
「……くそ、せめて……エリクサーを……」
普段なら、簡単に亜空間から薬を取り出せるのに、それも上手くいかない。ハルカは顔面蒼白で呼吸も弱い。早くエリクサーを飲ませないと……。気ばかり焦るが、肝心のエリクサーがなかなか出ない。苦心の末、やっと一瓶だけ出せた。私はそれを手にハルカに這い寄る。
「……ハルカ、薬だよ……」
ハルカに飲ませる為、エリクサーの小瓶の蓋を開けようとしたその時。手がすべり、小瓶を落としてしまった。しかも、小瓶は向こうへと転がっていってしまった。私とした事が……。そこへ追い討ちが掛かる。腹の傷から血を流し過ぎた。身体中から力が抜け、意識が遠のいていく。
「ダメだ……ハルカに薬を……ハル……カ……」
倒れているハルカに手を伸ばし、私の意識は途切れた……。
???side
「…………どうしたもんっスかね~~、この状況」
アタシの目の前には、銀髪の美少女と黒髪の美女の2人が倒れているっス。ま、その原因はアタシなんスけど。
「わざわざ、アタシがトドメを刺さなくても、このままほっとけば、2人共、間違いなく死ぬっスね」
銀髪の美少女、ハルカは上空700メートルから落ちたダメージと、魔王の力を使った反動で、瀕死の状態。黒髪の美女、ナナはアタシの放った呪詛込みのビームで腹を撃ち抜かれ、出血多量も有り、これまた瀕死の状態。両者共に、死ぬのは時間の問題っス。でもね……。
「今回の任務はハルカ・アマノガワ。ナナ・ネームレス、この両者の監視、及び、可能であれば抹殺」
アタシは上から受けた指令を思い出す。まぁ、アタシは仕事柄、この手の汚れ仕事はしょっちゅうだし、ましてや転生者ってのは、ゲロ以下、クソ以下のどうしようもないゲスが基本っスからね。そういう社会の害悪を消すなら、アタシも何も言わないっス。しかし、今回ばかりはそうも言ってられないっスね。
アタシの目の前でうつ伏せに倒れている2人は、自らが瀕死の状態であるにもかかわらず、共に自分の事を投げ出してまで、相手を助けようとしたっス。その手は相手の方へと伸ばされたまま……。そこまでして、助けようとしたとは……。
アタシは決意を固めたっス。懐から、拳銃型の特製注射器を取り出し、2人に注射。アタシ特製の治療薬『アンチ・ヘル&ヘブン』。天国行きだろうが、地獄行きだろうが、息が有るなら、強制的にこの世に引き戻し完治させるスグレモノっス。その効果はてきめん。2人共、蒼白だった顔色に血の気が戻り、呼吸も安定する。ナナに至っては腹に開いた大穴も跡形も無くふさがったっス。これならもう、大丈夫。その内、目を覚ますだろうっス。
「カオルさん。貴女がハルカ・アマノガワを危険視する気持ち、わからなくはないっス。この子の秘めたる力は絶大っスからね」
何せ、確実に殺そうと、ビームに込めた荷重の呪詛に地面に激突した際、更に10倍。100トンの荷重が発生する様に仕込んでおいたんスけど、あの子は耐えた。ナナも守った。いや、大したもんっス。普通は木っ端微塵になっているっス。でも、ハルカ・アマノガワの怖さはそこじゃないっス。
「名無しの魔女こと、ナナ・ネームレス。昔、見た時はマジで酷かったっス。底無しの性欲と狂気に満ちた、外道という言葉すら生ぬるい凶悪無比な恐ろしい魔女で、その魂もどす黒く染まり切り、凄まじい腐臭を放つ、ドロドロに腐り切ったヘドロみたいな魂だったっス。それが、今やまるで別人っス」
ハルカを狙ったアタシの狙撃から、身を呈してかばい、ハルカを守ったっス。昔の名無しの魔女なら、絶対にそんな事はしないっス。むしろ、ハルカの撃たれた方角からアタシの位置を逆算して反撃してくるっス。
ハルカ・アマノガワ。太古の真なる魔王の1人、『魔氷女王』の身体を与えられた転生者。でも、それ以上に恐ろしいのは、他人を惹き付け、心を動かし、変えていく力っス。あの腐り切った名無しの魔女の心すら、動かし、変えてみせた。今の名無しの魔女、いやナナ・ネームレスの魂は黒くはあるっス。でも、その魂は昔の様なヘドロじゃない、黒曜石の様に、煌めいているっス。きっと、あの子はこれから先、更に味方を増やしていくっスね。やれ、ニコポだ、ナデポだ、とか言うクズ転生者には、どうあがいても、たどり着けない域っス。
「今回の任務っスけど、『天使長権限』で拒否っスね。この2人は死ぬべきではないっスからね。いや~今日程、天使長やってて良かったと思った日は無いっスね。さて、これ以上、ここに留まる理由は無いっス。2人が目を覚ます前においとまするっス」
こうして、アタシはその場から飛び立ったっス。さて『天界』に帰ってからの言い訳を考えないといけないっスね。
ハルカside
「…………ん……ここは?……」
ふと、気が付けば外。それも酷い有り様。一瞬戸惑ったけど、じきに思い出した。
「そうだ、ナナさんと高速飛行の修行に来て……ナナさん!」
突然の狙撃から僕をかばい、撃たれたナナさん。僕はナナさんを抱いて地上に落ちたんだ。ナナさんがお腹を撃ち抜かれる重傷を負わされた事を思い出し、急いでナナさんの元へ。ところが……。
「どうして? ケガが治ってる……」
どういう訳か、ナナさんのお腹のケガが跡形も無く治っていた。考えてみれば、僕自身、まともに動けない程のダメージを受けていたのに、なんともない。まるで夢みたいだ。でも、僕達が攻撃を受けたのは夢じゃない。その証拠にナナさんのジャージのお腹と反対側の背中の部分に大穴が開いているし、ナナさんの周りには、傷口から流れたと思われる大量の血。極めつけが僕を中心にクレーターができているし。とにかく、今はナナさんを起こそう。
「ナナさん、しっかりしてください、ナナさん!」
ナナさんを抱き上げ、呼び掛けるとナナさんが目を覚ました。
「……ハルカ? あれ? 私は……」
ナナさんも急には状況を飲み込めないらしい。とりあえず、説明。
「ナナさん、僕達助かったんです。何が有ったのか分かりませんけど、身体も治っています。具合はどうですか?」
するとナナさんも自分の身体の事に気付いたらしい。お腹のケガが無い事に驚いている。
「……これは。ケガが治ってやがる。あれは呪詛の込められたビームで受けたものなのに……。っと、あぁ、すまない。大丈夫さ」
幸い、ナナさんの方も問題無いとの事。本当に良かった。
「でも、ナナさん。誰が助けてくれたんでしょう?それに僕達を狙った相手は、なぜトドメを刺しに来なかったんでしょう?」
「さぁね。私にもわからないさ。とりあえず、帰るよハルカ。命を狙われたんだ。ここに長居は危険だ。また、仕掛けてくるかもしれないからね」
「そうですね、帰りましょう」
ナナさんに言われ、今日は帰る事に。ナナさんの差し出した手をしっかり握る。すると、ナナさんもしっかりと握り返してくれる。
「それにしても、ハルカ。あんた無茶するね。私を助けようと、急降下をするなんて。高所恐怖症のくせにさ。しかも、『魔氷女王化』まで使うとはね」
今日の事をネタにいじってくるナナさん。
「……あの時は、もう無我夢中でしたから。とにかくナナさんを助けようと必死だったんで」
そんな僕を見て、ナナさんは言う。
「やっぱり、私の目に狂いは無かった。あんたはやればできる子さ。ハルカ、一歩を踏み出す勇気、忘れるんじゃないよ」
「はい!」
「よし! 帰ろう!」
ナナさんのその言葉と共に、僕達は空間転移でお屋敷へと帰還。ちなみにその日の夕ごはんは湯豆腐にした。僕もナナさんも何だかんだで、精神的ダメージが有り、凝った料理を作る気も食べる気もしなかったから。
こうして、この日の事件は幕を閉じた。でも、ナナさんに言われた。あの狙撃は明らかに僕を狙っていたと。何者かわからないが、ナナさんに致命傷を負わせる程の相手。もっと強くならなきゃ。僕は決意も新たに、正体の見えない敵を思うのだった。
今回は早めに書けました。僕と魔女さん、第78話をお届けします。
正月休みが終わり、再び修行を開始したナナさん、ハルカ師弟。ですが、そこに刺客の魔の手が。大ピンチに陥った2人ですが、刺客は2人を見逃しました。しかし、ハルカに迫る天界の影。このままでは終わらないでしょう。
ではまた、次回。