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僕と魔女さん  作者: 霧芽井
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第65話 彼方、異世界メンバーとご対面

 彼方side


「彼方さん、そこの椅子をこっちに持ってきて。うん、そこのテーブルの所に置いて。今日はお客様が大勢来るから。あらかじめ、準備をしておかないとね」


 現在、私はハルカさんと一緒にパーティーの準備の真っ最中。テーブルや椅子を並べたり、飾り付けをしたりと大忙し。


「ごめんなさい、お客様の彼方さんに手伝いをさせてしまって」


「いえ、気にしないでください。これぐらい、お安い御用ですから」


 申し訳なさそうに謝るハルカさんに、私は返す。でも、心の中では別の事を考えていた。


(ハルカさんはハル兄だと思うんだけど。でも本人は認めないし。どうしたら……)


 ハルカさんの部屋で話をして、ハルカさん=ハル兄との思いを深めたものの、証拠が無い。本人にも否定されてしまったし。もやもやしたものを胸に秘めたまま、ハルカさんのお手伝い。


「どうかしたの?」


 私の様子を見て心配したらしいハルカさんが声をかけてくれる。


「いえ、何でもないです。次は何をしますか?」


 ……とりあえず今はお手伝いに集中しよう。それに、私が元の世界に帰れるかどうかも有るし。






 ハルカside


 やっぱり、彼方は僕が兄だと思っているね。相変わらず鋭いなぁ。まぁ、僕自身、嘘や隠し事は苦手だけど。でも、今さら元の世界には帰れないし。せめて、彼方だけでも帰らせないと。


 彼方と一緒にパーティーの準備を進めていたものの、彼方の疑惑の視線をひしひしと感じていた。ごめんね彼方。そういえば、今日のパーティーに来る人達にも彼方の事を伝えておかないといけない。僕が転生者である事を口にされたら困る。後でナナさんに相談しないと。それに、食材も買い足しておかなきゃ。夕飯はすき焼きにする予定だけど、クローネさんから貰ったお肉の量じゃ僕とナナさんだけならともかく、他の人達も来るとなると足りないから。ナナさんを始め、よく食べる人が多いし。


 パーティーの準備をしながら、今後の事を考える。とりあえず準備が一段落したら、彼方と一緒に買い物に行こう。せっかく異世界に来たんだから彼方にこの街を見せてあげたい。喜んでくれるかな?






 彼方side


 パーティーの会場となるダイニングの準備が完了。ハルカさんによると、普段から親しくしている人達を招いてのパーティーだとか。ちなみにメインディッシュはすき焼きとの事。クリスマスイブにすき焼き……。なんだかな~。でも、ハルカさんが作るすき焼きなら、さぞ美味しいだろう。その辺は楽しみ。そんな事を考えていたら、ハルカさんに声をかけられた。


「彼方さん、これから買い物に行くんだけど、一緒に行かない? せっかく異世界に来たんだし、街を見てみるといいよ」


「行きます!」


 即答する私。突然、異世界に飛ばされたのは驚いたけど、同時に興味も有る。ぜひ、この目で異世界の街を見てみたい。


「ふふっ、元気が良いね。それじゃ、ちょっと待ってね。ナナさんに伝えてくるから」


 そう言って、その場を去るハルカさん。じきに戻ってきた。


「お待たせ。じゃ、行こう」


「はい!」


 異世界の街か。何か面白い物とか有るかな?






「ハルカさん」


「何?」


 ハルカさんと2人並んで、街を歩く。ハルカさんが言うには、今回は奮発して、スーパーではなく、専門店で買い物をするそうだ。スーパー有るんだ、この世界。というか……。


「なんか、私の想像していた異世界とイメージが違うな。私、異世界って言えば、剣や魔法のファンタジーな世界をイメージしていたんですけど。普通にコンビニとか、ファミレスとか有るし。後、スマホ持ってるエルフっぽい人とか、スーツ姿の動物みたいな人とかいますし。ファンタジー好きの人が見たら、キレそうな気が」


 するとハルカさんは苦笑しながら言う。


「異世界だからといって、ファンタジーな世界とは限らないよ。ナナさんから聞いたんだけど、この世界は特異点らしくてね。様々な世界から色々な存在がやってくるんだって。その結果、魔法と科学が融合した『魔学技術』が出来たんだ。で、便利な技術や道具が生み出されて広まっていったんだ。まぁ、確かにファンタジー好きな人達は怒りそうだけど。こんな世界は邪道だって。でも、便利な物や技術が広まるのは当然の流れだからね。それに正統派ファンタジー世界の文明レベルは中世時代並みが基本。もし、そんな世界に現代人が放り込まれたら、やっていけないだろうね」


「そうですね~。もし、私がそんな正統派のファンタジー世界に放り込まれたら、まず、死にますよね……。良かった、行き先が元の世界に似ていて」


 私は自分の幸運をしみじみ噛み締める。私は人並みよりは勉強は出来るし、運動神経に関してはかなりの物と自信が有るけど、あくまでも、私はただの中学2年生に過ぎない。サバイバル知識とかは無いし、武器の扱いとかも知らない。そんな私が中世時代並みの異世界に飛ばされたら、どうにもならない。文化の違いとかも有るだろうし。それこそ、食文化や後……トイレ事情とか。


 そこへハルカさんは話を続ける。


「異世界トリップは甘くないって事だよ。よく、異世界トリップした現代人が現在知識や技術で活躍する作品を見るけど、実際にはそううまくはいかないよ。まず、その人がそれだけの確かな知識や技術を持っているとは限らないし、現代知識や技術を使おうにも、その土台となる道具も設備も無い。周りの協力を得られるかも怪しい。周りからすれば、何か得体の知れない事をしていると思うだろうし。下手すると殺されるよ。実際に何人も殺されたってナナさんから聞いたし」


「……怖いですね。異世界トリップ、本当に怖い」


「そうだよ。異世界トリップは怖いよ」


 ほんの軽い気持ちで切り出した話題なのに、すっかり重い雰囲気になってしまった。話題の選択を間違ったかな? そんな私の気持ちを読んだのか、話題を変えるハルカさん。


「まぁ、それはそれとして、早く買い物を済ませよう。すき焼きがメインだけど、他にも料理を作るから食材をたくさん買わないといけないからね」


「はい! ハルカさん」


 そうだよね。早く買い物を済ませて、夕方からのパーティーに備えないと。ハルカさんと2人、商店街へと向かう事にした。







 ハルカside


「こんにちは」


「おっ、ハルカちゃんじゃないか。いらっしゃい!」


 彼方と一緒にやってきた商店街。その一角に有る精肉店に入り、店のご主人に挨拶。ご主人も笑顔で返してくれる。僕はさっそく、用件を切り出す。


「おじさん、今日の夕方から、パーティーをするんですけど、すき焼き用の良いお肉をください。それとソーセージも。よく食べる人達揃いなんで、たくさん買わせて貰います」


 そう言うと、店のご主人はすんなり応じてくれる。


「へぇ、すき焼きか。そりゃ良いな。ハルカちゃんが作るんなら、絶対に美味いな! よし、ちょっと待ってな。ハルカちゃんの為に、とびきり良い肉を用意してやるからな」


 そしてご主人は店の奥へと入っていく。そして大盛りのお肉と普通、スパイシー、ハーブ入りの3種類のソーセージを持ってきてくれた。あ、あまりの量に彼方がびっくりしてる。


「あの……ハルカさん。いくらなんでも、これは買いすぎなんじゃ……」


 若干、引き気味の彼方。実際、凄い量だからね。確かに普通の人なら買いすぎ。でも、ナナさん達だからね。これぐらいは無いとね。


「ナナさん達はよく食べるからね。以前、焼き肉パーティーをやった時はお肉を巡って大騒ぎになったから。これぐらいは必要なんだ。後、お酒の当てに茹でたソーセージも出すし。美味しいんだよ、このお店のお肉。何せ、スイーツブルグ侯爵家御用達だから。侯爵家の執事さんが教えてくれたんだ」


「えっ? ハルカさん、侯爵家と知り合いなんですか?!」


 今度は僕が侯爵家と知り合いな事に驚く彼方。そりゃ一応、庶民の僕が貴族と知り合いなんだから。


「うん、まぁ、ふとした事から知り合ってね。色々と良くして貰っているよ」


「ハルカさんって、凄いんですね」


 心底、感心したらしい彼方。なんだか照れくさいな。


「それほどでもないよ。それじゃ、おじさん。お勘定をお願いします」


 僕は店のご主人に代金を支払う。


「はい、毎度あり! また、来てくれよ!」


 ご主人からお肉入りの袋と3種類のソーセージ入りの袋を受けとる。量が量だけにずっしり重い。見かねたらしく、彼方が言う。


「ハルカさん、重いでしょう? 私がどっちか持ちます」


「それなら大丈夫だよ。ほら」


 僕は亜空間収納で2つの袋をしまう。突然、袋が消えて驚く彼方。


「えっ? 袋が消えた!」


「亜空間収納で別の空間にしまったんだ。ナナさんから最初の方で教わった魔法なんだけど、便利だよ」


「うわ~、本当に便利な魔法ですね~。私も教わりたいな。でも、ハルカさん。そんな魔法が有ったら、万引きとかやり放題じゃないですか?」


 亜空間収納魔法の便利さに感心する一方で、悪用の恐れも指摘する彼方。やっぱり鋭いなぁ。


「大抵のお店じゃ、魔法による不正を探知するセンサーを設置しているから。ま、それを破りにかかる連中もいるけど。不正を働く輩と阻止する側。これは古今東西、変わらないね」


「世界が違っても人間のする事は同じって事ですか」


「そういう事。さ、次はすき焼きに使う野菜を買いに行くよ」


「凄い量になりそう……」


 買ったお肉の量から、早くもげんなりした顔の彼方。


「ほら、そんな顔しないで。全てはパーティーの為だよ」


「そうですね、分かりました」


「分かってくれれば良いよ。それじゃ、行こう」


 さ、次は八百屋さんへ行こう。野菜嫌いのナナさんにはお肉と野菜を合わせた料理じゃないとね。







 彼方side


 ハルカさんと2人、商店街を歩いて買い物。本来なら、色々買い込んだせいで両手がふさがるどころか、持ちきれない所だけど、ハルカさんの亜空間収納魔法で別の空間に収納する事で解決。おかげで私達2人共、手ぶらで歩ける。いや、魔法って本当に便利。そして……。


「こんにちは! ハルカちゃん!」


「ハルカちゃん、これ、ウチの新商品なんだけど、味見してくれないかい?」


「ハルカちゃん、良い品が入ったんだ。見ていかないか?」


 いや、ハルカさん、大人気。商店街を歩いていると、色々な人達が声をかけてくる。また、ハルカさんも無視せず、一つ一つ丁寧に受け答えしている。ハルカさんは本当に良く出来た人だなぁ。


『本当にハル兄にそっくり』


 ハル兄もその可愛い外見と優しく礼儀正しい性格で、地元の人気者だった。こんな風に商店街ではいつも皆から声をかけられては、一つ一つに丁寧に受け答えしていた。こうしてハルカさんと一緒に歩いていると、ハル兄と一緒に買い物に行った事を思い出す。


「どうかしたの? ぼーっとして。もしかして、疲れた?」


「あ、いえ、別に」


 つい、考え事をしてしまい、ハルカさんに心配されてしまった。やっぱりハルカさんはハル兄の生まれ変わりだと思う。いくらなんでも、似過ぎているし。でも、本人は認めない。どうしたら……。その時、ふと閃いた。


『認めないなら、認めざるを得ない様にすれば良い』

 

 いくら問い詰めてもダメなら、攻め方を変えれば良い。大丈夫、『妹』である私なら、出来る。本当にハルカさんがハル兄ならば、間違いなく有効。後は、いつ実行するかだけ。







 ハルカside


 商店街での買い物を無事、済ませて帰宅。買ってきた食材を手早くしまう。そろそろお昼だし、ナナさんを呼んでお昼ご飯にしないと。


「ちょっと待っててね。ナナさんを呼んで、お昼ご飯にするから」


「分かりました」


 彼方にそう言い、ナナさんの部屋へ。実際は他にも目的が有るんだけど。







「ナナさん、失礼します」


 部屋のドアをノックしてから、一言告げてナナさんの部屋に入る。


「ん? どうしたんだい、ハルカ」


 椅子に座って自分の机に向かい何やら作業をしながら答えるナナさん。その手元には黒百合を象ったブローチ。ちゃんと調べていてくれたみたい。


「そろそろお昼ご飯ですよ。下に降りてきてください」


「おや、もうそんな時間かい? 分かったよ。ん~~、ずっと座っていたもんだから、身体中がバキバキだよ」


 椅子から立ち上がり大きく伸びをするナナさん。


「で、ナナさん。そのブローチについて何か分かりましたか?」


 僕は特に気になる事を尋ねる。彼方が元の世界に帰れるかどうかが、かかっているし。


「悪いけど、まだ完全には解明出来てないよ。だが、ある程度の事は分かった。このブローチは特定の世界同士を繋ぐ『門』を生み出す物さ。しかも、わざわざ、私の屋敷に送り込まれる様に設定されていたよ」


「えっ? それじゃ、彼方がこの世界に来たのは、偶然ではないと?」


 驚く僕にナナさんは話を続ける。


「その通り。明らかに仕組まれた事さ。誰が、なぜ、こんな事を仕組んだのかは分からないけど。ただ、少なくとも、彼方を殺す気は無かったと思うよ。もし殺す気なら、どこかの危険地帯なり、次元の狭間にでも飛ばすだろう。私なら、そうする」


 今回の事件が何者かによって仕組まれた事であると言うナナさん。一体、何の為に? でも、それは分からない。続いて次の話題に移す。


「それとナナさん、彼方の事をみんなに伝えてもらえましたか? 下手に僕の事を話されると困りますから」


「安心しな、その辺は既に伝えてあるよ。余計な事は言うなってね」


「良かった。ありがとうございます、ナナさん」


 するとナナさんは少し悲しげな顔をする。


「ハルカ。無理するんじゃないよ。私はあんたの保護者だからね。いつでも頼って良いんだよ」


「ナナさん……」


 彼方に本当の事を言いたいのに言えない。その事は本当に辛い。でも、我慢しなくちゃ。天之川 遥はもう死んだのだから。僕はハルカ・アマノガワなんだから。


「大丈夫です。それじゃ、一緒に下に行きましょう」


 こうして、僕とナナさんはダイニングに向かうのでした。







 彼方side


「それでは、いただきます」


「「いただきます」」


 ハルカさん、ナナさん、私の3人でお昼ご飯。ハルカさんがいただきますを言い、私とナナさんが続く。メニューは朝に引き続き、ご飯。そこに野菜と買ってきたソーセージ4本を合わせたソテー。ポタージュスープ。今回も美味しそう。まずはソーセージを。


「美味しい!」


 ありきたりなセリフだけど、まさにそうとしか言い様がない。いわゆる粗びきのソーセージなんだけど、一口食べただけで旨味が口一杯に広がる。こんな美味しいソーセージは初めて。するとハルカさんが微笑みながら私を見ていた。


「言ったでしょ? あのお店のお肉は美味しいって。僕も初めて食べた時はあまりの美味しさにびっくりしたよ。さすがはスイーツブルグ侯爵家御用達のお店だって。それとナナさん、僕のソーセージを取らないでください」


「チッ! バレたか」


 私とハルカさんが話している隙にソーセージを横取りしようとしていたナナさんが舌打ちする。


「ナナさん、横取りしなくても、夕方からのパーティーでソーセージをたくさん茹でて出しますから」


「本当かい、ハルカ?!」


 ハルカさんにそう言われて目を輝かせるナナさん。そこまでお肉が好きですか。


「はい。メインのすき焼きの他にも色々作ります。楽しみにしていてくださいね」


 にこやかに夕方のパーティーについて話すハルカさん。対するナナさん、もう楽しみで仕方ないと言った様子。


「あ~~、早く夕方にならないかねぇ。今日は飲むよ~、食うよ~」


「ほどほどにしてくださいね。後で困るのは、僕なんですから」


 ナナさんの発言にやれやれといった感じで苦笑するハルカさん。そういえば、今日のパーティーに来るお客さんについて聞いていなかった事に気付いた。私は本来、この場にいないイレギュラーだ。お客さんが私と会って何かトラブルが起きてはいけない。ハルカさんやナナさんに迷惑がかかってしまう。ここは聞いておかないと。


「ハルカさん、聞きたい事が有るんですけど」


「何?」


「今日のパーティーに来るお客さん達についてなんですけど。どんな人達かなと思って。ほら、私は予定外の存在ですから。迷惑にならないかなと……」


 不安に思っている事を打ち明ける。すると、ハルカさんはこう言ってくれた。


「大丈夫だよ。みんな良い人だから。そんな事より、パーティーを楽しむ方が大事だよ」


「……ありがとうございます」


 ハルカさんの優しい言葉に救われる思いがした。ハルカさんがこう言うなら、大丈夫。


「全く、つまらない事を気にするんじゃないよ。ガキはぐだぐだ言わずに楽しく騒げば良いんだよ。せっかくのパーティーがシラケるだろ」


 ナナさんも言葉は悪いながらも、励ましてくれる。


「ナナさんもありがとうございます」


「ふん、私は湿っぽいのが嫌いなだけさ」


 そっぽを向きながら、ソーセージを食べるナナさん。……あ! 私のソーセージが減ってる!


「ナナさん、それ私のソーセージ!」


「悪いね、食べる気が無いのかと思ってさ」


 しまった、油断した。この人、食い意地が張りすぎ。


「もう! ナナさん、そういういやしい真似をしないでください! ごめんなさい、彼方さん。代わりに僕のソーセージをあげるから」


 ハルカさんが申し訳なさそうに謝りながら、自分のお皿からソーセージを分けてくれた。


「あ、別にそんなつもりじゃ……」


 私は遠慮しようとするけど、ハルカさんはさっさと私のお皿へ自分のソーセージを移してしまう。


「さ、どうぞ」


 そう言って勧めてくれるものの、さすがに申し訳ない。そうだ!


 私はソーセージを半分に割ってハルカさんのお皿へ返す。


「半分こにしましょう。よく、ハル兄やクー姉とこうやって分けあったんです」


 するとハルカさん、なんだか申し訳なさそうな、そしてどこか懐かしそうな顔をした。


「……ありがとう。それじゃ、お言葉に甘えるね」


 こうして、2人でソーセージを半分こにして食べる。ナナさんが、羨ましそうな顔で見ていたけれど、スルー。そもそも、ナナさんが私のソーセージを横取りしたのが悪いんだし。






 さて、お昼ご飯を済ませ、ナナさんは再び自分の部屋へ。ハルカさんと私は使った食器を洗って片付ける。そして、食後のお茶を堪能中。


「あの、ハルカさん。さっきも聞きましたけど、今日のパーティーに来るお客さん達はどういう人達なんですか? もちろん、ハルカさんが良い人達と保証はしてくれましたけど」


 私は改めて、パーティーのお客さん達についてハルカさんに尋ねる。


「そうだね、詳しい事を話していなかったね。今日来るお客さんは五人。スイーツブルグ侯爵家のご令嬢のミルフィーユさんと執事のエスプレッソさん。ナナさんと同格の魔女のクローネさん、ファムさん。最後にパティシエの安国さん。ちなみに安国さんが今日のパーティーの為にケーキを作って持って来てくれるんだ。安国さんは、大陸一と評判のパティシエでね、お手製のスイーツはどれも凄く美味しいんだよ」


「なんか、凄いメンバー揃いですね。侯爵家のご令嬢に執事さん。それに魔女と大陸一のパティシエって。ハルカさん、凄い人達と親しいんですね」


 ハルカさんの交友関係に驚かされる。普通、侯爵家ご令嬢とか、魔女とか、大陸一のパティシエとか、お近づきになれないでしょ。少なくとも、私は無理。


「うん、まぁ、色々合ってね。でも、みんな本当に良い人達だよ。……クセの強い人達でもあるけど」


「……あ、そうなんですか」


 ちょっと不安。すると……。


 ピンポーン♪


 呼び鈴の音。


「あれ? 誰かな? ごめん、彼方さん。僕、見てくるね」


 そう言って、席を立つハルカさん。


「あ、私も行きます」


 ハルカさん1人で行かせるのも悪いと思い、一緒に玄関へ。一体、誰だろう?





「こんにちは、ハルカ。ご機嫌麗しゅう」


「こんにちは、ハルカ嬢。お邪魔いたしております」


 ハルカさんと2人、玄関へ向かったら、そこには2人のお客さん達。1人は16~17歳ぐらいで緩やかなウェーブのかかったセミロングの鮮やかな金髪の少女。動きやすそうな服装ながらも、気品を感じる。まさにご令嬢といった感じ。


 もう1人は灰色の髪をオールバックにした、鋭い目付きの執事さん。見るからに『出来る』感じの人。


「いらっしゃい、ミルフィーユさん。エスプレッソさん。ずいぶん、お早いですね。パーティーは夕方からですけど」


 どうやら、今日のパーティーのお客さん達らしい。でも、いくらなんでも早すぎない? まだお昼を廻った所なんだけど。すると、執事さんが答える。


「いえ、本日のパーティーですが、お招きに預かるばかりで、全ての準備をハルカ嬢お一人に押し付けるのは、いかがなものかと思いまして。それに、どうせナナ殿は何の役にも立ちませんしな。及ばずながら、この不肖、エスプレッソ、お手伝いに参上した次第。ちなみにミルフィーユお嬢様は単にパーティーが待ちきれなかっただけにございます。全く、子供でいらっしゃる」


 丁寧な口調ながらも平然と毒を吐く執事さん。一方、ご令嬢の方は顔を真っ赤にして怒る。


「お黙りなさい! エスプレッソ!」


「おや? 何か間違った事を申し上げましたかな? 今日は朝からそわそわなさっておられたではありませんか」


「う~~、本当に、嫌な性格ですわね……」


 執事さんにやり込められて悔しそうなご令嬢、いや、ミルフィーユさんと呼ぼう。見かねたのか、ハルカさんがなだめる。


「まぁまぁ、ミルフィーユさん、落ち着いて。それより上がってください。とりあえずお茶を用意しますから」


 ハルカさんがそう言った所へまた、お客さん。


「こんにちは、ハルカ。時間にはまだ早いが、来させてもらった」


「ハルカちゃん、こんにちは~♪ そこでみんな一緒になってさ」


「よう! メイドの嬢ちゃん。パーティーにはまだ早いが邪魔するぜ。あぁ、それとケーキを持って来たからな」


 これまた、個性的な人達。宝〇歌劇団の男役みたいなスーツ姿のカッコいい女性に、Tシャツ、ジーパン姿のセミロングの赤毛の女性。そして、見事なツルピカのスキンヘッドにサングラスのマッチョな大男。何、この人?! 凄い身体なんですけど! 岩盤みたいなゴツい身体に丸太みたいな手足。 肉弾派のヤ〇ザ?


 私が驚いていると、ハルカさんは新しく来た3人に挨拶をする。


「いらっしゃい。クローネさん。ファムさん。安国さん」


 えっ? このマッチョな人もお客さんなの? ……どうやら、私が考えていた以上に今日のパーティーのお客さん達は個性的みたいです。




彼方が作中で言っていましたが、この異世界の文明は、元の世界にかなり近いです。ネットやスマホが有りますし。まぁ、そのおかげでハルカもわりと早く異世界に馴染めたのですが。もし、これがよく有りがちな中世ヨーロッパ風の異世界だったら、ハルカもたまったものではなかったでしょう。あくまでも、ハルカはただの高校一年生なのですから。


さて、彼方はハルカ=ハル兄との確信を深め、何かを企んでいます。『認めないなら、認めざるを得ない様にすると』


そして、異世界メンバー達が登場。彼方とどう絡むのか?


最後に、彼方が異世界に来たのは、偶然にあらず。何者かによって仕組まれた事。誰が? なぜ? その答えはまだ先。


では、また次回。




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