第62話 彼方
「ふぅ、明日はクリスマスイブか……」
今日は12月23日。先日、二学期が終わり、今は冬休みの最中。カレンダーを見ながら1人呟く私。
「去年のクリスマスイブが懐かしいな」
思い返すは、1年前のクリスマスイブ。家族4人揃って過ごした。でも、それはもう叶わない。
私の目の前に飾られている1枚の写真。そこには1人の可愛い女の子、もとい少年が写っている。何だか恥ずかしそうな、でも優しい微笑みを浮かべた顔。
「ハル兄……」
私はその人の名を呼ぶ。もう二度と会えない、兄の名を。
私の名は、天之川 彼方。中学2年生。10年前に父親の刹那を亡くし、以来、母親の永遠、姉の久遠、兄の遥と私の4人暮らしを続けてきた。
父さんはいないものの、人気作家だった父さんはかなりの遺産を遺してくれたし、母さんもバリバリのキャリアウーマンなので、生活に困る事は無かった。唯一の難といえば、母さん、クー姉、私と女3人、揃って家事が苦手な事だけど、そこはハル兄が見事にカバーしてくれた。本当にハル兄様々。
ハル兄は基本的に穏やかで優しくて、礼儀正しい、頑張り屋の働き者。しかも小柄で美少女と見間違えられる程の可愛い顔立ち。おかげで周りの人達からとても好かれていた。ハル兄は自覚が無かったみたいだけど、女子からの人気は凄かった。ついでに言うと男子からもモテていたけど……。まぁ、それはそれとして、私にとってハル兄は自慢の兄だった。母さんが仕事で忙しく留守がちなものの、家族4人での暮らしは幸せだった。
あの日、4月10日までは……。
あの日の事は今でも覚えている。リビングでテレビを見ていたら、ハル兄が出かける準備をしていた。で、私はハル兄に声をかけた。
「あれ? ハル兄、どこ行くの?」
「ちょっと夕飯の買い物に。今日は夕方からスーパーで特売をするから」
「ふーん。ハル兄って、そういう所、本当にマメだね。下手な主婦より主婦らしいよね。私、思うんだけど、もし神様がいるなら、ハル兄の性別を間違えてこの世に送り出したんじゃないかな?」
私がそう言うと、さすがのハル兄もカチンときたらしい。
「彼方、そういう事言うと今日の夕飯、ピーマン料理にするよ」
家事全般を取り仕切っている事を盾に取って、嫌な事を言い出した。まずい、ハル兄は普段は優しい分、怒ると怖い。やると言ったら本当にやる。
「ゴメン、ハル兄。冗談だってば」
「まぁ、いいけど。それじゃ行ってくるね。そんなに遅くはならないから」
「うん、分かった。行ってらっしゃい」
こうして買い物に出かけたハル兄。この時、私は思いもしなかった。まさか、これがハル兄と言葉を交わした、ハル兄の元気な姿を見た最後になるなんて。
「遅いねぇ。遥ったら、どこで道草食ってるのよ……」
「クー姉、お腹が空いてイラつくのは分かるけど、ちょっと落ち着いて。でも、確かに遅いよね。ハル兄の性格からして、道草を食うとは思えないんだけど……」
ハル兄が買い物に出かけてから、既に2時間近く経っていた。ハル兄の行き付けのスーパーは歩いても片道、10分程。それにハル兄は真面目だから寄り道なんてしない。何だか悪い予感がしてきた。まさか、ハル兄に何か有ったんじゃ……。そこへ突然の電話。
「彼方、私が出る」
私の不安を読み取ったらしく、クー姉が電話に出てくれた。
「はい、天之川ですが。えっ? 警察?」
受話器を取ったクー姉の口から出た言葉『警察』。その言葉に一気に不安が増す。まさか、まさか……。
「はい、確かに天之川 遥は私の弟ですが。は? 今、何て……」
そう言ったきり、凍り付くクー姉。受話器を取り落としそうになるけど、何とかこらえる。その後も何か話を続け、やがて受話器を置いた。戻ってきたクー姉は今まで見た事の無い顔をしていた。まるで全ての感情が失われてしまったかのような。聞きたくない。悪い予感しかしない。でも、聞かなくちゃ。電話の内容を。私は恐る恐るクー姉に聞いた。
「……クー姉、今の電話は?」
するとクー姉はボソボソと言った。
「……警察から、遥が事故に遭ったって。……遥が……し…死んだ……って……」
えっ? クー姉、何言ってるの?
『ハルカガシンダ』
ゴメン、それ何語?
私はクー姉の言った言葉の意味がすぐには理解出来なかった。いや、理解したくなかった。でも、分かってしまった。
『ハル兄が死んだ』
その後、クー姉が母さんの会社に電話を掛け、母さんに連絡を取ると、私と2人で警察に向かった。ハル兄の身元確認の為に。
そして着いた警察。来るのは初めて。案内されて霊安室へ。ベッドの上には顔に白い布を被せられた誰かが横たわっていた。
「身元の確認をお願いします」
警察の人がそう言って、顔に被せられた布を取る。その瞬間まで願っていた。人違いであって欲しいと。でも現実は残酷だった。
女の子に見間違えられる可愛い顔立ち。私達がよく知っているその顔。間違いなく、ハル兄だった。
「「……………………」」
あまりのショックに私もクー姉も言葉が無かった。そんな中、沈痛な顔をしながら、警察の人が話してくれた。ハル兄が暴走車に跳ねられた事、ハル兄を殺した犯人は、何人も跳ねた挙げ句、壁に激突して死んだ事、犯人は違法薬物に手を出していた事を。
「ふざけないでよ……なんで、そんなクズのせいで遥が死ななきゃならないのよ!! 遥が何をしたっていうのよ!! あの子はあんなに周りから好かれていたのに! 私の自慢の弟なのに!!」
ハル兄の死因を聞いて、怒り狂うクー姉。私も許せない。そんな奴のせいで、ハル兄が死んだなんて。そこに新たな人影。見れば母さんだった。母さんは何も言わずハル兄へと歩み寄り、その顔を確認した。そして、たった一言。
「遥……」
それっきり、何も言わなかった。母さん、あまり感情を表に出さない人だから。でも、その身体は震え、握りしめたその手からは血が滴り落ちていた。10年前に父さんを亡くし、今度はハル兄まで。母さんの悲しみは計り知れない。
「全く……やりきれないですな。なぜ、こんな若い子が死ななければならないのか。本当に世の中は理不尽だ」
警察の人が悲しげにそう呟いた。
その後、様々な手続きを済ませ、数日後にハル兄の葬儀が行われた。ハル兄の同級生や、ご近所の皆さんが集まり、皆、ハル兄の死を悲しんでいた。特に同級生の女子の何人かはハル兄への想いを告白していたし。しかも美人ばかり。ハル兄は本当にモテていたんだね。もっとも、ハル兄は天然な上にマザコンだから、気付いてなかったと思う。
そして、現在。私はハル兄の写真に話しかける。
「ねぇハル兄、聞いて。私ね、料理が上手くなったんだよ。そりゃ、ハル兄にはまだまだ敵わないけどさ。でも、カレーやシチューはそれなりの物になったよ。それと、ハル兄が生きていた頃はわがままばっかり言ってゴメン。家事があんなに大変だなんて思わなかった。なのに、ハル兄は文句一つ言わずにいつもやってくれた。本当に凄いよハル兄は。私の自慢のお兄ちゃんだよ。だから……生きていて欲しかった……。私の料理を食べて欲しかった……」
ハル兄、亡き後、我が家は変わった。母さんは仕事に、クー姉は勉強に前にも増して打ち込む様になった。悲しい現実から目を背けるかの様に。そして、私はハル兄に代わり、家事を担当する様になった。母さん、クー姉は家事が壊滅的で、私も苦手だけど、2人よりはマシだったから。もっとも、最初の頃は失敗ばかりだった。ハル兄からは度々、料理を勉強するように言われていたけれど、めんどくさいと逃げていたから。こんな事ならハル兄からしっかり教わっておけば良かった。今更、遅いけど。
「さて、そろそろ買い物に行かなきゃ。それじゃ行ってくるね、ハル兄」
行き先はハル兄の行き付けだったスーパー。夕方の特売が始まるからね。今日は野菜とお肉の特売だっけ。だったら今日はカレーにするかな。残っても明日に回せるし。一晩寝かせたカレーは美味しいしね。
買い物用のエコバッグを手に、家を出る。
「……もし、あの時、私も一緒に買い物に行っていたら、ハル兄は死なずに済んだのかな?」
ハル兄が死んで以来、度々思う事。もし、あの時、一緒に買い物に行っていたら。もう少し、ハル兄と話をしていたら。
「やめた。いくら考えてもハル兄は帰ってこない。早く行かなきゃ。売り切れちゃう」
ぐずぐずしている場合じゃない。夕方の特売はすぐに売り切れるってハル兄が言ってたしね。私は急いでスーパーに向かった。頼むから、売り切れていませんように。
「危なかった~。もう少しで売り切れるところだった。ま、買えたし、結果オーライかな」
スーパーからの帰り道。今回の戦利品のカレーセットの入ったエコバッグを手に家に向かう。
「さ、帰って早くカレーを作らなきゃ。遅くなるとクー姉が怒るし」
今日のカレーは、ちょっと奮発してカツカレー。良い豚肉が安かったし。油を使う揚げ物も最近、出来るようになった。最初の頃は油跳ねが怖くて出来なかったんだけどね。そんな事を考えながら歩いていたら、突然、呼び止められた。
「お~い、そこのお嬢さん。ちょっといいッスか?」
「えっ?」
呼ばれた方を向いたら、そこには色々なアクセサリーを並べた露店を拡げる若い女性がいた。
「良かった~。無視しないでくれたッスね。ちょっと、ウチの商品を見ていって欲しいッス」
しまった、何だか変な人に捕まった。
「あの~、人をそんな不審者みたいな目で見ないで欲しいッス。アタシは見ての通りの露店のお姉さんッス」
「でも、確か私が買い物に行く時には、こんな所に露店は無かったけど?」
何だか胡散臭いんだよね、この人。しかも見た目も変わっているし。ショートカットの真っ白な髪と白い肌に真紅の瞳。いわゆるアルビノね。こんな目立つ人が突然、声をかけてくるなんて怪し過ぎ。タチの悪い勧誘かもしれない。
「大丈夫ッス。アタシは勧誘員じゃないッス。もう一度言うッスけど、アクセサリー売りの露店のお姉さんッス」
ちょっと、何でこの人、私の考えている事が分かるの? いよいよ、怪しい。
「悪いんですけど、急いでますから」
こういう人とは関わらないのが一番。さっさとその場を離れようとする。が、回り込まれてしまった。
「ちょっと待って欲しいッス。せめて商品を見ていって欲しいッス。安くするッス」
「……分かりました。でも、長居はしませんから」
「ありがとうッス。ささ、好きなだけ見ていって欲しいッス。気に入ったのが有れば遠慮無くどうぞッス」
何だか必死な事もあり、仕方なく、見ていく事にした。よく見たら、この女性なかなかの美人。商品のアクセサリーも洒落たデザインで、良い感じ。1つぐらいなら買っても良いかな。で、並べられたアクセサリーを見ていたら、1つ、心惹かれる物が有った。
「あ、これちょっと良いかな」
黒百合の花を象ったブローチ。花の部分は何か黒い宝石。残りは銀色の金属で出来ている。なんと言うか、並べられたアクセサリーの中で、そのブローチは格が違う気がした。
「おっ、そのブローチが気に入ったッスか? なかなかお目が高いッス。そのブローチ、ウチの商品の中で一番の目玉商品ッス」
私が気に入ったのを見て取って、ここぞとばかりに売り込んできた露店のお姉さん。確かに気に入ったけど、値段がね。値札が無いし。
「あの、これ、おいくらですか?」
とりあえず、聞いてみよう。安くしてくれるとは言っていたし。
「ふ~む。そうッスね~、100万円?」
「さよなら」
やっぱり、こんな人と関わったらダメだ。帰ろうとしたらまた、止められた。
「冗談ッス、冗談。そうッスね。500円でどうッスか?」
うわ、今度は一気に下げてきた。でも良いのかな? 私は鑑定士じゃないけれど、このブローチかなり良い品みたいだけど。
「あの、そんな値段で良いんですか?」
聞いてみたら、お姉さんは笑って答えた。
「アハハ、平気ッス。アタシは他に本業を持っているッス。この露店は単なる副業ッス。さ、気に入ったのなら、そのブローチを包むッス」
「そうですか? じゃあ頂きます。それじゃこれ」
「はい、確かに。毎度ありッス!」
お姉さんに代金を渡し、代わりにブローチの入った包みを受け取る。
「それじゃ、私はこれで」
「お買い上げ、ありがとうッス!」
ちょっと予定外だったけど、まぁ良いか。このブローチ、どれ程の物か分からないけど、デザインは気に入ったし。高い物でもないし。さ、早く帰ろう。かくして、私は露店のお姉さんと別れ、家へと向かった。
彼方が帰った後、露店。
『あ、もしもし、先輩。予定通り、対象と接触。カオルさんの作ったブローチを渡す事に成功したッス。とりあえず、おみやげに鯛焼きを買って帰るッス。カオルさんにもよろしくッス』
「さて、仕事は完了ッス。『久しぶりの地上界』もう少し楽しみたかったッスね~。でも、そう長居は出来ないのが悲しい所ッス。それじゃ、さっさと鯛焼きを買って帰るッス。全く、先輩とカオルさんがイチャイチャしまくるせいで、スイーツ関連の店が全滅したッスからね~」
「ただいま~」
「あ、彼方、遅かったじゃない。何してたのよ?」
私の声を聞いて、2階から降りてきたクー姉。少々、ご機嫌斜め。ハル兄の一件が有ってから、かなり心配性になったんだよね。
「ゴメン、クー姉、帰り道にアクセサリーの露店に寄っていたから」
「全く、心配させないでよ。それじゃ、早く夕飯にしてね」
「うん、分かった。今日はカツカレーだよ」
「へぇ、ちょっと豪華じゃない。楽しみにしてるわよ。あ、それと母さんから電話が有って、今日は事務所に泊まりだって」
「そうなんだ。じゃ、夕飯の支度をしてくるね」
クー姉と話を終えてキッチンへ。さぁ、早くトンカツとカレーを作らないとね。
「クー姉、ご飯だよ! 冷めない内に早く来て!」
「分かった、今行く」
クー姉が2階から降りてきて、席に着く。テーブルの上には2人分のカツカレーとサラダ。クー姉に続いて私も席に着く。では2人揃って。
「「いただきます」」
ハル兄、この手の礼儀作法には、やたらうるさかったからね。
「うん、また一段と腕を上げたじゃない彼方」
「まぁね。でも、まだまだハル兄には敵わないな」
「そりゃ、遥と彼方じゃ年期が違うし、何よりあの子は家事の才能が有ったしね。しかも努力家だし」
夕飯を食べながらクー姉とおしゃべり。行儀が悪いと言われるかもしれないけれど、別に良いじゃない、家族なんだから。私としては誰もしゃべらない食卓なんて気味が悪い。
「ところでクー姉、明日はクリスマスイブだけど、何か予定は有る?」
「明日? 特には無いけど」
「それじゃ、明日はちょっとごちそうを作るから手伝ってよ」
「え~、そんなの彼方がやれば良いじゃない。私、家事は苦手だし」
「クー姉、苦手だからやらないじゃ、いつまで経っても出来ないよ。これ、ハル兄からの受け売りだけどさ」
「……はいはい。私の負け。そう言われちゃやるしかないわね」
「ありがとう、クー姉。明日は母さんも帰ってくるかな?」
「多分、大丈夫だと思う。せっかくのクリスマスイブなんだからさ」
クー姉と2人、夕飯を食べながら、明日の予定を話し合う。やがて、夕飯を済ませ、クー姉は2階の自室に戻り、私は使った食器を洗い始める。あ、お風呂の準備もしないと。
……ハル兄、見てる? 私、頑張ってるよ。ハル兄にはまだまだ敵わないけれど。でも、これからももっと頑張るから。いつかハル兄もびっくりするぐらい上手くなってみせるから。
明けて、翌朝。12月24日。早朝。
「ん~~っ、良く寝た……。時間は、6時前か。とりあえず、シャワーを浴びてこよう。どうせクー姉はまだ寝てるだろうし」
ベッドから降りて浴室に向かう。今日はクリスマスイブ。今日の夕飯は何にしようかな? 去年まではハル兄が腕によりをかけたご馳走を作ってくれたっけ……。
今はもういない、ハル兄を想う。
「やめやめ! せっかくのクリスマスイブなのに朝から暗くなったら台無し。早くシャワーを浴びてこよう」
私は暗くなった気持ちを振り切って浴室に向かった。暗い顔をしていたらハル兄だって悲しむだろうし。
それから、しばらく。私はシャワーを済ませて部屋に戻ってきて、着替え中。とりあえず下着を着けた時、ふと目に付いたのが、机の上に置いた昨日買ったブローチ。私はなんとなく、それに手を伸ばす。
「う~ん、やっぱり良い品だよね。特にこの黒百合の部分。本物の宝石かな? まぁ、分からないけど、悪い買い物じゃなかったかな。さ、着替えようっと」
横着だけど、私はブローチを持ったまま、洋服の入ったクローゼットを開けた。だけどそこには洋服は無かった。代わりに有ったのは……。
『闇』
「え? ち、ちょっと、何こ……」
まるっきりの予想外の事態に反応が遅れてしまった。逃げるより早く、私はクローゼットの中の『闇』に凄い吸引力で吸い込まれてしまった……。
ナナさんの屋敷。早朝。
「やっぱり、朝のシャワーは気持ち良いな。さて、早く朝ごはんを作らないとね。ナナさんお腹が空くと機嫌が悪くなるし」
いつも通りの朝。朝のシャワーを済ませて、亜空間から取り出した下着とメイド服を身に付け、キッチンに向かおうとしたその時。
「!! これは!?」
突然、異変を感じた。場所は僕の部屋だ。即座に愛用の小太刀を抜き放ち、急行する。
部屋の前には既に、ナナさんがいた。手には愛用の魔水晶のナイフ。さすがはナナさん。非常時の反応は抜群に早い。でも、全裸はどうかと……。まぁ、ナナさんはいつも全裸で寝るから。
「ハルカ、油断するんじゃないよ。この私の屋敷に侵入者なんてまずありえない事だからね」
格好はどうあれ、真剣な顔のナナさん。それも当然、ナナさんの屋敷は何重もの防衛術式によって厳重に守られている。僕が来た事はまさに、例外中の例外だとか。そして、また侵入者。これは油断出来ない。
「はい、ナナさん」
僕もナナさんに返事をする。
「よし、それじゃ、行くよ」
「はい!」
ナナさんが合図し、まずナナさん。続いて僕が部屋に飛び込む。そして、僕は信じられない光景を見る。
「ん? 誰だい、この小娘は? ふむ、気を失っているね。しかし、何で下着姿なんだい? って、どうしたんだい、ハルカ?」
「そんな……なぜ、ここに?……彼方……」
「え? ちょっ、彼方って?!」
あまりの事態に呆然とする僕、困惑するナナさん。
だって、もう二度と会えないと思っていた妹がそこにいたから……。
ついに登場、ハルカの家族。今回はハルカの妹、彼方視点の話でした。ハルカ亡き後の家族の話をやっと出せました。
さらに、怪しい露店商のお姉さんも登場。彼女は何者なのか? 誰と連絡を取っていたのか? なぜ彼方に接触したのか? 彼女が売ったブローチは何なのか? 謎だらけです。
そして、本来ならありえない再会。ハルカと彼方。二人はどうなるのか? ナナさんはどうするのか? クリスマスイブに起きた大事件。では、また次回。