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僕と魔女さん  作者: 霧芽井
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第38話 アルカディア軍基地内での戦い

「ちぃっ! 全く、次から次へと、ゾロゾロ出てきやがる。悪いがハルカ、君も手伝え。何、殺せとは言わん。とりあえず援護してくれ」


「分かりました」


 復活したツクヨに助けられ、洗脳処置の危機から脱した僕。今はツクヨと一緒に脱出行の最中。一刻も早く、コウとイサムの二人と合流したいけれど、敵のアルカディア軍も甘くない。ツクヨの復活、僕の脱走に気付き、迎撃開始。激しい戦闘が続いていた。最初の内は僕に見学させ、自分は大技を使わず、基本的な武術で戦っていたツクヨだけど、いい加減キツくなってきたらしい。確かに、いくら倒しても新手が現れて、キリがない。


「はっ!」


 氷のクナイを複数、作り出し、敵めがけて投げ付ける。狙いは手足。刺さったクナイは瞬時に手足を凍り付かせ、攻撃と移動を封じる。


「いいぞ、ハルカ! その調子で、どんどんやれ!」


「はい! はっ! はっ!はっ!」


 僕は次々と氷クナイを作り出しては敵兵に投げ付け動きを封じる。その敵兵達を次々と倒していくツクヨ。


「全く、大した子だ。敵にはしたくないな。って、感心してる場合じゃないな。おら、死ねやぁっ!」






「ふぅ、とりあえず片付いたな。援護ありがとな。一発も外さず、正確に敵の手足を狙い撃ち。見事な投擲術だったぞ」


「ありがとうございます」


 僕のクナイ投げの腕を褒めてくれるツクヨ。


「出来れば、敵を仕留めて貰えたら、なお良かったがな」


 うっ、ダメ出しされた……。


「まぁ、良いさ。行くぞ! 既にコウとイサムも脱出した。早いとこ、合流せんとな」


「分かるんですか!?」


「まぁな。だが、あいつらも、手こずっているみたいだ。とにかく、敵の数が多いからな」


 確かに。一体、どこにこれだけの兵士がいたのか? そんな僕の疑問はお構い無しに、新手がやって来る。


「しつこい奴らだな~。しつこい奴は嫌われるぞ」


 心底、うんざりしたといった顔のツクヨ。


「全く、同感です」


 再び、戦闘体勢に入るツクヨ。僕も氷クナイを作り出し、援護体勢に入る。


「行くぞ! 必ず、4人全員揃って、帰るんだ!」


「はい!」


 来い! アルカディア軍! 僕達は必ず、全員揃って帰る!






 ザシュッ!


 後ろから拘束し、口をふさいだ状態から喉笛を切り裂き、トドメを刺す。これで、見張りのアルカディア兵は全滅だ。だが、じきに新手が来るだろう。ぐずぐずしてはいられない、さっさと用を済ませないとな。


 俺、大和 湧は公開処刑場から脱出後、ツクヨさん達との合流前に武器を調達しようと考えた。もっとも、俺の目当てはハイテク兵器の類いではない。そんな物、俺には使えない。俺の目当ては妖刀、魔剣の類いだ。ここアルカディアの連中は、科学と魔道の融合した、非常に高度な文明を持ち、異世界にさえ来る。こういう奴らは、あちこちの世界から強力な品々をかき集め、研究しているのが相場。その読みは見事、的中した。俺は様々な世界から集められた品々の保管された施設に侵入成功し、今に至る。


「さすがに頑丈な扉だな~。パスワードは聞き出せなかったし、仕方ないな」


 ヒュヒュヒュヒュッ!


 敵兵から奪ったナイフを振るう。


 ……ゴトン


 少しの間を置いて、分厚い扉の一部に人が通れるだけの四角い穴が開く。


「よし、行こう。良い刀が見付かるといいな」






 施設内に侵入した俺は、保管庫の位置を確かめ、そこへと向かった。もちろん、途中で幾度かの戦闘は有ったものの、ついに保管庫にたどり着いた。やはり頑丈な扉で塞がれているが、これも切り裂き、破る。


「こりゃ、予想以上だな……。アルカディアの奴ら、一体、どれだけの世界から、これだけの品々をかき集めてきたんだ?」


 正に圧巻の光景だった。保管庫には刀剣の類いだけでも、途方もない量が収められていた。その他を含めたら、一体、どれだけ有るんだか。そして、これだけの品々を集めた裏で一体、どれだけの犠牲者が出たのか。アルカディアの奴らめ、正義や平和の名の元、無茶苦茶な事をしやがる。


「まぁ、それはそれ。今は刀探しが最優先だ」


 ぐずぐずしてはいられない。早く、新しい刀を手に入れないと。何せ、前の刀は捕まった際に没収されたからな。さて、刀剣の類いは色々有るが、俺は日本刀が一番。勇者だった頃は、聖剣を召喚出来たが、『あの一件』で勇者の力を失い、出来なくなった。


「強い妖気を感じる。あっちか。これだけの妖気、これは期待出来るな」


 武器の放つ妖気を頼りに、行き先を決める。さすがはアルカディアの奴らが集めただけあって、素晴らしい品々ばかりだが、その中でも特に強い妖気の元へ。






「よし、これにするか」


 俺は一振りの日本刀を手に取る。この保管庫に収められた日本刀の中でも、特に強い妖気を放つ、優れた刀だ。


「でも、ハルカの『氷姫・雪姫』には及ばないか。あれは本当に良い小太刀だよな~」


 ハルカの愛刀を思い浮かべる。透き通った刀身を持つ、二本一対の小太刀。銀髪碧眼のハルカに、よく似合うんだよな。って、そんな事を考えている場合じゃない。新しい刀を手に入れたんだ、早くツクヨさん達と合流しなくちゃな!


 俺はツクヨさん達と合流すべく、保管庫を後にした。事が済んだら、また来よう。これだけの品々が有るんだ、コウが喜ぶな。何せ、お金とお金になる事が大好きだからな。おっ、さっそく敵のお出ましか。新しい刀の試し切りをさせてもらうぞ!


「せいっ!」


 気合いと共に、刀を横一文字に一閃! 生み出された真空刃が敵兵をまとめて両断する。うん、やはり良い刀だ。


「どけどけーっ! 邪魔する奴は、誰であろうと斬る!」


 敵兵を切り裂き、突き殺し、頭を叩き割り、首をへし折り、突き進む。目指すはツクヨさんの元。いや……ハルカの元。


「ハルカの元へ行くのを邪魔するなら、もっと気合いを入れて、かかって来い! その程度で、俺を止められると思うな!」


 ハルカに早く会いたい。その事に夢中になる余り、状況判断が甘くなっていた。突如、天井から発射された網に絡め取られてしまう。


「しまった! こんな手に引っ掛かるなんて!」


 逃れようともがくが、更に絡みついてくる。そこへ迫る、敵兵達。


 くそっ! うかつだった。こんな所で時間を食う訳にはいかない。こうなりゃ、奥の手……。そう思った、その時。


 突如、飛んできた紙。正確には、本のページが敵兵全員の首を跳ね、首無し死体による、真っ赤な鮮血の噴水が巻き起こる。はっきり言って、グロ過ぎる。ハルカが、この場にいなくて良かった……。そして、姿を現したのは、予想通りの相手。


「無様ですね、イサム。その程度の罠に掛かるとは」


 いつも通りの無表情で毒舌をかます、コウの姿が有った。






「助かったよ。サンキュー、コウ」


「礼なら、言葉よりも、現金か現物で頂きたいですね」


 コウに網を切って貰い、脱出した俺。礼を言うが、コウらしい返事が来た。もっとも長い付き合いだし、こういう性格だと分かっているから腹も立たない。


「行きますよ、イサム。早く、マスター達と合流しましょう」


「了解!」


 そう言って、走り出す俺とコウ。


「あぁ、そうだコウ」


「何ですか、イサム」


 走りながら、俺はコウに話しかける。


「俺、少し前に、アルカディア軍の保管庫に侵入したんだけど、あいつら、あちこちの世界から集めてきた強力な品々をたんまり貯め込んでいたぞ。ありゃ、相当な金額になるな」


「それは良い情報ですね。お手柄です、イサム。先ほどの貴方を助けた分をチャラにしてあげましょう」


 やはり無表情で、上から目線の態度のコウ。でも、喜んでいるはず。金になる話だからな。


「あっ、また新手か。本当にしつこい奴らだな」


 またしても、向こうから新手の敵兵達がやって来る。だが、もう俺は1人じゃない。


「やるぞ、コウ!」


「言われるまでもありません」


 戦闘体勢に入る俺とコウ。こんな所で殺られる訳にはいかない。俺は必ず、ハルカの元へ行く。俺がハルカを守ってみせる!





邪神ツクヨ編も随分、長くなりました。まだ、しばらくは続きます。さて今回、イサムは勇者の力を失ったと、はっきり語りました。この辺りはまだ秘密です。ではまた次回。

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