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僕と魔女さん  作者: 霧芽井
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第19話 幻のゴールデンプリン その一

「目指すは遥か南、紅蓮島。四聖獣の一角、朱雀の住処だ。ゴールデンプリンの材料には朱雀の卵が必要なんだ」


「ほう、朱雀かい。なるほど確かに、一筋縄ではいかない相手だね」


「えっと、ナナさん? 確か朱雀って、ランクSSSの魔物ですよね……」


「あぁ、そうだよ。火属性最強クラスにして、鳥系の頂点に立つ魔物さ。厳密に言えば、精霊なんだけどね。火の精霊王。今のあんたじゃ勝ち目は無いね。ま、私なら楽勝だけど」


 流石はナナさん。やっぱり強いんだね。ちなみにランクと一口に言っても実は幅が有る。例えば、ギリギリでランクSもいれば、ランクSSに近いランクSもいる。そして最高のランクSSSは一定の基準を超えれば全てランクSSS。伝説の魔女のナナさんの場合、ぶっちぎりのランクSSSとなる。すなわち、同じランクSSSと言っても朱雀よりナナさんの方が強いんだ。


 しかし、とんでもない食材が必要なんだね、ゴールデンプリン。これはぜひとも食べたいね。






 翌日、紅蓮島に向けて出発。


 普通ならナナさんの空間転移魔法で一瞬なんだけど、紅蓮島は四聖獣、朱雀の住処だけあって、辺り一帯に朱雀の魔力が満ちていて、空間転移を邪魔されるんだって。


「私1人ならともかく、他の奴らも一緒だと流石に面倒でね」


「すまねぇな、魔女の姐さん」


「別に構わないさ。とりあえず、近くの街まで転移して情報を集めてから、紅蓮島に行くよ」


「はい、ナナさん」


「しかし、ハルカがプリンを食べたいと言っただけで紅蓮島に向かうとは、随分甘くなったな、ナナ」


「うるさいよ、クローネ。大体、何であんたが付いて来てるんだい? 呼んでないよ」


「我の勝手だ」


 そう、今回の冒険に三大魔女の1人、死霊術師にして呪術師のクローネさんが付いて来た。


 僕達が安国さんと話をしていたら、クローネさんが店に来たんだ。実はクローネさんは甘党で僕とは同じ甘党同士、情報交換をしていて、この店の事も話していた。で、クローネさん、店主の安国さんを一目で気に入って、今回の冒険について来た。クローネさん、たくましい男が好きだから。


 まぁ、僕としては強い味方が増えるのは助かるね。なんといっても、ナナさんと並び称される大魔女だからね。






「ねぇ、安国さん。ゴールデンプリンについて、もっと詳しい話を聞かせて下さい。味とか、見た目とか」


「その事なんだがな、肝心のレシピ帳のその部分のページが無かったんだ。何者かにちぎり取られたらしくてな」


「ちょっとハゲ! あんた、そんないい加減な話を私達に持ちかけたのかい!?」


 確かに。味や見た目も分からないあやふやな情報で僕達に話を持ちかけられるのは困る。


「それは謝る。だがな、俺もパティシエの端くれ。古代の幻のスイーツとやら、何としてもこの手で作ってみてぇ。頼む、この通りだ!」


 そう言って僕達に頭を下げる安国さん。ここまでされたら流石に断りづらい。


「ナナ、ハルカ、安国がここまで言っているんだ。引き受けてやろうではないか。それにハルカにとっても良い修行になるだろう」


「ふん! あんたこそ自分好みのタイプだからって随分甘いじゃないかクローネ。ま、確かに紅蓮島はハルカにとっても良い修行の場になるね」


「どういう事ですか、ナナさん?」


「行けば分かるよ」


 僕の質問に答えてくれないナナさん。紅蓮島、一体どんな場所なんだろう?


「おう、そろそろ出発するぞ。頼むぜ、魔女の姐さん!」


「分かったよ、それじゃ行くよ!」


 シュン!


 ナナさんの空間転移魔法が発動し、僕達は遥か南、紅蓮島を沖合いに望む港町へと移動した。






 到着したのは南国情緒溢れる、港町。


 ちなみに此処は僕達の住む王国ではない。異国の地だ。僕達は早速、入国手続きを済ませる。ナナさんやクローネさんはめんどくさがっていたけど、そのままじゃ不法入国だからね。


「まったく、ハルカは頭が固いね。わざわざ入国手続きなんかしなくても良いじゃないか」


「まぁ仕方あるまい。確かにハルカの言う通り、そのままでは不法入国。余計なトラブルは避けるべきだな」


「そうですよ、ナナさん。トラブルに巻き込まれたらどうするんですか?」


「はいはい、私が悪かったよ」


 ふてくされるナナさん。


「それじゃ、姐さん達にメイドの嬢ちゃん。まずは宿を取ろうや。いきなり紅蓮島に行くのはマズい。とりあえず、情報収集をした上で、対策を練ろう」


「そうだね、まずは宿を取るかい。この辺りは南国料理が名物だし、楽しみだね」


「酒も旨いしな」


「あの~、ナナさん? クローネさん? 僕達、遊びに来たんじゃないですけど……」


「まぁ、そう固い事言うな、メイドの嬢ちゃん。お前さんもせっかく南国に来たんだ。楽しみな。急いては事を仕損じるってな、ガーッハッハッハ!」


 豪快に笑う安国さん。う~ん、こんなノリで良いのかなぁ? まぁ良いか、せっかく南国に来たんだ、僕も楽しもう。あっ、向こうの屋台で美味しそうな料理を売ってる!


「すみません、1つ下さい!」






 その夜


 僕達は、とある宿屋兼、酒場兼、食堂に宿を取った。やっぱり港町だけあって、船乗りの人が多いね。それだけならまだ良いんだけど、問題は酒が入っている事。つまりは……。


「よう、そこの姐さん、別嬪さんじゃねぇか! 俺と一緒に飲まねぇか? それに良い乳してんじゃねぇか! 一発ヤらせてくれよ、ゲハハハ!」


「そっちのメイドちゃん、おじさんと遊ばない? なぁに、金は有るぜ、金ならよ! いくらだい?」


 そう、酔っ払いの連中に絡まれまくってます。


 あ~、もう! 鬱陶しいなぁ! とはいえ、暴力はいけないし。


 相手は普通の人間だからね。下手すると殺しかねない。ナナさん、抑えて下さい! ナナさんがキレたら大変な事になりますから!


 既にナナさんはキレかけています。正にレッドゾーン。何せナナさんは男が嫌いだからね。何とかしないと!


「うるさいよ、この……」


 遂にナナさんがキレようとしたその時。


「うるせぇな、酒が不味くなるだろ! とっとと失せろ!」


 安国さんがキレました。ってマズいよ、騒ぎを起こしちゃ!


「なんだ、このハゲ! やんのかコラ!」


「誰がハゲだ! 上等だ、やってやらぁ!」


「ちょっと、ダメですって! 安国さん!」


「おい、よせ安国!」


 僕と比較的冷静だったクローネさんが止めるも、もう遅かった……。


 安国さんは店の酔っ払い連中と大乱闘を起こし、結局、しょっ引かれました。やれやれ……。






 翌朝


「すまねぇ、迷惑かけちまって……」


「もう、ダメですよ、暴力沙汰は」


 番所(元の世界の交番に当たる)で安国さんの身柄を引き取った僕達。


 幸い、大したお咎めは無かった。元々、港町だけに、喧嘩騒ぎはしょっちゅうらしい。さて、本格的に紅蓮島に関する情報を集めないとね。


「それじゃ、手分けして紅蓮島に関する情報を集めるよ。昼になったら宿に集合。良いね?」


「おう」


「分かりました」


「承知した」


 かくして僕達四人は手分けして、港町で情報収集しようとしたその時。


「大変だ~~~っ! 大海蛇が出たぞ~~~っ!」


 何やら港の方から、血相を変えたおじさんが大声で叫びながら走ってくる。


 周りの人達も、騒いでいる。


「何てこった! 当分、海に出られねぇぞ!」


「軍に出動を依頼しても、いつになるか……」


 何だか、かなり大事らしい。僕達も困る。紅蓮島に行くには船に乗らないと。ちなみにクローネさんが幽霊船を呼べば良いと言っていたけど却下。






「あの、ナナさん。大海蛇ってやっぱり大きな海蛇なんですか?」


「そんな甘いもんじゃないよ。亜竜族の一種さ。バカでかい上に、水を操る魔力を持つ、ランクAAAの魔物だよ。あちこちの海をさまよっていてね、時々悪さをするのさ」


 ランクAAAか。超一流の実力者か、重武装の軍隊でも連れて来ないと、相手にならないね。となると、次の展開は……。


「ハルカ、あんた、バカでかい蛇公、ぶち殺してきな! 邪魔だし」


 はい、予想通り。






 さて、港町の人達を困らせるランクAAAの巨大魔物、大海蛇を退治する事になった僕。


 それにしても、なんだかゲームみたいだなぁ……。


 主人公達が何処かに行こうとすると、何らかの障害が発生してクリアしない限り先に進めない。


 海で魔物が暴れて船を出せないなんて、本当に有りがちだよね。


 まぁ、ぐだぐだ言っても始まらない。


「良いかい、出来るだけ原型を留めて仕留めるんだよ!」


「大海蛇は捨てる所が無いからな」


「頑張れよ、メイドの嬢ちゃん!」


「分かりました。出来るだけ努力してみます。それじゃ、行ってきます!」


 いざ、大海蛇退治に出撃!




古代の幻のスイーツ、ゴールデンプリン食べたさ(ハルカが)に始まった、この話。はてさて、どうなる事か?

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