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僕と魔女さん  作者: 霧芽井
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第1話 メイドのある一日

「うん、思った通り良く似合ってる。可愛いよ」


 そう言って、ニヤニヤ笑うナナさん。


 確かに僕も良く似合ってると思う。姿見には銀髪、碧眼、16~17歳ぐらいの美少女メイドの姿が映っていた。


 サラサラの長い銀髪、美しい青い瞳、透き通る様な白い肌、大き過ぎず、小さ過ぎない胸、スラリとした手足。


 どこの美少女ゲームのヒロイン?


 そう言いたくなる、極上の美少女だった。ただ一つの問題を除けば。


 それは、この美少女が僕だという事……。





 事故死した僕は自称、神の少女に転生させられ、来た先が異世界の魔女の屋敷だった。


 そして、異世界で他に行く当ての無い僕は屋敷の主の『名無しの魔女』ことナナさんに頼み込んで、雇って貰う事になった。


 仕事内容はメイドとして、家事全般や、各種雑用をこなす事。家事全般は得意だし、問題無いと思う。





「せっかく私が褒めてやってるんだ。もっと喜んだらどうだい?」


 ナナさんは本当に愉快そうに言う。そりゃ愉快でしょうね、貴女は!


 対する僕は、複雑。目の前の姿見に映る美少女メイドが、自分だと思うと……。出来れば、前世でお近付きになりたかったです。


 おまけに、ナナさんは着替え中もずっと僕に付きっきり。確かに僕は元、男だから女物の下着や服の着方は分からない。


 それを教えるという事であったけど、教えがてら色々セクハラされました……。


 さすがに、貞操を奪う様な酷い事はされなかったけれど、耳たぶを甘噛みされたり、首筋に息を吹き掛けられたり、胸を揉まれたり……。精神面で大ダメージを受けました……。





 次なる問題はキッチンで発覚。食材が全く無い!


 ナナさんが言うには、遥か太古より生き続け、あらゆる魔法を極め、不老不死を得たので、食事を摂る必要が無いとの事。


 いや、貴女は良くても僕が困ります。僕は不死じゃない。食事を摂らないと餓死してしまう!


 そう言ったらナナさんは、パック入りのゼリーを出してきた。特製の完全栄養食だから、これを食べていれば問題無いと。この人、完全に食事をナメてる。


 僕はナナさんに断固抗議し、ちゃんと食材を置く様、話を付けた。僕は16歳の成長期なんだ。毎食パック入りゼリーなんて、絶対嫌だ!





 更なる問題は、ナナさん自身。


 ナナさんはアニメ、マンガ、ゲーム、小説といった類いが大好きなオタク。不老不死な上、その気になれば睡眠すら不要との事で、1ヶ月ぐらいはぶっ続けでゲームをプレイする事も有るとか。筋金入りです、この人……。


 ちなみに僕が転生してきた時も、絶賛ゲームプレイ中だったとの事。


 ゲームプレイ中、突然背後から強い魔力の発動を感じ、振り返ったら僕がベッドの上に現れたそうだ。全裸で……。


 ナナさんは、


「私も長生きしてるが、流石に素っ裸の娘が突然現れるとは思わなかったよ」


 と言っていました。


 うん、僕も事故死して、美少女に転生した上、全裸で魔女の屋敷に飛ばされるなんて思わなかったよ……。


 ちなみにナナさんは、僕が意識を失っている内に、僕の身体を色々調べたそうだ。ナナさんが僕の身体に合うサイズの下着やメイド服を用意出来たのもそのおかげ。


 サイズさえわかれば、下着や衣服を作るぐらい朝飯前と言っていたけど、酷いよ……。


 でも、ナナさんは悪い人ではないと思う。色々セクハラはされたけど、越えてはいけない一線は越えなかった。僕が意識を失っていた時も、あくまで、身体の状態やサイズ等を調べただけで、貞操は奪っていないと言っていた。


 意識の無い相手の貞操を奪ったら、最低だけど……。


 後、意識を失っている間の調査で、僕は不老で有る事、あらゆる面において高い才能を持つ事がわかった。特に魔力が高いとの事。


 ナナさんは、


「魔力はランクS、その他の才能もランクAAA。あんたは優秀な魔女になれるよ」


 と言っていました。


 ちなみにナナさんは、あまりにも強過ぎて計測不能だそうです……。





 そして、今。


 僕がナナさんの屋敷に来て、10日目の朝。向かうはナナさんの部屋。


 コンコン


 ドアをノックするけど返事無し。


 ここへ来て10日になるけど、本当にナナさんは朝が弱い。一度も朝、自分で起きてきた事が無い。


 だからこそ、僕が起こすんだけど、ナナさんて全裸で寝るんだよね……。


 最初に起こしに行った時は目のやり場に困ったよ。でも、3日もしたら慣れてしまった。あまりにも恥じらいが無いし、僕自身が女になったせいか、気にならなくなった。元、男としては複雑な気分だけど。


「ナナさん! 朝ですよ、起きて下さい!」


「ん~~、もう少し寝かせておくれよ……」


「ダメです! さっさと起きて下さい!」


 毎朝、僕とナナさんはこんなやり取りを繰り返す。僕の気分は子供を起こす、お母さん。僕の方が年下だけど。





 やっとの事でナナさんを起こすと、僕はキッチンへ向かう。


 僕とナナさん、2人分の朝食を作る。今朝は、ご飯、焼き魚、味噌汁、野菜のおひたし。


 異世界の食材を使っての料理だから、最初の頃はナナさんに借りた料理本を読みながら簡単な物しか作れなかったけど、今ではすっかり慣れた。


 後、異世界なのに僕の元いた世界と名前の共通する食材が有る。名前だけでなく、見た目や味もそっくりだ。種類は違うのに。代表格は米。調味料も醤油、味噌等が有る。不思議だね。





 ナナさんと向かいあって、朝食中。


「今日の朝飯も美味いねぇ」


 ナナさんはそう言って、褒めてくれる。


 僕としても喜んでもらえて嬉しい。作った甲斐が有るよ。


 朝食が済んだら、食器を洗って片付けて、洗濯に掃除。朝は本当に忙しい。ちなみにナナさんは、食事を済ませると自室に戻ってゲーム。





 洗濯機に洗い物を入れてスイッチ、オン。


 ナナさん特製の洗濯機は本当に便利。洗い物の種類分けも洗剤も要らない。水を入れ、洗い物を投入して蓋を閉めたらスイッチを押すだけ。後は全自動でやってくれる。


 その後も、ベッドの片付けや掃除等。でも苦にはならない。前世の時からやっていたしね。





 朝の仕事が終わって、リビングで一息つく。


 緑茶が美味しいねぇ……。この世界にも緑茶が有る。元の世界とは種類が違うけど、味はそっくり。緑茶派の僕にはありがたい。紅茶等も有るそうだ。本当に不思議な異世界だね。


 その時、


『ハルカ、仕事は片付いたのかい?』


 ナナさんからの念話だ。


「あ、はい。朝の仕事は片付きました」


 僕は普通に返事する。


『そうかい、じゃあ私の部屋においで。勝負するよ』


「わかりました。すぐ行きます」


 最近のナナさんはマ〇オカートに良く似たゲームにハマッている。そして僕は対戦相手として付き合わされている。この手のゲームは対戦相手がいた方が盛り上がるけど、ナナさんって負けを認めないからなぁ……。





「う~、悔しい! こんな小娘に負けるなんて!」


 今回も僕に負けて悔しがるナナさん。勝負の世界は非情なのだ。


 後、小娘と言わないで欲しい。事実、今の僕は女だけど、グサグサ言葉が胸に刺さります……。


 さて、お昼になったし昼食を作らないと。





 昼食を済ませたら、午後の仕事。


 それが済んだら、午後5時まで、ナナさん直々の魔法や武術の稽古。ナナさん容赦無いです……。





 稽古が済んだら一息ついて、夕食の準備。


 夕食が済んだら、お風呂を沸かす。


「ナナさん、お風呂沸きましたよ!」


『わかった、今行くよ』


 ナナさんにお風呂が沸いた事を伝えると、念話で返事が来た。


 一番風呂は基本的にナナさん。屋敷の主だからね。





 ナナさんがお風呂から上がったら、次は僕。


「ふ~、良いお湯だなぁ~」


 やっぱりお風呂は良いね。正に命の洗濯だよ。


 ちなみに、初日の夜に、ナナさんが女のお風呂の入り方、髪や身体の洗い方を教えてくれた。男と違って繊細にするようにとの事。セクハラもされたけどね……。





 お風呂から上がって、パジャマに着替えたら、自室へ。


 後は寝るまで自由時間。僕はナナさんが貸してくれた色々な本を読む。この異世界に関する知識を身に付ける為に。


「よし、今日はここまで」


 時計を見たら、午後11時を廻っていた。洗面所に行って歯磨きを済ませたら、自室に戻ってベッドに入る。僕の今日、一日もこれで終了。


「おやすみなさい」


 僕はそう言うと目を閉じた。





こんな良くできた美少女メイドが自分の所に来たら、最高ですね。ウチにも来て欲しい…。

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