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僕と魔女さん  作者: 霧芽井
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第18話 凄腕パティシエ登場

 僕達が王都に引っ越して来て数日。


 今日はナナさんと一緒にお出かけ。何でも大陸一と評判のパティシエがこの度、王都に店を構えたんだって。甘いお菓子が大好きな僕としては見逃せないね。それに大陸一と評判のパティシエの実力も気になるし。きっとお菓子作りの参考になるだろう。


「しかし、あんたもマメだねぇ。わざわざ新しい店を見に行こうだなんて。私は菓子より酒だけどね」


「文句有るなら今後、3時のおやつを作りませんよ」


「ごめん! 私が悪かった!」






 で、当のお店に到着。店の名前は「スイーツ ヤスクニ」さて、どんなお店かな~?


 ガチャ、カランカラン。


 ドアを開けるとベルが鳴り響く。


 お店の中は色々な美味しそうなお菓子が並んでいて、甘い香りが漂っている。まぁそれは良いよ、スイーツのお店なんだから。問題はお店の中にいた男。


 スキンヘッドにサングラスの強面。その上、凄い筋肉。何なのこの人!?驚いているとその男が口を開いた。


「あ? 客か? 客ならさっさと何か買いやがれ! でなけりゃ帰れ!」


 どう見ても店主じゃない、ヤクザだ!


「大変ですナナさん! このお店、ヤクザに乗っ取られてます!」


「ちょっとあんた! 何、ヤクザが店に居座っているんだい!? 店主はどこだい!?」


「きっとこのヤクザが山に埋めたか、海に沈めたんですよ、ナナさん!」


「ハルカ、警務騎士団呼びな!」


 僕とナナさんは大騒ぎ! だってスイーツのお店に強面のヤクザがいるなんて思わなかったし!


 するとヤクザが怒った。


「誰がヤクザだ! 人聞きの悪い事言うな! 俺はこの店の店主だ!」


 えっ? 店主? 嘘臭いな~。


 僕もナナさんも疑惑の目をヤクザに向ける。


「あ? その目は信じてねーな! だったら証拠を見せてやる、ほら!」


 そう言ってヤクザは書類を出してきた。それはお店の営業許可証。そこには確かにこのヤクザの写真が写っている。


「ナナさん、これ本物ですか?」


「間違いなく本物だね。ということは、このハゲヤクザ、本当に店主らしいね」


「誰がハゲヤクザだ!」






「とりあえず、自己紹介させて貰うぞ。俺の名は安国ヤスクニ マコト。この店の主人でパティシエだ」


「私はナナ。魔女さ」


「僕はハルカ・アマノガワと言います。ナナさんに仕えるメイド兼、弟子です」


「おう、あんたらが最近、巷で評判の黒髪魔女と銀髪メイドか。滅法、強いらしいな」


「そう言うあんたもかなり出来るね」


「まぁな。俺はより旨いスイーツを作るべく、材料を求めて世界中を廻ってきたからな」


 どこかの漫画のキャラみたいな人だな。とはいえ、それならばこの凄い筋肉も納得。だが、ナナさんが更に話を続ける。


「へ~、材料を求めて世界中をね。だがそれだけじゃないね。あんた、異界人だね」


 えっ? 安国さんが異界人?


「鋭いな。流石は魔女ってところか」


「まぁね。ハルカ、あんたもさっさと気付きな! 全く、未熟者だねぇ」


 すみませんね! 未熟者で!






 ナナさんが安国さんを一目で異界人と見抜いた事に気を良くした安国さんは僕達にケーキをご馳走してくれた。大陸一のパティシエと評判だけあって、本当に美味しい! こんなに美味しいケーキは食べた事が無いよ!


「旨いか? メイドの嬢ちゃん」


「はい! 凄く美味しいです! こんなに美味しいケーキは初めてです!」


「ふん! まぁ、悪くないね」


「そりゃそうだろう。何せ俺が命懸けで集めてきた材料をふんだんに使い、天才パティシエの俺が作ったんだからな!」


 安国さんは元の世界で天才パティシエの名を欲しいままにし、世界パティシエ選手権で最年少優勝を果たしたんだって。凄いな~! でも何が有ってこっちの世界に来たのかな? 後、いつ頃来たのかな?


「あの、安国さん。聞いても良いですか?」


「何だ、メイドの嬢ちゃん?」


「えっと、安国さんは何が有ってこっちの世界に来たんですか? 後、いつ頃来たんですか?」


「その事か。俺がこっちに来たのは10年前。別に好き好んで来た訳じゃねぇ。ある晩、一杯引っかけて家に帰る途中、いきなり落とし穴みたいなもんにストーンと落っこちて、気付けばこっちにいた。正直焦ったが、こっちにも人間が住んでるし、何故か言葉も通じるし、帰り方が分からん以上、こっちでやっていこうと決めた。その後、色々有って今に至る訳だ」


 10年間に何が有ったかは知らないけど、こうして店を開けたのは、やはり凄いと思う。


「ハゲ、あんたに聞くけど、あんたこっちに来た時、どんな場所に出た?」


「ハゲ言うな! 俺がこっちに来た時は牧場の干し草の山に落ちた。おかげで無傷で済んだ。後で知ったが、相当ラッキーだったらしいな」


「どういう事ですか、ナナさん?」


 僕はナナさんに質問する。


「ハルカ、異界人ってのは異世界に来た際、どこに出るか決まっていないんだよ。運良く安全な場所に出れば良いけど、運が悪いと、とんでもない場所に出るんだ。砂漠や密林のど真ん中とか、更に酷いと遥か上空とか、地中とか、深海とか。つまりせっかく異世界に来てもすぐに死ぬ場合が多いのさ」


 うわ……、悲惨だ……。異世界トリップも甘くないね……。






「ごちそうさまでした。安国さん、ありがとうございます」


「見た目ヤクザのくせに、なかなか良い腕してるじゃないか」


「見た目ヤクザで悪かったな! まぁ、それはそれとして、あんたらを腕利きと見込んで頼みが有る」


「何だい、ハゲ? つまらない事なら聞かないよ」


「ナナさん、失礼ですよ!」


「ありがとよ、メイドの嬢ちゃん。頼みってのはな。実は俺は前々から研究していたスイーツが有るんだ。その名はゴールデンプリン。遥か昔の古代王国のシェフが作った幻のスイーツなんだと。俺は食材の他に古代のレシピも探していてな。やっとレシピ帳を見つけて解読し、食材を突き止めたんだが、最後の食材の入手が非常に困難なんだ。そこでだ、是非ともあんたらの力を貸して欲しい。もちろんタダとは言わねぇ。報酬は支払う、更にゴールデンプリンを真っ先に食わせてやる。どうだ?」


「ふん! 悪いけど私は甘い物にそれほど興味無くてね……」


 クイクイッ


「何だい、ハルカ?」


「僕、ゴールデンプリン食べたいです!」


「ハゲ! すぐに出発するよ! ぐずぐずするんじゃないよ!」


「魔女の姐さん、あんた分かりやすいキャラしてんな……」


「では、安国さん。詳しい話を聞かせて下さい」


「おう、それじゃ奥に来てくれ、詳しい話をするからよ」


 かくして始まった、古代の幻のスイーツ、ゴールデンプリンの最後の食材を求めての冒険。どうなる事やら。




新キャラ、凄腕パティシエの安国ヤスクニ マコト登場。


お菓子作りの腕はハルカ以上の凄腕。世界パティシエ選手権で最年少優勝を果たした程ですから。


ちなみにこの人、俺の最初の作品の登場キャラの転生したキャラだったりします。


彼の前世を知りたければ、彼の名前を全て音読みした上で、俺の最初の作品、魔女(元、30歳男)の異世界奮戦記(笑)を読めば分かります。


ちなみに安国さんに前世の記憶は有りません。それが本来の輪廻転生。ハルカの様な前世の記憶や人格を持つ転生者の方こそ、はっきり言って邪道。

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