表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と魔女さん  作者: 霧芽井
17/175

第16話 神との再会

 月日が流れるのは早いもの。僕、天之川 遥が事故死、異世界に転生してハルカ・アマノガワとなって半年。季節は秋、10月になりました。






 ザァァァァァ……。


 今や、日課となった朝のシャワー。男だった頃は顔と髪を洗うぐらいだったんだけどね。


「女の身体になって半年か……。最初の頃は、恥ずかしくて自分の身体を直視出来なかったけど、すっかり慣れたなぁ……」


 本当に自分の適応力に驚く。女になった事もそうだけど、異世界に一人飛ばされ、それでもパニックを起こさず適応している事に。魔法や魔物が存在するのにね……。


「さて、シャワーはこれぐらいにして、朝ごはんを作ってナナさんを起こさないと」


 今朝も僕は平常運転。






 洗面所で髪と身体を拭いて、空中から取り出した下着を身につける。続いてメイド服を着る。いつもの僕の服装だ。女物の下着や服にも慣れた。洗面所の鏡には銀髪碧眼のメイドが映っている。何度見ても、極上の美少女だ。これが恋愛ゲームなら間違い無く、メインヒロインだね。惜しむらくは、これが僕だって事……。






「ナナさん、朝ですよ、起きて下さい! ナナさんってば!」


「うるさいね~~、もう少し寝させておくれよ……」


 毎朝恒例の僕とナナさんのやり取り。さて、今朝はどうやって起こすかな? また上から氷水を降らせようか? でも、いい加減飽きたな。そうだ!


「僕、今からエスプレッソさんとデートしてきます」


「ふざけんじゃないよーーーーっ!!」


 よし、起きた。






「ハルカ、あんた最近、えげつない事を言うようになったね……」


「毎朝、ナナさんがすんなり起きないからでしょう」


 現在、朝ごはんの真っ最中。ちなみに僕は朝はご飯派。メニューは定番のご飯、味噌汁、だし巻き卵、おひたし。特にだし巻き卵は自信が有るよ。


「それにしても、あんたの最近の成長ぶりには驚かされるよ。料理を始め、どんどん腕を上げてるね」


「ありがとうございます」


 そう、ナナさんの言うように、最近の僕は急成長している。厳密には能力面でね。





 そもそもの始まりは、ある夜見た夢。僕達が海から帰ってきた数日後の事だった。


「あれ? 此処は……」


 気がつけば妙な場所に僕はいた。辺り一面、真っ白な広大な空間。そして僕はこの場所に見覚えが有った。


「確か此処は、僕が事故死した後、来た場所だ」


 と、いうことは恐らくあの子もいる筈。そう思っていたら、声がした。


「久しぶりだな、天之川 遥。いや、今はハルカ・アマノガワだったな」


 声の主は思った通りの人物だった。見た目は7~8歳ぐらいの金髪縦ロールの少女。僕を転生させた張本人。自称、神。






「えぇ、久しぶりですね。自称、神」


 僕は正直、この自称、神の少女が嫌い。何せ僕に何も意見を言わせず、一方的に転生させたからだ。そりゃ、非常に容姿端麗で優秀な身体にしてくれた事はありがたいけど、女にされた事はね……。


「自称、神とは失礼な奴だな。私は正真正銘、神だ。しかも最高神が一柱、死神だ」


 凄い事を言ったぞ。この子は正真正銘の神。しかも最高神の一柱、死神? 世間一般の死神のイメージとかけ離れているなぁ。






 まぁ、それはそれとして、死神が僕に何の用だろう? まさか、死ねって言うんじゃ?そんなの嫌だ! せっかく転生したのに! せっかくナナさんやミルフィーユさんと知り合えたのに!


 だが死神の言った事は違った。


「安心しろ、別にお前に死ねと言いに来た訳ではない。様子を見に来た。ふむ、上手くいった様だな。精神的にも肉体的にも魔力的にも安定しているな」


 その言葉に何やら不穏な物を感じ取る僕。まるで僕を実験動物の様な……。


「あの、死神様。貴女、僕に何かしたんですか?」


 念の為、聞いてみる。すると。


「いかにも。私は転生者を使って色々な実験をしている。最近は転生者に死んだ神や魔王の肉体を与えている。正確には死んだ神や魔王の肉体データを元に創った肉体だがな。ちなみにお前には、太古の魔王『魔氷女王』のデータを元に創った肉体を与えた。お前がやたら優秀で、氷系を得意とするのはそのせいだ。『魔氷女王』は魔王の中でも最高位の1人だからな」


 涼しい顔で恐ろしい事を言う死神。


「なんて事をするんですか! 貴女それでも神ですか! 最高神の一柱ですか!」


 今の僕が魔王のデータを元に創られた存在なんて……。


「ふん、私の勝手だ。転生させて貰ったくせに文句を言うな。しかも最高クラスの肉体を与えてやったんだ。むしろ感謝しろ」


「くっ……」


 悔しいけど、転生させて貰えなかったら、あの時に僕の人生は終わっていた。しかも確かに今の僕の身体は非常に優秀、容姿端麗。何より、転生させて貰えなかったら、僕はナナさんやミルフィーユさんと出会えなかった。






「さて、本題に入ろう。今回、お前に接触したのは先ほど言った様に様子見だ。そしてもう1つ。お前に新たな力を与えてやる為だ。まぁ、お前が転生者として安定していればという前提条件は有ったがな」


「ということは、僕に新たな力を与えると」


「そうだ。お前は私の予想以上に上手くいって、安定しているからな。実はお前が初めての成功だ。今までの奴らは皆、不安定な失敗作ばかりだったぞ。全員、悲惨な最期を遂げた」


 またしても、恐ろしい事を言う死神。ぶっちゃけ邪神じゃないかな……?


「ではお前に新たな力を与えてやる。正確には『魔氷女王』の力を引き出す。その力は2つ。1つは『絶対凍結眼(アブソリュート・フリーズ)』見るだけであらゆる存在を瞬時に凍らせる。もう1つは『魔氷女王化(クィーンモード)』一時的に『魔氷女王』になり、全ての能力が飛躍的に上昇する」


 恐るべき能力だ。でも当然、リスクが有るはず。強力な能力ほどリスクもまた大きい。僕はナナさんから、その事を教えられた。






「凄い能力ですけど、当然それ相応のリスクが有るんでしょう?」


「その通り。どちらも膨大な魔力、精神力、生命力を消費する。多用すれば、例えお前でも死ぬ」


 やっぱり……。


「使い方は簡単だ。念ずるだけで良い。後はお前次第だ。では、さらばだ」


 そう言うと死神は消えてしまい、僕も急速に真っ白な空間から遠ざかっていった。そして気付けば、自室のベッドの上。夢だったと知る。


 でも、単なる夢でなかったのも確か。何故なら『魔氷女王化(クィーンモード)』が出来たからね……。


 夢で死神に言われた通り、魔氷女王化と念じたら、僕の服装が瞬時に純白のドレスに変わり、同時に自分の力が飛躍的に上昇したのが分かった。その時、突然乱暴に部屋のドアが開かれ、血相を変えたナナさんが飛び込んで来た!


「何事だい!って、ハルカ、あんたその格好は……?」


「えっと、その、とりあえず説明しますから……」


魔氷女王化(クィーンモード)』を解除して説明を始める僕。確かに死神の言うように、飛躍的に能力上昇するけど消耗も激しい。多用は出来ないね。もう1つの『絶対凍結眼(アブソリュート・フリーズ)』もね。






「そうかい、夢にあんたを転生させた神が出てきたのかい」


「はい。最高神の一柱、死神って言っていました。そして僕に太古の魔王、魔氷女王のデータを元に創った身体を与えたと。全ては実験らしいです」


「ふん! だから私は神って奴らが嫌いなんだ。いつも好き勝手しやがって! とはいえ、あんたを私の元に寄越した事には感謝しなきゃね。恐らく、あんたの指導役として私を選んだんだろう。並みの奴らじゃ、あんたの指導は無理だからね」


 確かに。ナナさん程の実力者じゃないと転生者である僕の指導なんて無理だね。その点では、あの死神はきっちり仕事をしているね。






「とりあえずハルカ。あんたの新しい力、無闇に使うんじゃないよ。負担が大きいし、何より極めて希少な能力だ。狙われるよ。あんたの力を利用しよう、奪い取ろう、解剖して研究しようってね」


「分かりました。確かに負担が大きいですし、狙われるのは嫌です」


「それが利口だね。正直、あんたが私のメイド兼弟子でなければ解剖して研究しているところさ」


「ナナさん!」


「大丈夫だって、しないから」


 ナナさん、今、僕本当に怖かったですよ……。






 変化は他にも有ったよ。正確には進化、成長かな。ただし、僕ではなくて僕の武器、二本一対の短剣「氷姫・雪姫」がね。


 死神から新しい力を与えられたその夜。「氷姫・雪姫」から声が聞こえたんだ。正確には念話。いや驚いたよ! ナナさんから高位のアイテムは意思を持ち、話し掛けてくる事が有ると聞いてはいたけどね。


「氷姫・雪姫」が言うには、極上の僕の魔力を吸い続けた結果、進化するとの事。その為に鞘から抜いて欲しいと。鞘は短剣の力を封じる封印だからね。


 言われた通り、鞘から抜くと「氷姫・雪姫」に変化が起きた。刀身が変形していく。長さも少し伸びる。


「氷姫・雪姫」は最初の両刃の直剣から片刃の反りの有る曲剣。要は日本刀、正確には小太刀に進化した。正直、直剣って鞘から抜きにくいんだよね。それに、日本刀は最強の刃物と言われているし。後でナナさんに見せたら驚いていたよ。ついでに愚痴られたけど。新しい鞘を作らなきゃって……。






 僕の夢はナナさんに一人前のメイドになったと認められる事。この世界のメイドや執事は単に主人に仕えるだけでなく、魔法や武術の腕も要求されるから、強くなるのは良い事。


 でも最近、僕は怖いんだよね。あまりにも急激に強くなっていく事が……。


 死神も言っていたけど、神や魔王の身体を与えられた転生者達は皆、悲惨な最期を遂げたと。


 きっと自分の力に驕り昂り、破滅したんだろう。






 そして僕にとって最大の悩み、それは……。


 深夜、僕の部屋。


「フフ……、ハルカ、じっくり可愛がってあげるからね」


「やめて下さい、ナナさん!」


「あんたが本心から嫌がっているならしないさ」


「…………!」


「いい加減、素直になりなよ。あんただって気持ち良い事は好きだろ?」


「そんな事ありません!」


「へ~、その割りにはいつも良い声で鳴いてくれるよね~。それに此処も準備OKみたいだし」


 ナナさんは僕の下半身の事を指摘する。それに対して反論出来ない僕。


「ハルカ、私はあんたを愛してるんだ。私はあんたに気持ち良くなって欲しいんだ。だから二人で楽しもう? 安心しな、無理矢理あんたの初めてを頂く気は無いから。それはあんたが自分からお願いしてくるまで、待つから」


「そんなお願い、絶対しません! 僕は元、男なんです!」


「そのやせ我慢、いつまで持つかね~?」


 ナナさんはそう言うと、僕にあれこれ仕掛けてきた。情けないけど、本当に気持ち良い。身体が熱くなり、頭がぼーっとしてくる。


「私の可愛いハルカ。誰にも渡さない。あんたは私の物だ……」


 朦朧とした意識の中、ナナさんの声が聞こえた……。






 数時間後


「あ~、楽しかった!」


「う~……」


 結局、今回もナナさんに良い様に弄ばれてしまった僕。本当に情けない……。


「そんな顔するんじゃないよ、可愛い顔が台無しだよ」


「ナナさんのせいです!」


「はいはい、悪かったね。でも、まんざらでもなさそうだったよね」


「そんなことは……」


「まぁ、良いさ。時間はたっぷり有るからね。じっくり、百合の良さを分からせてあげるよ」


 そう言ってニヤニヤ笑うナナさん。怖いです……。


「あの、ナナさん」


「何だい?」


「お願いですから、この事はミルフィーユさんに言わないで下さい」


「ふん! 何を言うかと思えば、下らないね!」


「お願いですから! 僕、ミルフィーユさんに嫌われたくないんです!」


「随分とあの小娘にご執心だね。まさかあの小娘に惚れたとか言わないだろうね?」


「ミルフィーユさんは……、僕にとって、この世界で初めての友達ですから」


「友達か、そうかい。まぁ良いさ、秘密にしてあげるよ」


「ありがとうございます。ナナさん」


「ハルカ、これだけは覚えておきな。あんたは私のメイド兼、弟子だ。誰にも渡さない!」


 有無を言わせない迫力で断言するナナさん。この迫力、正に伝説の「名無しの魔女」だ。


「それじゃ、おやすみ。ハルカ」


 そう言って帰って行ったナナさん。






 この世界に来て半年。色々有りました。悩みも色々有るけど、これから先、何が有るか分からないけど、それでも僕は生きて行きます。




久しぶりに神登場。プロローグ以来です。次回は割りと大きな変化を書く予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ