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僕と魔女さん  作者: 霧芽井
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第156話 武神問答 中編

『最強になって、一体、何をするのですか?』とな。いやはや、長生きはするものじゃ。この武神に対し、そんな事を言ったのは、お主が初めてじゃ。中々、やるではないか。さて、問答を続けるかのう。


「そりゃ、あれじゃ。ハーレムやら、成り上がりやら、無双やらするに決まっとるじゃろうが」


 ここは敢えて、阿呆共の定番を言う。事実、あの阿呆共は、口を開けば、ハーレム、成り上がり、無双、この手の事しか言わん。対して、お主は何を語る? ハルカ・アマノガワよ。


「確かに武神様の仰る通りです。大抵の輩はそうでしょうね。でも、僕は思うのです。それらにどれ程の意味が、価値が有るのか? と。そもそも、それらの事は、わざわざ最強にならねば出来ない事なんでしょうか? 最強になってまで、する程の事なんでしょうか? 別に最強をならなくても十分、可能と思いますが。実に安っぽく、くだらないと僕は思います。武神様はどう思われますか?」


 敢えて、阿呆共の定番を答えた儂に対し、それらにどれ程の意味が、価値が有るのか? と返してきおった。更に、それらの事は最強にならねば出来ぬ事か? 最強になってまで、する程の事か? 別に最強とならなくとも、十分、可能であろうと。そして、それらを実に安っぽく、くだらないと切り捨ておった。


 挙げ句、儂に対し、どう思うかと聞いてきた。……この娘、若いが侮れん。儂を、この武神を試すか。ならば、こちらも相応の対応をせねばな。


「確かにのう。それらの事は、わざわざ最強にならずとも、十分に可能じゃ。最強になってまでする事がその程度では、其奴の程度も知れるのう。いやはや、浅はかじゃ」


「やはり、武神様もそう思われますか。流石は武の求道者たる武神様だけに、含蓄の有るお言葉です」


 言葉遣いは丁寧じゃが、阿呆共の事は心底、見下しとるな。ま、ゴミに掛ける慈悲は無いという点では、儂も同感じゃ。






 ここで娘は一旦、茶を飲み、喉を潤して、また語り始める。


「それにです。そんなものは『真の最強』とは言えません。そういう意味では、真十二柱でさえ『真の最強』とは言えないのです」


「ほう、『真の最強』とな。しかも、我等、真十二柱でさえ、『真の最強』ではない、と」


「はい。大変、失礼ながら、僕が考える『真の最強』には真十二柱といえど、当てはまりません。非常に近くはありますが……」


 興味深い事を言い出したぞ、この娘。『真の最強』とな。しかも、我等、真十二柱でさえ、それには当てはまらんとな。


「ならば、問おう。『真の最強』とは何じゃ? 答えよ」


「『真の最強』。それは、()()()()()()()()()()()()()。これに他なりません」


『真の最強』とは何か? という儂の問いに対する、答え。


『自分以外の全ての存在の抹消』


 ……なるほどのう。では、その心は何か、聞こうかのう。


「何故、そう考える? 答えよ」


「武神様程の方なら、とっくにお気付きでしょう。自分以外の存在が有る限り、誰かが自分を上回る可能性が有ります。フィクションを例えにして申し訳有りませんが、漫画や、小説なんかの定番です。次々とより強い敵が現れる。逆説的にこの世に自分だけになれば、その者こそ、唯一絶対の最強となります。もっとも、そんな最強に何の意味も価値も無いと思いますが。まぁ、若輩者の戯言です」


 ふむ、確かに。暴論ではあるが、真理でもある。自身以外の他者有る限り、其奴が唯一絶対の最強と断言は出来ん。故に、自身以外の全てを滅ぼせば、其奴が唯一絶対の最強じゃ。


 ()()()()()()()()()()()()()()


「お主、魔剣聖の事を知って、言っておるな」


「はい。まさか、本当にやった方がいるとは驚きました。流石は真十二柱 序列三位。その称号に相応しい実力を持つお方です」


 真十二柱 序列三位 魔剣聖。最強の剣士にして、武力においては儂をも上回る、武の頂点。


 此奴にとって、基本的に全ては無意味。無価値。よって抹消するという考え方でのう。その考えに基づき、己のいた世界を完全に滅ぼした過去を持つ。今はそこを拠点にしておるが、酷い所でのう。


 何も無い。一切、何も無い。完全なる虚無じゃ。魔剣聖が自身以外の一切合切、全て滅ぼした。全ては消えた。並大抵の者では、その絶対の虚無に耐えられん。良くて発狂、でなければ、死ぬ。


 その世界において、魔剣聖は最強じゃ。何せ、魔剣聖以外、誰もいない。何も無いからの。しかし、それに何の意味が、価値が有るのか? ま、魔剣聖はそんな事、気にも留めんがの。全ては無意味、無価値という考え方故な。






「武神様。僭越ながら、僕からも質問する事、お許し願います。せっかく、全ての神魔の頂点、真十二柱がおいでになられたのです。是非とも聞いてみたい事が有りまして」


 ほほう。今度は儂に対して質問をしたいと言い出したぞ、この娘。


「良かろう、許す。言ってみよ」


 とりあえず、許可を出す。果たして何を聞きたいのか? 儂としても、興味深いのう。


「非常にくだらない内容だとは思いますが、最近流行りの異世界転生物の中でも、これまたよく有る、『ゲームや小説の世界』に行くという物ですが、()()()()()()()()()()()()()()


 ……本人もくだらない内容と言っとるが、確かにくだらない内容じゃのう。ま、答えてやるか。


「あぁ、その事か。わざわざ儂に聞かねばならぬ程の事か? サイキョー、サイキョーと煩い阿呆共ならともかく、その程度、分からぬお主ではあるまい。ま、聞かれた以上は答えてやるわい。()()()()()()()()()()


「あぁ、やはりそうなんですね。予想はしていましたが。ありがとうございます、武神様」


 ふん、分かっていて聞くとはな。ま、分からん方が阿呆なんじゃが。


「僕はその手の作品を見る度に、それは無いと思っていました。単に異世界に行くなら、まだ可能性も有るでしょう。しかし、ゲームや小説の世界となると話は別。それらはフィクション。架空の物語。そんな世界に行ける訳がありません。()()()()()()()()()()


「よく分かっておるようで結構」


 正にその通り。最近、流行りの異世界転生物の中でも、架空の物語の世界に行く奴じゃが、それは出来ん。所詮は架空の物語。実在せぬ、虚構に過ぎん。そして、実在せぬ世界に行くなど、断じて不可能じゃ。原作知識が云々とか言う阿呆がいるが、残念じゃったな。そんな事は出来ん。


「儂も暇で暇で仕方ない時に、暇つぶし程度に読むがな。主人公を名乗る資格の無い、見下げ果てたクズばかりじゃな。とにかく、自己正当化と、周囲への責任転嫁、他責思考の権化ばかりじゃ」


「武神様もそう思われますか。先日読んだ、パーティーからの追放物も酷かったです。追放されてから、最強にって奴でしたが、そもそも、散々、他のメンバーの足を引っ張っていたから追放されたんです。何より、命懸けの冒険をする世界において、バカばかりのパーティーなら、すぐに全滅して、この世からいなくなります。これは我が師の言葉ですが、『性格と実力は関係ない』だそうで」


「当たり前じゃ。性格と実力に関係は無い。そんな事も分からぬ奴が阿呆なだけじゃ。そして、阿呆、無能は駆逐されるのが世の理じゃ。それの何が悪い?」


 どうも、この手の作品は、主人公を認めぬ輩は全て無能とするが、世の中、そんなに都合良く出来てはおらん。娘が指摘した様に、命懸けの世界では、無能な連中はすぐに死んでいなくなる。生き残っている時点で、少なくとも無能ではない。命懸けの実戦。そこに性格の良し悪しの入る余地は無いのじゃ。生き残った者が全てじゃ。







「続けての質問、よろしいでしょうか?」


「構わぬ、言うが良い」


「魔道師と剣士、どちらが優れていると思われますか?」


 また、妙な事を言い出したぞ。……絶対、分かって言っておるな。答えてはやるが。


「そんな物に優劣は無い。状況による。そうとしか言えんな。わざわざ優劣を付けたがるのは、いわゆるマウント取りに躍起になっている阿呆だけじゃ」


 魔法と武術。そこに優劣は無い。どちらも一長一短。状況による。使い分けや、協力が肝心じゃ。阿呆共は、とにかくマウント取りとやらをしたがるがのう。


「ですよね。魔法も剣術も一長一短。それぞれ良し悪しが有る。これまた先日読んだ作品ですが、魔法が持て囃される世界で古の剣士が、エリート魔道師を育成する学園で無双するとかいう奴が有りまして。その中で古の剣士が、剣を生み出し攻撃するエリート魔道師に対し、生み出された剣を手にして逆転勝利するというシーンが有ったのですが……。はっきり言って、それは無いと思いまして。あまりにも魔道師が間抜け過ぎて」


「同感じゃな。その手の『創造魔法』の使い手が、自らの生み出した武器を敵に逆に利用される可能性を考えぬ訳が無い。必ず、対策を施す。例えば、自分以外が触れたら、毒に侵されるとかが定番じゃな」


「僕も同じ立場なら、対策します。自分の生み出した武器で殺られるなんて、間抜けでしかないので。そして、そんな間抜けがエリート魔道師の訳ないじゃないですか。典型的な主人公上げ、敵下げと、呆れました。剣士を見下す魔道師達に対し、今度は剣士が魔道師を見下す。結局、両者のやっている事に、何の違いも無い」


「ま、フィクション故な。そんなくだらん対立を起こす奴など、阿呆じゃ。実戦でそんな事をしていたら、死ぬぞ。さっきも言うたが、魔法と武術に優劣は無い。生き残る事が肝心じゃ」


 結局の所、魔法だろうが、武術だろうが、勝てば良い。生き残れば良い。そこに優劣は無い。くだらんマウント取りは、死期を早めるだけじゃ。頭の良い奴は、もっと要領良くやるわい。……この娘の様にな。






「さて、くだらない質問はこの辺にします。武神様には、大変失礼をした事、平にご容赦願います。その上で、本命の質問をしたく存じます」


 ふん、くだらん前置きは終わりにして、いよいよ本命か。何を言い出すのやら?


「その程度でガタガタ言わんわ。それより、さっさと本命の質問とやらをするが良い」


「では、お言葉に甘えて。武神様、僕は真十二柱の存在を知って以来、ずっと疑問に思っていた事が有ります。多元宇宙の抑止力たる真十二柱。にも関わらず、何故、宇宙の害悪でしかない、なろう系転生者(最低最悪のクズ)の存在を許しているのか? あんな連中、生かしておいても、百害あって一利無し。事実、あの連中の抹殺に忙しいと、序列十二位の邪神ツクヨが溢しておりました。真十二柱の力を持ってすれば、あんなゴミ共など、一掃出来るはず。何故ですか? お答え下さい、武神様!」


 ……これが、この娘の聞きたかった本命か。一気に言い切りおったな。此奴もあのクズ共には相当、頭に来ておる様じゃな。最後はかなりの怒気を含んどったぞ。これは、きちんと答えてやらんとな。


「まぁ、そう怒るな。ちゃんと説明してやるわい。じゃが、その前に……茶、お代わりじゃ。温くなってしもうたわい」


 長話をしていたせいで、せっかくの美味い茶が温くなってしもうたわい。娘の方も自分の落ち度に気付いて、慌てて、新しい茶を注ぐ。


「これは大変申し訳有りません、武神様! つい、話に夢中になってしまい……。何卒、お許しを!」


「まぁ、仕方ないのう。この程度の事は許す。さて、先程の問いに答えてやるわい」


 娘が新しく淹れた緑茶を啜る。……しかし、美味い茶を淹れるな。うちの不肖の弟子(竜胆)の淹れる茶は不味くていかん。この前なんぞ、茶に毒を盛ってきおった。全く、師に対する敬意が足りんぞ、糞餓鬼が。ともあれ、問いに答えてやるか。






「我等、真十二柱が、なろう系転生者(最低最悪のクズ)を一掃せん理由。それはひとえに、あんな阿呆共でも使い道が有るからじゃ。と言っても、下級神魔の様に自らの強化の為ではないぞ。もっと大きな理由じゃ。全ては多元宇宙の存続の為じゃ」


 我等、真十二柱が阿呆共を一掃せん理由。それが多元宇宙存続の為と聞いて、流石の娘も驚きを隠せん様子。それでも、すぐに気を取り直し、質問してきた。


「恐れながら、武神様。それはどういう事なのでしょうか?」


 まぁ、当然、聞くわな。あんな阿呆共の存在が、何故、多元宇宙の存続に関係有るのかと。


「そう焦るでない。ちゃんと説明してやるわい。しかし、お主は優秀じゃが、やはり、まだまだ若いのう。考えが浅い。阿呆だから役に立たんと、決め付けてはいかん。お主は阿呆共を『百害あって一利無し』と言うたがの。こうも言うじゃろ?『馬鹿と鋏は使いよう』とな。さっきも言うたが、阿呆共にも使い道が有るのじゃ」


「ですから、その使い道とやらを説明して下さい」


 やれやれ、若い奴はせっかちでいかんのう。


「阿呆共の使い道。それは、どういう事か、順を追って説明しよう」


 儂の説明に、静かに聞く姿勢を取る娘。うむ、実に素直で良いのう。それに引き換え、うちの不肖の弟子は……。っと、いかんいかん。今は説明じゃ。


「罪人の魂は死後、地獄行きとなり、生前の悪行の報いを受ける。しかし、それが済めば、新しく生まれ変わる事が許される。この辺は既に知っておろう」


「はい。昔から言われていますし」


「うむ。だがのう、地獄行きよりも重い罪が有るのじゃ。その罪を犯した者は、冥界に有る『焼却炉』行きとなる。要するに、生まれ変わる価値無し。最早、お前なんぞ要らん。焼却処分という事じゃ。これに該当するのが、『許されざる大罪』を犯した者。その大部分が『なろう系転生者』という阿呆共じゃ」


「『許されざる大罪』ですか」


 地獄行きより重い罪。地獄での贖罪からの輪廻転生すら許されず、完全に焼却処分される、『許されざる大罪』。その大罪を犯す大部分が、なろう系転生者という阿呆共。娘もどういう事か気になるらしい。続きを待っておる。


「のう、お主、不思議には思わんか? お主の師匠である『名無しの魔女』。過去にあれだけ悪行の限りを尽くしておきながら、何故、我等、真十二柱による誅殺対象にならなかったのか?」


「その事は、僕も真十二柱の存在を知って以来、疑問に思っていました。でも、師は今も健在です」


「念の為、言っておくが、我等、真十二柱の怠慢ではないからの。ちゃんと理由有っての事じゃ」


 我等、真十二柱が、阿呆共を誅殺する一方で、何故か誅殺されない、『名無しの魔女』。両者の違いは何か?


「阿呆共と、お主の師である、『名無しの魔女』の違い。それは、『界理』を侵しているか、否か。これに尽きる」


 ほんの一握りの限られた者しか知らん、世界の真理。その1つを語ってやるかのう。






「『界理』ですか」


「その様子じゃと、知っておる様じゃな。師から聞いたか?」


「はい。以前、師から聞いた事が有ります。この世には、世界を成り立たせる骨子たる『理』が有ると。その『理』を侵してはならない。それは世界の崩壊に直結する。だから、私もそれだけはしなかった、と。そして、その『理』を侵した者には、速やかに死が降り掛かる、とも」


「ふむ。お主の師。『名無しの魔女』は優秀じゃのう。『界理』の存在に気付くとはな。そして、『界理』を侵した者の辿る末路にもな。『界理』を侵すのは、断じて許されぬ大罪。その禁忌を犯した者は、我等、真十二柱が速やかに誅殺する。更に死後は冥界の焼却炉にて、焼却処分じゃ。逆に言えば、お主の師はその禁忌を犯さなかったが故に、我等に誅殺されずに済んだのじゃ。良かったのう、師が優秀で。阿呆であったなら、お主も、今ここに生きてはおるまい」


「……全くもって、仰る通りで」


 ふむ。流石は死神ヨミ。良い人選をする。自らの最高傑作たる、この娘を託すに相応しい実力者を選び、その元へと送り込んだか。優秀な師の元で、優秀な弟子が育っておる。







「さて、と。阿呆共の末路は冥界の焼却炉行き。ここまでは話した。そして、ここからが本題じゃ。何故、阿呆共の魂を焼却炉行きにするのか、じゃ。冥界は死後の世界であると同時に、新たな命を生み出す世界でもある。輪廻転生と言うじゃろ? 多元宇宙における生と死の管理。魂の循環。これが冥界の役目じゃ。中でも一番重要なのが、新たな命を生み出す事。その役目を果たしているのが冥界の焼却炉。これが生み出す熱が、新たな命の創造に繋がるのじゃ。その火を絶やす事、まかりならぬ。それは、多元宇宙の滅亡に繋がる。何せ、多元宇宙はそこに存在する命の力によって支えられておるからの。全ての命が消えたら、宇宙もまた消えるのじゃ。ちなみに、魔剣聖は、己一人で自分の宇宙を支えとるが、あれは真十二柱 序列三位たる、あやつの力と、宇宙が小さいから出来る事。お主の元いた世界の太陽系位まで削りおったからの。要らんと言ってな」


 ふぅ。一息で喋ると疲れるのう。 茶を飲んで一息付く。


「ただのう、この火を絶やさぬというのが、これまた大変でな。燃料が必要なんじゃ。それも大量のな。かつては、真十二柱 序列九位 死神ヨミがせっせと、『力』を注いでいたものじゃ。しかし、最近では別の手段を使う様になった。それが、阿呆共の魂を燃料に使う事じゃ。罪深い魂程、良く燃えるでな。正に燃料に最適なんじゃ。だから、阿呆共を根絶やしにしてはいかんのじゃ」


 これだけ長々と喋ったのも久しぶりじゃな。流石に堪えるわい。歳には勝てんな。


「なるほど。そんな理由が……。それなら納得です。あんな社会のゴミでも役に立つ、と。目から鱗が落ちるとは正にこの事。教えて頂き、ありがとうございます武神様。自らの思慮の浅さを思い知りました」


 儂の説明に納得したと。教えて頂きありがとうございますと、感謝の言葉を述べる娘。その上で自らの思慮の浅さを思い知りましたと、自らの未熟を認めた。……全く持って、出来の良い娘じゃ。もっと早く会えなかった事が悔やまれるわい。儂の元で、徹底的に鍛え上げてやったものを。そこでふと、思い出す。おっと、言い忘れる所じゃったわい。


「そもそも、転生者は2種類おる。上位転生者と、下位転生者。上位は人格、実力共に確かな、選ばれし者。もっぱら、世界の抑止力として、送り込まれる存在じゃ。その性質上、長期運用を前提としておる。それに対し、下位はいわゆる、なろう系の阿呆じゃ。最初から、使い捨て前提でのう。『界理』を侵して、燃料行きか、そうでなくとも、下級神魔の強化の為の餌として、3年経てば死ぬ様に設定されておる。ちなみにお主は上位じゃ。死神ヨミの最高傑作は伊達ではないぞ。誇るが良い」


 それを聞いて、娘は何とも言えん表情を浮かべる。色々、複雑らしいのう。いやはや、若いのう。






 さて、と。いい加減、長話にも疲れたわい。そろそろ、仕上げに掛かろうかのう。


「娘よ。お主、『力』を求めるのは、必要だからと申したな。最強には興味も関心も無いと申したな。挙げ句、最強になって何をするのですか? と儂に聞いたな」


「はい」


 儂の問いに一切の迷いも躊躇いも無く、即答する娘。


「ならば、今度は儂からお主に問おう。『お主は一体、何を目指す? 何を成す?』」


 先の問いに対するお返しじゃ。さぁ、どう答える? 最強という、魅力的な立場をあっさり否定したお主の答え、この武神に聞かせてみよ。





お待たせしました、第156話です。


武神との問答。その中で分かった、なろう系転生者とはどういう存在なのか。何故、真十二柱はこいつらを一掃しないのか。


口を開けば、チート、最強、無双、ハーレム、改革などと、浮かれている、なろう系転生者ですが、実は、下級神魔が自らの強化の為に生み出した『餌』。そして、多元宇宙存続の為の『燃料』。


調子に乗ってやり過ぎれば、真十二柱が誅殺に来る。仮に来なくても、3年後に死ぬ様に設定されている。どの道、なろう系転生者に未来は無い。約束された破滅だけが待っている。何度も言いましたが、クズは所詮、クズ。クズが夢を見るなど、笑い話にもならない。


更に追い討ち。なろう系転生者定番の、ゲーム、小説の世界に転生して、原作知識で無双。


出来ません。不可能です。


考えてみれば、当然の事。ゲーム、アニメ、小説、漫画。それらは全てフィクション。架空の物語。実在しない虚構。実在しない世界に行くなど、絶対に不可能。よって、原作知識で無双も不可能。やはり、クズは所詮、クズ。


そして、世界の骨子たる『理』。『界理』。それは真十二柱より更に上。多元宇宙の頂点に立つ、『創造主』が定めた『理』にして、世界を形造るもの。これに勝手に干渉したり、無理やり変えようとするのは非常に危険。世界崩壊に直結する。


ただし、その事を知るのは真十二柱を含め、極僅か。そして、『界理』を侵す者には死有るのみ。真十二柱が速やかに誅殺する。


そんな『界理』にちょっかいを出す愚者。それが、なろう系転生者。浅はかな欲望や、薄っぺらい正義感やらで、『界理』を侵す。無理やり世界を変えようとする。クズが『界理』に手出しをした所でろくな事にならない。世界の崩壊を招くだけ。


最後に。武神に対して、最強に興味も関心も無いと答え、逆に『最強になって、一体、何をするのですか?』と問い掛けたハルカ。それに対し、今度は武神がハルカに問う。


『お主は一体、何を目指す? 何を成す?』


対する、ハルカの答えは?


では、また次回。



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