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僕と魔女さん  作者: 霧芽井
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第145話 小蛇は新たな『扉』を開く。更にその『先』を見据える

 満月に近いが、やや欠けた月。その月の光が照らす、静かな月夜の晩。間もなく日付も変わろうとしている。そんな中、向かい合うは、銀髪碧眼のメイドの娘。


「こう見えても根に持つ性格なんです。やられっぱなしは癪に障りますからね。きっちり、やり返させてもらいました」


 …………話には聞いていたが、なるほど。見た目通りの、か弱い娘ではない、か。自分のやられた事をきっちりとやり返してきた。この真十二柱 序列三位 魔剣聖にな。永きに渡り、数多の戦を経て、一度たりとて折れなかった我が愛刀。それが、刀身の半ばから斬られた。地面には切っ先が落ちている。


「……自分の…小太刀………を…斬ら……れ…た事……に…対す……る…意趣……返し…か……」


「その通りです」


 俺の問いに悪びれもせず、言い返してくる。なかなかに食えない娘だ。とはいえ、恐れていない訳でもない、か。我が心眼は全てを見抜く。俺に対する恐怖が見て取れた。その上でなお、言ってのけたか。


「感謝します、魔剣聖様。貴方のおかげで、僕は新しい領域へと至れました。そして再確認しました。やっぱり僕はメイドなんです」


「……礼…には………及…ばん……俺は……ただ…務めを…果た…したに……過ぎん……」


 挙げ句の果てに礼を言われた。何とも複雑な気持ちだ。遥かな昔。かつて人間だった頃は、散々に利用され、罵られ、奪われ、踏みにじられるばかりで、一度たりとて、感謝もされなければ、一言の礼さえ無かった。


「貴方にとっては、そうでも、僕からすれば、とてもありがたい事です。感謝し、礼を述べるのは当然でしょう」


「……好きに……しろ……」


 少なくとも、人間だった頃には、いなかったタイプだな。まぁ、かつての環境があまりにも異常であった事は否定せんが。いずれにせよ、将来有望な逸材である事は分かった。なるほど、あの若造(邪神ツクヨ)が入れ込むのも、納得だ。一体、どこまで行くのか、俺の心眼でも読めん。正に未知だ。……故に『灰色の傀儡師』 灰崎 恭也に狙われる訳だ。








 時間を遡り、朝方。


「……しかし、いきなり、武器を壊しますか?」


「……敵の……武器…を破……壊する…のは…基本……だ……何…が……悪…い………」


 朝食の後、さっそく、軽く手合わせしてやったのだが、最初の一太刀で、小娘の小太刀を一刀両断。その事について文句を言われた。甘いな。実戦において、敵の戦力を削るのは当たり前だ。嫌なら、壊されるな。


「で……どう…する?……」


 まさか、武器を失ったぐらいで、もう戦えませんなどと、ふざけた事を言うまいな? 転生者には良くいるが。


「こうします。こういう時、自分が水系が得意で良かったと思います。魔力が続く限り、再生出来ますし」


 小娘はそう言うなり、氷の小太刀を作り出した。その程度の発想は出来るか。元より、水系はその汎用性の高さが売り。……もっとも、器用貧乏にもなりやすいがな。


「で、これからどうします?」


 今後の方針について聞いてきたか。そうだな。


「既に……言った…が……稽古……を……付け…つつ……その…上…で……お前の……メイド…と……して……の価値……を見定…め……て……やる……」


 俺はこいつを見定めねばならん。果たして、生かしておくべきか、否か。……正直、殺した方が無難なのは確かだが。そうすれば、少なくとも灰崎 恭也が次の『器』を見付けるまでの時間を稼げる。しかし、そうすると今度は灰崎 恭也の『本体』を叩くチャンスを失う事になる。


 なぜなら、普段は姿をひた隠しに隠している奴も、新しい『器』に移る際には、直接、『器』と接しなくてはならないからだ。逆に言えば、その時以外に奴を捕捉するのはまず、不可能。恐るべき隠蔽能力だ。自らの弱さを熟知している故か。だからこそ、奴は恐ろしい。


 力に溺れる阿呆共は、放っておいても勝手に自滅するが、奴は自らの弱さを熟知している故に、油断も慢心も皆無。ひたすら自らの存在を隠し、表舞台には立たず、目を付けた女を自らの意のままに動く『人形』に変え、それを操り、事を成す。厄介な事に、『人形』と化した女を見破るのは極めて困難。


 元の人格の残骸を素材に灰崎 恭也が生成した『疑似人格』を与えられている為、見た目は勿論、細かな言動に至るまで、元の人格と寸分変わらん。これを見破れるのは、それこそ、魂の本質を見抜ける、特に高位の実力者ぐらいだ。


 その上、全ての『人形』と化した女は、主人である灰崎 恭也より、本能に刻み込まれている命令が有る。


『若く、美しく、有能な女を『人形』にせよ。仲間を増やせ』


『人形』と化した女は、灰崎 恭也と同じく、『支配』の力を持つ。本能に刻み込まれた命令に従い、若く、美しく、有能な女を探し、機を見計らっては、『人形』に変えていく。そして新たに『人形』と化した女もまた、本能に従い、更なる獲物を毒牙に掛けていく。こうして『人形』は加速度的に増えていく。…………まぁ、今はハルカ・アマノガワを見定めるのが最優先か。







 さて、どうしたものか? 稽古を付けてやるとは言ったものの、俺は、これまで一度も、誰かに稽古を付けてやった事が無い。元々、人に教える性分でもなし。しいて言うなら、あの若造(邪神ツクヨ)の所の女みたいな小僧(イサム)ぐらいか。もっとも、あいつの場合は勝手に見て盗んでいったが。


 それに、単に強いだけでは認める訳にはいかん。強さも必要だが、それだけでは駄目だ。そんな奴なら、阿呆転生者にいくらでもいるからな。それに、メイドとしての価値も見定めないとな。長生きしているおかげで、メイドと関わった事も多少は有る。こいつ同様、『裏』のな。などと考えていると、それなりに時間が経っていたらしい。始めるか。


「…………とり…あえず……昼まで……いつ…でも……掛かっ…て………くる…が……良い……遠慮は…いら…ん……殺す……気で…来い……」


 色々考えてはみたが、やはり、俺にはこのやり方が一番合う。強いだけの阿呆に用は無いが、さりとて、弱者の意見など無意味なのもまた事実。








 ハルカside


 魔剣聖様いわく、稽古と問答の末に僕の評価を決めるらしい。当然、不合格なら死有るのみ。他の真十二柱でもそれは同じだけど。


 まずは、昼まで、いつでも掛かってこい、との事。それも遠慮は要らない、殺す気で来いと。……最初から高いハードルを要求してくださる。未だに、蒼辰国での殺しの事は、どうにか整理は付けられたけど、完全に割り切れてはいないんだけどね。だけど、半端なやり方が通用する相手でもない。手段を選んではいられない。卑怯もへったくれもない。全ては生き残る為に。


 だけどね。魔剣聖様相手に、『剣術』の方面で納得させるのは無理だろうな。


 僕はあくまでもメイド。イサムみたいな剣士じゃない。僕の剣の腕は『一流』とナナさんも認めてくれた。でも、こうも言われた。あくまで『一流』止まり。その先には行けないと。そしてイサムは『一流』の先にいると。


 かといって、単なるおもてなしで認めてくれる程、甘くない。少なくとも『武』『魔道』『メイド』全てにおいて、高い水準を満たさないとダメだろうね。


 考えれば考える程、ハードルの高さに嫌になる。こういう時、アニメやラノベの世界じゃないのが恨めしい。アニメやラノベの世界なら、主人公補正という名の御都合主義が発動して、凄い助っ人やら、パワーアップイベントやらが起きて、大逆転勝利を納めるんだろうけどね。


「……覚悟を決めるしかないか」


 色々考えたけれど、結局、そこに落ち着く。逃げ道は無く、助っ人もいない。持ちうる全てを駆使して、足掻くまで。それでも駄目なら……仕方ない。所詮、僕はそこまでだったという事。


「……そろそろ………始め…るぞ……時間は………有限…だ……」


「はい。よろしくお願いします」


 さ、生きるか死ぬかを賭けた一日の始まりだ。







「……先程も……言った…が……いつ…でも……掛かって…くる…が……良い……その…上で……お前に…は……技を……仕込ん……で…やろ…う……拒否や……出来ま…せん……は…聞か……ん……」


 魔剣聖様は僕に技を仕込んでくださるそうだ。ちなみに拒否権は無し。出来ませんも却下。というか、そんな事を言った時点で不合格。殺されるだろう。しかし、同時にありがたい事でもある。全ての神魔の頂点たる真十二柱、直々に技を教えてもらえるのだから。乗るしかない、このビッグウェーブ。……死ぬかもしれないけどね。


「ところで、何を教えて頂けるのでしょうか?」


 技を教えてくれるのは良いけれど、あまりハードルを上げられても困る。明らかに無理な事をやれと言われたら、その時点で詰み。普通の人ならともかく、真十二柱にそんな気遣いを期待出来るかどうか。で、当の魔剣聖様は10メートル程先に有る、腰掛けサイズの石に向かい、その上に握り拳サイズの石を乗せて、戻ってきた。


「……まず…は……これ…だ……名は……自在斬……」


 そう言うなり、さっきの石に向かって、刀を振り下ろす。別に速くも鋭くもない、単なる振り下ろし。


 直後、上に乗せた握り拳サイズの石じゃなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 良く有る、斬撃を飛ばす技とは違う。指定した標的だけを斬ってみせた。


「……見た…な……では…やれ……」


 いきなり、凄い無茶振りをしてきたよ。それ、剣術の極意の域なんですが。剣を高速で振る事で斬撃を飛ばすのですら、かなりの上級技なのに、更にその上。剣の速度など関係なく、指定した場所に斬撃を発生させる。並外れた剣の腕、優れた空間座標把握能力、どちらも要求される。


「……この…程…度……序の口……に…過ぎ……ん……今日中……に…会得……しろ……」


 無茶振りにも程が有る。しかし、魔剣聖様からすれば、これでもかなり譲歩してくれているんだろう。あくまでも、この方からすればだけど。とりあえず、確認したい事が有る。


「魔剣聖様、質問よろしいでしょうか?」


「……何…だ?……」


「この技、射程距離や攻撃範囲、威力は評価基準に入りますか?」


「……そこ…まで…は……求…めん……一応…形に……なれば…良し…と……しよ…う……」


「分かりました。ありがとうございます」


 やはり、かなりの譲歩をしてくれている。全てにおいて完璧にやれと言われていたら、どうしようもなかった。とはいえ、ハードルが高い事は変わらないんだけど。


「……そうだ…な……今回…の……試練……の…内容を……決め…た……ぞ…自在斬…を……会得……した…上……で…俺の……納得…する……一撃……を…見せ…ろ……後……メイド……と…しての……実力…もな……」


 魔剣聖様から、今回の試練の内容が発表された。先程の技を会得した上で、魔剣聖様の納得する一撃を見せねばならない。更にメイドとしての実力も。








 魔剣聖side


 今回の試練の内容を決め、それを伝えた。内容に関しては、かなり譲歩してやった。本来なら、俺の使う『必中、必断、必滅』の『三必剣』を会得させる所だがな。とりあえず、その初歩の初歩たる剣技、指定した場所を斬る『自在斬』を会得させよう。


 さて、試練を始めたは良いのだが……。


「……どうし…た……掛かって…こ…い……」


「そうしたいのは、山々なんですけどね。なまじ、強くなったせいで、魔剣聖様の強さを感じて攻撃出来ないんですよ。斬られる瞬間が、はっきりくっきりイメージ出来ますし」


「……知る…か……さっさと……打ち込…む…なり……何な…り……しろ……先程も…言った……が……時…間…は……有限…だ……」


 優秀な娘ではあるが、今回はそれが仇となったか。阿呆なら、考え無しに掛かってきただろうが、この娘は先の展開を明確に予測出来るが故に、攻撃出来ないらしい。良く言えば、思慮深いが、悪く言えば、思い切りが悪い。……ならば、こうするか。


 直後、弾かれる様に、その場から飛び退く娘。良い反応だ。手加減はしたにせよ、良く避けた。


「いきなりですね」


 我が自在斬は刀を必要としない。いつでも好きな時、場所に放てる。故に、()()斬。


「……技を…仕込…む…なら……直接…身体で……分から…せる…に限る……から…な……」


「確かにそうですけどね」


 攻め込めないというなら、追い込むまでだ。何もしなければ死ぬぞ。ありきたりな手ではあるが、これで死ぬなら、所詮、そこまでだったという事だ。


「……手本を……見せ…て……やって…いる…の…だ……ありが…たく……思え……」


「勉強させて頂きます」


 不意討ちに文句を言わず、むしろ、学ぶ意欲と姿勢を見せてきた。そうだ。それで良い。そうでなくては、今回、わざわざ出向いてきた意味が無い。


「……言って……おく…が……お前に……剣士…と……して…の……期待は…して…いな…い……我が……自在斬…お前……なり…に……取り込んで……みせ…ろ……」


「やります。でないと、貴方に殺されますから」


「……そうい…う…事……だ……」


 剣士としては期待していないとも告げたが、やはり、怒らない。本人も剣士としての才の限界は自覚しているか。さて、我が自在斬、どうやって、自分の物として取り込むか。そして、()()()()()()()()()()を確立出来るか。見せてみろ、この魔剣聖に。







 とりあえずは自在斬の練習を始めるらしい。10メートル程、先に射撃訓練用の的(野外での訓練用に、亜空間収納に収めているそうだ)を置き、小太刀二刀を振るっている。ただし、その振るう速度は()()()()()()()()()()()()。盲目の俺が言うのもおかしな話だが。


 まぁ、理屈は合っている。自在斬に剣を振るう速度は無用。むしろ、邪魔だ。物理法則を超越し、自らの望む場所に斬撃を発生させるのが自在斬。あいつなりに、自在斬のコツを掴もうと必死だな。しかし、的には傷一つ付く気配も無い。


「………………………」


 無言で背後の足元に刀を突き立てる。背後の影から伸びた黒い蛇が刀に串刺しにされて消える。


「……小賢しい………」


 自在斬の練習をしつつ、こうしてチマチマと嫌がらせを仕掛けてくる。影より飛び出す黒い蛇やら、風の刃やら、氷の微粒子やら。何とかして、こちらに攻撃を仕掛ける機会を作ろうとしている。


 しかし、まだ足りない。もう一押し足りない。殻を破れずにいる。本人も分かっているのだろう。もどかしさを感じる。


 ともあれ、この俺に嫌がらせをしてきた罰がてら、自在斬をお見舞いしてやろう。








 ハルカside


「……どう…だ……?……自在斬…は……会得……出来…そうか……?」


「嫌味ですか?」


 午前中が終わり、現在、昼食中。場所が場所だけに食料の現地調達が出来ないので、持ち込んだ食材を使っての昼食。鍋でお湯を沸かし、乾燥パスタを茹でて、卵とチーズを絡めて、即席のカルボナーラ風を作った。


 時間は惜しいけど、だからといって、あまり手抜き料理をするのはメイドとしてどうかと思って。メイドとしての価値も評価に入っているし。幸い、魔剣聖様からの苦情は無く、黙々と食べていらっしゃる。そんな中でのやりとり。


 僕は未だに自在斬を会得するには至っていない。にもかかわらず、わざわざ聞いてくる辺り、魔剣聖様も嫌な性格をしている。


 それにしても、困った。自在斬を会得出来る気がまるでしない。僕の剣の才能では、会得するには足りないと痛感している。かといって、出来ません、無理です、は通用しない。言った時点で殺される。どうしたものかな?


「あの、魔剣聖様は、僕が自在斬を会得出来ると思いますか?」


 そもそもが、無茶振りにも程が有る内容。はなっから、出来もしない事を要求してきたのかもしれない。


「……不可…能では…ない……と……思って…いる……出来な…い…のは……単な…る……甘え…に……過ぎ…ん……もっと……真…剣…に……やれ……」


「そうですか」


 魔剣聖様に聞いてみたら、不可能ではないと思っているとの事。出来ないのは甘えに過ぎない、もっと真剣にやれと。この方、何の根拠も無い精神論者ではない。僕の努力が足りない様だ。







 さて、昼食も終わり、再び自在斬の練習を開始。一応、進展は有った。


「風魔法を組み込む事で、擬似的な自在斬を再現出来たか」


 僕の剣の才能だけでは、自在斬を会得するには足りない。だったら、他の分で補えば良い。そう考えて、風魔法と剣技を組み合わせる事で出来た、擬似的な自在斬。魔剣聖様は、自在斬の会得に辺り、自分のと同じのにしろとは仰っていない。お前なりに取り込んでみせろと仰った。やり方についての指定は無い。


 まぁ、あくまでも擬似的だから、魔剣聖様の使う本家本元には、切れ味、射程距離を始め、とてもかなわない。本人は一応、形になれば良いと言っていたけれど。


「自在斬については、とりあえず形は出来たかな? 本家本元と比べたら、猿真似も良い所だけど」


 自在斬については、一応、形は出来た。もっとも、魔剣聖様からすれば、初歩の初歩でしかないし、まだ、魔剣聖様の納得する一撃。そしてメイドとしての価値を見せないといけない。そう考えている所へやってきた魔剣聖様。


「……自在斬……を…形……だけ…でも……会得……した……か……」


「魔剣聖様が、散々、斬り付けてくださいましたからね。痛い思いはしましたが、お手本が良いと確かに習得は早いですね」


 魔剣聖様が時々放ってくる自在斬。身体中あちこち斬られては、治療をする羽目になったけど、同時に身体で直接、自在斬を感じ取り、学ぶ事が出来た。でなければ、こんなに早く擬似的とはいえ、自在斬を会得出来なかった。しかし、大抵の攻撃など余裕で防ぐナナさん特製のメイド服をあっさり斬る辺り、やはり魔剣聖様は凄い。


「……まぁ……自在斬に……ついて…は……良し…と……しよ…う…」


「ありがとうございます」


 自在斬については、一応、合格をもらえた。しかし、まだ終わりじゃない。


「……この…程度……初歩の…初歩…に過ぎ……ん…俺を……納得……させ…る…一撃……を…見せ……ろ……」


「つくづく、厳しいですね」


 魔剣聖様からすれば、自在斬習得など、出来て当然らしい。普通は無理なんですけど。しかし、魔剣聖様の納得する一撃か。どうすれば良いんだか? 剣士としては期待していないと言われたし、僕としても、自分の剣の才能がもはや、頭打ちな事ぐらいは分かっている。


 つまり、それ以外の戦い方を確立しないといけない訳だ。でも、それが分からない。大まかな方向性は見えてきているけれど、具体的な形が見えてこない。……どうにも、もどかしい。手が届きそうで届かない、そんな感じ。


「すみません、魔剣聖様。しばらく、考え事に集中させてください」


「…………まぁ…良い……だろ…う……その…代わ…り……結果…は……出せ……」


 どうにも、煮詰まってしまっている。ここは一旦、思考を切り替えよう。魔剣聖様に許可を取り、少し離れた場所で1人、座って考える。


「一体、どうしたら良いんだろう? 剣士としては、限界。向こうも期待していない。メイドとしての実力を見せつつ、魔剣聖様の納得する、一撃を出す」


 無理難題にも程がある。かといって、無理です、出来ませんは言えない。詰んだか?


 いや、まだだ。こういう時は……。基本に立ち返る。シンプルに考えよう。僕は何者か? メイドだ。メイドは武器を振り回して戦う者か? 否。あくまで、メイドは主人に仕える者。戦う事も務めの内だが、本業に在らず。そういえば……。


 僕はふと、思い当たる。メイドではないけれど、やはり、主人に仕える人に。厳密には『人』じゃないけどね。


 スイーツブルグ侯爵家に仕える執事、エスプレッソさん。事の始まりは、『王国』への引っ越し。最初の時点では、北の海に浮かぶ絶海の孤島に屋敷を構えていたナナさん。しかし、僕が来た事もあり、『王国』の首都、『王都』へと、屋敷ごとの豪快な引っ越しを敢行。


 だけど、それは同時に、これまでろくに他人と関わらなかった生活から、不特定多数の人々と関わる生活への変化でもあった。しかも、僕絡みで、『王国』屈指の大貴族。スイーツブルグ侯爵家との繋がりが出来た。ひいては、王候貴族社会との繋がりが。


 ナナさんはそんな物、気にしない。しかし、メイドである僕はそうはいかない。メイドとしての心構えや、礼儀作法を学ばねばならなかった。とはいえ、魔女のナナさんにそんな物は期待出来ない。という訳で、僕はスイーツブルグ侯爵家に仕える執事、エスプレッソさんから、学んだ。つまり、魔女としての師はナナさんだけど、従者としての師はエスプレッソさん。で、そんなエスプレッソさんからの教えにこんな物が……。







『ハルカ嬢。私達、執事やメイドはあくまで主人に仕える従者。時と場合によっては、戦闘もこなしますが、本業ではありません。そして、王候貴族を始めとする、身分の高い方々と接する機会が多い立場上、大っぴらに武装をする訳にはいきません』


『確かにそうですね。パーティーとかの社交場において、露骨に武装をしていたら、周りから浮くどころじゃないですし』


『その通り。かといって、不測の事態に備えない訳にもいきません。その為にも、色々と工夫をする訳です。小さい携帯武器を隠し持つ、何か別の物に仕込む、亜空間収納内に隠す、等々』


『なるほど。為になります。ちなみにエスプレッソさんがパーティー会場でテロリストの襲撃を受けたら、どう対処されますか? あ、食事用ナイフやフォークは手近に無い状況で』


『そうですな。これが有れば十分です』


『ハンカチですか』


『いかにも。これならば、基本的にいつも持ち歩いておりますし、持っていても、別段、不審に思われる事も無いでしょう。それでいて、非常に使い勝手が良いのです。別段、ハンカチでなくとも良いのです。その場の状況に応じて判断、行動。ハルカ嬢、覚えておかれる事です。『発想力』、これが大切。固定観念に囚われず、柔軟な発想力で考える事です。武器が無いなら、代わりを探す、有利な場所へ移る、敵の動揺を誘う。要は状況を打破すべく、手を尽くすのです』








 …………………………これだ。


 見えてきた。僕の目指す戦闘法が。だけど……。


 ()()()()()()


 方向性は間違っていない。剣士としては既に頭打ち。ならば、メイドとしての戦闘術を使おう。でも、それだけでは足りない。そんじょそこらの相手なら、いざ知らず、相手は真十二柱 序列三位 魔剣聖。半端な真似をしたら間違いなく、殺される。


「方向性が見えてきたのは良いけれど、反省もしなくちゃいけないな……」


 僕はメイドではあるものの、はっきり言って、邪道。メイドであると同時に魔女の弟子。どちらかと言えば、魔女の弟子の方の比率が高かった。別にそれが悪いとは思わないけど、そのせいで、メイドとして、半端者になってしまった。まぁ、ナナさんは魔女であって、メイドの教育係じゃないからね。エスプレッソさんに習おうにも、向こうも暇じゃないし。


「メイドでありながら、剣士寄りになっていたからね。剣の才能が有るならともかく、既に頭打ち。もっと早く、メイド式戦闘術を取り入れるべきだった」


 ぶっちゃけ、これまでは、僕の剣の才能でもどうにかなった。それ故の慢心が有った。その結果が、今になっての剣の才能の限界と、新たな戦闘法に悩む羽目に。全くもって恥ずかしい。


「今にして思えば、ツクヨとの出会いの時点で、反省し、改めるべきだった。あれだけ実力差を見せ付けられたんだから」


 圧倒的な実力差を見せ付けられた、対ツクヨ戦。この時点で、反省し、新しい戦闘法を考えるべきだった。


「だからといって、簡単には新しい戦闘法を編み出せないよね。そんな簡単に編み出せたら、苦労しない」


 新しい戦闘法が必要なのは事実。だからといって、そう簡単には編み出せないのも、また事実。しかし、それをやらなければならない。それも今日中に。


「僕の戦闘法は、あくまでナナさんの教えが基本。僕はメイドだけど、ナナさんの教えを全否定するのは、あまりにも勿体ない。目指す所は、ナナさんの教えとメイド式戦闘術の融合。そこへ更に僕独自の()()を加える。あからさまな武器を使わない、僕の新しい戦闘法を」


 考えろ。ナナさんの教えとメイド式戦闘術を繋ぐ、僕独自の()()を。付け焼き刃な物は通用しない。武術や魔道に囚われるな。僕の持ちうる全てを引き出せ。考えろ、考えるんだ。何か無いか? 付け焼き刃じゃない、それでいて、メイドとして不自然でもなく、なおかつ、実戦で使えて、あからさまな武器じゃない…………。


 正直、無理難題と思いながらも、必死で考える。もう、この際あれだ! 実際に出来るかどうかは無視して、アニメや漫画、小説、ゲームの内容も有り! 柔軟な発想力が大事だし!


 しかし、いくら考えても答えは出ない。無情に時間は流れ、日は傾き、夕方になり、そして日が暮れる。遂には、夜空に月が浮かぶ。満月に近い月が。


「……すっかり暗くなったな。でも、答えは出ない」


 いくら考えても、ナナさん流とメイド式戦闘術を繋ぐ()()が分からない。どうにもしっくりこない。形になりそうでならない。そんな中、ふと、夜空を見上げる。皮肉なぐらい、良く晴れた月夜だ。


「綺麗な月だね。……見納めになりそうだけど」


 本当に、皮肉なぐらい綺麗な月夜。あれかな、死ぬには良い月夜だ、ってね。


「………………月夜………………そうだ! ()()が有る!!」


 死を覚悟していた僕に舞い降りてきた天啓。そうだそうだ! ()()が有った! ()()()()()()()()()()()()。やらなくなって10年になる上、武術じゃないから、考慮に入っていなかった。でも、あれなら、ナナさん流とメイド式戦闘術を繋ぐ事も十分、出来る。武器に関しては、まぁ、一応、()()()()()()()として、言い訳は立つか。


 正に天啓。これまではっきりしなかった、新しい戦闘法が急速に形を成していく。まだまだ、荒削りで改良の余地はたくさん有るだろうけど、ようやっと、自分の戦闘法が見付かった。後は、一刻も早く、新しい戦闘法をものにしないと。その為にも……。


 魔剣聖様に斬られた、小太刀二振り。斬られはしたものの、切っ先と根元、両方共に、()()()()()()()()()()()


「魔剣聖様の配慮に感謝」


 魔剣聖様なりに、僕にチャンスを与えてくださったのだろう。そうでなければ、僕の小太刀は()()()()()()。斬られた切っ先と根元をくっつけ、魔力を注ぐ。そんじょそこらの武器と違い、僕の小太刀は僕の魔力さえ与えれば再生可能。生きている武器だからね。


 しかし、今回は更にその先を目指す。僕の新しい戦闘法に合わせた形へと変化させる。当然、その分、魔力は、より多く持っていかれるけど、それは必要経費。その甲斐あって、二振りの小太刀は新たな形へと変化。僕の求める形となった。


「ありがとう。無理をさせてごめんね。でも、これで新しい戦闘法の武器は出来た」


 新しい戦闘法に合わせて形を変えた、二振りの小太刀。今は元、小太刀と言うべきか、に礼を言う。そして、新たな武器を両手に、新しい戦闘法の練習を始める。……悪くない。10年ぶりの()()を基本にナナさん流とメイド式戦闘術を融合させた戦闘法は、馴染む感覚が有る。


「…………でも、実戦では、まだ使えない」


 しばらく色々な動きをしてみた結果、いくら馴染むとはいえ、やはり、即座に実戦投入は無理。まだまだ、改良の余地有り。時間を掛けて、磨き上げないと。しかし、今回はそんな時間は無い。タイムリミットは間近。


「これが実戦だったら、間違いなく死んでいた。でも、今回は、魔剣聖様が納得する一撃を見せる事。メイドとしての実力を見せる事。これが合格条件。魔剣聖様が納得する、メイドとしての一撃を見せる。これ一本に絞る。……駄目なら、それは仕方ない。潔く死のう」


 新しい戦闘法を完成させるのは無理。時間が無い。だから、今回の合格条件達成を目的に絞る。それだけなら、何とかなるかもしれない。出来なかったとしても、仕方ない。そもそもが一度、死んだ身。本来なら、いるはずがない存在が僕。


「とにかく、今は一刻も早く、魔剣聖様に見せる『一撃』を出せる様にならないと」


 寸刻を惜しみ、新しい武器を両手に、新しい戦闘法による攻撃の型を繰り出す。それは、いつまでやっているんだ、と魔剣聖様が呼びに来るまで続いた。







 そして、時は現在に戻る


 魔剣聖side


「いかがでしょうか? 魔剣聖様」


 小娘は、我が愛刀を斬ったものの、直後にその場に膝を突いた。文字通り、一撃に全てを賭けたのか。その場から動くのも、ままならぬらしい。まぁ、感想を求めてきたのだ、答えてやろう。


「……実戦……では…まる…で……使えん……な……」


「でしょうね」


 我が愛刀を『斬った』。その点は認めてやろう。しかし、一撃繰り出しただけで、その場から動けなくなる程、消耗するなど、実戦では論外だ。阿呆が。


 しかし、だ。こいつめ。中々に頭が切れると言うか、小賢しいと言うか。新しい戦闘法を編み出したからと、この俺に、こう抜かしやがった。


『魔剣聖様。新しい戦闘法の試し切りがしたいので、実験台になってください。刀を中段、青眼の構えでお願いします。今回の試練、魔剣聖様と戦う事ではなく、あくまで僕の価値を示すのが合格条件でしょう? その為に必要な事なので』


 確かに、真十二柱の試練は、あくまで、小娘の価値を確かめるもの。真十二柱と戦えとは言っていない。そして、本人が自分の価値を示したいとあらば、こちらに断る道理は無い。……まぁ、口先だけの戯れ言を抜かせば、その場で殺すだけだがな。


 で、結果は、我が愛刀を斬るという、大金星を上げた。わざわざ、刀を構えて立ってやるという破格の条件下であったとしても。しかも、剣士ではなく、メイドとしての戦闘法を見せた。明らかに即席で、まだまだ荒削りではあるが、この短時間で、新しい戦闘法を編み出し、結果を出してみせた。


 ……百点満点をくれてやる訳にはいかんが……、我が愛刀を斬った事。自在斬を不完全とはいえ会得した事。そして、飯や、茶が美味かった。礼儀作法もきちんと出来ていた。向上心も有る。まだまだ、未熟、至らぬ点も多いが……。


「……今回…の……試練……の…結果……を…言い……渡す……及第点……と…する……」


 百点満点はくれてやらん。だが、その将来性を加味して、一応、及第点をくれてやろう。


「…………ありがとうございます!!」


 その場に伏して感謝を述べる小娘。回復が早いな。もう普通に動けるか。そんな小娘へと、更に告げる。


「……勘…違い……する…な……あく…まで……及第…点…に……過ぎ…ん……今後……つまら…ん…姿……を見…せた…な…ら……その…首……落ち…る…と……知れ……」


「……肝に命じます」


 その場に伏したまま、答える小娘。分かれば良い。ともあれ、今回の試練は終わりだ。そう思っていた所。


「魔剣聖様、聞いて頂きたい事が有ります」


「……何だ?……言って…みろ…」


 小娘は、姿勢を正すと、何やら俺に聞いて欲しいと、言い出した。俺としても、興味は有る。聞いてやろう。


「ありがとうございます。今回の件で僕は新しい武器、そして、新しい戦闘法を編み出しました。更に魔剣聖様の刀を斬りました。それは大変、大きな収穫だと思っています」


「……それ…は……同感…だな……」


 新しい武器、そして、新しい戦闘法、それらを今日一日で編み出し、我が愛刀を斬るという大金星を上げたのだ。十分に誇れる成果だ。すると、小娘は思わぬ事を言ってのけた。


「ですが、僕は既に『更に、その先』が見えています。確かに新しい武器は、メイドのお洒落、装飾品と言う事も出来ますが、武器と言われたら、武器です。だからこその『先』なんです。武器と言われず、身に付けていても不自然ではなく、持ち歩きやすく、そして何より、無闇矢鱈に誰かを傷付けたり、殺したりしない。それでいて、いざとなれば殺せる。そんな道具、及び、それを操る戦闘法。それが僕の見えた『先』であり、僕の目指す理想の戦闘法です。新しい戦闘法が『表』なら、こちらは『裏』ですね。まぁ、新しい戦闘法の『表』すら、まだ不完全な以上、『裏』はまだまだ先ですが。未熟な若輩の戯れ言と笑ってください」


「…………ふふ…ふ…は…は……は……」


「やはり、笑いますか。まぁ、自分でも気が早いと思っていますし」


 小娘の話した内容を聞いて、思わず笑ってしまった。小娘の方も、呆れられたと思ったらしい。思い違いを訂正してやるか。


「……勘違…い……する…な……呆れ…た……訳では…ない……面白…かった…から…だ……」


「そうなんですか?」


「……あぁ…面白…かった……ぞ……」


 全く、大した小娘だ。今日一日で新しい扉を開いただけでは飽き足らず、更にその先を見ていたとはな。


「……小娘…もし……お前が……その……『先』を…理…想の………戦闘…法……とやら…を……もの…に……した…な…ら……それ……が…どれ…程……の…もの…か……試し…て……やろ…う……その…時……まで…死ぬ……な……」


「ありがとうございます。ご期待に添える様に、精進致します」


「……励め…よ……小娘……」


 笑ったなど、生まれてこの方、初だと思う。確かに、単に強いだけ、家事が上手いだけの小娘ではなかった。何が飛び出してくるか分からない、ビックリ箱の様な小娘だ。精進しろ、小娘。この魔剣聖をまた驚かせてみせろ。




本当に長らくお待たせしました。第145話です。


ハルカ、新しい武器、戦闘法を開眼。魔剣聖からも及第点を頂き、とりあえず、第一の試練はクリア。


実は、元より、魔剣聖のハルカに対する評価は高め。でなければ、真十二柱会議に出席しませんし、試練にも参加しません。


そして、ハルカは新しい武器、戦闘法を開眼した上で、更にその『先』が見えているとの事。


以後、今回、登場した新しい事柄についての説明。


三必剣:魔剣聖の剣技。必中、必断、必滅の三拍子揃った、恐ろしい剣技。射程距離、障害物等の一切を無視し、回避不可能、防御不可能、即死の斬撃が来る。要するに、使われたら相手は死ぬ。


それだけでも恐ろしいが、何より恐ろしいのは、これは異能ではなく、あくまで剣技。故に、異能の根源にして、支配者である、真十二柱 序列二位 魔道神クロユリでも、どうにもならない。


自在斬:魔剣聖からすれば、初歩の初歩たる剣技。しかし、世間一般のレベルからすれば、極意クラスの高等技。使い手の指定した座標に斬撃を発生させる。斬撃を飛ばすのではなく、指定した座標に発生させるという性質上、障害物や、バリアは無意味。標的の位置を捕捉出来れば攻撃出来る、便利な剣技。


ちなみにハルカが会得したのは、風魔法を組み込んで再現した、自在斬(偽)。射程距離もせいぜい100メートル程で、一度に一つしか放てない。対し、魔剣聖の自在斬(真)なら、射程距離、攻撃範囲、共に無制限。つまり、理論上、座標さえ把握していたら、自在斬一発で、全宇宙の全ての存在を斬って滅ぼせる。


ただし、三必剣と違い、あくまで斬撃自体は普通の物理攻撃なので、防御、回避は可能。もっとも、魔剣聖の放つ自在斬を防御、回避するなど、事実上、不可能だが。作中でハルカが避けられたのは、魔剣聖が手加減していたから。でなければ、あの時点でハルカ死亡。


ハルカの新しい武器、戦闘法:現時点では秘密。明かせる内容としては、新しい武器は本来は武器ではない。お洒落、装飾品として、一応、言い訳は立つ。しかし、ケチの付く可能性は有り。


新しい戦闘法は、武術ではない、ハルカが小さい頃に毎年やっていた事をベースにナナさん流と、メイド式戦闘術を融合させた物。しかも、更にその『先』が見えている。とはいえ、今は新しい戦闘法を完成させるのが最優先。


次回はハルカが留守中のナナさんの屋敷の話。


では、また次回。



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