第134話『灰色の傀儡師』 飛翔編
「さて、そろそろ行くかな。その前に念の為、今回のターゲットの状況を確認しておこう。……失敗は許されない。確実に仕留める」
時間は日曜日の深夜午前2時。いよいよ、初の『人形』作成に向けて出発だ。予め、ターゲットの元に忍び込ませていた蟻型の端末からの情報で、今回のターゲットが自室にいる事を確認。よしよし。狙いの相手がいなくては話にならないからね。
「今夜中に全て終わらせる。てきぱきやらないといけない。何度もシミュレーションはした。……大丈夫。出来る」
正直、不安が無いではない。予め、ターゲットについては調べ上げ、『人形化』のシミュレーションも何度も重ねたけど、それでも上手くいく保証は無い。
だが、やらねばならない。無力な存在として女に蔑まれ、踏みにじられてきた人生に別れを告げる為に。そして、女を支配し操る支配者となる為に。その第一歩が今日なのだ。
「……行こう。時間を無駄には出来ない」
夜明けまでには、けりを付けないといけない。決意を新たに、空中に黒い穴。目的地への『門』を開く。それをくぐり、いざ目的地へ。
「…………よし。侵入成功」
『門』をくぐり抜け着いた先は、居間。時間が深夜だけに静まりかえっている。標的は寝ているみたいだ。まぁ、それを狙って深夜を選んだんだけど。抵抗されてはまずいしね。まだまだ、僕は未熟。出来る限り、リスクは避けたい。さて、標的の寝室へと向かうか。念の為、この辺り一帯に、消音、認識阻害の結界を張る。その上で、目的地へ。
「ここだ」
寝室にはすぐに着いた。いやはや、実に楽しみだ。遂に、僕の長らくの夢。女を僕の操り人形にするという夢が叶う。ドアノブに手を掛けると鍵は掛かっておらず、あっさり開く。そして室内へ。
「……綺麗な人だなぁ。こんな綺麗な人が未だに独身かつ、処女とはね。まぁ、それでこそ、『人形』にしがいが有る。さっさと始めよう」
僕はベッドで眠る女性の寝顔を眺め、その美しさに感心しつつ、初の『人形化』の準備を始める。既に何度も練習はした。とはいえ、やはり緊張するな。補助具の魔法陣の書かれた手袋を嵌め、更に、ベッドの周りに要の宝石をセット。印を組み、呪文を唱えると、要の宝石が光り、魔法陣を描く。幸い、女性は熟睡しており、起きる気配は無い。彼女が週末に晩酌をする事は事前に確認していたからね。さぁ、仕上げだ。
「……では、記念すべき『人形』第1号。行け」
僕は右手の人差し指を眠る女性の額に当てる。すると、指先から『何か』が女性の頭の中に撃ち込まれたのを感じた。それと同時に、女性が目覚めた。目を大きく見開き、激しく痙攣し、開いた口から舌が飛び出す。しかし、事前に展開した魔法陣が彼女を拘束し、叫び声を封じる。女性はしばらく痙攣していた後、糸が切れた様に、ぐったりと動かなくなった。
「……呼吸はしているし、脈も正常。しばらく待つか。しかし、予想以上に拒否反応が出たな。まだまだ術の完成度が低いか」
初の『人形化』は『女を人形化する』という点においては成功。しかし、まだまだ甘い。あまりに手間が掛かりすぎている。完全な実用化には程遠い。更なる改良は必須。
「まぁ、今は作業に集中しよう」
術の改良は必須だけど、今は『人形化』を仕上げるのが最優先。僕はノートパソコンを取り出し、起動。これは僕が独自に開発した術。コンピュータープログラムと魔道の融合。魔法使いが杖や本を持つ様に、僕はノートパソコンを使う。慣れているからね。
「さぁて、ここからが本番。僕の腕の見せ所だ。苦労して作った『精神のデジタル化プログラム』。こいつで女の精神を再構成しないとね。自我の無い木偶人形じゃ、役に立たないし」
洗脳物によく有りがちな、女を自我の無い木偶人形にする奴。僕はあれは悪手と思っている。単に肉人形として弄ぶなら、それでも良いだろう。しかし、手駒として使うにはダメだ。命令した通りに動くが、命令されないと何も出来ない。命令に無いイレギュラーな事態には対処出来ない。それでは困る。命令されなくても、自ら考え、判断し、対処出来る。手駒として使うなら、そうでないといけない。そもそも、端から見て明らかに正気じゃないとバレバレじゃ、意味がない。僕が欲しいのは従順かつ、忠実な奴隷だ。
起動したノートパソコンから光の糸が伸び、女の耳から頭の中に侵入。脳に接続される。よし、接続成功。ノートパソコンの画面に接続成功の表示が出たのを確認すると、プログラマーの仕事で鍛えた高速ブラインドタッチで素早くキーボードを叩く。まずは、女の脳内から精神をダウンロード。画面にダウンロードの状況が表示される。よし、順調だ。
「第一段階の精神の分解、第二段階の分解した精神のダウンロード、そして、第三段階の精神のリプログラミング。最後にリプログラミング、再構成した精神を脳内にアップロード。……改めて思うけど、まだまだ実用化には程遠いなぁ。いちいちノートパソコンを使うのも手間だし。もっと手軽に迅速に、そして、大量に洗脳出来る様にならないといけないな」
ノートパソコンにダウンロードした、デジタル化された女の精神をリプログラミングしながら、今後について考える。もちろん、その間も手は動かす。やがてリプログラミングが終了。今度はアップロード。再構成した精神を女の脳内に送り込む。『人形』としての新しい人格をね。
「これで君はくだらない過去から解放され、一切の苦しみも消える。僕の『人形第1号』として、生まれ変わるんだ」
そうこうしている内に、無事、アップロードは完了。後は目覚めるのを待つだけ。
持参した魔法瓶から注いだ麦茶を飲みつつ、待つ事しばらく。ベッドの上で眠る女性に反応が。僅かに身じろぎをした。やがてゆっくりと目を開く。やっとお目覚めらしい。
「やぁ、はじめまして。気分はどうだい?」
僕は目覚めた女性に声を掛ける。ある意味、これは一か八かの賭け。洗脳が上手くいったかどうかの。その僕の問いかけに女性はこう答えた。
「はじめまして、『御主人様』。素晴らしい気分です。私は貴方の所有物。『人形』です。私の全ては貴方の物。何なりとご命令を」
女性はそう言うと、深々と頭を下げた。初対面の上、明らかに不法侵入者である僕に対して。
「………………………………やったぞ。……………成功だ……」
思わず大声を上げて叫びたいのを必死に押し殺し、僕は初の洗脳成功の喜びを噛み締める。だが、今は他にやるべき事が有る。気を取り直し、『人形』と化した女性に向かい合う。
「では、さっそく最初の命令だ。この場で服を全て脱げ。裸になるんだ。それが済んだら気を付けの姿勢で待て」
「かしこまりました。御主人様」
僕が『人形』に下した最初の命令。それは僕の目の前で全裸になる事。正気の状態なら、絶対にしないであろう。しかし、今や彼女は『人形』。主人たる僕の命令には無条件かつ、絶対服従。そもそも、彼女の精神からは羞恥心など削除済み。何のためらいも無く、服を全て脱ぎ去ると全裸になり、気を付けの姿勢で直立不動。おっぱいも股間も隠さず、全くの無表情で男である僕の前で全てをさらけ出している。完全に僕の支配下にある証拠だ。
僕自身、女性には当然、興味は有るし、ネットなんかで画像も度々見てきたけど、こうして妙齢の美しい女性の裸を生で、しかも目の前で見るのは初めてだ。思わず全身をなめ回す様に見る。その間も女性は無表情で直立不動。その事にたまらなく興奮した僕は女性のおっぱいにむしゃぶりつく。……僕は母乳を飲んだ事が無くてね。そもそも、あの女は失敗作の僕の事なんか、全く愛していなかった。家政婦に全て押し付けていた。そんな訳で、僕は粉ミルク育ち。そのせいか、僕はおっぱい好き。
さて、『人形』と化した女のおっぱいにむしゃぶりつき、堪能していたら、女の股間の辺りから、何やら液体の滴る音が。おしっこでも漏らしたのかと思ったけど、違った。……なるほど、『そういう事』か。僕は女の表情を見て、納得。
「はぁ……はぁ……はぁ………」
虚ろな目で無表情に立っていた女だったけど、その表情に変化が。その頬は上気し赤みが差し、呼吸が荒くなり、虚ろなその目の奥には怪しい光が。そう、女は僕におっぱいをむしゃぶりつかれた刺激を快楽として感じ、激しく欲情していた。この辺も僕の精神リプログラミングの力。『人形』と化した女は僕からの全ての刺激を性的快楽として感じるのだ。
しかも、理性も羞恥心も既に削除済み。代わりに性欲はとことん上げてある。となれば、『人形』と化した女はどうなるか? 答えは簡単。一切の迷いもためらいも無く、男を求める。今や彼女を支配しているのは女、いや雌の本能だ。雄を求める雌のね。そしてこの場にいる雄は僕だけ。更に言うと、僕以外の雄には反応しない様にしてある。苦労して洗脳術を身に付けたんだ。せっかく手に入れた『人形』をやすやすと他の男に取られてたまるか。さ、お待ちかねのお楽しみの時間だ。僕の方も、念願の童貞卒業を目前にギンギンの状態。
「それじゃ、ベッドに行こうか。付いてくるんだ」
「はい。御主人様」
僕は服を脱ぎ捨て全裸になると、女性に付いてくる様に命じ、ベッドへ向かい仰向けに横たわる。そして新たに命じる。
「セッ○スのやり方は知っているかな?」
「知っています」
「それなら結構。僕の上にまたがり、僕の物を君の手で自分の中中に挿れるんだ。あ、僕の物を触る際には、くれぐれも慎重に優しく扱う事。良いね?」
「はい。分かりました」
自分で入れるより、女に自ら入れさせた方が、より支配感が有って良い。僕の命令に虚ろな目をした女性は抑揚の無い声で答え、命じた通りに動く。ベッドへと上がり、僕にまたがると、ギンギンの状態の僕の物を優しく掴むと自分の中に入れようとする。しかし、なかなか入らない。何度もやり直し、やっと、先端が入った。だが、今度はなかなか奥に入らない。キツいんだ。女性は僕の物を入れようと腰を上下に揺すっている。このキツさ、もしかして……。
「君は処女かい?」
あまりのキツさにもしやと思って聞いてみた。
「はい。処女です」
処女だと返事。これは驚いたね。確か彼女は現在、27歳。かつて男と交際していたと調べは付いていたから、既に処女じゃないと思っていたんだけどな。これは思わぬ収穫。ありがたく初物を頂こう。
「そうか。それは結構。くだらない愛だの恋だのなんかの為に処女を捨てるなんてバカバカしい。唯一絶対の支配者である僕に捧げるべき。君は幸せ者だよ」
「はい。唯一絶対の支配者である御主人様に処女を捧げる事が出来て幸せです」
女性は無表情のまま、腰を使いながら僕の言葉に答える。その顔はやはり、無表情のまま。その間にも、徐々に僕の物は女性の中へと進んでいく。そして先端が何か、弾力の有る物に当たる。……来たか。何に当たったか、察し、新たな命令を下す。
「もっと勢いを付けて激しく腰を上下させるんだ」
「はい。御主人様」
僕の命令に答え、女性は激しく腰を上下させる。女の内部の『膜』が僕の物とぶつかり軋む。この分なら、じきに破れる。そして、その時は来た。何度目かの、押し込み。それに合わせて僕も下から突き上げてやったら、何かが破れた感覚と共に、一気に奥まで入った。更に結合部から、血が流れる。本当に初物だったか。
「おめでとう。君は僕に処女を捧げる事が出来た。これで君は立派な僕の『人形』だ」
童貞卒業と処女を頂くという、二重に美味しい体験。初体験の相手である、『人形』第1号の女性に声を掛けてやる。
「ありがとうございます、御主人様」
『人形』と化した女性は膜の破れた痛みを感じる事も無く、快楽を味わいながら、感謝の言葉を述べる。だが、終わりじゃない。これからだ。
「では、さっそくで悪いんだけど、存分に君を使って楽しませてもらうよ。命じる。僕が良いと言うまで、僕に奉仕しろ。僕を気持ち良くしろ。そして、君自身、全ての刺激を快楽として味わえ。性欲だけの獣になれ」
そう命じ、僕は女性と激しく交わった。いや、激しかったな。特に女性は僕の命令で完全が理性の飛んだ獣になったし。結局、夜明け近くまで、ヤりまくる事となった。色々な意味で記憶に残る初体験となったよ。
「さて、仕上げといこうか」
まもなく夜明け。『人形』と化した女性を欲望のままに犯し尽くしすという形で童貞卒業を果たした僕。だが、それで終わりとはいかない。洗脳を施し『人形』と化した女性。確かに僕の意のままに動くが、現状のままでは、虚ろな目に、無表情、抑揚の無い喋り方と、明らかに正気でない事がバレてしまう。手元に置いて弄ぶなら、それでも構わないが、そうはいかない。彼女には僕の手駒として働いてもらわねばならない。
僕はノートパソコンを取り出し、起動。再びノートパソコンから光の糸が伸び、女性の耳から頭の中に侵入。脳に接続される。
「さぁ、今回の総仕上げ。『疑似人格』を構築しよう」
ノートパソコンのキーボードを高速ブラインドタッチで叩き、プログラムを構築。『人形』の脳へとアップロード。画面に達成率が表示される。30%……52%……76%…………90%……100%。アップロード完了。
脳に接続されている光の糸を解除。ノートパソコンを閉じる。これで、『本当の意味で人形が完成』だ。
「おはよう。僕の可愛い『お人形さん』」
僕は『完成した人形』に声を掛ける。すると、『人形』はにこやかな笑顔でこう答えた。
「おはようございます、御主人様。昨夜は素晴らしい初体験、ありがとうございます。……私、御主人様の所有物にして頂けて、本当に幸せです。あんなくだらない男に好意を持っていたなんて恥ずかしい。御主人様さえ、よろしければ、またいつでも抱いてください。私は御主人様専用の『人形』です」
一点の曇りも無い、爽やかな笑顔。僕から見てもとても魅力的だ。……よし、『成功』だ。僕は『本当の意味で『人形』が完成した』事を確信する。しかし、これはほんの始まり。第一歩に過ぎない。ここで調子に乗ったら、たちどころに全てが崩壊しかねない。油断せず、地道に行こう。まぁ、今はこの『人形』との会話を楽しむかな。
「それは嬉しいね。そうだね、またいずれ、抱いてあげるよ。でも、その前に君の名前を教えてくれるかな?」
「そうでした! これは失礼いたしました! 私の名は、白石 夕子と言います。よろしくお願いいたします、御主人様」
まずは名前を尋ねると、女性はあわててひれ伏し、名前を名乗った。さっきまでの抑揚の無い喋り方や、無表情ぶりとは大違い。改めて、自分の構築した『疑似人格』が上手く機能していると感じる。
『疑似人格』。それは洗脳の第一段階で分解した女性の精神をベースに構築した作り物の人格。ぶっちゃけ、人工知能。一回目に脳内にアップロードしたのは、あくまで、仮処置。これが本命。その女性の表面的な部分。すなわち、喋り方や、態度、癖を再現。及び、思考力、判断力を持たせており、自律行動を可能としている。ま、あくまでも、薄皮一枚だけの薄っぺらな、紛い物の人格。それでも、世間一般の人間を欺くには十分。他人の精神の中身なんて、普通は分からないからね。
「そうか。夕子か。良い名前だね。とりあえず、顔を上げて。お腹が空いたし、ちょっと早いけど、朝ごはんにしてくれるかな」
「はい。御主人様。こちらへどうぞ」
お腹も空いたし、今後についての話も有る。ひれ伏している夕子に顔を上げる様に命じ、更に朝ごはんも頼む。僕の命令に夕子は嬉々として従い、『全裸のまま』キッチンへ向かう。今の夕子の肉体を動かしている『疑似人格』は僕を唯一絶対の支配者と崇め、その命令には絶対服従かつ、服従する事にこの上ない喜びと幸せを感じる。後、セッ○ス狂い。ともあれ、今は夕子の全裸の後ろ姿を眺めながら、キッチンへ。うん、良い眺め。またいずれ、犯してやろう。
「お待たせしました、御主人様。お口に合えば良いのですが」
相変わらず全裸の夕子がそう言いながら、テーブルに並べたのはハムエッグにトースト、インスタントのコーンスープ。更にホットコーヒーの、朝食一式。ハムエッグもトーストも良い感じに焼けているし、インスタントながら、温かいコーンスープも美味しそう。ホットコーヒーも良い香り。今の彼女が『洗脳されている』と誰が気付くだろうか? 僕でさえ、騙されるな、これは。とにかく、頂こう。ハムエッグに箸を付け、一口。……美味い。卵の黄身が良い感じに半熟でハムと絡んで、実に美味しい。トーストもさっくり、香ばしく焼けていて、良し! 温かいコーンスープを啜り、ホットコーヒーで一息。そしてそれを見守る、全裸の美女。生まれてこの方、こんな素晴らしい朝食は初めてだ。
素晴らしい朝食を終え、空も明るくなり始めた。そう長居はしていられないな。僕は『人形』第1号の夕子に命令を与える。
「夕子。君は表向きはこれまで通りに振る舞え。仮に外で僕に出会ったとしても、見知らぬ他人として接しろ。そして、この寮の住人達をそれとなく観察し、深夜に僕に報告しろ。後は追って連絡する。間違っても、僕の存在及び、君が僕の『人形』である事を悟られるな」
「はい、御主人様」
僕の命令に夕子が答えたのを確認し、僕は『門』を開き、自分の住むアパートへと帰る。今日が日曜日で良かったよ。自室のベッドに入ると、すぐさま寝る。何せ、一晩中、夕子を犯していたからね。ネットや本で得た知識を元に色々やって、初めての女の身体を味わい尽くしただけに、いい加減疲れた。逆に『人形』と化した夕子は、まだまだ足りないといった感じだったけど。性欲だけの獣になれと命じただけに。次回はもう少し、控える様に命じよう。
さて、それから数ヶ月。年は明け、1月を迎えた。その頃には、僕は既にハーレムを結成するに至っていた。
「……偉大なる支配者。灰崎 恭也様……。……貴方様の『人形』に加えて頂き、光栄に存じます……」
僕の前には全裸の美女。確か、良家の子女ばかりが通う、聖華院女学院の教師だっけ? さすがは家柄、学力、容姿の三拍子揃った者だけが通える学校だけあって、教師もまた、美女揃い。これでまた、一段と、僕の影響力が増すな。
眼前で綺麗な気を付けの姿勢で立つ全裸の美女を見ながら、僕は順調に計画が進む事にほくそ笑む。『人形第1号』の夕子を皮切りに始まった、美しい女を『人形化』させる計画。それは実に順調に進んでいた。夕子は実に役立ってくれた。僕は彼女に声を掛ける。
「夕子。全ては君のおかげだよ。君の働きのおかげで、芋づる式に女を手に入れる事が出来た。それに、ここは拠点として実に良い。君は良い『人形』、『管理人』だよ」
「ありがとうございます、御主人様。御主人様のお役に立てて、夕子は感激に堪えません」
全裸の夕子は、陶酔しきった表情を浮かべ、感謝を述べる。その股間はびしょ濡れだ。……ご褒美をやるか。
「夕子、褒美をやろう。たっぷり可愛がってあげるよ」
「あぁ…………ありがとうございます! 御主人様! 私の身体で存分にお楽しみください!」
性欲の炎を瞳にギラつかせる夕子は僕の後に従いベッドへ。そして思う存分、夕子の身体を味わう。
「いやはや、上手くいったな。予想以上だよ」
夕子と激しく交わりながら、彼女を手に入れてからの事を思い返してみた。
そもそも夕子を『人形第1号』に選んだ理由。美人である事もさる事ながら、一番の理由は彼女が、とある『寮』の管理人であった事だ。
僕が行き付けにしていたファミレス。比較的、新規勢ながら、美人揃いのウェイトレスと、露出の高い衣装。そしてリーズナブルながら、美味な料理で急速に勢力を伸ばしており、各地に支店を展開。それと同時に、社員寮も作っていた。福利厚生にも力を入れているらしく、社員寮ながら、下手なホテルより良い内容だと知り、これは使えると判断。拠点とすべく、調査開始、その結果、夕子が管理人を務めるこの社員寮に決めた。
僕は今の所、世界征服とかは考えていない。さすがに1人では無理。しかし、僕のバックアップとなる組織の力は欲しい。だが、僕には組織運営のノウハウが無い。だから手始めに、選んだのがファミレスチェーンの乗っ取り。それにファミレスなら、食いっぱぐれが無い。こちとら、一人暮らし。毎日の食生活は切実な問題でね。
さて、洗脳し『人形第1号』となった夕子だが、これが予想以上に使える女だった。これは嬉しい誤算。元が尽くす性格だったらしく、疑似人格となってもそれは変わらなかった。彼女は唯一絶対の支配者である僕に、それは誠心誠意仕えた。日中は身の回りの世話から始まり、夜は僕の性欲の捌け口として。まぁ、夜に関しては、本人も喜んでいた。何せ、僕から与えられる刺激の全てが性的快感になる訳だし。
それだけでなく、夕子は言葉巧みにファミレスのウェイトレス達を誘い込み、僕があらかじめ持たせた睡眠薬を飲み物に仕込んでは、それを飲ませて眠った女を僕に捧げた。おかげで、僕は次々と女達を『人形化』させ、遂には僕の行き付けのファミレスの女店長までも『人形化』させるに至った。
その後も実に順調。何ともラッキーな事に、洗脳した女店長は、ファミレスチェーンのオーナーの娘。しかも、彼女には男を洗脳する能力が有った。洗脳で脳内を弄った際に、潜在能力が目覚めたらしい。これはとてもありがたかった。僕の洗脳術は女に絶大な効果が有る反面、男には効かない。しかし、彼女がいれば、その欠点を補える。しかも、オーナーの娘だけに、経営陣の中枢に食い込む事が出来る。後は彼女を使い、経営陣の男達を洗脳。僕の洗脳術と合わせる事で、男女共々、経営陣の完全掌握達成。とりあえず、経営は任せつつ、その傍ら、僕は組織運営について学ぶ事に。努力無しで成功は無いんだよ。僕は非才、凡人の身だからね。
かくして、ファミレスの女達。更にはファミレスの経営陣をも手中に収めたものの、相変わらず僕は、安アパートでの一人暮らしを続けていた。いきなり暮らしぶりが変わっては怪しまれる。いかに洗脳術を使えるとはいえ、男には効かないし、何より僕自身は弱い。魔道の使い手は僕以外にもいる。下手に動いて目を付けられてはたまらない。あくまでも地味に地道に。着実に地盤を固め、安全を確保しないといけない。それが弱者の処世術。
……そう思って行動していたんだけどね。やっぱり、世の中甘くなかった。僕の一番恐れていた事態は、迫りつつあったんだ。
「久しぶりにお姉様に会えますね。来る度に嫌な顔をされますが……。とりあえず、お姉様のバイト先の『ファミレス』へ行きましょう」
まさか、僕の洗脳した女の身内に魔道の使い手がいたとはね……。
長らくお待たせしました。第134話です。
洗脳術を身に付け、いよいよ野望に向けて動き出した灰崎 恭也。その第一歩として、行き付けのファミレス乗っ取りを開始。まずは、ファミレスの社員寮の女管理人を洗脳。手駒に。
更に洗脳した女管理人を使い、同じ社員寮にいる他の女達を次々と洗脳。更にその女達を使い、他の女達を洗脳と、連鎖的に増やしていく。
遂にはファミレスの女店長を洗脳。彼女がオーナーの娘である事。更に洗脳した彼女が男を洗脳する力を得た事を利用し、経営陣の男達を洗脳。自身の洗脳術と合わせて、経営陣の掌握達成。名門女学院にも洗脳の魔手を伸ばし、順調に野望に向かって進む灰崎 恭也。
しかし、世の中やはり、甘くない。彼の知らない所で、思わぬ邪魔が入ろうとしていました。
では、また次回。