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奏でる者のいない鐘  作者: 春子
◆◆少年編◆◆
13/16

【法廷】

今回はBL表現がかなり強いです。一応警告致します、苦手な方はUターンでお願いします。

此処ではない、現実でもあの世でもこの世でもない何処かの場所。


暗い無人の法廷の中、被告人席に拘束された一人の背が高い男性が座ってた。


煤けた暗い色の金髪を、前髪以外をオールバックのように後に流し、細い顎には同じ色の整えられた髭が生えている。


見るからに育ちが良さそうな顔立ちは美形ではないが整っている。肌は不摂生のせいで青白い。


うなだれた彼の不健康に細い体には、王族特有の白いトガが巻き付き黄金の装飾品が輝いている。その上から幾重にも武骨なベルトが巻かれて食い込み、椅子に括り着けられていた。


「よーう起きろ起きろ。」


そんな彼に掛けられるのは何処か引き攣ったにやけた男のだみ声。


うっすらと開いた男性の瞳は鈍い青色。彼のタドン目は憎々しげに目の前の人物を見つめた。所謂、裁判官席に座っているのは柄の悪い男だ。


ボサボサの銀髪は乱雑に一つに括られて、ゴツイ顎には無精髭。スウェットのような濁ったカーキ色のダブダブの服の上からは、赤い派手な半纏を羽織っている。足にはサンダルと、正にだらし無い格好である。


しかし、何故かその顔には複雑な紋様が描かれた目隠しの役割の装飾品が着けられている。ゴツイ水泳用ゴーグルのような形のそれだけが、彼に似合わない高級感ただよう雰囲気を演出していた。


彼の周りには麦酒の空き缶が塔のように積み上げられ、机の上には様々なツマミが置かれている。男は彼を見下ろすと片手を上げて笑いかけた。


「おっひさ〜!」

「…。」


拘束された彼は無言で睨み付ける。何故なら彼の口には口輪が嵌まっているからだ。


「二度目の人生、お試し期間どうだった?楽しかったかヘスタロドス?」


キシキシ笑う男は歯を剥き出しにした。


椅子に座る男性はヘスタロドスだった。以前の人生を終えた彼の、最後を迎えた姿である。


唸るヘスタロドスを見て首を傾げた男は「おおっ!?」と惚けたように手を叩いて、自分の寝癖だらけの頭を掻いた。


「スマンスマン忘れてたわ。」


男がそう言った瞬間、ゴツイ金属片とネジ、頑丈な革で出来ていた口輪が自然に外れた。唾液の糸を伸ばしながらソレを吐き出したヘスタロドスは汚れた唇を舌で舐めながら、ふてぶてしく背筋を伸ばして男を睨みつけた。


赤い舌が翻る。


「盗み見は満足だったか…?さぞかし滑稽だっただろうな、何も知らない私は。」


そう言った瞬間、男は割れるように破顔した。


「もう最高の見世物!」


彼の二度目の人生を思い出してキシキシ笑う男を、ヘスタロドスは憎々しげに被告人席から見つめていた。


彼は思い出していた。何故自分が二度目の人生を繰り返す事になったのかを。

始まりは以前の人生で死んだ事だった。悪虐非道を尽くした彼は地獄への旅路を辿っていた。


全身の皮膚を地獄の番人達の刺がある棒に引っ掛けられ、血を滴らせながら地獄への道を歩かされる。


周りは黒いドロドロとしたヘドロのような障気が渦巻き、ヌメリを帯びた尖った砂利が敷き詰められた道を歩く度にヘスタロドスの足を傷付けた。足を踏み締める度に彼からは苦痛の声が漏れ、足を止めれば醜い番人達に突き飛ばされて歩かされる。


そんな彼の目の前に現れたのが不敵に笑うこの男だった。


今と変わらない服装の男は言った。


「俺と契約しないか兄ちゃん?」


血まみれの顎を掴んで、無理矢理上げさせた彼の顔に囁いた男を、ヘスタロドスは理解出来ずにただ睨みつけていた。


「訳…分からん。汚い手で触るな…汚れる…、私を誰だと思って…いる、即刻…死に曝せ…。」

「クケケケ!高っけー鼻面だな!つまりだな、俺と契約したら二度目の人生をお前にやろうって言ってんだよ!」


暴力的に笑った男は、息も絶え絶えなヘスタロドスの顔をギリギリ締め上げながら大音量で告げる。


「俺は今最高に退屈してんだよ!面白そーだと思った革命は目茶苦茶退屈で面白くねーし、グロばかりで全然楽しくない見てて飽きる。ガッカリだ!覗いてもモツばかり見えて食欲無くなるだけだ!俺は最も心踊る冒険や困難を乗り越える友情、互いに励まし合い戦う家族愛、成長する少年達の姿とか見たいんだよ!なのに無かった、鬱ルートばかりで勘弁!こんなに最高に楽しめそうなシチュエーションなのに、勿体ないと思わねーか?アア?」


まるで今までの全てを見ていたかのような言葉に、ヘスタロドスは眉をひそめる。彼を構わない男は「だから…。」と言葉を続ける。


「お前、鬱ルートの責任持って一度生まれ変わって引っ掻き回せよ。」

「何を…言っている…。」


異常な雰囲気にヘスタロドスの生白い体に震えが走るが、彼は頭を縦に振らない。それを見た男の瞳が細められる。


「良いのか?このまま行けばお前は地獄行きだぜ?」


そう言った男はヘスタロドスの体中にある裂傷に指を突き立てた。男の不潔に伸ばされた爪が、グリグリと動き肉をえぐる。「いあ!?」


ヘスタロドスは痛みに体を捻るが、男の太い両腕に囚われた彼の体は逃れられない。逆に抵抗しようとする度に容赦なく殴られて、間接を捻り上げられる。


「こんなので音を上げる奴が地獄に逝けるか?あそこはな、皮膚を剥いだり」

「ぐあぁ!」


暴行によってグッタリとした彼に躊躇なく爪が傷口の皮膚を剥ぐように突き立てられる。

「傷口に焼けた鉄を押しつけられたり」

「ギャ!」


伸ばされた爪がギリリと傷口を引っ掻き肉をほじくり出す。止めようとヘスタロドスの手は男の手に爪を立てて血を滴らせるが、男は楽しげに笑うと、ヘスタロドスの細い指を反対側に捩曲げた。


「アギャァァ!」

「お〜と気絶すんなよ、お坊ちゃま!まだまだあるんだぜ。」


骨折の痛みに気絶しそうなヘスタロドスの頬を叩いた男は、崩れ落ちた彼に馬乗りになり、楽しげに地獄の様子を語りながら手を振るう。暴行が繰り返され、その度にヘスタロドスの傷付いた体が跳ね上がり不様な悲鳴が上がる。


男が手を離した時には、ヘスタロドスは声なく地獄への道の上に横たわっていた。


血のシミがまるで模様のように滲む純白のトガは、はだけて地面に広がり、体中にある傷口は酷い虐待を受けて引き攣り、血を滴らせていた。


白い皮膚のあちこちには青黒い鬱血があり、顔はデコボコに不格好に腫れて、涙や唾液、鼻水で不様に汚れている。


「意外とお前強情だなー。」


単純に苦痛と屈辱で言葉を話せなかっただけだが、男は無言を拒否と判断したようだった。


苛烈な暴行を行ったとは思えない和やかな顔で呟いた男は、溜息をつきながらヘスタロドスの腹の上に無遠慮に座り両腕を組んで悩んだ。


「そうだ!一度お試し期間をやってみるか?十二歳の戦争あるだろ?革命が始まる要因になったやつ。あの日まで待ってやるから、それから決めろよ。」


一言区切り、顔をヘスタロドスに近付ける男。


「人生をやり直して俺の玩具になるか…。」


ドンとヘスタロドスの顔の横に拳が叩き付けられる。男の異常に白い歯が剥き出しになった。


「地獄行きか…。」


低い地を響かせて好き勝手に弄ぶような声が、ヘスタロドスの耳元に吹き込まれる。


その圧倒的な圧迫感と、どこと無く狂気漂う雰囲気に、体をガタガタと病人のように震わせる。


今更ながら、自分はとんでもない物に見とめられたのだと分かった。


笑顔で自分の記憶を消すだとか、今からする処置の事を話す姿には、自分を人格が有るように見ているとは思えない。


憎しみに満ちた目で見られる事や罵倒される事には慣れている。だがしかし、此処まで【どうでもいい物】として扱われる事は初めてだった。


男は完璧にヘスタロドスを【者】ではなく【物】として見ていた。


「何故私なんだ。」


思わず呟いた彼。


男の大きな褐色の両手に首を締められながらの言葉に、男は事もなさ気に応えた。


「あ?何と無くだよ。」


喉の骨がポキンと折れる音を聞きながら、ヘスタロドスの意識は途絶えた。


そして、物語の初めに繋がる。赤子の産声が響く。



話は二度目の人生を経験したヘスタロドスに戻る。


「たくよー。坊ちゃまったら、途中から歴史を変えようとするんだもん。馬鹿な事するから焦ったぜ〜。あのな、誰が死ぬとかの小さな事は変えれるけど、歴史は変更できねーの。坊ちゃま死んだりしねーかハラハラしたけど、お前の母親は偉かった!泣いちまったぜ。」


男は一息で言うと、ヨヨヨと、わざとらしく泣くとティッシュで顔を拭いた。


「白々しい…。」


大人の体を取り戻したヘスタロドスは、悪趣味とも言える男の言動に細面をひそめて威嚇するかのように口を歪めた。彼の大振りな白い歯が獣のように剥き出しになる。それを無視した男は、ワクワクとした雰囲気で身を乗り出して聞いた。


「で?どうする?」


問い掛けられたヘスタロドスは男を見上げる。一瞬の沈黙の後、彼の独特な色合いの青い瞳が真っ直ぐ男を見つめる。


「契約する。」

「キシシシ!何でだ?歴史は変えられないんだぜ?無駄なのに、やけに素直に頷くなぁ?」


自分から提案した癖に、からかう言葉に、迷いなくヘスタロドスは答えた。


「母上は死んだが、前回より間違いなく良い人生を歩んだ。運命を変えられなくても、変えれる事はある。」


彼は真っ直ぐに言った。あれ程澱んでいた瞳には、強い理性と覚悟が輝いていた。そのどちらも、前回の彼が一度も持たなかった物だ。


彼の心には絶望の中にいた時に母から告げられた言葉が響いていた。褒められた魂でない自分だが、これだけは言える。自分という存在は母を幸福にした。


自惚れではない、自分が居たからこそ、【運命】に飲み込まれても母上は幸福だったのだ。


それなら、今から起こる悲劇の主人公達を幸福にしてやる事もできるだろう。


【歴史】と【運命】の茨の道を歩く彼等の足元に、上等な絨毯を敷いてやろう。傷付く彼等に気付かれないように傷薬を置いてやろう。彼等が捨てた大切な物を拾ってやろう。


歴史の改ざんではなく改善を行う。それが私の【運命】。


前回私が殺した命と、今回失った命の為の勤めだ。男は一瞬目をすがめると、ヘスタロドスが瞬きした次の瞬間には、彼の目の前に居た。男はヘスタロドスの髪を掴むと無理矢理顔を上げさせ、自分を見つめさせた。


「随分と上等な目をするようになったじゃねぇか…。良いな…、欲しい…。」


痛みに歪めたヘスタロドスの青色を見た男は、ウットリと呟き彼の瞼を指でなぞった。先程までふざけた様子を潜めた男の低い声に宿るのは紛れも無い欲望。あれ程、自分を無価値な物と見ていた男の、欲に塗れて自分を欲する様子に困惑するヘスタロドス。


しかし、それは物欲だが。


「なあ、これ俺っちにくれよ?坊ちゃまの瞳、綺麗だから欲しい。」


その言葉にヘスタロドスの唇が弓なりになる。


皮肉な事だが、此処まで自分を身も蓋も無く欲しいと言われる事は初めてだった。それが人格を伴わない物欲でも、欲望を向けられる事は意外と気持ちいい。


チェシャ猫のように歯を剥き出しにして笑ったヘスタロドスは、事もなさ気に言った。


「良かろう褒美に与えてやろう。しかし、それは全てが終わった後だ。過ぎれば私のこの体、一片残らずにお前に捧げよう。」

「マジでか!?やったー!坊ちゃま意外と善い奴だな!」


残酷な事を言いつつ無邪気に喜ぶ男は、懐から契約書のような紙を出した。そこには契約内容と、幾つかの条件が書かれていた。


「じゃあ、話はまとまったし、契約しよーぜ。」


ヘスタロドスは書かれた条件を見て、激しく眉をひそめた。


「ちょっと待て、何だこの条件は!?」

「スマン。俺っちと契約する子は、この条件をクリアしてないと無理な訳。」

「ふざけるな!私は男だ!何でこんな事にまで口出されないといけない!」


椅子をガタガタ揺すりながら顔を赤くして怒鳴るヘスタロドスに、困ったように笑う男。


「変える事出来ないよ〜、こっちにもイロイロあるの。さあ、契約する?しない?」

「グヌヌヌ…、理解した…。」


顔を真っ赤にしたヘスタロドスは憎々しげに男を睨むと、正に不承不承と言った様子で頷いた。彼を満足そうに眺めた男はウキウキと微笑みながら右手を上げた。


「それじゃ、契約だ。ここに捺印しな。」

「……そう思うのなら解け。」


契約書を指差す男に、冷たい目線で告げるヘスタロドス。その体は相変わらず武骨な革のベルトにて椅子に拘束され、手足を指一本動かすことは敵わない。


「え〜何か勿体ないな…。」

「馬鹿か!さっさと解け!」


意味不明な事を呟く男に青筋を浮かべて叱咤するヘスタロドス。しかし、男は細い体に幾重にも拘束具を巻き付けられた姿を見て「勿体ない」と再度呟き、解く気がない。


「そうだ!別に指じゃなくてもいいじゃん!」


暫く悩んだ男は何かを思い付いたようで、おもむろに自分の人差し指の腹を食いちぎった。かなり派手に噛み付いたらしく、紅玉のような美しい血がタラタラと滴る。指先を擦り合わせて右手の指の全体を自分の血で汚した男は、汚れていない左手でヘスタロドスの顎を掴み、上向き加減に調整して固定した。


「な…何をする!」

「いや、別に指印じゃなくてもキスマークでも良いかなって?女の子が口紅着けてやるみたいに、此処にチュッてやればよくね?」

「良い訳あるか!汚い止めろ!近付けるな!」

「動くな動くな、綺麗にお化粧してやるから。」

「必要ない!ムムム〜!」


顔を振って全力で抵抗しようとするが、ニヤニヤした男の手の力は凄まじく、ヘスタロドスの薄い唇に紅のように血が塗られる。抵抗したために男の血が口の中に入り、鉄臭さに眉をよせる。


男の血は血で有ることを疑う程鮮やかに紅く、ヘスタロドスの唇は本当に紅を塗ったかのように色付いた。


「さーあ、ここにチュッてしろ〜。」

「………。」


息を荒くしたヘスタロドスは諦めたのか、抵抗せずに渋々突き付けられた契約書に顔を寄せると、欄に口づけを落とした。


小さな湿った音と同時に、赤い跡が契約書にクッキリと付く。その瞬間、契約書は契約完了を告げるように白く輝き、何処ともなく消え去った。


「さあ!契約完了だ!大切なお坊ちゃまには俺からプレゼントをあげよう。」


男がパンパンと手を叩くと、可愛いらしくラッピングされたオレンジ色の箱がヘスタロドスの膝の上に現れた。


「何だこれは。」

「才能零なお坊ちゃま一人じゃ、引っ掻き回す前にお前の身内や貴族とかに殺されちまうだろ?そんな情けないお坊ちゃまに、優しい俺っちからのプレゼント〜。役に立つ能力が目白押しだぜ!」


ビシッ!と片手と片足を上げた不戯けたポーズで告げる男。箱からはキラキラと新雪のような燐光が漏れてヘスタロドスを照らしていた。


「それじゃ期待してるぜ、お坊ちゃま。俺っちもイロイロ協力してやるからな、何かあれば呼び寄せな。」「御免被る。」


憎々しげに笑った彼に笑い返した男がユックリと両手を左右に振るう。すると、その度に何処からともなく清らかな鐘の音が響き、ヘスタロドスを包んだ。ヘスタロドスの体が淡く光り、端から次第に消えていく。


「じゃあ、二度目の人生頑張れよ。」


消え行く意識の中、ヘスタロドスは目の前の男に尋ねた。


「お前は何者だ?」

「俺っちは人間に最も親しまれ、憎まれた存在さ。ヤーベとも呼んでくれ。」

「悪魔か…。」

「さーあー!どうかな?キヒヒヒ!」


カンに障る笑い声を最後に、ヘスタロドスの意識は途絶えた。


誰もいない法廷の中、缶麦酒を開けたヤーベは自分の指をまるで見えているように目前に翳していた。その指はあれ程激しく出血していたのに、傷跡一つもない綺麗な物である。


一口酒を口に含んだヤーベは頬をポリポリ掻いた。


「やべえ〜、お坊ちゃま俺っちの血を飲んじゃったよ…。」


ボソッと呟いた声は誰に聞こえる事もなく消えていった。


蔓薔薇の広場にて気絶していた少年はユックリと目を開いて立ち上がる。彼が呻きながら上半身を起こすと、その脇にはオレンジ色の箱が置かれていた。


不似合いな程可愛いらしいラッピングが施されたそれを憎々しげに抱えた少年は、鈍い青い瞳をすがめると立ち上がった。


芝生の上に落ちていた扇を拾った彼は、大切に懐にしまう。


大人のように溜息をついた彼は、幼い瞳に相応しくない色合いを浮かび上がらせて空を見た。


もうすぐ調教師から帰ってくる奴隷に、庭の整備を命じないといけないな…。


彼はポツリと思い、脇にある箱も見た。コレの中身も気になる。あの気違いは何を私に与えたのか。


彼は汚れた服をはたくと、宮へ向けて小さな足を踏み出した。庭に小さく作られた四つの粗末な墓達に一言告げて。


素朴な白い石を置かれただけの小さな墓は、咲き誇る花と蔓に囲まれて、静かに小さな王子を見守る。何処からともなく賑やかな女性達の声がした気がしたが、それは恐らく気のせいだろう。




【グラデネチカ側妃】


第十二王子ヘスタロドスの実母。女でなければ最高学院に入学可能な程の才女。特に薬草学の知識は天才の部類に入る。


男性に負けない程の長身で、くすんだ金髪に鈍い青色の瞳を持つ。大振りの歯が特徴的な、チェシャ猫のような誇り高い女性。 ヘスタロドスの外見は、完璧に彼女譲り。


一回目の人生では親しい侍女を失い、息子や夫にも蔑ろにされて孤独に狂う。不幸なのは自分に美しさが足りないせいだと思い込み、優れた知識を活用して残虐な所業に手を染める。


今回の人生では息子に慕われ、寵妃という心を許せる友人も出来て冷たい後宮の中で心の寄り所を得た。息子を守る為に身替わりとなり、凶刃に倒れた。


ヘスタロドスの存在で一番人生を変えられたであろう人物。孤独の中で死んだ前回とは違い、母としての誇りに満ちて死んだ。

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