プロローグ
SF要素は実は無い!
プロローグ
「コージ、お昼寝?」
屋上の一段高い所にある給水塔の畳二畳程度のスペースが少年のお気に入りの場所だった。ここで寝転びながら空を眺めるのが好きだった。今日も彼は昼休みにここで五限目が始まるまで昼寝を決め込んでいるのだ。
そろそろ残暑と言う奴が終わりを告げて、時折、吹きつける少し冷たい秋風が実に心地よかった。
そんな彼を覗きこむようにショートカットの少女が声を掛ける。
「ん? ああ、ツバサか……」
コージと呼ばれた少年は寝ぼけ眼で少しだるそうに言葉を返した。
「いつも言ってるけど、俺からのアングルだとパンツ見えるぞ」
そして、視線を彼女の下腹部の方に移すと特に感情を込めずに言葉を続けた。
「見せパンだから問題ない」
彼の言葉に少女も動じない。そっけなく、そう言うと彼の隣に座ると彼女も空を見上げた。少しの間、二人は無言だった。どちらも言葉を発さずに空を眺める。その空気は冷めていたりギクシャクしたりするものではなく、なんとなくそれが当たり前の様な雰囲気を持っていた。
「なあ、それっておもしろいのか?」
「つまらなくはない」
「そっか……」
少年の素朴な質問に少女も素っ気なく答える。彼女はよく彼の真似をする。何故、彼女がそのような事をするのか少年にとって不思議でならない事であった。
しかし、少年はその理由を尋ねた事はなかった。聞く事に抵抗があるわけではない。ただ、単に彼には興味がない事だったのだ。
「コージくん、お昼にしよ!」
屋上の扉がガチャリと音を立てて開くのとほぼ同時にそこから別の少女の声がした。そして、ぞろぞろと五人の男女が彼の周りに集まろうとする。
こうなると、ここは狭くていけない。コージは観念するとランチマットを広げている彼の仲間達の所に行く。ツバサも彼に続いた。
「今日はね、ミサキちゃんと一緒にみんなの分も作ったんだよ」
「ワタシも手伝った」
「うん、三人で作ったんだよね!」
「おー、ミサキちゃんの手作り弁当が食べられるなんて、ゴウ、お前は幸せもんだな!」
「ボクに振るのかい?」
「ふふふ、沢山作ったので皆さん、頑張って食べてくださいね」
「ふむ、では馳走になるぞ」
「はい!」
行き成り賑やかになったな。コージはこんな感想を抱きつつ弁当に手を伸ばした。彼は一人でいる時間が好きだった。
「コージくん、美味しい?」
「カエデは料理が上手いからな」
「ワタシも手伝った」
「ああ、ツバサ、がんばったな」
そう言ってコージはツバサの頭を撫でてやる。
「ちょっと、リョータくん。それボクが取った奴……」
「ふん、こういうもんは口に入れたもん勝ちよ!」
「そ、そんなぁ……」
「ふふふっ、まだ沢山あるので大丈夫ですよ」
恐らく今の自分は優しい目をしているはずだ。コージはこう思った。仲間たちと他愛のない話をすることの方が一人でいる事より好きだった。
だから、彼は思うのだ。
ずっと、こんな時間が続けばいい、と。
やがて、それが彼のたった一つの願いとなっていったのだ。
登場人物紹介
東 孝司
……本編主人公。ハーレムものによくあるイケメン。
南井 美咲(M-00339)
……どこぞの宇宙からやって来た人型調査端末。コージと出会い居候になる。
西野 楓
……コージの同級生兼通い妻。(外見描写的な)ツバキのカマセ。
北家 椿
……完璧超人兼コージの嫁二号。コージをキョドらせるのが好き。
白山 良太
……コージの同級生。ムードメイカー的な存在。
発村 剛
……コージの同級生。外見ヤクザのヘタレ。通称ゴウ。
中野 俊夫
……コージのクラスの担任。『イケメンは死ね』が座右の銘。
※名前の由来は縦読み。