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未来であなたと踊りたい  作者:


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「ただいまぁ」


 友達と別れて、学校から10分ぐらいの距離にある家に帰り着く。

 今日の夕飯なんだろうなぁと思いながら玄関の扉を開ける。田舎だから鍵とかかかってない。

 いつもならすぐお母さんが『おかえり』と顔を出すのに、今日に限って家の中はやたら静かだった。


「あれ? おかーさん?」


 大きい声で呼んでみる。

 するとパタパタ忙しない足音が聞こえた。


「おかえり。ごめんねぇ、結衣。恵理子(えりこ)、疲れちゃったからって寝てて」


 台所から顔を覗かせたのは私のおばあちゃんだった。

 お母さんのお母さん。普段は近所の別の場所に住んでるおばあちゃん。なんでおばあちゃんが、と考えたところで、


「……あ、……お母さん、今日検査、なんだっけ……」

「そうなのよぉ。病院が混んでたみたいでね。疲れたからって寝てるの」


 居間にぺいっとランドセルを放り出して、台所に向かう。油の弾ける音が聞こえた。ちらりと音の方を見ると、唐揚げがあがってる最中だった。


「手洗っておいで。おやつも買ってきてるよ」


 エプロンで手を拭きながら伝えてくるおばあちゃんに、けれど私の頭の中は、お母さんのことでいっぱいだった。







「お母さん、今日はなんの検査だっけ」

「今日はねぇ、……ええと、骨シンチ」

「こつしんち……?」

「骨にがんが転移してないかの検査だって」

「……ふーん……」


 夜7時。よっぽど疲れてるらしいお母さんは、寝室で眠ったままだ。お父さんもまだ仕事。だからおばあちゃんとふたりだけの夕飯だ。

 山盛りの唐揚げをつつきながら、こつしんち、ともう一度唱える。全然馴染みのない言葉だった。


「それで? 結果はどうだったの」

「すぐにはわかんないって」

「……そっかぁ〜……」


 おばあちゃんの唐揚げ。

 お母さんが作るのよりちょっと味が濃い。


「本当はねぇ、手術前に入院してまとめてするらしいんだけど」

「まとめてできないの?」


 ううん、とおばあちゃんは少し考える様子を見せて、


「本土だったらまとめてできたかもしれないけど……」

「……お母さんの手術、うちの島でできないからそんな感じなの?」

「そうなのよぉ。コロナのせいもあってね、本当なら手術前にまとめて検査するみたいなんだけど」


 私の住んでるところは、日本の、南のほうにある小さな離島だった。

 学校もあるし病院もあるしコンビニもある。でも……でも、そうはいってもたかが離島だ。

 雑誌とかは全部遅れて入荷する。マックとかもないから、月見バーガーなんて私は食べたこともない。スタバもそうだ。フラペチーノってなんだろうね?

 この前もやたらヘリの音がうるさいなぁと思ったら、大怪我した人が、島の病院では診れないからとドクターヘリで運ばれて行った。


 そんな不便な離島。

 私のお母さんは、自治体の人間ドックでなにかが引っかかって――それで、島の病院で検査したら乳がんと言われた。

 乳がんをやっつけるには、おっぱいの、がんのあるところだけ切るか、全部無くすかのどちらからしい。でもどちらをするにしても、島の病院ではできないと言われた。本土に行くしかない、と。


 ちらりとカレンダーを見る。

 もうあと1ヶ月しないうちに、お母さんは本土に行って乳がんの手術だ。

 私は学校があるから……あとコロナの影響があるらついては行けない。お父さんもそう。仕事があるから。

 だから本土にいる親戚を頼って、お母さんは手術しに行くのだ。

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