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お母さんっていつ死ぬんだろう。
カレンダーを見ながら私は考える。
今日は2025年1月21日。私は10歳で、お母さんはぴったり40歳。そこから簡単な足し算をして、私は考える。
『お母さんはねぇ、48歳まで生きるのが当面の目標!』
あと8年か、と思う。
あと8年で、お母さんが目標にしてる48歳。
でもそれよりもっと早く。私のお母さんは、死んでしまうかもしれなかった。
*
「見た? 授業参観のお知らせ! も〜やだ! なんでお母さんと味噌汁なんか作んなきゃいけないの!」
「普通に国語とか算数やって、後ろのほうで見ててもらえるほうが楽だよね」
「ほんとそれ! やだな〜」
友達がわいわい話すのを、私はどこか遠くでぼんやり聞いていた。
話題の中心にあるのは、来月――10月にある予定の授業参観について。『ご家庭の味を知ってもらいましょう』なんて名目で、おうちの人を呼んでそれぞれの家の味噌汁を作らされるらしい。
「結衣もそー思うでしょ?」
仲の良い子に突然話を振られて、びくりと肩が跳ねた。
「あっ……うん、えと、……うちは、多分、おばあちゃんが来る予定で」
「えっ? そうなの? お母さん仕事?」
「う、うん。なんか……来月はちょっと忙しいみたいで」
「そっか〜大変だねぇ」
授業参観の話はそれでおしまいになって、今度は今流行りのユーチューバーの話に移り変わる。
胸を撫で下ろしなが会話に参戦して――けれど私の胸に渦巻くのは、お母さんのことだけだった。
私のお母さん――は、全然普通の、お母さんだ。
怒りっぽくて、でもちゃんと優しくて。スーパーでレジの仕事してるお母さん。
そんな私のお母さんは――この前、乳がんって言われた。
ステージ1。トリプルネガティブ、というやつらしかった。




