突然の転移
目を覚ますと、真っ白で無機質な空間にいた。
「おや、目を覚ましたか」
声の方向を向くと、白髪のおじいちゃんがこじんまりと座っていた。
「こんばんわ?」
時間が分からないが、俺の記憶では夜だった気がするので、一応挨拶しておいた。どう考えても年上だし一応敬語で接した方がいい。
「ほほほ、この状況で律儀なものだな幼子よ」
幼子…一応成人してるんだけどな。あのくらいの年齢だと自分でも子供くらいの感覚なのか。
「ひとまず自己紹介をしておこうかの。儂はいわゆる神じゃ。呼び方は解釈で変わるのでの、神様と呼べば概ね間違いない」
「初めまして神様。私は最上武尊と言います」
「初めまして最上君。まぁ、会う前から存じてはおったがの」
神様は意味深に呟いた。
「それで神様、これは一体どういう状況なのでしょうか。もしかして死後の世界とか…」
「そうじゃのう。まぁ、概ね正しいが別にお主は死んでおらんよ」
長い白髭をモサモサと触りながら神様はいった。
「それじゃあ、どうしてこの空間に?」
「まぁ、なんというか。本人の意向というかなんというか、まぁそこら辺はおいおいということで、本題に入ろう」
本人の意向? …本人の以降?? どういう意味なんだそれ。
「最上武尊よ、お主には地球とは別の世界を平定してもらう。俗に言う異世界攻略じゃ」
疑問は解決されず新たな疑問が増えていく。異世界攻略って、またテンプレな。
「最近の若者は、何故か異世界と聞くとやけにテンションをあげよるものなんじゃが、お主は冷静じゃの」
「は、はぁ」
それより今までの生活は?の疑問が大きい。神様って基本的に自分本位にしか動かないのな。
「神が自分本位か、あながち間違っておらんの」
「え、聞こえて、すいませんっ」
聞こえてたのか、心を読める的なやつか。
「いやいや、実際迷惑をかけることになるからの。一応補填はさせてもらうつもりじゃ」
そういうと神は、どこからかホワイトボードを出してきて、図説し始めた。
「お主にやってもらう根本は、あちらの世界に蔓延る様々な災厄を解決して貰うことじゃ。ただし、そのまま行っても即死するだけじゃろうから、3つ、お主の魂に基づいたスキルをやろう。というよりお主の場合は…まぁいいか」
その後も、長々と説明は続いたが要約すると3つに絞られる。
1.異世界で災厄を打ち倒し平和を守る
2.スキルが3つ貰えるのでそれを駆使して上手くやること
3.異世界にいる間この世界は進まないので、終わったら戻ってもいい
スキルガチャ次第で地獄だなこれ。
「まぁ、こんなとこかの。それじゃあ他に聞きたいことはあるかの?」
「特に思いつきません」
「ほほほ、正直なのは良いことじゃ。まぁお主の場合はナビゲータがおるので心配は無用じゃな」
ほいじゃあね〜と手を振られ、意識が遠くなってゆく。
最上が異世界へ旅立った直後。
「……なんじゃあれ。あんなものが平然と世を歩いておったというのか」
髭をさすり、同じところをウロウロと考え込む神様。
「もしかすると、詰んだのかもしれんのぉ」
静かに筆を取り、サラサラと書いたその2文字は、
『遺書』だった。




