#4 魔術師をイジる
「もったいないなぁ……」
傍らにいた青年が残念そうにボヤく。
パブロフらのやりとりを一部始終見ていたようだ。
「巨乳シスターのことか?」
青年の服装を見たパブロフが、少し引き気味で返答する。
タンクトップがピッチピチのおかげで、青年の乳首が浮き出ているからだろう。
「キレイ系だし、攻撃力がバリ高そうだし。いい戦力になりそうじゃない?」
「なるほど。アニメ声の毒舌で味方を全滅させてくれそうだ。どうでもいいが、オマエのペットボトルのキャップみたいな乳首は、音量調節ができそうだな」
「帰っちゃったものは仕方ないか」
でっかい乳首の青年がタバコを取り出し、ひと息つく。なぜだか、青年のツムジと乳首から、ポンピーと煙が吹き出した。
オマエは機関車か! 頭から出てるのは狼煙かっ!
青年から出るシュポッポーなケムリを目にしたパブロフは、そっぽを向いて笑いをこらえる。
紫煙のニオイに反応したのだろう。シスターがザップリと池から飛び出した。
お返しとばかりに、パブロフにキックを叩き込む。だが、パブロフの濃厚なマッスルにはね返され、シスターは派手にすっころぶ。
何を思ったのか、地面で見事な大開脚を披露する。
シスターの一連の動きは、飼いならされたアシカのようだ。
「なあ、頭と乳首からケムリ噴いている“機関車とんます”みてえな、そこのアンタ。ポッポーって、タバコ1本わけてくんない?」
シスターは、でか乳首の青年に視線を当てると、V字開脚からM字開脚を披露する。
寝ころんだ状態からブリッジ体勢へと変形。
ブリッジを20秒間キープしたのち、潰れるとみせかけて、力技でそのまま立ち上がった。
釣り人たちの拍手が聞こえる方に体を反転させ、照れた様子で手を挙げて応えてみせる。
高度な動きを見せたシスターは、尻に食い込んだ水着をピチっと元の位置に戻す。
胸の谷間を強調しながら腰をクネクネさせ、暴走したサンバダンサーのような動きで青年に近づいていく。
身体能力は高そうだが、動きが斬新すぎるな……。
シスターの珍妙な動きをじっとりした目でパブロフは眺めていた。
「シスターって成人だよね? なら、いくらでも吸っていいよ。ところで、おふたりさん。ボクとパーティー組む気はない?」
笑みとシャツに乳首を浮かべた青年が、パブロフとシスターを交互に見やる。
「そうだねえ……。どこのパーティーにも入れてくんなかったし。アッシは構わないよ」
加入を拒まれる理由がわからないようだ。股ぐらをポリポリ掻くシスターは、シレっと鼻から白煙を放出した。
「で、キミはどうする?」
いまだに乳首からケムリを噴き出す青年が、屈託のない笑顔をパブロフに向ける。
汽車ぽっぽ青年を直視したくないのか、当のパブロフは目をつむり、シスターの巨乳に向かって左右の人差し指をのばす。
シスターはパブロフの指を青年のほうに軌道修正する。
咥えなおした5本のタバコに火を点けた。
「ねえキミ。ボクのはなし聞いてる?」
青年はパブロフにポッポーと軽く腹パンを入れてくる。
「オマエの背筋すごいな。ハイキンマンと呼んでいいか?」
パブロフが汽車ぽっぽ青年の背をどつきたおす。
「人をバイキンマンみたいに言わないでよ……。それより、パーティーの件はどうするんだい?」
「そうだな。俺もどこのパーティーからも加入を断られた。暴走サンバダンサーでも、乳首から煙を出す筋肉バカでもなんでもいい。右の乳首を出した筋肉ジジイがうるさくてな。俺は早く仲間を見つけねばならん。お試しで組んでみるのも悪くなさそうだ。チーム名は“ザ・露出狂”ってところか」
「加入すんのはいいけどさ、ふたつ条件があんだよね」
消防に通報されそうな勢いで、シスターがタバコ五本ぶんの爆煙を吐き出した。
「なんだ? 言ってみろ」
「アンタら服を着ろ! きったねえタマをしまえ!」
シスターは、あきれた様子でパブロフと青年の股間でゆらめく4つのタマを見やった。
「暑かったから、穿くの忘れちゃったよ」
ガタイのいい青年は半裸だったのだ。シャツは着ているが、下半身はフリーダム。パブロフと同様、青年のタマにも砂が付着し、アイスの『ぶきみ大福』のようになっていた。
「もうひとつの条件とは?」
気もそぞろな様子のパブロフが、シスターの巨乳を凝視する。
「異世界でバトル中にさ、ピョコハマ市の実家に強制送還されたんだよね。そんでさ、邪神にリベンジしたいんだよね。そいつに呪いかけられてるみたいでさ……」
シスターは呪いの詳細まで言及しない。
わけアリなのだろうと、パブロフは詮索することなく話しを続ける。
「俺も邪神に解呪してもらうつもりだ。服を着られないという呪いをかけられているからな。俺からも、ひとつだけ条件がある。情が移ると困るからオマエたちの“本名と源氏名は訊かない”。それともうひとつ。俺は武器が一切装備できない。あと、もうひとつ。俺の膝には水が溜まっていてな。あともうひとつ――」
フタを開けてみれば、ガタイのいい青年はマッスル系魔術師。主に火炎系の魔法を操るそうだが、一度も使ったことがないらしい。
光と毒属性のシスターにいたっては、取扱い注意の最狂アタッカーだった。




