牧師のもとに生まれて
登場人物の名前以外は実話です
登場人物
父、陽太
母、名香
妹、佳澄
姉(私)、志歩
私の顔は本当に父親にそっくりである。
母が初産を終え、初めて私の顔を見た時、思わずこう呟いた。
「陽太君じゃん」
しばらくして病院に着いた父方の祖母も、初めて私の顔を見て呟いた。
「陽太だ」
看護師さんですら、「あら、旦那さんとそっくりですね~」と言った。
母は私に授乳すると毎回、夫に授乳しているようでえらく複雑な気持ちになったという。
それほどまでに顔がそっくりな父と私であるが、私の声はそのまま母の声と同じだ。
母も私も男子に負けず劣らず声が低い。
そのため私が生まれたばかりの時、泣いている私を見て両親は、「赤ちゃんがこんな低い声で泣くことあるんだ」と思ったそうだ。
私はこれだけ両親の容姿や声が遺伝しているが、全くそれが見られないのが妹である。
我が家では珍しい高い声。顔は鼻が若干父に似ていて、目元が若干母に似ている。
性格は母に似ているというか、母の姉に似ているというか、色々微妙なところである。
全体的に一体誰に似たのかよくわからんので、突然変異と言われている。
私の父は牧師だ。キリスト教の教会にいる、あの牧師である。
そのため、我が家では日曜日が休日になることはない。
一見不便に思われるかもしれないが、これが意外と良い。
なぜなら土曜日から一泊二日で旅行、ということができないので、大抵平日に旅行するからだ。
学校を休んで行くことができるから、むしろありがたいのである。
教会の友達は、私の父のことを「陽太先生」 または「陽太君」 などと呼ぶ。
私も父の話をする時、それが移って自分の父親を「君」 呼びする。
自分の父を「君」 呼びするのはかなり奇妙な感覚だが、すぐに慣れた。
我が家には、
数えてはいないがおそらく九十冊は越えているだろう大量の漫画がある。
その中に、「聖☆お兄さん」(セイントお兄さん) という漫画がある。
どういった内容の漫画かはぜひ調べてもらいたいが、牧師が好んで読んでも良いのか、甚だ疑問な漫画である。
父に勧められて読んでみたが、なるほど面白い。
キリストとブッダが連発するパワーワードがかなり面白い。
今度お寺出身の友達に勧めてみようと思っている。
だがもう一度言う。
これを好んで読み、それを娘に勧める牧師がいるだろうか。