騎士学校同期にこっぴどく振られた侯爵家次女は伯爵家三男と二度目の恋を始める
アレックスの栗色の髪がふわふわ揺れる。
騎士学校の同期として出会った彼は、二つ下なのに私を愛称で呼ぶ。
出会った時から彼は私を「レイ」と呼んだし私も「レックス」と呼んだ。
入学して早々私は数少ないクラスメイト相手にこっ酷く玉砕し、彼は元恋人を引き摺っていた。
飲み会で泣き付いてしまったことをきっかけに何となく一緒にいた。
伯爵家三男と侯爵家次女が仲良くしていても、恋仲だと囃し立てられないサッパリしている所が騎士学校の良い所だった。
空き時間寂れた売店の前で、瓶の蓋に葛藤する。
「泣いてるか勉強してるかどっちかじゃん」
ーーだって悔しいじゃない。失恋して成績も下がるなんて。
そもそもフラれたのだって、理不尽な理由だった。はじめは親しげにしていて、「好きだ」とまで言ってきた同期に次の日「顔も見たくない」と言われたのだ。「私も」とその場で返事しなかったことでフラれたと思い込んだ彼はすっかり意固地になってしまって、何度誤解だと謝っても取り付く島もなかった。最終的にアレックスが取り持とうとした所、恋仲になったのかと疑われ決別したのだった。
返事の代わりに、無言で瓶を差し出す。
アレックスは毎日飲み会に遊びに忙しそうだ。
ーーのくせに成績が良いのはなんなの。
むくれて結局開けられなかった瓶を交換してきたレックスを軽く睨む。
「本当にいいの?」
「……良いわけじゃないけど」
ここまで冷たくされてまだ好きだとかそういうのじゃないのだ、ただ気持ちの整理がつかないだけ
ベンチテーブルの上で小指が触れる
「行きたいとことかあるでしょ」
入学してすぐフラれてしまったので、折角帝都に来たのに週末もずっと勉強漬けだった。
「一緒に行かなくていいの?」
もうすぐ冬が来るのに熱を持った指が熱くて眩暈がしそうだ。