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まおうさまの勇者育成計画  作者: okamiyu
序章:すべての旅は、茶番から始まる――剣も魔法もまだいらない
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第八話:居場所のない勇者

──「勇者」とは、孤独なもの。


聖剣を手にした代償として、

セリナは居場所を失った。

町から、学校から、人々の心から追い出された。


たった一人、図書館だけが彼女を受け入れた。

そして、魔王だけが彼女を「勇者」として認めた。


これは、

失われた居場所と、

新たな絆の物語。

人は何かを手に入れるとき、

同時に何かを失う。

これが等価交換――

本にそう書いてありました。


ならば、

聖剣と勇者の称号を手に入れた私は、

いったい何を失ったのでしょうか。


答えは「居場所」でした。


「セリナ君、君はもう明日から来なくていい」


「あれ?」


先生の突然の言葉に、

私は何も返せませんでした。


「いやね、君には勇者としての責任があるでしょう?

ここで授業を受けている場合ではありません。

さっさと旅に出て、世界を救わなければ」


そういう"建前"を並べていましたが、

私は知っています。

誰も、将来の国王に楯突こうとはしないのです。

つまり私は、厄介払いされたのです。


寝室に戻って荷物をまとめようとしたとき、

いつも気さくに挨拶してくれたクラスメイトたちは、

皆私を避けるように目を逸らしました。


視線が交わるたび、

罪悪感でもない、

もっと冷たいものが心に刺さりました。


そして部屋。

そこにいたはずのマリさんもいませんでした。


ただ、

下手な字で「ごねん」と書かれたメモと、

わずかなお金だけが残されていて。


「"め"を間違ってますよ」


口に出したはずなのに、

涙は止まりませんでした。


学校を出て、

いつも優しくしてくれた八百屋のおばちゃんたちも、

私を一瞥しただけで、

無言で店を閉め始めました。


いつものにぎやかで温かい雰囲気は、

もうどこにもありませんでした。


走り去った子どもたちの声が耳に残ります。

「見て、聖剣泥棒だ!」


親に止められていたけれど、

その言葉は誰よりも鋭く、

私の胸を刺しました。


今夜泊まる場所を探しましたが、

どこも満席でした。


いつからこの町はこんなに繁盛していたのでしょうか?


少ない荷物を手に、

私はこの、慣れ親しんだはずの町で、

完全に迷子になっていました。


気づけば、

私は図書館の前に立っていました。


何を期待していたのでしょう。

今の私は、

もはや図書館のメイドではありません。

鍵など持っているはずもないのに。


……けれど。


ドアは、

音もなく開きました。


触れてすらいないのに。

明らかにおかしい。

普段の私なら絶対に入らないような異常な事態。


でも、

今の私は、

迷わず足を踏み入れました。


静寂に包まれた図書館の深層。

そこには――

いつもの場所に、

いつものあの人がいました。


近づきたくて、

でも拒絶されるのが怖くて、

私はその一歩をためらっていたとき。


「君は勇者になったことを後悔していますか?」


いつもの、

やさしい声で、

マオウさんが語りかけてきました。


「君が守ろうとしている人々は、

今、君に何をしている?

彼らは保身のために、

君を遠ざけようとしているではありませんか」


「そんな人間に、

命を懸けて守る価値があるのでしょうか?」


「さあ、

すべてを捨てましょう。

責任も、

立場も、

"勇者"という肩書も。

全部、

誰か他の人に任せてしまえばいいのです」


気のせいか、

マオウさんの声は、

まるで図書館全体から響いてくるようでした。


誘うように、

優しく、

甘く、

堕落の底へと引きずり込むような響き。


「私は……後悔していました」


正直に言えば、

そう。

守ろうとした人々に冷たくされ、

私は迷いました。


「――さっきまでは、ですけど」


「なぜです?

それは一時的な過ちにすぎません。

あなたが責任を感じる必要はどこにもありません。

誰も、

あなたのことなど――」


「それでも、

私は"間違い"だったとは思いません」


「なぜだ!

なぜそこまで人間を信じる。

あんな利己的な、

醜い生き物に……

命を懸ける価値などない!」


いつも穏やかなはずのマオウさんの声が、

激情に震えていました。


「……いるじゃないですか、

マオウさん」


私が、

勇者として名乗るようになっても、

変わらずそこにいて。


変わらず、

本を読んでいて。


変わらず、

私の話を聞いてくれる――


そんなあなたがいるなら、

私は……


「頑張れます」


「………………」


「…………………」


「………………………………」


沈黙は、

とても長く感じられました。


やがて、

マオウさんが静かに言いました。


「認めよう。

君を"メイドの少女"としてではなく、

"勇者セリナ"として。

認めよう、

勇者よ」


「――前へ進め。

汝は、

最強の勇者となろう。

私が保証する」


「ありがとうございます。

今までお世話になりました」


私は、

明日、

この町を出るつもりです。


だからこれが、

マオウさんと会う"最後"になる。


……今の私は、

そう思っていました。

この物語を最後までお読みいただき、

誠にありがとうございました。


セリナの孤独と決意はいかがでしたか?

・失われた居場所

・変わらない図書館

・魔王の意外な言葉


読者の皆様のご感想が、

この物語をさらに深みのあるものにします。


もしこの物語が心に残ったら、

ぜひご感想をお聞かせください。

(作者は毎日、図書館の片隅で皆様の声を待っています)


・セリナの決断についてどう思われましたか?

・マオウの真意はどこにあると思いますか?

・この後の展開で期待するシーンがあれば教えてください


どんな短いコメントでも大歓迎です!

皆様の声が、次の物語を照らす灯となります。

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