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まおうさまの勇者育成計画  作者: okamiyu
第四章:勝者も敗者も、恋を知る――月下の武闘会は乙女を育てる
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第七十一話:天使の言葉、星は黒く染まる

セリナの心に生まれた、小さな嫉妬。

優しい彼女が、その感情を“罪”として背負ったとき――現れたのは、あまりにも直線的な“明星の天使”でした。

明けの明星ルキエル、最も頼りになってはいけない相談相手、登場。

「ああ、神様。どうかこの悩みをお聞きください……」

最近、レン君とマオウさんの距離が近づくたびに、胸の奥がチクリと痛む。

それがどういう感情なのか、セリナ自身はよくわかっていなかった。

ただ――それが、醜く、身勝手なものだということだけは、理解していた。

だから彼女は、今日も教会で懺悔を繰り返していた。

「神は、そんなもの聞くわけないじゃないか」

そして――もっとも神に近い存在が、容赦なくそう告げた。

________________________________________

「天使様が……どうしてこんな場所に?」

教会の奥にいたのは、恋のキューピッドではなく、

明けの明星―――ルキエルだった

セリナの驚きも無理はない。

普段のルキエルといえば、宿でお菓子を食べながら漫画を読むだけの“引きこもり天使”なのだから。

「ここは僕の神殿だ。僕がいて当然だろ?」

「えええええっ!?」

王国には五つの大神殿がある。

王都に創世神、グラナールにガブリエル、セルペンティナにラファエル、ラム・ランデブーにミカエル――

そして、ここデュエロポリスでは、最強の戦士として知られる“明星”ルキエルが祀られていた。

「もしかして……天使様って、すごく偉いお方なんでしょうか?」

「神の次に偉いのが僕だ。

だから今夜のおかずを一品増やす代わりに、お前の悩みを聞いてやる」

「……ありがたく、頂戴します。天使様なら……きっと、わかってくれます」

――セリナは、もっとも相談してはいけない存在に、悩みを打ち明けてしまった。

________________________________________

「マスターと王女の関係にモヤモヤする? ……いいじゃないか、それで」

「でも……マオウさんも、レン君も、大切な人なんです。

なのに、それを素直に祝福できない。そんな感情、私の中にあってはいけないんです……」

「なら譲ればいいだろ。なにをそんなに悩んでる?」

「……それも、嫌なんです」

優しい“いい娘”としてのセリナは、二人の幸せを応援したい。

けれど、“女の子”としてのセリナは、それを妬ましく思ってしまう。

どちらもセリナ自身であることが、彼女を一番苦しめていた。

「女々しい奴だな。だから僕は女が嫌いなんだ。

悪魔が作ったくだらない“概念”だ」

ルキエルは、吐き捨てるように言った。

「僕ほどじゃないけど、そいつが強いから、マスターに見初められただけだろ?

だったら、お前が“彼女より強い”ことを証明すればいいじゃないか」

「……私が、強さを?」

「そう。力こそパワー。何よりも単純で、何よりも確実だ。

お前はあのとき、聖剣を引き抜いた。それでマスターに認められた。

だったら今度は、その“聖剣”で王女を倒してみせろ。

そうすれば――お前こそ、マスターの隣に立つにふさわしい存在だと証明できる」

モリアの“全知”とは異なり、ルキエルの“全能”は一直線だ。暴力的で、単純で、だからこそ――まっすぐ。

迷っていたセリナにとって、そのまっすぐさは、まるで明星のように眩しく映った。

「レン君に勝てば……マオウさんは、私を“選んで”くれますか?」

「当然だ。強者は、すべてを手に入れるんだから」

静かに、セリナは頷いた。

――聖剣の柄に、指がかかる。

「……わかりました。私、やってみます」

こうして――

セリナの中に芽生えた、黒く静かな決意が、確かな“かたち”を取った。

今――

ブラックセリナ、誕生。


全知のモリアが“情報”を与えるのに対し、全能のルキエルは“行動”を煽ります。

セリナにとって、その衝動が正義か堕落か……それはこれからの剣が語ってくれるはず。

次回、ついに「剣vs剣」――ブラックセリナ覚醒編、始動です!

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