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まおうさまの勇者育成計画  作者: okamiyu
第四章:王子の毛玉は月夜に溶けて――武道会の果てに触れた唇
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第六十八話:陰陽逆転!マオウ、毛玉になる

デュエロポリスにて、セリナの心に芽生え始めた“ある想い”――それは、誰にも打ち明けられない小さな痛みでした。

一方、レンと小梅の因縁はさらに深まり、ついに“気”の干渉によってマオウに異変が……!?


第68話は、恋と異能が交錯する、ちょっと不安定で、ちょっと毛玉な回です。

デュエロポリスの町の中、宿を探していたセリナは、どこか沈んだ顔でつぶやいた。

「……また、レン君のこと……」

最近、私……おかしいです

マオウさんがレン君を優先するたびに、胸の奥がチクリと痛むんです。

(《俺はアイツのことが好きだ。この気持ちは――本物だ》)

あのときのレン君の言葉が、何度も頭をよぎります。

マオウさんは、どう思っているんでしょうか?

レン君のこと、好きなんでしょうか……?

もし二人が両想いだったら――

「セリナは、どうなるんでしょうか……」

二人が結ばれたら、私はもう、マオウさんのそばにいられなくなるのでしょうか。

旅が終われば、私と一緒にいる理由も……きっと消えてしまう。

(「セリナが大人になったら……マオウさんは、離れてしまいますか?」

「……そうなるかもしれないな」)

……それだけは、嫌なんです。

________________________________________

「おいっ、セリナじゃないか!」

町の通りで、突然声をかけられた。

振り返ると――黒髪の、すごく美人な女の子が立っていた。

……これって、マオウさんが言ってた“ナンパ”ってやつでしょうか?

でも、相手も女の子だし……それに――

「おい、セリナ! 俺だよ、俺!」

なによりお胸が……すごく大きいです。

「……オレオレ詐欺ですか? マオウさんに注意されてます。お金は振り込みません!」

「違うって! 俺だよ、マサキ! ちょっとワケあって女になってたんよ!」

「そんなはずないです! マサキ様は男の人です。女になるなんて――」

「俺もそう思ってたよ。でもあの女……あいつ、マジでまともじゃねえ。

お前がここにいるってことは、レンも来てるんだな? 頼むから、あの女と戦わせないでくれ。

王 小梅は……マジでヤバいんだ……!」

焦るように、マサキ様はレン君のことを気にかけていた。

________________________________________

「俺は女の子だ。女と恋する趣味なんて――」

屋上で立ち上がったレンは、ふと動きを止めた。

何か――自分の身体の異変に気づいたようだった。

「あれ? ダーリン、女の子だったあるか。でも、そんなの小梅には関係ないあるよ。それに――」

小梅は、傷の治療まで始めていた。……気で回復までできるのか。習っとけばよかった。

……くそ、レンを回収するしかない!

私は飛行魔法で屋上に駆けつけた。

「レン! 今は退くぞ!」

けれど、動揺したレンはパニック状態だった。まるで――ゴーストタウンでの、あの時のように。

「今の俺に……触らないでっ!」

その手が私の肩を押し返した瞬間――

「……え?」

私の姿が、ふっと変わった。

変身が――解けた!?

なぜ……?

「あれ? こんな現象、初めてあるね。普通は逆の性別になるだけなのに……」

「マオウ……!」

……そうか、これも“気”の影響か。

________________________________________

帝国には、陰陽の原理に基づいた“陰陽学”という学問がある。

人体には“陰の気”と“陽の気”が流れ、それらがバランスを保つことで“太極”をなす。

だが、武術で“気”を打ち込まれると、このバランスが乱れることがある。

極陰あるいは極陽に偏りすぎたとき――

肉体に、思わぬ“変化”が起こる。

つまり――

「ダーリンは、男の子になればいいあるね」

「マオウ! なんでこんなことに、なんで……毛玉になっちゃったんだ……!」

レンの体内にある気の乱れが、私の身体にまで伝播していた。

その乱れが、私の“変身”を解いたのだろう。……くそ、こんなの、すぐ戻せるのに。

だが――“毛玉”の姿を見られた直後に急に戻ったら、不自然すぎる。

「大丈夫ある。ダーリンと違って、あの人は気の影響が少ないある。すぐ戻るあるよ」

「“すぐ”って……いつよ!」

「ダーリンこわいある♡ 運が良ければ一週間。運が悪ければ……知らないあるね♪」

「ふざけるなっ、今すぐ戻せ!」

レンは自分の身体の異変よりも、小梅との再戦に固執していた。

言いたいことは山ほどあったが、私は口をつぐんだ。

「今のダーリンの体じゃ、小梅には勝てないあるね。続きは、大会で。

小梅に勝ったら――なんでも、聞いてあげるあるよ? ふふ♪」

そして小梅は、何事もなかったかのように踵を返し、私たちの前から去っていった。

……さて。

この“毛玉”の姿で、どうするべきか――


ご閲覧ありがとうございました!今回はセリナの心情にぐっとフォーカスしつつ、マオウの“毛玉化”という大事件が起きました。

「気」による陰陽の崩れが身体に影響する、という東洋思想ベースのギミックは、この先の展開でもキーになります。

そして、小梅……強いだけじゃなく、かなり“押しが強い”です(笑)


次回は、「毛玉マオウ、どうする?」を軸に、意外な方向に話が転がります。お楽しみに!

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