表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まおうさまの勇者育成計画  作者: okamiyu
第三章:汚された純白に、恋は咲く――旧友と公爵家の囁き
61/167

第五十五話:天使、再臨!パンツ一丁の山賊討伐大作戦

マオウさんがいなくなって三日目。

セリナはちょっと様子がおかしくなってきました。

そんな中、私たちは軽い依頼のつもりで山賊退治に出たんですが――

聖剣と天使とパンツ一丁、予想外の展開が待ってました。

あいつが行ってから、三日が経った。

セリナは、かなり堪えているみたいだ。

毎日、鍛錬と家事以外の時間はずっと部屋にこもって、本ばかり読んでいる。

あの『ロミオとジュリエット』。

まるで、速く読み終わったらマオウが早く帰ってくると信じてるみたいに。

……ダメだな、このままだと、あいつが戻る前にセリナが壊れてしまう。

ったく、俺だって会いたいんのに。

________________________________________

「セリナ、新しい依頼を受けたんだけどさ。――一緒に行かない?」

「ちょっと待ってください。このページを読み終わったら……」

「行きなさい。本は逃げないから」

「ちょ、レンくん、引っ張らないで……!」

……まあ、強引だけど、こうでもしなきゃこの引きこもりは出てこない。

「ひどい……いま、ちょうどいいところだったのに」

「陽に当たりなさい。キノコ生えるよ?」

「嘘です。そんなこと書いてありませんでした」

そう言いつつ、慌てて頭を撫でて確かめるのがセリナらしい。

________________________________________

今回の依頼は、山賊退治。

今までに比べたら、大した難度じゃない。

それならセリナも、少し気分を変えられるだろう。

そう思っていた――矢先だった。

「た、助けてーっ!!」

町を出てすぐ、悲鳴が聞こえてきた。

「まさか……山賊!? セリナ、後ろに――あっ!」

やばい。

セリナの聖剣、あれ“人”にはダメージ通らないんだった……どうする――

「レンくん、あれは山賊さんじゃありません。……ゴブリンさんです」

「えっ……?」

何言ってんだこの娘……と、思った次の瞬間。

「聖剣戦略! 私再改造!!」

聖剣が光を放ち、空間が地鳴りのように震える。

セリナは天に剣を掲げ、顔を上げた。

その瞬間――

世界の“色”が、変わった気がした。

________________________________________

足元から、まばゆい光が立ち昇る。

風もないのに、彼女の髪が静かに舞う。

その身体を包むのは、どこまでも澄んだ白――いや、“純白”。

清らかすぎて、見ているだけで息を呑んだ。

セリナの背に、ふわりと翼が現れる。

音もなく、光と共に羽ばたく、真っ白な羽。

「あっちです! 行ってきます!」

声のした方向へ、彼女は一直線に駆け出した。

……あれが、天使化――?

あいつが言ってたけど……もしかして、父様も同じだった?

いや、やめよう。考えるのはやめよう。

________________________________________

「こいつは大当たりだぜ、兄貴!」

「今回はあの貧乏くさいメイドじゃねぇ。上品なご令嬢と見たら……へっへ、売る前にまず味見を――」

「お、お頭! 空から……女の子が――」

「馬鹿か、そんなワケ――」

ドォン!!

親方が言い終わる前に、空から高速で落下してきたセリナに直撃され、地面に沈んだ。

……それがマオウの考えた「セリナ対人戦略」だ。

聖剣は人を傷つけない。だが、セリナ本人は別。

ただし今回は――

「痛たた……まだ二回しか使ってないので、着地の仕方忘れました」

……偶然だった。たぶん。

________________________________________

「よくも兄貴を! てめぇ、前のメイドじゃねぇか……なんで翼が!?」

「ひるむな! あの娘の剣は人を切れないなまくらだ!」

――そう思っていた山賊たちだが、今のセリナはもう、昔のセリナじゃない。

「聖なる光よ、武を制し、刃を眠らせよ――

救いをもたらす力ならば、殺さずとも届くはず」

「聖解の光輪ディスアーム・レイ、放ちます!」

閃光が走る。

聖剣が直接人を傷つけられなくても、武器や防具には効く。

とくに“人を傷つける意志”を持つ者には、余計に。

「えっ――!?」

気づけば、山賊たちは全員――パンツ一丁になっていた。

完全武装解除。

……裸の山賊に、選択肢はなかった。

月華一刀げっかいっとう!」

レンの居合が、一瞬で逃げかけた山賊たちを薙ぎ払う。

「またつまらぬものを斬ってしまった。……みねうちだけどな」

こうして、山賊討伐はあっという間に完了した。

________________________________________

「レンくん、お疲れさまでした! やっぱりすごいですね」

「セリナほどじゃないけどな」

「そんなことないですよ……」

……照れながら笑うセリナを見て、俺は思った。

聖剣を抜いたのが俺じゃなくてよかった。

……絶対、あの格好は無理だ。

マサキ兄や父様に見られでもしたら、俺は自害する。

________________________________________

「おふたりの冒険者様、助けてくださってありがとうございます。

ぜひ、お屋敷でお礼を――」

馬車から降りてきたのは、レンも知る人物だった。

クセリオス・ヴェスカリア公爵の息子――

シエノ・ヴェスカリア。

まさか、こんなところで会うとは――。


セリナの天使化、再登場でした!

前回の反省を活かして(?)マオウが施した戦略が、今回ようやく実戦で活躍しました。

そして、まさかの「再会イベント」も発生……次回、なにかが動き始めます。

引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ