第五十二話:宴のあとに/帰る場所と、仲間たちと
不夜城編、ついに終幕!
今回はそのあとの日常パート、勇者たちの帰還と打ち上げ回です。
あのキャラもこのキャラも、ちょっと丸くなった……?
いえ、きっと賑やかになっただけです。
私が本を読んでいるあいだに、不夜城の事件は無事に解決していました。
そして、皆そろって無事に――セルペンティナへ帰ってきたのです。
「ガルドーーーッ!!」
ずっと一人で泣いていたリリアンヌさんも、ガルドさんの顔を見てようやく笑顔を取り戻しました。
……よかったです、本当に。
* * *
その夜。
私たち二つの勇者パーティーは、合同で打ち上げを開きました。
「かんぱーいっ!!」
「から揚げ、いただきっ!」
「ちょ、それ俺の……!」
「今回の報酬ょ? から揚げ一個、安いくらいよ?」
「くぬぬ……っ」
マサキ様は悔しそうな顔をしながら、
「これもやるよ……」
と、ミートボールまでレンさんに差し出しました。
「なに? 気持ち悪……」
「うるせぇ! 俺の命がから揚げ一個かよ!? 勇者様だぞ俺は!!」
なんだかんだで……マサキ様、前より柔らかくなった気がします。
「ビンタ効果すげぇな……」と呟いたガルドさんの一言に、
「うわっ!」
マサキ様は反射的に顔を両手でガードしました。
な、なにがあったんでしょうか?
「ビンタって……なに?」
「マサキを素直にさせる呪文だ」
「えっ!? そんな魔法あるの!?
プチトマトちょうだい、ビンタ!」
「バカ! その呪文は気安く使うなって! あー! なんでそんなに取るんだ! やめろ!」
みんな楽しそうです。やっぱり“仲間”って、いいですよね。
「ルキエル様、お料理はいかがでしたか? もしよろしければ、私が直々に――」
「いらない。今日はトマト味のフライドポテトとプリンって決めてるから。
マスター、あ~で食べさせて~」
「はいはい。寝る前に歯みがき忘れんなよー」
「え~、めんどくさい。マスターがやってくれればいいのに」
「ルキエル様、私がお手伝いを――!」
「お前はいらない」
「ガーンーーーーーッ!!」
マオウさんは、天使さまたちのお世話で大忙しです。
でも……ちゃんと約束どおり、朝になったら戻ってきてくれました。
私は信じていましたけど、やはり嬉しかったです。
「今回は、舞台に立てなくて退屈だったんじゃなくて?
せっかく天使化もできたのに、残念だったのでは?」
「いいえ。私が活躍するより、皆さんが無事に帰ってこられたことのほうが嬉しいです」
「欲のない娘……人間の“綺麗すぎる感情”は、私の好みじゃありませんわ。
味が薄くて、水のように味気ない。
……でも、あなたはそれでいいかもしません。“勇者”としては、この上ない人選ですわ。
この舞台を、さらに面白くするためにもね」
「えっと……なんだかよく分かりませんけど、褒めてくれてますよね?
ありがとうございます」
モリアさんの言葉は、いつもちょっと難しいです。
でも――根っこは、きっと優しい人だと思います。
私もいつか、あんな知性の溢れる女性になれるでしょうか……。
「無理ですわね」
「え?」
……ときどき、本当に心を読まれているんじゃないかって思うくらい、鋭い人です。
こうして、にぎやかな宴は無事に終わりました。
皆さんは宿へ戻り、明日に向けてゆっくりと休む……
……はず、でした。
「女子の! パジャマパーティーやりますっ!!」
どうやら、本当の終わりは――まだ先のようです。
これにて、不夜城編本当に完結です。
セリナたちがようやく日常に戻り、にぎやかな宴と掛け合いが再び楽しめるようになりました。
次回からは新章か、それともパジャマパーティー編?
続きもどうぞよろしくお願いします!




