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まおうさまの勇者育成計画  作者: okamiyu
第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花
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第五十一話:魔王の教育ビンタと、朝焼けの別れ

剣と誇りを懸けた死闘の末、ミリアムは満ち足りた戦士としてその生涯を閉じました。


一方で残された者たちは、日常へと帰っていきます。


……例によって、帰還の途中も一筋縄ではいきませんが。


友情とは何か。

ビンタとは何か。

魔王の怒りは勇者を救うのか!?


さよなら不夜城。そして、また次の物語へ。

あれから――

アスモデウスは、ミリアムの写真を抱いて、ひとり地獄へ帰っていった。

落ち込んでいるかと思いきや、彼女は元気いっぱいに言い放った。

「ミリリンは天国に行ったから、今度は天界で再会して、二人でアイドルデビューするんだ~♪」

……君、色欲の悪魔で“72柱の王クラス”なんだから、天界には行けないだろ、とはツッコめなかった。

さすがにそれは、言葉を飲み込んだ。

 

朝の光が、かつての《不夜城》を照らす。

今では、栄華の面影などどこにもない。

残されたのは、蜘蛛の糸と、崩れたデコイたちの残骸だけ。

あの楽園のような空間は――まるで夢だったかのように、静かに消えていた。

ひとつだけ確かなことは、不夜城は、もう二度と姿を現すことはないだろうということ。

 

「にゃう~……」

アスモデウスを探して連日飛び回っていたルーは、燃え尽きたように眠っている。

さすがにそのままでは風邪をひきそうだったので、合流したセリナに任せた。

今回の事件が早期に解決したのは、この子の努力も大きかったかもしれない。

 

――そして。

あの“問題児”勇者の行方を確認するため、レンとともに《不夜城》の残骸を探索する。

やがて――

崩れた蜘蛛の糸の中から、ぐるぐる巻きになっている“約二名”を発見した。

……生きていたとは。実に残念だった。

 

せっかく助けてやったというのに、

「お前らに助けられなくても、俺なら自力で脱出できた」

などとぬかしてきた勇者もどきに、私は堪忍袋の緒が切れた。

 

「ッ……!!」

――平手打ち一発。

「えっ……!? ええええぇぇぇ!?」

レンも、もどきの仲間たちも、予想外の展開に目を丸くした。

 

「こっちは徹夜で残業だぞ!? 深夜手当もなし、残業代もゼロ!

 お前、“勇者”だろ!? なんでお姫様ポジション取ってんだよ!

 誰も捕らえられた王子なんて見たくないわ!!」

――二発目のビンタ。

 

「二度もぶったな……俺は……」

「親父にもぶたれたことないのに、だろ? 古いのよそのネタ。

 だからお前の教育を失敗した親父の代わりに教育を施ししている、人様に迷惑をかけるじゃない!」

――三発目のビンタ。

 

「俺を誰だと思って……!」

「王子? 勇者? 異世界人とのハーフ?

 ……知らんがな。そんな肩書きが魔王に通じると思ってんの? 笑わせんなよ。

 肩書きで何とかなるなら、今頃お前、繭みたいにぐるぐる巻きになってねぇよ!」

 

ビンタは音ゲーのごとく、リズムよく決まり――フルコンボに突入しかけた。

 

「やめっ……ごめんなさいっ! 俺が悪かった!!」

さすがの勇者もどきも、魔王のビンタの前には崩れ落ちるしかなかった。

 

「私じゃない。レンに謝れ」

「お前のくだらない命を、本気で心配していた唯一の人間だ。早くしろ」

「す、すみませんでした! もう、ビンタは勘弁してください……!」

 

――こうして、“問題児”王子は、魔王の教育によってほんの少しだけ大人になった。

少なくとも、ビンタの痛みと、感謝の言葉の大切さくらいは覚えたはずだ。

 

不夜城は消えた。

その主も、友も、もういない。

けれど、誰かの手の中には、笑顔の“記録”が残った。

物語は、次の章へと進み始める――。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


「不夜城編」、これにて一区切りです。

戦士として散ったミリアムと、それを見送るアスモデウス。

最後の写真と、色欲の悪魔の涙は、今後も読者の心に残る場面になってくれれば嬉しいです。


そして――魔王の怒りの鉄槌ビンタにより、勇者もどきもようやく反省……したようです。


次回からは「勇者育成計画」、新章に突入予定!

それぞれの陣営の動きが交差し、物語はさらに加速していきます。


引き続き応援よろしくお願いします!感想もお待ちしています!

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