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まおうさまの勇者育成計画  作者: okamiyu
第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花
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第四十六話:序盤にラスボスを出すんじゃねぇ!

聖女と悪魔――その圧倒的な存在が、《不夜城》の真実を暴き出す。

ついに、魔王が“本気”を出す時が来た。

物語は決戦へと動き出す。

みんなも子どもの頃、一度は考えたことがあるだろう。


「ゲーム序盤でラスボスが味方になったら、超ラクじゃない?」って。


……だが、それは初心者の町を出るまでの幻想に過ぎない。


すぐに気づく。

周囲のモンスターがラスボス基準で強化され、雑魚敵ですら地獄級。

レベルの低い主人公は開幕即死。経験値も稼げず、進行不能。


終わらない理不尽。

永遠のジレンマ。


――そう、まさに今の私たちがそうだ。


聖女ミリアム・エクスコミュニカが現れました。

色欲の悪魔アスモデウスが現れました。


おい、序盤でカンストボスを2体出すな!


しかもアスモデウスは状態異常特化のクソめんどくさいボスだ。

レンが魅了状態になったら3対1になる。それだけは、どうにか避けたい。


「レン、聖女は任せた。アスモデウスはこっちで処理する」


「えっ、ちょっ……!」


レンが状況を飲み込む前に、私は時間を止めた。



時が止まった世界。


慌てるレンも、目を見開いたミリアムも、すべてが静止している。


この空間で動けるのは――私と、


「も〜、なんの前フリもなく時間止めるなんて、さすが魔王様♡

女の子にイタズラし放題ね、えっちぃ〜」


悪魔72柱のひとり、色欲の悪魔アスモデウスだけだ。


「下剋上でも狙ってるのか?

わざわざ俺を、こんな趣味の悪い“男ホイホイ”に誘い出して」


「ははっ、ないない。アスにゃんは地位も権力も興味ナッシング。むしろ


魔王様のことは大好きよ? 好きって言っても、ほら、そういうんじゃないからね?

友達! ダチ! トモダチってやつよ!


モリリンが恋のライバルとか……無理すぎるし。


ただ――」


アスモデウスは、隣の聖女ミリアムを見た。

そのとき、ほんの一瞬だけ……その顔に哀しげな影が差した気がした。


……ただ、ダチの願いを叶えたいだけ。

……たとえ、あの子にもう昔の心がなくても。


だから魔王様、今回は――

敵として、アスにゃんが相手してあげる♡


「いいだろう。……本気の魔王を見せてやる」


人間の姿が消える。

空間が揺れた。

重力が変わったような圧に、空気が軋む。

現れたのは――ちいさな毛玉、

それが“魔王”の真の姿だった。恐怖より、

どこか愛らしさが勝っていた。



「え?」


マオウがアスモデウスと共に、まるで瞬間移動のように姿を消した。


「アスモデウス様……?」


聖女ミリアムも動揺している様子だった。

ならば、今しかない。


――月閃。


俺は息を吸い込み、筋肉に力を込め、一気に必殺の一撃を叩き込んだ。


……だが。


「……剣気は立派。でも、“この程度”では届かない」


ミリアムは、俺の一撃を――かつて戦場で掲げた白旗で受け止めていた。


それは、祖国に勝利をもたらした象徴だった。


「聖女ミリアムは、あの日――火に焼かれて死にました」


「今ここにいるのは、“魔女”ミリアム・エクスコミュニカ。不夜城の主です」


周囲の糸が彼女の身体に巻きつき、かつての鎧を形作る。


百年の時を越えてなお、彼女の技も意志も鈍っていない。

女郎蜘蛛となった今でも、彼女は戦士であることをやめていない。


……面白い。


一人の剣士として、彼女とぜひ剣を交えたい。


「レン・アルセリオン。一介の剣士として、貴殿に決闘を申し込む」

ミリアムが“聖女”としての象徴を手に立ち塞がり、

アスモデウスが“友”としての覚悟を持って立ちはだかる。


今、二つの決闘が始まろうとしている。

それぞれの信念と過去が、交差する。

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