第十三話:愛は地獄より深く、悪魔は未来を紡ぐ
──悪魔は、すべてを知っている。
セリナを守るはずのモリアは、
密かに町へと出ていた。
彼女が知っている"運命"とは何か?
そして、なぜ彼女はセリナを見捨てたのか?
これは、
悪魔の知られざる愛と、
交錯する運命の物語。
「セリナのことを頼んだ」
「はい、すべてお任せを」
私は知っています。
今日、彼が私に人間の小娘のお守りを任せることを。
そして、彼が町にその娘の師匠を探しに行くことも、
私は知っています。
だけど、私はその守りを放棄して町に出ました。
彼女に今日は何も危険なことが起きないと、
私は知っているからです。
そして、数時間後に彼が何を求めるかも、
私は知っています。
人間の町は、地獄より騒がしい。
その薄汚れた感情の渦巻く場所こそ、
悪魔にとって最高にそそられるのです。
町中の人間たちはその姿に見惚れ、
私に声をかけることすら臆するでしょう。
それも私は知っています。
私のすることはただ、
決まった場所で、
来るべき人を待つだけ。
そして――ほら。
「ごめん、今、人から隠れていて前を見てなかった」
一人の、少年のような乙女がぶつかってきました。
「構いませんわ。私はそれを知っていて、あえてここにいますの」
「はは、面白いな。俺は色んな貴族のお嬢様や異国のお姫様を見てきたけど、君みたいな娘は初めてだ」
「それは光栄ですわ。私、占いが趣味なので、よろしければ占って差し上げましょうか?」
「いいよ。俺は魔法とかには興味ないし、今は忙しい。……また会ったら話そうぜ」
「神殿の神官たちから逃げたいなら、
そっちの方向がよろしいですわ。
それ以外なら、
今日中に捕まることはありませんが……
それも時間の問題。
結果は変わりませんわ」
「なに言ってんだ、
俺はお尋ね者か何かと勘違いしてるだろ?
俺は――」
「お姫様。
聖剣の儀はもう終わりましたわ。
今、あなたが捕まれば、
"姫だけの人生"で終わる運命ですわ。
……まあ、あなたの母君、
妃様が突然死でもすれば話は別ですが」
「……あんた、一体何者だよ……」
困惑、怒り、恐怖、
そして母の言葉に触れたときの、
ほんの少しの悲しみ。
人間はそんなにも豊かな感情を持っている。
だから私は人間が、この上なく好ましい。
それがわからない天使は、
やはりバカですわ。
「すべてを知る悪魔。
地獄72の柱のひとつ、パイモリア。
あなたとはこれから長い付き合いになりますので、
名乗らせていただきましたわ。
――また、いずれお会いしましょう。
ふふふ……」
私は姿を消しました。
彼女以外、
私の存在に気づける者はいないでしょう。
なぜなら――
彼女がぶつかったその瞬間から、
ここはすでに私が作った、
周囲によく似た異空間だったのです。
私が消えたことで、
彼女は元の世界に戻れた。
そして、
彼女は必ず私が示した方向へ向かうでしょう。
それも、私は知っています。
彼はきっと喜ぶはず。
自分の幸運に感謝するでしょう。
――いいのですよ。
そんなところが可愛らしくて、
大好きなのですから。
私と、あのバカ天使の力を好きに使えばいいのに……
まあ、彼がそんなことをしないことも、
私は知っています。
愛していますわ。
生まれたときから、
それを私は知っていました。
この物語を最後までお読みいただき、
誠にありがとうございました。
悪魔モリアの知られざる愛と、
彼女が知る"運命"はいかがでしたか?
・モリアの真の目的
・謎の少女の正体
・悪魔の知る未来
読者の皆様のご感想が、
この物語をさらに深みのあるものにします。
もしこの物語が楽しめたら、
ぜひご感想をお聞かせください。
(作者は毎日、地獄の門前で皆様の声を待っています)
・モリアの行動についてどう思いましたか?
・謎の少女の正体についての予想
・この後の展開で期待するシーンがあれば教えてください
どんな短いコメントでも大歓迎です!
皆様の声が、次の物語を照らす灯となります。




