マダム・トゥトリ=プトリはムッシュ・トゥトリ=プトリと深い対話を交わす
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
ムサシロは、重いまぶたをゆっくりと開いた。
ぼんやりとした視界の中、かすかな光が天井の割れ目から差し込んでいた。
冷たい空気。湿った布の匂い。どこか遠くで風の音がした。
彼の傍らにはヴァレリーがいた。
彼女の目の下には深い影があり、疲労と安堵が入り混じった微笑を浮かべていた。
ムサシロは起き上がろうとしましたが、できませんでした。「だめです!。君……三日間、ずっと眠っていたのよ。体はまだ動かさないほうがいい。熱も下がっていないわ」
ムサシロは、答えようとして唇を開いたが、乾いた息しか出なかった。
喉が焼けるように痛む。
ヴァレリーは彼に水を飲ませました。
数秒の沈黙。
ヴァレリーの視線が彼を捉える。
「どうして……私を助けに来たの?」
ムサシロは目を閉じた。何を言ったらいいのかわからない。
「もしかして。。。あなたは罪悪感があるのですか?私の心をコントロールしたこと」
その言葉が胸に突き刺さる。彼は小さく頷いた。
「……それもある。けど、それだけじゃない。
君を操った時、俺は初めて“他人の心”の中を見た。
そこには、俺の知らない世界があった。
一つひとつの心は、小さな宇宙みたいに――
壊すにはあまりにも、美しかった」
彼の声は弱く、どこか夢を見ているようだった。
「君が死んだら、その世界も消えてしまう。そんなことはさせられません。 だから、助けたかった。あなたはいい女性ですので、あなたは幸せな人生を送るに値する」
ヴァレリーは小さく笑った。
「私が“いい女”だって? 冗談でしょう。私は壊れてるのよ。どこにも居場所がない女」
ムサシロは静かに首を振る。
「知ってる。だからこそ、幸せになってほしいんだ。
君は、もう十分苦しんだ」
彼女は目を伏せ、微かに唇を噛んだ。
しばらくして、静かに尋ねた。
「……どうして、私の心を操ったの?」
ムサシロは天井を見つめたまま答える。
「ずっと一人だった。
誰かに愛されるって、どういうことなのか…
それを、知りたかったんだ」
沈黙。
風の音だけが二人の間を流れた。
その瞬間、ムサシロの脳裏に――冷たい“反響”が走る。
空間が震え、遠くから何かの意志が近づいてくる。
「……来る」
ヴァレリーが顔を上げた。
「何が?」
ムサシロは目を閉じたまま、かすかに呟いた。
「――ミッチェルだ」
(つづく)
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