ジェンはスケクシスからキラを救わなければならない
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
風が乾いた赤い土を巻き上げていた。
アラバマ州・タスキーギの片隅にある、その「存在しない基地」へと続く一本道。
そこに、ひとりの男が立っていた。
ムサシロウ。
彼の意識は静かに広がり、目の前の現実を越えて無数の「心」へと触れていく。
——音のような断片。
——記憶のざらつき。
——脈動する恐怖と、忘れられない戦場の残響。
ムサシロは退役軍人のマクリーンを初会しました。
片手に古びたカウボーイハットを持ち、目を細めてムサシロウを見つめていた。
ムサシロウは微笑む。
「タスキーギに、秘密の基地があると聞いた」
マクリーンは少し沈黙したのち、頷いた。
「知っている男がいる。アルフレッド・ドノヴァン。四十を過ぎた物流担当の兵士だ。
物資を運ぶトラックの運転手。……あいつなら、出入りできる」
ムサシロウの瞳が、わずかに光を帯びた。
夜。
アルフレッド・ドノヴァンの家。
彼は何も知らずに眠っていた。
その脳の奥深くに、ひとつの「声」が染み込んでいく。
目を開けろ。
俺はお前だ。
アルフレッドのまぶたが震え、静かに開く。
鏡に映る顔は、確かに彼自身——しかしその奥に、別の何かが宿っていた。
「……行こう」
彼の唇が、他人の意志で動いた。
翌朝、補給トラックが基地のゲートに入る。
アルフレッド(=ムサシロウ)は、冷静な表情で通行証を提示する。
兵士A「お疲れさま、ドノヴァン。中に入れ」
アルフレッド「了解」
ゲートが開く瞬間、ムサシロウの心拍がわずかに上昇した。
——これが、ヴァレリーに続く道だ。
基地内部は無機質なコンクリートと鉄の迷路だった。
通路を歩く兵士たちは皆、奇妙な金属製のヘルメットを被っている。
形は鷲の頭のようで、眼の部分が無機質に光っていた。
ムサシロウ(心の声):
……なるほど。これが、俺を遮断している装置か。
思考が、読めない。
壁に覆われた心だ。
アルフレッドの体を通じて、ムサシロウは周囲を観察し続けた。
倉庫、通信室、医療棟……そして地下へと続く長い通路。
そこに、ヴァレリーが囚われている。
——だが今はまだ早い。
補給を終え、トラックに戻る直前。
ムサシロウは呼吸を整えた。
その瞬間、ムサシロは急に一人の兵士のヘルメットを外した。
一瞬の隙。
ムサシロウの神経が閃光のように走る。
捕らえた。
その兵士の心を静かに侵入する。
身体の奥から支配が広がり、やがて完全な沈黙が訪れる。
「……一人、目覚めた。」
ムサシロウは冷静に呟き、次の標的を探した。
一人、また一人。
十一人の兵士が、知らぬ間に彼の意志の糸に絡め取られていく。
アルフレッド(=ムサシロウ)は荷台に乗り込み、ゲートを出る。
軍事基地の中に、十一の影が同時に一歩、前に進んだ。
モニター室。
複数のカメラが、基地の各所を映している。
その中央で、白衣の男が口角を上げた。
ヨハン・アルクハイム。
「……ちょうど良い。」
彼の背後に、軍服の男が立っていた。
マーク・ミッチェル将軍。
「始めよう。——“傀儡師計画”の最終段階だ。」
アルクハイムは微笑む。
「ええ、将軍。」
モニターに、十一人の率いて歩くの兵士が映る。
その瞳の奥で、ムサシロウの精神が燃えていた。
——計画は、すでに始まっている。
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