エコーの街路
これはこのアンソロジーの最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
アメリカの広い道。
果てのないハイウェイ。
風が乾いた砂を運び、遠くでトラックのエンジンが鳴いていた。
ムサシロは歩いていた。
バックパック一つ、親指を上げ、車を止める。
誰もが一瞬、彼の目を見て――そして何かを感じ取る。
彼は、世界の声を拾っていた。
老いた戦争の退役軍人の頭の中に、銃声の残響がこだまする。
夢の中でも終わらない戦場。
「俺は、何を守ったんだ？」
そう呟いた瞬間、ムサシロの中にもその問いが滲み込む。
トラック運転手の心には、孤独な夜のラジオと、もう会えない娘の笑顔。
母親と幼い子供の記憶の中には、スーパーの照明の下で笑う夫の幻。
彼らの記憶は、埃を被ったフィルムのように再生される。
同じ日常、同じ痛み。
けれど、どの映像も――確かに生きていた。
それぞれの心は、独自のユニークな世界のようでした。武蔵野は、これまで人間の心がどれほど素晴らしいものであるかに気づかなかったことが信じられませんでした。
ムサシロは静かに微笑む。
「みんなは幸せを見つけてほしい。」
そして、ムサシロは道端で降り、空を見上げる。
夕暮れの赤が、遠くまで広がっていく。
「人間の心は……美しいな。」
その夜、ムサシロはモーテルのベッドに座り、
通り抜けていった無数の“声”を思い返していた。
恐怖。欲望。後悔。愛。
人間たちは、同じ迷路を歩きながら、それでも誰かを想い続ける。
それは狂気にも似た美しさだった。
「ヴァレリー……君はこの“美しさ”を信じるだろうか。」
彼の脳裏に、彼女の微笑が一瞬、揺らめいた。
翌朝、ムサシロは地図を広げた。
その日、ムサシロはバーで数人の戦争の退役軍人と出会い、彼らの心を一つ一つ読むうちに、そのうちの一人が、廃墟と化した古い軍事基地のことを知っていることに気づいた。もしかしたら、ヴァレリーはそこに連れて行かれたのかもしれない。パペットマスター計画は間違いなく軍事機密だったため、その可能性は十分にあった。。
ムサシロは、もう一度「皆さんが幸せになれることを祈っています」と言い残して去っていった。
ヴァレリー。
「……そこにいるのか。」
ムサシロはゆっくり立ち上がり、
東へと続くハイウェイを歩き出した。
もう彼の中に、恐れはなかった。
このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードもすぐにアップロードします。
