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ミス・ピギーとカーミット・ザ・フロッグ

これがこの物語の最終回です。皆さん、楽しんでいただけたら嬉しいです。

エピローグ – 初めての約束


空港のロビーは、どこまでも白く、無機質だった。

アナウンスが機械的に流れ、人々の足音が絶え間なく響く。


ムサシロは出発ゲートの前に立っていた。

手には搭乗券。だが、心はまだここに残っていた。


背後から静かな声が聞こえる。


「……行くの?」


振り向くと、ヴァレリーがいた。

白い光の中で、彼女の表情はどこか曖昧だった。

安堵と寂しさ、そしてほんの少しの恐れが混ざっていた。


ムサシロは言葉を探したが、喉の奥が重くなった。


「俺は……日本に帰らなきゃいけない。」


「そう。」ヴァレリーは微笑んだ。

だがその笑顔は、どこか痛々しかった。


沈黙が流れる。

周囲の人々の声が、遠い海の音のように聞こえる。


――このままではいけない。

何かを残したまま別れるのは、もう嫌だった。


ムサシロはそっと目を閉じ、そして、心を開いた。


量子の鎖がほどけ、彼の意識が広がっていく。

過去の記憶、恐れ、希望、孤独。

彼のすべてが、ヴァレリーの中へと流れ込む。


ヴァレリーは小さく息をのんだ。

瞬間、無数の感情が胸の奥で花のように開いた。


ムサシロが何を見てきたのか、どんな痛みを抱えてきたのか。

そのすべてが、彼女の中に流れこんでくる。


やがて、静寂。


二人はただ、互いを見つめ合った。

もう、言葉は要らなかった。

もう、秘密も、嘘もなかった。


アナウンスが響く。

「東京行きの便はまもなく出発いたします」


ムサシロが小さく頷き、ゆっくりと背を向けた。

歩き出そうとしたその瞬間――


「ねえ」


ヴァレリーの声が彼を呼び止めた。


振り返ると、彼女は少しだけ照れくさそうに笑っていた。


「……ねえ、ムサシロ。最初から、やり直してみない?」


「どういう意味だ?」


「つまり――」彼女は肩をすくめて言った。

「初めてのデート、してみようかって話。」


その一言に、ムサシロは不意に笑ってしまった。

胸の奥で、何かが溶けていくのを感じた。


「……ああ。いいね。」


窓の外には、離陸する飛行機の光が滲んでいた。

それはまるで、遠い未来へと続く希望の軌跡のようだった。


――もう、どこにも逃げない。

――ここからが、始まりだ。

最終回を楽しんでいただけたら嬉しいです。最初から最後まで読んでくださり、改めて感謝申し上げます。皆さんのおかげで、作家になるという私の夢は実現可能だと信じさせてくれました。心から感謝しています。

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