盗賊さん、人の心とか、あったんだ
ブルースワロウに戻って早々に、さっき倒した盗賊さんの親玉が姿を表した。
加速して振り切ろうとも考えたが、親玉さんが乗ってるのは中型艦。
火力を出して殺す気なので逃げても無駄だ、という判断になった。
「ザルバの敵!!死ねぇい!!」
敵の砲門が輝き、魔力で構成された弾丸がシールドに着弾する。
知らねぇよ!誰だザルバって、どれだよ!?襲いかかってきたのもテメェらだろうが!
叫ぶのをこらえて操縦に専念する。
「シズク!1番から4番までの全ての砲門を盗賊艦に向けろ!」
『了解』
ガコンと少しの振動と共に砲門が向けられたことを察知する。
奴が減速する瞬間を待って狙いを定める。
操縦桿に乗せた手をスライドさせ、機体を旋回させる。
「移動性能で負けてんだよカスがぁ!!!」
「んだとコラァ!!舐めてんじゃねぇぞ!!」
おやまぁ。煽りの通信に返事くれるとか意外と律儀だね、君。
二十点あげよう。赤点だけどな!!
旋回についてきた盗賊艦に砲門を向けて、減速した瞬間に号令を叫ぶ
「発射!!」
『了解!』
キラリと全ての砲門が煌めき、弾丸を放つ。
一斉に放たれたそれは、直線上にいた盗賊艦にぶつかり、炸裂する。
これでシールド崩壊までは至らないけどだいぶ削ったはずだ。
「シズク、俺達のシールド損傷率は?」
『現在の損傷率は先程の攻撃によって3%まで上昇しました。』
「そんなにだな。火力低いのか?アイツら」
『私達のシールドが硬すぎるんですよ。』
「そうだっけ?」
迫りくる無数の魔力の弾丸を変態的な機動で躱し続ける。
船首が下を向きながらバレルロールアンド急速落下で弾丸を振り切ったりな。
このような機動は慣れてないと危ないからあんまりしないほうがいい。
ゲーム時代にこれやって19回死んだから。
「小型ミサイル射出準備!急げ!」
『射出準備完了。いつでもいけます』
小型と言っても20メートルはあるミサイルを積んであるこの船は、火力特化と言っても過言ではないほどに凶悪な性能をしている。砲門もばらつきはあるが威力は全て高いし、ミサイルや設備もすべて戦闘用のは最高峰のを揃えているかだ。
「射出!!」
バシュッと勢いよく射出されたミサイルは真後ろにいた盗賊艦に直撃し、轟音を鳴らして爆発する。
地球だったら弾道ミサイルくらいのデカさだから、そりゃ火力もそれなりにデカいでしょ。
紅き爆炎にさらされた盗賊艦は、煙を抜け出して一気に加速。
砲門も全て開放し、一撃で仕留める気のようだ。シールドも軍用だし、やめといたほうがいいよ。
「悪いことは言わない。諦めて自首しろ」
「誰がするかよ!出力全開!全砲門解放!ミサイル全弾発射!」
「あっそ。じゃあ好きにしろ。出力上昇、戦闘モードに移行しろ。」
『了解』
ブルースワロウに青い線が走り、出力を上昇させる。
ピィィィと鳥の鳴くような音を響かせて、機体は一気に加速して旋回を行い、盗賊艦のケツの方に付く。
砲門を向け、ミサイルを射出し、戦闘終了だ。
数瞬の煌めきのあと、盗賊艦は見るも無惨な姿となって宇宙のゴミになった。
これでようやくリゾートに行ける。後が楽しみだ。