〈0〉奇跡にもはじまりはある
涙はどこにあるのだろうか
瞳の奥に涙の湖水でもあるのだろうか
感情が溢れると心が震えて涙が生まれるのだろうか
これほどまでに零れ落ちる涙は一体どこにある
零れ落ちる涙は決して自分の意思で止めることは出来やしない
* * *
友雪の右手はしっかりと握られている。
友雪の手を握っているのは服部鞠子。
友雪は、まさかこんな日が来るとは思ってもいなかった。それを思うと自然と目頭が熱くなった。
そんな想いを知らず、隣で話し続ける鞠子が、ふと友雪を見た。
「何、また泣いてんの?」
「泣いてないよ」
「嘘。また一人で何か考えてたでしょう」
友雪の右の目頭が涙を留めておくことが出来ず一筋の涙が頬に伝わった。
「こればかりは仕方ないんだ」
そう、こればかりは。
ダメ人間の俺がこんな幸福を手に入れるなんて思ってもいなかったから。
「ほんとパパ、私と会って泣かないときないよね」鞠子は笑顔で言った。
友雪と鞠子。
血の繋がりもなければ法的繋がりもない。社会的に親子とは認められない。
しかし、鞠子は友雪をパパと呼ぶ。
友雪にとって鞠子はまさに奇跡。そんな奇跡にも始まりはある……。