⭕ 配信動画 7
スケート靴を脱いだ後、セフィに案内されて場所を移動した。
──*──*──*── 広間
刀を余裕で振れる[ 広間 ]には、既にキノコン達が居て、場所取りを完了していた。
レジャーシートを敷いた上に大量の菓子が置かれていて、キノコン達は菓子を食べながら稽古が始まるのを待っているみたいだ。
マオ
「 此処もキノコンで一杯だな 」
セフィ
「 頑張るマオの勇姿が見たいんだよ 」
セフィと一緒に[ 広間 ]の中心へ移動する。
セフィ
「 マオ、構えて──。
始めよう 」
マオ
「 おぅ── 」
物騒極まりない妖刀を納めた鞘を腰に提げ、構える。
さっき迄お喋りしながら菓子を食べていたキノコン達が、一子乱れぬ動きで一斉にカメラを構える。
カメラのレンズがオレに向けられているんだと思うと、無性に怖くて何か落ち着かない。
取材の記者達に容赦無くカメラを向けられる芸能人達の嫌がる気持ちが少しだけ分かった気がする。
シーン──と静まり返った[ 広間 ]で、向き合った状態のセフィとオレは、同時に刀を抜いた。
いや、セフィの方が少しだけ早かった。
セフィは何時も反応が早いんだよな。
抜刀術での斬り合いをみっちり10時間して終えた後、ステージで着用する正装に着替える。
着替えた後、再び10時間程抜刀術で斬り合う。
次はスケート靴を履いた状態で、抜刀術の斬り合いもする。
裸足で抜刀術をする時よりもスケート靴を履いてする抜刀術の方が難しい。
バランスが上手く取れないけど、慣れる迄ひたすらセフィと斬り合い続ける。
何とかスケート靴を履いた状態でも、抜刀術を披露する事が出来る様になった。
難無く──って訳ではないけど、セフィから合格のスタンプがもらえたから、セフィ視点からでも相当上達出来たのかも知れない。
いよいよ、スケートリンクに戻る。
──*──*──*── スケートリンク場
氷上で滑りながら、観戦しているキノコン達に抜刀術を披露する。
とはいえ、滑りながらの斬り合いはしたものの、滑りながらの抜刀術は初めての試みだ。
成功するかは分からない。
先ずはセフィが手本を見せてくれる事になった。
真っ白い胴着を来たセフィは、抜刀術の手本を見せてくれる。
息を飲む程の実に見事な抜刀術だ。
思わず見惚れてしまう。
セフィなら十分過ぎる程、客寄せパンダになるのにな。
セフィじゃ駄目なのかな?
セフィ
「 マオ、やってみて 」
マオ
「 お…おぅ…… 」
セフィに言われて、オレも抜刀術を披露する。
上手くバランスが取れなくて、転んで氷上に尻餅を付くと、煩い程のシャッター音が鳴って、眩しいフラッシュが光る。
キノコン達からの「 おかわり 」コールが止まない。
オレが失敗するのを待ち望まれてるぅ~~!!
成功するより、失敗される方が喜ばれるなんて複雑だぁ~~。
兎に角、オレは滑りながら抜刀術を完璧に披露が出来る様にならないといけない。
セフィの厳しい目で評価をされながら、抜刀術の練習を繰り返す。
セフィから合格を貰えたら、漸くセフィと抜刀術での斬り合い練習だ。
でも、中々セフィから合格が貰えない。
一寸厳しくないかな?
──*──*──*── 50時間後
マオ
「 セフィ~~~~!
何時まで練習させる気だよ!
50時間もぶっ通しでさぁ~~ 」
セフィ
「 外では未だ50秒だよ 」
マオ
「 そういうの良いから!
そろそろ合格スタンプくれても良いだろ? 」
セフィ
「 後10時間、続けたらね 」
マオ
「 鬼ぃ~~!! 」
セフィ
「 練習は大事だよ。
基礎と基本を確り身体に叩き込んでほしいからね 」
マオ
「 叩き込むって……。
十分過ぎる程、叩き込まれてるけどぉ!! 」
セフィ
「 そう言わないで。
キノコン達もマオが盛大にポカするのを待っているし、期待に応えてあげてほしいな。
視聴者の心を揺さぶり奮わせる動画を作りたがっているからね。
協力してあげて 」
マオ
「 酷ぉ~~~~ 」
そんな訳で、オレは10時間も1人で抜刀術の練習をする事になった。
──*──*──*── 10時間後
セフィ
「 マオ、お疲れ様。
10秒間、頑張れたね 」
マオ
「 10時間な!
外の時間で言うなよぉ~~ 」
セフィ
「 休憩したら、2人でリハーサルしよう 」
マオ
「 リハーサルぅ~~。
いきなりだな…… 」
セフィ
「 マオ、休憩は此方だよ 」
セフィに促されてスケートリンクから上がる。
キノコン用の腰エプロンを着けたキノコンがスイーツと紅茶を用意してくれていた。
キノコン
「 マオ様、お召し上がりくださいエリ。
お披露目スイーツを御用意しましたエリ 」
マオ
「 お披露目スイーツ? 」
セフィ
「 今回のイベントで発売するスイーツだよ。
今回のイベントを盛り上げてくれる選手達をイメージしてキノコン達が作ったんだよ 」
マオ
「 へぇ?
選手達をイメージしてねぇ…… 」
キノコン
「 誕生月に合った旬の果物を使って作りましたエリ 」
マオ
「 へぇ~~ 」
セフィ
「 会場で渡すパンフレットにも載せるよ。
選手を紹介するページにね。
選手をイメージたスイーツを買うと、8割が選手に寄附される事になるよ 」
マオ
「 えっ──8割も??
幾らなんでも多くないか? 」
セフィ
「 スイーツ開発に1円も掛かってないからね。
忙しい中《 セロッタ商会 》のイベントに参加してくれる選手達へ御礼だよ。
交通費,宿泊費,食費の足しにすれば、選手達の金銭的な負担を減らせるし、その分練習に時間を使える様になるからね 」
マオ
「 セフィがスケート選手に優しい……(////)」
セフィ
「 ガッポリ出来るからだよ。
善意ではしてないからね、マオ。
ときめいた顔しないで(////)
ボクを煽ってるの? 」
マオ
「 そんな訳ないだろ!(////)
不謹慎だぞっ(////)」
セフィ
「 選手達を支えるスポンサーにはなれないけど、応援してくれているファン達の想いを “ 寄附 ” という形で届ける事は出来るからね 」
マオ
「 世間的に見ると良い事してるのにな~~ 」
セフィ
「 本音は善意の裏に隠すものだよ 」
マオ
「 選手達の助けになるなら、お客さん達も挙って買ってくれるかもだな? 」
セフィ
「 スイーツを買ってくれたお客には選手のサイン入りポストカードも付けるから、買ってもらえると思うよ。
スマホを持っていれば、態々並ばなくてもパンフレットのQRCから予約注文が出来るし、会員カードにチャージされていれば簡単にマネー払いも出来るからね。
此処で受け取らなくても《 自宅 》へ配達サービスもしてるから、行列を減らせるよ 」
マオ
「 徹底してるんだな。
《 自宅 》へ配達サービスは嬉しいよな 」
セフィ
「 配達はキノコンが行うし、会員様限定の家事代行サービス期間中なのをチラシを見せて伝える。
そのまま居座らせて、期間中にキノコンへ依存させる計画だよ 」
マオ
「 キノコンを一般家庭に送り込む為の手段にスイーツの宅配サービスを利用するなんて、なんて悪だよ……。
キノコンに家事代行してもらえたら、帰すのが惜しくなっちゃうよな……。
“ 一家に1体のキノコンを! ” 計画が着々と進んでるぅ~~ 」
セフィ
「 ちっとも善意じゃないでしょ? 」
マオ
「 本当だな。
大きな野望が渦巻いてるよ 」
セフィ
「 今回のイベントは、大物の魚を釣る為の餌って事だよ 」
マオ
「 何が何でも成功させないと駄目なヤツじゃないかよ 」
セフィ
「 マオには全力で客寄せパンダを頑張ってもらうからね 」
マオ
「 オレじゃなくても良いだろ…… 」
何時もの事だけど、完全に巻き込まれてるじゃんかよぉ~~。
強制参加だから断れないのが辛い……。
スイーツは文句無しに美味しいけど、気分は駄々下がりだぁ~~。
後日、完成した動画が《 セロッタ商会 》の公式HPで公開された。
公開前に完成した動画を見せてもらえると思ったのに、話題すら上がらなかった。
オレ、あんなに頑張ったのにな!!
完成した事を教えてくれないなんて酷くないか?
セロとキノコン達に抗議してやろうかと考えている。
因みに配信されてる動画だけど、バズりにバズってしまい、イベントのチケットが早々に完売してしまったらしい。
予定に無かった第2公演,第3公演が決定し、1回の披露で済まなくなりそうな感じだ。
1回だけの予定だったのに最悪じゃないかよぉ~~。
どんな動画になってるのかチェックしないとだ!!
セロに文句言ってやるぞ!!




