✒ 配信動画 5
──*──*──*── 30時間後
逆刃刀を使った斬り合いが終わると、セフィが合格のセロカ君スタンプをスタンプ帳に押してくれる。
心が和むぅ~~(////)
セフィから手渡された真剣は、逆刃刀よりも気持ち重たい。
セフィ
「 マオ、逆刃刀とは違うから、斬れ味は抜群だよ。
気を抜いたら腕や首が落ちるからね 」
マオ
「 お…おぅ── 」
セフィ
「 全力で僕を殺る気で刀を振う様にね 」
マオ
「 難しい事、言うなぁ……。
殺る気で振るえってさ……。
本格的な抜刀術の練習は良いのかよ? 」
セフィ
「 此処迄は軽いウォーミングアップだよ 」
マオ
「 殺る気でするウォーミングアップなんて聞いた事ないけどな! 」
セフィ
「 始めようか。
マオの運動不足解消の為にね 」
マオ
「 十分過ぎる程、解消は出来てるけどぉ! 」
真剣を腰に提げて構える。
やっぱりセフィの構え方は、オレとは微妙に違う。
何処の流派の構えだろう??
セロなら各流派の良い所取りして、自分流を作っちゃいそうだけどな!
キノコン達の声援が聞こえなくなった瞬間を合図に、刀を鞘から抜く。
出遅れた!!
いや、セフィが早いんだ。
歓声が消える前に鞘から刀を抜いていたんだ!!
コンマ数秒の差──見破れた!!
それが分かったとしても後の祭りだ。
オレの左手が宙に浮いていたからだ。
セフィから繰り出された一撃がオレの左手腕を斬っていた。
宙を舞うオレの左手がスローモーションで氷上に落ちる。
キノコン達の黄色い歓声が凄いっ!!
シャッター音とフラッシュ量がヤバい!!
幾ら何でもはしゃぎ過ぎぃ~~~~。
左腕を失ったからといって終わりにはならない。
オレの身体には未だ、両脚と右腕と頭が付いているからだ。
因みに血液が飛び散ったりはしない。
オレは右腕だけでセフィの攻撃を必死に防ぐ。
片足を斬られたらアウトだろうけど、片足だけでもバランスを取れば滑れるんだから、終わりにはならないだろう。
右腕を斬られても、口で柄を咥えて振れば良いんだから、終わらせてはくれないだろうな。
オレの首が氷上に落ちる迄は続くだろう──。
セフィは容赦無く斬り込んで来る。
オレは防ぐので精一杯で、セフィに斬り込めない。
滑りの技術もセフィの方が上だ。
だからと言って、セフィに背中を向けて逃げる訳にはいかないっ!!
真正面から受けて立たないと!!
本当にそれで良いんだろうか?
氷上の利点を上手く活かせれば、左手を拾ってくっ付ける事は可能だと思う。
唯一の問題は、セフィが大人しく左腕を拾わせてくれるか──だろう。
セフィは確実に片足を狙って来る筈だ。
何とか上手く滑って、セフィの攻撃を避けなくてはいけない。
今迄、練習をして身に付けた技を駆使して、左腕を回収するんだ!!
オレは目的を定めると、直ぐ様行動に移した。
セフィから合格スタンプを貰ったスケート技を駆使して、氷上を滑り、左腕の奪還を狙う。
オレにはセフィが微笑んでいる様に見える。
まるで「 それで良い。やってみろ 」と言われている様に感じた。
セフィは相変わらずオレを狙って、華麗で優雅な滑りをしながら近付いて来る。
セフィから距離を取る為に、技を駆使して逃げるオレ──の姿をキノコン達が嬉しそうに見ている。
大半のキノコン達が涎を垂らしながら、手に持っているカメラのシャッターを押し撒くっている!!
フラッシュ量も一段と凄い!!
パパラッチも真っ青になって、丸裸で逃げ出してしまいそうな、異様過ぎる光景だ。
キノコン達の熱量が半端ない程にヤバい──。
外野のキノコン達の状態に気持ち引きつつも、セフィから離れる為に滑りに集中する。
左腕の回収が出来るチャンスは必ず有る筈だ。
一瞬のタイミングを逃したら、完全にオレの詰みだし、セフィに斬られて終わる。
一瞬のタイミングを逃さない様に全神経を集中させながら滑り続ける。
今だっ!!
その瞬間がやって来た!
オレはセフィの容赦無い殺人剣術をギリギリの紙一重でかわし、氷上に落ちている左腕を回収した!!
よしっ!!
そう思った矢先、オレの両脚が氷上を勝手に滑っている。
斬られた感覚が全くない。
視界が下がって行く様子がスローモーションに見える。
オレの身体から離れた両脚が壁へ向かって滑って行くのが視界に入った瞬間──、氷上に倒れて行く胴体が見えた。
胴体には左腕を掴んでいた筈の右腕が付いてなかった。
刀を加えたまま、オレの視界が回る。
オレの首は胴体から離れ、刀の柄を咥えたままの状態で、宙を舞っていた。
左腕を掴んだ状態の右腕が氷上に落ちるのがチラッと見える。
あぁ──、オレはセフィに斬られてしまったんだ。
「 よしっ!! 」って思った一瞬の隙が、オレの敗北を決定付けてしまったんだ。
「 喜ぶな 」って言う方が無理だろう。
勝負の最中に些細な事で一喜一憂してしまうオレは、未々未熟者って事なんだな。
決して些細な事では無いんだけどなっ!!
宙を舞うオレの視界に入るのは、胴体や右腕だけじゃない。
カメラを構えてシャッターを切るキノコン達の後ろに陣取って、ピカピカと綺麗に光るペンライト(?)を両手に持ち、左右に振るキノコン達が居る。
タイミングを合わせてウェーブを作ってはしゃいでいる姿が衝撃的だった。
器用な事してるぅ~~~~!!
観戦してるキノコン達の数が増えてるしぃ~~~~!!
オレの口から刀が離れて氷上へ落ちて行く。
オレの首も氷上に落ちて転がるんだろうと思っていたら──、セフィにキャッチされた。
セフィは綺麗で美しい顔で満足そうに、嬉しそうに微笑んでいた。




