✒ 配信動画 4
練習を始めてから大分時間が経ったけど、オレは氷上をひたすら滑り続けていた。
外と≪ ダンジョン ≫との時間の流れが違うから、何時間≪ ダンジョン ≫に居ても問題無いんだ。
≪ ダンジョン ≫で過ごす1時間は、外では1秒になっているからだ。
セフィから様々な技を教えてもらいながら、1つずつ確実にクリアして行く。
コツを掴んで完璧に出来る様になると、セフィがスタンプ帳にセロカくんスタンプを押してくれる。
オレが技に挑戦して失敗したり、転んだりする度にキノコン達のテンションが異様に上がる。
カシャカシャ,パシャパシャとシャッター音とフラッシュが激しくて、失敗したオレの姿を嬉しそうにレンズに納めるキノコン達。
「 もっと、おかわりほしいエリ~~♥️ 」「 マオ様ぁ~~、おかわりくださいエリ♥️ 」と喜ぶキノコン達に、一寸だけ腹立たしさを感じる。
“ おかわり ” が何なのか、オレには分からない。
オレが技を成功させた時よりも失敗した時の方が盛り上がるのって、あんまりだと思う!!
セフィ
「 マオ、大分自然に滑れる様になって来てるね 」
マオ
「 そうかな?
セフィの教え方が上手いからだろ(////)」
セフィ
「 マオが頑張れてるからだよ 」
マオ
「 セフィ~~♥️ 」
やっぱ、このセフィ好きだぁ~~(////)
抱き付いて押し倒したい──。
セフィ
「 色んな技も出来る様になって来たから、滑りながら棒術をしてみようか 」
マオ
「 棒術?
抜刀術を披露するのに刀じゃなくて良いのか? 」
セフィ
「 マオ、慌てないで。
真剣は未だ早いよ。
先ずは棒術で試し打ちをするよ 」
マオ
「 分かった。
滑りながら棒術か──。
出来るかな? 」
という訳で、真剣を使った抜刀術の練習をする前に、セフィと棒術をする事になった。
棒術に使う棒はセフィが用意してくれた。
最初は上手く棒術が出来なくて、覚束無い感じだったけど、セフィと打ち合っている間に段々と様になって来た。
確りと地面に足を付けてする棒術とは違って、滑りながらの棒術は難しい。
“ 様になって来た ” とは言え、フラ付いたり、バランスを取り損ねる事が屡々有る。
オレが何とか棒術の形を保てているのは、セフィがオレに合わせて手加減をしてくれているからだ。
本気のセフィと打ち合ったら確実に負ける。
キノコン達の声援の中には「 おかわりくださいエリ~~ 」の “ おかわりコール ” がやたらと多くて、オレが失敗する瞬間を今か今かと心待ちにしている。
どんな宣伝動画を作ろうとしてるのか不安でならない。
結局、オレはセフィと30時間も氷上で棒術をしていた。
外の時間では30秒しか経っていない事になる。
30時間も棒術を続けていれば、それなりに上達する。
セフィに認めてもらえたから合格スタンプを押して貰えた。
棒術をクリア出来た事もあり、次は竹刀でセフィと打ち合う事になった。
セロからスパルタ稽古を受けていた事もあり、剣道も経験済みだ。
滑りながら打ち合うなんて初めての試みだから、慣れる迄は大変だな。
──*──*──*── 30時間後
竹刀での打ち合いもセフィから合格をもらえた。
次は木刀を使っての打ち合いだ。
木刀での打ち合いが終わると、木剣を使った打ち合いをするみたいだ。
たっぷり,じっくり,確りと30時間ずつ打ち合いをする事になる。
木剣の打ち合いが終わったら、いよいよ真剣で斬り合う事になるかも知れない。
抜刀術じゃなくても居合い術でも十分なんじゃないかって思うんだけど……。
セロが決めた事だし、何か意味が有るのかも知れないな。
オレは慣れる為にひたすら練習するだけだ。
──*──*──*── 60時間後
木刀での打ち合いと木剣での打ち合いが終わった。
上達が早い事をセフィに褒められた(////)
次からは真剣を使っての斬り打ち合いになるだろうから、緊張する。
セフィ
「 先ずは逆刃刀を使うよ。
その後に真剣で斬りち合うからね。
逆刃刀は本番前のリハーサルだと思う様にね 」
マオ
「 本番さながらのリハーサルが真剣の斬り合いって事だな 」
セフィ
「 準備は良いかな 」
マオ
「 何時でも良いぞ 」
手渡された逆刃刀は、ずっしりと重たい。
セロがオレの為に用意してくれている重さの感じない逆刃刀とは違う。
なんちゃって逆刃刀じゃなくて、これは本物の逆刃刀だ。
この後に使う真剣も、ずっしりと重たいんだろうな。
本来なら両手で使う刀を片手で振るわないといけないんだから、相当な腕力が必要になるよな……。
昔の侍って凄いっ!!
刀の扱い方も振り方も色んな時代劇を散々見て来てるから、大体は把握している。
折角の機会だからな、色んな斬り方に挑戦してみようと思う。
重たい逆刃刀を腰に提げた状態で構える。
オレと向き合う様にセフィも逆刃刀を腰に提げて構えている。
オレとは微妙に型が違う。
何も言わない。
互いに見つめ合い、視線だけで合図を交わす。
キノコン達の黄色い声援も不思議と聞こえ無くなる静寂に入った瞬間──、セフィとオレは同時に鞘から逆刃刀を抜いた。
いや、同時じゃない。
セフィの方が一瞬だけ早かった!!
ほんの1秒差で勝敗が決まってしまう事も有る剣術の世界──。
1秒差で命を落とす事になり兼ねない死と隣り合わせな危険を孕む剣術の世界──。
一瞬の迷いが命取りになり兼ねない真剣勝負の世界──。
容赦無く斬り込んで来るセフィの逆刃刀を受け流し、オレも反撃とばかりに斬り込む。
互いに1歩も譲らない攻防戦がラリーの様に続く。
セロはやっぱり強い。
オレのレベルに合わせて態々セフィを使って相手をしてくれているけど、それでも本来の強さを完全にセーブが出来ていないのが分かる。
今でもオレの為に加減をしてくれているのが嫌って程に伝わって来る。
悔しいなぁ…………全力を出しても尚、セフィに手加減をさせてしまっている自分の弱さと不甲斐無さが悔しくて堪らない。
もっと強くなりたい。
セフィが手加減をしないで、オレと斬り合えるぐらい、強くなりたい──。
セフィとオレは30時間、みっちりと逆刃刀での斬合いをした。




