⭕ 初めての動画配信 1
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「 セロ様,マオ様、準備が整いましたエリ 」
マオ
「 有り難な、セノコン。
動画配信ってのは以外と準備が大変なんだな~~ 」
セノコン
「 本格的な準備と編集はボク達にお任せくださいませエリ 」
セノコンがビシッと敬礼をしてくれる。
軍隊の兵士も顔負けしそうな程に完璧な敬礼だ。
セロフィート
「 マオ、動画撮影とやらを始めましょう 」
マオ
「 そだな。
えぇと──、此処を押すんだよな? 」
オレはキーボードの1ヵ所を人差し指で軽く押す。
マオ
「 あっ、赤いのが点いた!
えぇと──、画面の向こうに居る視聴者さん、御早う!
今日わ,今晩わ!
記念すべき第1回目の【 セロに聞いてみよう! 】を始めます!
オレは助手のマオ!
で──、此方に居る長身の真っ白いのが、セロです! 」
セロフィート
「 初めまして。
セロフィートです 」
マオ
「 動画撮影は初めてだから、慣れる迄は編集した動画を配信します。
慣れて来たら動画の生配信もしていきたいと思ってます!
えぇと──、記念すべき第1回目って事なんで、視聴者さん達の記憶に残れる様な “ 何か ” をしようと思うんだけど、何が良いかな? 」
セロフィート
「 おや、考えてませんでした? 」
マオ
「 じ、実はな~~ 」
?
「 コスプレ衣装が凝ってますエリ 」
マオ
「 マオキノぉ~~!
コスプレって言うなよ!
違うから! 」
セロフィート
「 画面の向こう側で見ている視聴者さん達からすれば、この衣装は “ コスプレ ” と思われるのではないです? 」
マオ
「 それはそうかも知れないけど…… 」
セロフィート
「 ワタシは吟遊大詩人の衣装を着て、なりきってます。
マオはワタシを護衛してくれる守護衛士になりきってます。
ですね、マオ 」
マオ
「 あ~~うん、そだな……。
オレはセロから依頼されて、セロが旅をする間護衛をする雇われ守護衛士だ!
武器は刀で、双剣士だ。
場合に依っては剣も使うぞ。
これはオレが愛用している刀と剣だ! 」
セロフィート
「 そういう設定なので、視聴者の皆さんは頭の片隅に残してください 」
マオ
「 銃刀法違反ってのに引っ掛かったら困るもんな!
セロは吟遊詩人だけど手の込んだ小道具を作るのが得意なんだ! 」
セロフィート
「 マオ、吟遊大詩人です。
“ 大 ” を忘れないでください 」
マオ
「 毎回拘るなぁ~~ 」
セロフィート
「 大事な事です。
其処等辺の吟遊詩人と一緒にしないでください 」
マオ
「 えぇと、自己紹介も無事に済んだし、視聴者さんの記憶に残りそうなインパクトの有る事を披露したいよな? 」
マオキノ
「 マオ様、台詞がダブってますエリ 」
マオ
「 台本が無いんだから仕方無いだろ。
そうだ、セロは手品も得意なんだよな!
視聴者達が驚くような手品を見せたらどうかな? 」
セロフィート
「 ワタシは構いませんけど、道具は用意出来てます? 」
マオキノ
「 御用意してますエリ。
どうぞですエリ 」
セロフィート
「 準備が良いですね、マオキノ 」
マオキノ
「 有り難う御座いますエリ 」
マオ
「 因みに小道具を用意してくれてるのがマオキノで、動画を撮ったり編集してくれてるのがセノコンだ。
2体は “ キノコン ” って言って、シュンシュンの式神なんだ 」
セロフィート
「 マオ、“ シュンシュン ” と言っては視聴者さん達には誰なのか分かりませんよ 」
マオ
「 あっ、そっか。
えぇと、陰陽師アイドルとして大絶賛活躍中の少年陰陽師の春舂霄囹って知ってるだろ?
オレは “ シュンシュン ” って呼んでるんだ。
──じゃあ、早速、セロに手品を披露してもらおう!
セロ、今回はどんな手品を見せてくれるんだ? 」
セロフィート
「 簡単な手品です。
100円ショップで買った紙袋を使います 」
マオ
「 未だ未開封だな。
これがレシートか。
近所の100円ショップで買って来た紙袋っていう証明になるかな? 」
セロフィート
「 さて、どうでしょうね。
助手さん、紙袋を1枚ください 」
マオ
「 おう 」
セロフィート
「 中に物が入る様に広げてください 」
マオ
「 分かった。
中も見せた方が良いよな。
空っぽだって知ってほしいし 」
そんな訳で、オレは未開封のビニールを開けると紙袋を1枚取り出す。
紙袋の口を広げて中が空っぽなのを見せる。
マオ
「 セロ、何を出してくれるんだ? 」
セロフィート
「 そうですね──。
この消ゴムをイエローダイヤモンドにでも変えてみます? 」
マオ
「 イエローダイヤモンド??
宝石か!
消ゴムが宝石に変わったら視聴者も吃驚するかもだな! 」
セロフィート
「 助手さん、其処に有る使用済みの消ゴムを紙袋の中に入れて封をしてください 」
マオ
「 任せろ 」
紙袋の中に使用済みの消ゴムを入れて、画面に中身を見せる。
紙袋の口を折り曲げて封をする。
マオ
「 セロ、次はどうするんだ? 」
セロフィート
「 魔法の呪文でも唱えます? 」
マオ
「 魔法の呪文?
セロは吟遊詩人なんだし、詩歌でも歌えば良いだろ? 」
セロフィート
「 いやですね、マオ。
吟遊大詩人は役です。
雰囲気を出す為に衣装を着こんでいるだけです。
ワタシに詩歌は歌えません 」
マオ
「 そういう設定かよ……。
じゃあ、魔法の呪文で良いよ 」
オレが言うとセロは紙袋に向かって、何語か分からない言葉を呟き始めた。
紙袋の中が淡く光だす。
セロフィート
「 このくらいで良いでしょう。
マオ、紙袋を開けてください 」
セロに言われてオレは、紙袋の封を開けた。
中に入っている筈の消ゴムを出す為に逆さにして紙袋の口を下にする。
テーブルの上に転がったのは、紙袋の中に入れた筈の消ゴムじゃなくて、消ゴムより少し大きい黄色い宝石が出て来た。
マオ
「 これがイエローダイヤモンド?
綺麗だな~~!
消ゴムがイエローダイヤモンドに変わっちゃったよ!
これ、1個で幾らするんだ? 」
セロフィート
「 ふふふ。
100円です 」
マオ
「 は?
100円だって?
イエローダイヤモンドだろ!
100円な訳あるかよ!!
0の数を間違えてるんだよな? 」
セロフィート
「 税込み110円です。
それは別の100円ショップで買った物です。
本物の宝石を用意なんて出来ると思います? 」
マオ
「 えぇ~~?
何だよ、偽物かよ~~ 」
セロフィート
「 因みに紙袋の中に入っていた使用済みの消ゴムは此処に有ります 」
マオ
「 何時のに?! 」
セロフィート
「 手品ですし、これぐらいは出来ます 」
マオ
「 まぁ…そうだよな。
一般市民に高価なイエローダイヤモンドを用意出来る訳が無かったよな…。
暫くは動画を編集したのを配信する訳だし、“ インチキ ” とは言われないかも知れないけど、“ 合成だ ” とか “ フルCG ” とかって、コメントが書かれるんだろうな? 」
セロフィート
「 態々無粋な書き込みをして視聴者さん達の楽しみに水を差す輩は居ます。
気にするだけ無駄です。
タネや仕掛けが有り、成立するのが手品です。
一寸した不思議を見てもらい、不思議を感じてもらえれば手品冥利に尽きます。
ヤラセだろうとイカサマだろうと態々指摘をして突っ込むより、敢えて乗っかり楽しむのが大人の嗜みという物です 」
マオ
「 へぇ~~そうなんだな。
大人の嗜みか~~。
……………………何か違くないかな? 」
セロフィート
「 如何にも “ それっぽい事をそれっぽく ” 言ってみるのが吟遊大詩人です 」
マオ
「 セロの言う事を真に受けたら駄目なんだよな~~ 」
セロフィート
「 マオ、次はどうします? 」
マオ
「 次ぃ?
じゃあ、もう1回だけ手品をして終わるか? 」
セロフィート
「 無計画ですね、マオ。
次は何を出します? 」
マオ
「 そうだな~~。
オパールは?
この位の大きさのオパールを沢山! 」
セロフィート
「 分かりました。
助手さん、紙袋を用意してください。
中に入れるのは──、コレにしましょう 」
マオ
「 オセロに使う石か。
──っていうか、何処からオセロの石を出したんだよ? 」
マオキノ
「 御用意してましたエリ 」
マオ
「 用意が良いな~~ 」
という訳で、2回目の手品をセロに披露してもらう事になった。