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まずはお嫁さんからお願いします。  作者: 桜庭かなめ
本編

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第68話『触れ合う朝』

 6月3日、土曜日。

 目を覚ますと、そこには優しい笑顔で俺を見つめる優奈がいた。目が合うと、優奈は俺にニッコリと笑いかけてくれる。物凄く可愛い。夢なんじゃないかと思うけど、優奈の甘い匂いや温もり、柔らかさがはっきりと伝わってくる。だから、これは現実なのだと分かった。


「おはようございます、和真君」

「おはよう、優奈」


 朝の挨拶を交わすと、優奈は俺にキスしてくる。おはようのキスだろうか。

 数秒ほどして、優奈の方から唇を離す。すると、目の前には優奈らしい柔らかい笑顔があって。癒やされるなぁ。


「和真君が起きている中で唇にするキスが一番いいですね」

「……その言い方だと、俺が寝ている間にもキスしていたように聞こえるんだけど」

「はい、しました。10分くらい前に目が覚めまして。和真君の寝顔を楽しむ中で、頬や額や唇にキスしました。あとは首筋や胸元にも。昨日の夜のことを通して特に好きになったので」

「結構キスしてたんだな。でも、全然気付かなかった。……実は、俺も昨日、寝る直前に優奈の頬にキスしたんだ」

「そうだったんですね。全然気付きませんでした。昨日はたくさんえっちして、すぐに寝付けたからでしょうね。……ぐっすりと眠れたので、今日もとてもいい目覚めでした」


 優奈は上体を起こして、「う~ん」と声を漏らしながら体を伸ばす。俺も上体を起こして優奈の隣で体を伸ばす。気持ちがいいな。

 優奈も俺も裸なので、昨日の夜に肌を重ねたのが本当のことなのだと実感する。それが嬉しい。また、薄暗い中でも、伸ばしている優奈の体はとても綺麗だ。見惚れる。

 優奈は体を伸ばし終えると、笑顔で俺を見つめてくる。


「どうしました? 私のことをじっと見て」

「体を伸ばしている姿が綺麗だと思ってさ。あと、裸の優奈を見て、昨日の夜に肌を重ねたのが本当だったんだって実感してさ。それが嬉しいんだ」

「そうですか。私も嬉しいですよ!」


 嬉しそうに言うと、優奈は俺のことを抱き寄せてくる。その流れで俺の頭を胸に埋めさせてきて。

 目を中心に、頭が優奈のとても柔らかい胸に触れている。優奈の優しい温もりも伝わってきて嬉しい。何とか呼吸でき、呼吸する度に優奈の甘い匂いが濃く香ってきて。だから、物凄く心地いい。


「和真君。どうですか? 私の胸は」

「……最高です。柔らかくて、温かくて、甘い匂いがして」

「そう言ってくれて良かったです。昨日のえっちを通して、和真君は私の胸が大好きなのだと分かりましたから、顔を埋めさせてみました」

「そうか。優奈の胸が……好きだよ。大きくて、柔らかくて。俺達が結婚したって伝えたとき、井上さんが優奈の胸をこれからも楽しみたいって言ったのも納得だ」

「ふふっ、そうですか。私の胸が好きだと言ってくれて嬉しいです。あとは腋やお尻や太ももも好きですよね」

「……ああ」


 正直に答えると、優奈の「ふふっ」と優しい笑い声が聞こえた。その直後、髪越しに何かが触れて、温もりが伝わってくる。きっと、優奈が俺の頭を撫でてくれているのだろう。幸せだ。

 それから少しの間、優奈の胸に顔を埋め続けた。井上さんに倣って、たまに頭をスリスリして。温かくて柔らかいからとても気持ちがいい。このまま優奈の胸の中で眠ってしまいそうなほどに。

 優奈の胸から顔を離すと、優奈はとても柔らかい笑顔で俺のことを見ていた。胸に顔を埋めていたから、優奈がちょっと母親のようにも思えてくる。


「幸せそうな笑顔ですね」

「凄く良かったからさ。本当に好きだよ、優奈の胸」

「旦那さんに気に入ってもらえて嬉しいです。あと、顔を埋めて、頭をスリスリする和真君が可愛かったです」

「そっか」


 理由が理由なだけに、優奈から可愛いと言われるのは特に嫌だとは思わない。あと、胸に顔を埋める俺が可愛く思ったから、優奈は頭を撫でてくれたのかもしれない。


「あの、和真君。これから一緒にお風呂に入りませんか? 昨日はたくさんえっちして、そのまま寝たので。体をさっぱりとさせたいです」

「そうだな。一緒に入ろう」

「はいっ」


 優奈はニコッとした笑顔で返事した。

 それから、下着や私服を持って洗面所に向かう。その際、優奈の体を見ると……キスマークや傷はついていないな。昨日、肌を重ねる中で優奈の体にたくさんキスしたり、ぎゅっと抱きしめたりしたけど。優奈の綺麗な体に痕がついていなくて安心した。

 また、優奈に俺の体を見てもらったけど、俺の方もキスマークや傷は特にないという。

 俺達は浴室に行き、朝風呂に入ることに。今日は土曜日だし、俺のバイトがないから、時間を気にせずにゆっくりと楽しもう。

 湯船に浸かる前に優奈、俺の順番で髪と体、顔を洗っていく。昨日の夜と同様に、髪と背中は洗いっこして。


「よし、これで顔もOK。……優奈、湯船に入るよ」

「はーい」


 既に優奈が浸かっている湯船に足を踏み入れる。昨晩と同じように、優奈と向かい合う体勢で腰を下ろした。


「あぁ……」


 追い焚きしたので、昨日の夜と同じくらいに湯船が温かくて気持ちいい。


「気持ちいいな。旅行以外では朝風呂に入ることは全然ないから、何だか特別な感じがする」

「和真君の言うこと分かります。私も旅行以外だと朝風呂はあまり入りませんから」

「そっか。あと、心なしか、お湯の温もりが腰に沁みている気がする。特に痛くはないんだけどさ」

「昨日はえっちをしているときに、たくさん腰を動かしていましたからね。たまに激しいときもありましたし……」


 そのときのことを思い出しているのだろうか。優奈は恍惚とした笑みを浮かべて俺のことを見つめている。今のような笑顔は肌を重ねる中でいっぱい見てきたから、結構ドキッとする。


「気持ち良かったし、優奈の反応が可愛かったからな。優奈の方は大丈夫か? 優奈も激しく動くことがあったから」

「私も大丈夫です。特に痛みはないですし。ただ、和真君と一緒で腰のあたりはいつもよりも温もりが沁みている感じはします。それが気持ちいいです」


 あぁっ、と優奈は可愛い声を漏らし、まったりとした様子で湯船に浸かっている。今の優奈を見ていると、より気持ち良く感じられる。


「朝から、優奈と一緒にゆっくりとお風呂に入れるなんて。幸せだ」

「私も幸せです。気持ちいいですし。……あの、和真君を抱きしめてもいいですか? そうしたらもっと気持ち良くなりそうな気がして」

「ああ、いいぞ」

「ありがとうございますっ」


 湯船にもたれかかる体勢になり、優奈がこちらに来やすいように、両手と両脚を広げる。

 優奈はとても嬉しそうな様子でこちらに近づき、やがて体の前面に優奈の体が触れる。胸を中心に柔らかい感触でとても気持ちいい。お湯に浸かっているけど、優奈に触れている箇所からは優奈の優しい温もりが伝わってきて。それがとても心地いいと思いながら、俺は優奈のことを優しく抱きしめた。


「和真君の体に触れて。優しい温もりが伝わってきて。抱きしめられて。とても気持ちいいです。……昨日のえっちを思い出します」

「そうだな。こうやって抱きしめることは何度もあったし。俺も優奈を抱きしめて気持ちいいよ。優奈の体が気持ちいいし。胸中心に柔らかいし」

「良かったです。……嬉しい」


 可愛い笑顔でそう言うと、優奈は胸元や首筋にキスしてくる。起きたとき、俺の胸元や首筋が特に好きになったって言っていたからな。優奈の柔らかい唇の感触が気持ちいい。


「裸で抱きしめてもらっていますし、胸元と首筋にキスしたので……口にもキスしたくなってきました。いいですか?」

「ああ」

「ありがとうございます」


 優奈は嬉しそうにお礼を言うと、俺にキスしてきた。お風呂に入っているから、いつも以上に優奈の唇が温かくて、柔らかい。

 また、キスしている中で優奈が俺の背中に両手を回してきて。優奈とより密着する体勢になる。そのことにドキドキして、俺から舌を絡ませる。

 俺が舌を絡ませてくるのは予想外だったのだろうか。優奈は体をピクリと震わせた。その反応が可愛くて。

 それから少しして、優奈の方から唇を離す。


「舌を絡ませてくるとは思わなかったので、ちょっとビックリしちゃいました」

「体が震えたのが可愛かったぞ」

「……えへへっ」


 と、声に出してはにかむ優奈がとても可愛かった。


「あの、和真君。今度は和真君を背もたれにして座ってみたいです」

「いいぞ。ラブコメの漫画とかアニメでも、夫婦やカップルがそうして湯船に浸かっているシーンがあるよな」

「ありますね! 実はそういうシーンの憧れもありまして」

「ははっ、そうか」

「じゃあ、やってみますね」


 お互いに抱擁を解き、優奈は俺と同じ方向に体を向ける。優奈は俺の体を背もたれにしてきた。

 向かい合って抱きしめ合うときよりも優奈から感じる柔らかさは減る。ただ、平らな背中なので優奈とよりピタッと触れている感じがして。これはこれでいいな。優奈の前面に両手を回し、軽く抱きしめる体勢に。両手に触れるこの感触はお腹かな。


「あぁ……気持ちいいです。背中から和真君を感じたり、後ろから和真君に抱かれたりするのもいいですね。和真君はどうですか?」


 そう言い、優奈は顔だけこちらを向いてくる。この体勢もいいと言うだけあって、優奈の顔には可愛い笑みが浮かんでいる。


「とってもいいよ。向かい合うよりも優奈とくっついている感じがする。後ろから抱きしめる感覚もいい。これはこれでいいな」

「良かったです。和真君を背もたれにしていますが、重くはありませんか?」

「全然そんなことないさ。俺も湯船を背もたれにしているし楽だよ」

「そうですか。安心しました。……湯船から出るまでは、和真君とくっついていてもいいですか?」

「もちろんさ。俺も優奈に触れていたいし」

「ありがとうございます!」


 嬉しそうにお礼を言い、俺にキスしてきた。

 それから、湯船を出るまではずっと、優奈を後ろから抱きしめたり、向かい合って抱きしめたりした。たまにキスもして。それもあって、今までで一番気持ちのいいお風呂になった。

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