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まずはお嫁さんからお願いします。  作者: 桜庭かなめ
本編

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第60話『自覚した気持ち』

 優奈のいる学校生活が再び始まる。

 昨日は優奈が休んでいたのもあり、いつも以上に授業中に優奈のことを見て。優奈と目が合ったり、小さく手を振ったりすると嬉しくて。そういうことはあっても、昨日よりも授業の内容が頭に入ってきた。

 今日もいくつかの科目で中間試験の答案が返却された。どの科目も高得点で良かった。これなら、2年生までと同じく上位一割ほどの順位を取れるだろう。

 また、優奈が100点満点を取ったり、担当教師からクラス1位であると発表されたりすると、自分のことのように嬉しい気持ちになった。そういったとき、優奈は俺に可愛い笑顔を向けてくれて。そのときはキュンとなった。

 昼休みはこれまでのように、優奈の席で2人きりでお弁当を食べる。優奈は俺の作ったお弁当を美味しく食べてくれ、玉子焼きを褒めてくれて。とても嬉しい気持ちになった。

 優奈もいる中で学校生活を送ったから、放課後になるまであっという間に感じられて。

 放課後はバイトのシフトが入っていた。学校もあったけど、全然疲れることなく仕事をこなすことができた。




 夜。

 夕食後はリビングで優奈と一緒にアニメを観たり、自分の部屋で勉強したり、優奈の後に入浴したり、ラノベを読んだりするなどしていつもの夜の時間を過ごす。

 ラノベをキリのいいところまで読み終わると、いつも就寝する時間が近づいていた。なので、ラノベを読むのはこれで終わりにして、洗面所に行って歯を磨く。

 歯を磨き終わって洗面所を出ると、すぐ目の前に優奈がいた。枕を抱きしめながら。


「おっ、優奈。俺はもうそろそろ寝るよ」

「そうですか。あ、あの……今日は和真君と一緒に寝たいです」


 やっぱり、一緒に寝たいというお願いをしに来たか。枕を抱きしめる姿や上目遣いで俺を見てくる姿が可愛くてドキッとする。


「もちろんいいよ」

「ありがとうございます!」


 とても嬉しそうにお礼を言う優奈。そんな優奈を見ていると温かい気持ちになっていく。


「本当は昨日も一緒に寝たかったんです。学校を休んで、一人で家にいて寂しかったですから。和真君と一緒にいたくて。ただ、とても早い時間に眠くなりましたし、体が治りきっていなかったので誘うのを止めたんです。体調が良くなったら誘おうって決めて」

「そうだったんだ。それで、今日は元気になったから、一緒に寝ようって誘ってくれたんだな」

「はいっ」


 優奈はニコッと笑いながら返事する。その姿も可愛くて。

 優奈……昨日、家で一人きりのときは俺と同じで寂しい想いをしていたんだな。一緒にいたいと思ってくれていたんだな。それらの理由で一緒に寝ようって誘ってくれたことが嬉しい。今までも一緒に寝ようと誘ってくれたことは何度もあったけど、今回は一番嬉しく感じる。本当に嬉しい。その瞬間にふと自覚したんだ。


 俺……優奈のことが好きなんだって。


 俺も昨日は一人で学校に行って、優奈のいない学校生活を送るのが寂しくて。家に帰って優奈を会えることが嬉しくて。

 今日は優奈と一緒にいつも通りの生活を送ることができたのがとても嬉しくて。

 それは優奈に好意を抱いているからなんだ。

 優奈が好きだと自覚したから、優奈が今まで以上に可愛く見える。こんなに魅力的な人が俺のお嫁さんなんだ。凄くドキドキして、全身が急激に熱くなっていくのが分かった。


「あの、和真君」

「う、うん?」

「今日は和真君の部屋のベッドで寝たいのですが……いいですか? 今日はその方がよく眠れそうな気がするんです」

「そうか。……いいよ。今日は俺のベッドで寝よう」

「ありがとうございますっ」


 優奈は嬉しそうにお礼を言った。俺のベッドで寝たいと言ってくれるなんて。凄く嬉しい。


「俺はお手洗いに行ってくるから、優奈は先に俺の部屋に行ってて。ベッドに入っていてもいいから」

「分かりました!」


 優奈は元気良く返事をすると、俺の部屋に入っていった。

 俺はお手洗いで用を足して、自分の部屋に戻る。

 ベッドに入っていてもいいと言ったからだろうか。優奈はこちらを向いた状態でベッドに横になっていた。優奈……本当に可愛いな。

 優奈のことが好きになったと自覚した。だから、その想いを優奈に告白しないと。

 ただ、今までに告白したことはない。保育園時代に初めて恋をしたけど、好きだと伝える前に初恋相手の先生は結婚し退職してしまった。

 告白するのが未経験だったり、目の前に優奈がいたりするのもあって、凄く緊張してしまう。だから、今すぐに告白する勇気は出なくて。優奈は俺のお嫁さんだし、好き合う夫婦になるっていう目標もあるのにな。

 ただ、好き合う夫婦になるためには、好きだと想いを伝えることが必要なのは分かっている。だから、できるだけ早く想いを伝えたい。


「電気、消すよ」

「はい」


 俺は部屋の照明を消して、ベッドライトを点けてベッドに入った。

 優奈が既にベッドに入っているからだろうか。仰向けの状態になり、胸のあたりまでふとんを掛けると、優奈の甘い匂いがふんわりと香ってきて。優奈の優しい温もりに包まれて。そのことにドキドキする。

 優奈の方に顔を向けると、すぐ近くに笑顔の優奈がいて。俺と目が合うと、優奈はニコッと笑った。……俺のお嫁さんが可愛すぎる。ベッドライトの暖色系の灯りに照らされているから、大人っぽい雰囲気も感じられて。俺のお嫁さんは魅力に溢れているのだと再認識する。


「やっぱりいいですね。ベッドに和真君がいるのって。ここは和真君のベッドですから、和真君に包まれている感じもしますし」

「そう言ってもらえて嬉しいよ」


 大好きなお嫁さんから言ってもらえてさ。


「俺も……優奈がベッドにいるのがいいなって思うよ」

「そうですか。嬉しいです」


 そう言うと、優奈は目を細めて笑顔になる。その笑顔もまた魅力的で。


「今夜も……手を繋いで寝てもいいですか?」

「ああ、もちろんだ」


 一緒に寝るときは手を繋ぐのが恒例になっているし。優奈と触れられるのは嬉しいから。


「ありがとうございますっ」


 優奈は嬉しそうにお礼を言うと、俺の左手を優しく握ってきた。

 左手から優奈の手の柔らかい感触と温もりが直に伝わってくる。そのことにドキドキして、体が段々と熱くなっていく。これまで、こうして一緒に寝たり、学校やデートなどで一緒に外出したりするときにたくさん手を繋いだのにな。きっと、優奈のことが好きだと自覚したからだろう。


「和真君の手……いつもよりも温かいです。それが気持ちいいです」

「そ、そうか」


 いつもよりも温かいと言われてドキッとした。ただ、それがいいと言ってもらえて一安心だ。


「和真君と一緒に寝ますから、今夜はいい夢を見られそうです」

「見られるといいな」

「はい。では、おやすみなさい」

「おやすみ」


 優奈が目を閉じた直後に、俺はベッドライトを消す。

 俺も目を閉じて寝ようとするけど……ドキドキしてなかなか寝付けない。優奈と一緒に寝ることはこれまでに何度もあったのに。優奈の温もりや甘い匂い、柔らかさを感じながら眠れたのに。これも好きだと自覚した影響だろう。というか、むしろ……今まではよく、そこまで時間がかからずに眠れたと思う。

 目を開けると……暗さに慣れてきたのもあり、真っ暗な中でも優奈の寝顔がはっきりと見える。寝息を立てている寝姿がとても可愛くて。そういった姿をすぐ近くから見られることが嬉しくて。

 優奈の可愛い寝顔を見ていると、額とか頬とか唇とかにキスしたくなる。ただ、我慢しなければ。一度したら歯止めがかからなくなりそうだし。それに、寝息を立てているけど、優奈はまだ起きているかもしれないし。俺にキスされて嫌な想いをさせてしまうかもしれないから。

 それから、寝付くまでにはかなりの時間がかかった。

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