第1話『ツンデレを演じてみるお嫁さん』
今日は期末試験が終わってから初めての学校なので、どの授業も期末試験の答案の返却と解説だった。
俺はどの科目も高得点で、現代文とコミュニケーション英語は100点満点を取ることができた。
優奈は返却された全ての科目が100点満点。優奈は本当に凄いよ。さすがだ。
西山と井上さんと佐伯さんもまあまあとのこと。また、西山と佐伯さんが苦手で、井上さんも不安に思っている数学演習の答案も返却されたけど、3人とも赤点は回避できたという。
この調子で、みんな赤点なく全教科の答案が返却されるといいな。
放課後。
今日は優奈も俺も特に予定はないので、学食で一緒にお昼ご飯を食べ、マンションの近くのスーパーで今日の夕食の材料を購入して帰宅した。
スーパーで購入したものを冷蔵庫に入れ、それぞれ自分の部屋で私服に着替えた後、リビングにあるテレビで昨晩放送されたラブコメアニメを観る。ソファーで隣同士に座り、俺が淹れたアイスコーヒーを飲みながら。
このラブコメアニメは優奈も俺も好きな作品だ。キャラクターのことを中心に優奈と語りながら観たのもあってとても面白く、あっという間にエンディングを迎えた。
「今週のお話も面白かったですね!」
「面白かったな。だから、あっという間に終わったなぁ」
「そうですねっ」
面白かったと言うだけあって、優奈は満足そうな笑顔になっている。一緒にアニメを観た後の優奈の笑顔がとても好きで、幸せな気持ちになれる。俺は優奈と一緒にアニメを観るのが好きで、その理由の一つはこれだ。
「今週から本格的に出てきたツンデレの子が可愛かったですね」
「そうだな」
「特に頬を染めながら『別にあなたのことなんて気にしてないんだからね』って言ったときが可愛かったです」
「分かる」
今週は主人公のクラスメイトでツンデレな性格の女子生徒がたくさん出てきたエピソードだった。主人公にはツンツンした態度を取るけど、頬を赤らめていたり、口元が緩むときがあったりと可愛い子だったな。
あと……アニメのキャラのツンデレなセリフを言った優奈が凄く可愛かったな。いつもの優奈とは真逆なのでギャップがあるし、新鮮でとてもいい。キュンときた。ツンデレな感じの優奈をもっと見たくなってきた。
「どうしましたか? 和真君。私のことをじっと見て。あと、頬がちょっと赤くも見えます」
「ツンデレなセリフを言った優奈が凄く可愛くてキュンとなったんだ」
「ふふっ、そうでしたか」
「……もし良ければ、ツンデレな雰囲気の優奈をもっと見たいな。どうかな?」
優奈のことを見つめながら俺はお願いをする。
ツンデレキャラが出てきたアニメを観たり、そのキャラのセリフを言った優奈が可愛いと言ったりした流れでお願いしたけど……優奈はどう思うだろうか。
「いいですよ、和真君。上手くできるかは分かりませんが」
優奈は持ち前の柔らかい笑顔で快諾してくれた。嬉しいし、ほっとした。
「ありがとう、優奈。優奈が思うツンデレを演じてくれればいいから」
「分かりました」
そう言うと、優奈の顔からは笑みが消えて、ちょっと不機嫌そうな様子になる。頬がほんのりと赤くなっているから照れくさそうにも見えて。ツンデレな演技の始まりかな。
「ふ、普段の私とは違った振る舞いをするのがどんな感じか試してみたかっただけです。別に、和真君にツンデレな演技をする私をもっと可愛いって思ってほしいなんて思ってないんですからね」
俺のことを見つめながらそんな言葉を言った。
おぉ、ツンとしている。普段の優奈とは真逆なので、ギャップがあって凄く可愛いなぁ。あと、こんな優奈を見るのは初めてだからとても新鮮だ。ツンデレな雰囲気を見てみたいとお願いしてみて良かったとさっそく思った。
「ツンデレな優奈……凄く良くて可愛いぞ。そんな姿を見られて本当に嬉しいよ」
嬉しさのあまり、気付けば優奈の頭を優しく撫でていた。
頭を撫でられるのが気持ちいいのだろうか。優奈は「あぁっ」と甘い声色を漏らす。そして、顔から不機嫌そうな表情が消えて柔らかい笑顔になる。
しかし、今はツンデレの演技中だからか、優奈の顔は再び不機嫌そうな様子に。
「今、声が漏れたのは、和真君がいきなり頭を撫でてきたことにビックリしただけで、別に頭を撫でられて気持ち良かったからとか、嬉しかったからとかじゃないんですからねっ」
と、再びツンとした言葉を言ってきた。ただ、口元がとても緩んでいる。どうやら、頭を撫でられて気持ち良かったり、嬉しかったりしたようだ。言葉はツンとしていても、それ以外のところからデレを感じられるのもいいな。とても可愛い。
「ははっ、そっか。ただ、今の声……凄く可愛かったよ」
「……えへへっ」
優奈はそう声に出して笑った。嬉しかったのか、いつもの可愛らしい笑顔になっていて。ツンとした態度の後なのでとても可愛く感じられる。
「あの、和真君」
「うん?」
「脚を開いてもらっていいですか? 和真君の脚の間に座りたいです。ソファーが柔らかいので、気分転換に和真君の硬い胸板を背もたれにして座りたいだけです。別に頭を撫でられたから和真君ともっとくっつきたくなったわけじゃないですよ」
「そっか。分かったよ」
次々とツンとした言葉を言えて凄いな。
俺は優奈の言う通りに両脚を広げて、
「どうぞ」
と言って、右手で両脚の間の部分をポンポンと叩いた。
「ありがとうございます。失礼します」
優奈は微笑みながらお礼を言い、ソファーから立ち上がる。そして、俺の両脚の間に腰を下ろし、俺の胸を背もたれにする。
優奈がもたれかかるので、服越しに優奈の温もりが感じられて。髪からコンディショナーの甘い匂いも感じられてとてもいい。そんなことを思いながら、俺は優奈のお腹に両手を回して後ろから抱きしめる形に。
「どうだ、優奈」
俺がそう問いかけると、優奈は顔をこちらに向けて、
「とても座り心地がいいですね。ソファーの柔らかさもいいですけど、和真君の硬い胸板もいいです。あと、後ろから和真君に抱きしめられて凄く幸せです」
その言葉が本心であると示すように、優奈は幸せそうな笑顔で言ってくれた。ツンとした言葉を何度も言ったのもあって、今の言葉がとても胸に響いてキュンとさせられる。
「それは良かった。あと、いつも通りの優奈だけど、ツンとした後だから本当に可愛くてキュンとなったよ」
「良かったです! ……私なりにツンデレの演技してみましたけどどうでしたか?」
「凄く良かったよ。いつもと違った優奈を見られて良かった」
「それは良かったです」
優奈はニコッとした笑顔でそう言った。いつもと違うツンデレな雰囲気の優奈も良かったけど、今のようにいつもの可愛らしい雰囲気の優奈もいいな。
「優奈、ありがとう。お礼にキスをしてもいいか? ツンデレな姿に何度もキュンとさせられからキスしたくなっているのもある」
「ふふっ、いいですよ。和真君」
「ありがとう」
俺とキスしやすくするためか、優奈は俺の方に振り返る。ソファーの上に乗って、俺のことをそっと抱きしめてくる。優奈はそっと目を瞑る。
キス待ちの顔が可愛いなと思いながら、俺は優奈にキスをする。
さっきまでアイスコーヒーを飲みながらアニメを観ていたのもあってか、優奈の唇はいつもよりもほんのり冷たくて。優奈の甘い匂いだけでなくコーヒーの匂いも感じられて。だから、とても心地良く感じられる。
数秒ほどして俺から唇を離す。すると、目の前には頬を中心に赤らんだ優奈の笑顔があって。
「とてもいいキスでした」
「良かった。……平日のお昼過ぎに、優奈と一緒に好きなアニメを観て、こうしてキスもできて幸せだな」
「私もですっ。いつもならまだ授業をしている時間ですもんね」
「そうだな。だから、何だか特別な時間を過ごしている気がする」
「分かります。あと、こういう時間に観るアニメって特にいいですよね」
「分かるなぁ。2年生までも特に予定がない日は、お昼を食べたら家でアニメを観たり、漫画やラノベを読んだりすることが多かったな。今みたいな感じで、友達と一緒に観たこともあった」
「私もそうでした。萌音ちゃんや友達とアニメを観たりしました」
「そっか」
優奈も今日みたいな日はアニメ観ていたか。こういうことでも優奈と重なるのは嬉しいな。
今後も半日期間中に優奈も俺も予定がない日は、早い時間に家に帰って一緒にアニメを観るのが定番の過ごし方の一つになりそうだ。
「あ、あの、和真君」
俺の名前を呼び、優奈は俺のことを見つめる。キスした直後よりも顔が赤くなっていて。どうしたんだろう?
「どうした?」
「和真君と……したいことがありまして」
「俺としたいこと?」
「はい。……えっちしたいです。平日のお昼過ぎからえっちしたことはありませんからしてみたいと思いまして。それに、えっちしたら、もっと幸せな気持ちになれるんじゃないかなとも思いまして。いかがでしょうか」
えっちしたいと言ったのもあり、優奈の顔はますます顔が赤くなっていて。優奈の体から伝わってくる熱もかなり強くなっていて。
これまでを振り返ると……優奈の言う通り、平日のお昼過ぎから肌を重ねたことは一度もないな。明るいうちからしたことはあるけど、それは夕方だったし。
半日期間だからこそ平日のお昼過ぎからできると思うと……凄く魅力的だ。
「優奈の話を聞いたら、俺もしたくなってきたよ。しようか、優奈」
「はいっ、ありがとうございます!」
真っ赤な顔に嬉しそうな笑みを浮かべてお礼を言うと、優奈は俺を抱きしめる力を強くしてキスをした。
その後は優奈の部屋に行き、優奈と肌を重ねた。
優奈とはこれまでたくさん肌を重ねてきたけど、平日のお昼過ぎにするのは初めてのこと。だから、新鮮さが感じられて。普段なら授業中の時間帯なのもあって特別感もあって。この時間から優奈と肌を重ねられることに幸せを感じる。
優奈も同じ気持ちなのだろうか。肌を重ねている中、優奈は幸せそうな笑顔を見せること何度もあって。そのことにキュンとなる中で、幸せを感じられた。
「気持ち良かったですね、和真君」
「ああ。気持ち良かったな」
何度か肌を重ねた後、優奈と俺は優奈のベッドで横になっている。優奈が俺の左腕を抱きしめた状態で。たくさん動いたので体が熱くなっているけど、優奈から伝わってくる強い温もりはとても心地いい。
「平日のお昼過ぎからするのは初めてだったので新鮮でした」
「そうだったな。いつもなら授業をしている時間からしたから特別感もあった」
「そうでしたね。アニメを観たりしたことで抱いた幸せな気持ちがもっと膨らみました」
「そうか。その気持ち……している間に伝わってきたよ。優奈、幸せそうな笑顔になっていたから」
「そうでしたかっ。この時間からえっちできて幸せに思いましたからね。和真君も幸せそうな笑顔になっていましたよ」
「俺も幸せを感じたからな」
幸せな気持ちを言葉にし合い、俺達は笑い合う。こうしていられることにも幸せを感じられる。
「和真君のおかげでとても幸せな時間を過ごせています。ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそありがとう。えっちしたいって言ってくれてありがとう」
「いえいえ。たまにでもいいので、これからも今日みたいな日は明るいうちからえっちしたいです」
「ああ、いいぞ。優奈」
「ありがとうございますっ」
とても嬉しそうにお礼を言うと、優奈はお礼のキスをしてきた。肌を重ねる中でたくさんキスをしたけど、優奈とのキスは本当にいいな。
体をたくさん動かしたことの疲れがあるので、それからしばらくの間はこのままベッドで横になりながら優奈とゆっくりと過ごすのであった。
今朝、学校に行くとき、今まで以上に半日期間を好きになりそうだって思ったけど、優奈のおかげでさっそく好きになれた。




