プロローグ『半日期間』
特別編6
7月10日、月曜日。
梅雨の時期らしく、今日も起きたときからどんよりとした空模様で、雨がシトシトと降っている。朝食を作っているときに見た天気予報によると、今日はずっと雨が降り続くとのことだ。あと、週間予報では、この先一週間は雨が降らない日が多く、来週の月曜日は晴れる予報になっている。梅雨明けまであと少しかもしれない。
俺・長瀬和真は、妻の優奈と一緒にいつも通りの平日の朝の時間を過ごし、私立常盤学院大学付属高等学校に行く準備をする。
優奈も俺も準備を終えると玄関で、
「じゃあ、学校に行くか」
「そうですね。……せーの」
『いってきます』
声を揃えてそう言い、いってきますのキスをする。優奈といってきますのキスをすると、今日も学校を頑張ろうって毎回思えるよ。バイトがある日はバイトも。
キスをし終わり、俺達は自宅を出発した。
エレベーターで自宅のある10階から1階まで降りて、マンションを出ると……ジメッとした蒸し暑い空気が体を包み込む。この蒸し暑さもまた梅雨の時期らしさを感じる。
雨が降っているので、俺の傘で優奈と相合い傘をして、高校に向かって歩き始める。
「今日から半日期間ですね、和真君」
「そうだな」
先週の金曜日に期末試験が終わったので、今日から終業式の前日までは、授業が午前中のみとなってお昼に終わるという日程が基本となる。半日で学校が終わるので、この期間のことを半日期間と呼んでいる。
「私、1年生の頃から、半日期間になるともうすぐ長期休暇なんだなって思います」
「分かるなぁ。期末試験とか学年末試験が終わると半日期間になるもんな。あと、定期試験も終わったし、長期休暇ももうすぐだから俺は半日期間が結構好きだな」
定期試験が終わった解放感や、もうすぐ長期休暇がやってくる高揚感を感じられるし、あとは午前中で終わるから楽というのもあって1年の頃から結構好きなのだ。
「そうなんですね。私も好きですっ」
優奈はニコッとした笑顔でそう言ってくれた。こういったことでも、大好きな優奈と好きな物事が一緒であると分かって嬉しいな。今までも半日期間が好きだったけど、この半日期間からは優奈のおかげでもっと好きになれそうだ。
半日期間なので、普段よりも放課後の時間が増える。俺はバイト、優奈は部活があるけど、お互いに予定が空いている日の放課後は優奈と一緒に楽しく過ごしていきたい。
「あと、今週は水曜日にある球技大会が楽しみですね」
「ああ、楽しみだな」
優奈の言う通り、今週の水曜日に球技大会がある。半日期間中だけど、球技大会の日だけは夕方までの日程となる。
俺達が通っている高校では、毎年、1学期の期末試験後の半日期間中に球技大会が実施される。
球技大会の種目はバスケットボール、卓球、サッカー、ドッジボールの4種目。バスケと卓球は男女ともに実施され、サッカーは男子のみ、ドッジボールは女子のみである。
どの種目に出場するのかは6月中のロングホームルームで決め、俺はサッカー、優奈は女子バスケットボールに出場する。
「和真君はサッカーですよね」
「ああ。サッカーだよ。3年連続で西山と一緒に出るよ。優奈はバスケットボールだよな」
「はいっ。3年連続で萌音ちゃんと千尋ちゃんと一緒に出場します。なので、とても楽しみですね」
ニコニコとした笑顔でそう言う優奈。親友の井上萌音さんと、佐伯千尋さんと一緒にプレーできるのはいいよな。俺も親友の西山颯太と一緒にサッカーをプレーできるから、とても楽しみな気持ちは分かる。
あと、一昨年と去年の球技大会での優奈は、西山が優奈を推しているのもあり、一昨年も去年も優奈のクラスの試合を観に行ったから覚えている。優奈ほどではないけど、井上さんと佐伯さんについても。対戦相手が自分達のクラスじゃなかったので、優奈達のいるクラスを応援したな。
「あとは……和真君を応援するのも楽しみです。もちろん、西山君達も」
「嬉しいな。優奈に応援してもらえたら凄く頑張れそうだ」
「ふふっ、萌音ちゃんや千尋ちゃん達と一緒に応援しますね!」
「ありがとう。俺も西山達と一緒に優奈達を応援するからな」
「ありがとうございますっ! 今年の球技大会は去年までよりも楽しみです!」
「俺もだ」
優奈という大好きなお嫁さんの存在のおかげで、去年までよりも楽しみだ。そして、去年までよりも楽しめそうな気がする。
「応援といえば、一昨年と去年も優奈達のクラスのバスケを応援しに行ったよ。西山が優奈を推しているのもあって」
「ふふっ、そうだったんですね」
「ああ。優奈は的確にパスを出したり、相手のパスやシュートをブロックしていたりしたのを覚えてるよ。西山が『すげえ!』って言っていたから印象深くて」
「なるほどです。今年も攻撃のサポートや、相手の攻撃をブロックする役目になる予定です。千尋ちゃんからお願いって言われました」
「そうなんだな」
優奈のプレーは的確だったから、佐伯さんはそんな優奈を信頼してお願いしたのだろう。今年も去年までのようなプレーを見られることに期待したい。
「私、去年の球技大会で和真君が西山君達とサッカーをしているのを見ていました。ちょっとだけですが」
「そうだったのか。……そういえば、試合が終わったときに西山が『有栖川がいる』って言っていた気がする」
「そうでしたか。自分のクラスを応援するために校庭へ行ったときに、和真君と西山君のいるクラスが試合していたんです。確か、和真君はゴール前に立っていた記憶があります」
「西山の指名でキーパーをやったからな。今年も西山の指名でキーパーをすることになってる」
「そうなんですね」
ちなみに、1年生のときも西山の指名でキーパーだった。手脚が長く、体がよく動けるからという理由で。
球技大会当日はキーパーとしてクラスの勝利はもちろんのこと、優奈にかっこいいところを見せられたら何よりだ。
その後も球技大会のことを中心に話しながら、優奈と一緒に学校へと向かうのであった。
新しい特別編がスタートしました! 全8話になる予定です。
1日1話ずつ公開していく予定です。よろしくお願いします。




