後編1『温泉気分や旅行気分を味わいませんか?』
午後10時。
お風呂から出て、入浴後にいつもしていることが終わった後、優奈と俺は優奈の部屋で日常系アニメをリアルタイムで観る。放送時間がそこまで遅くないアニメは、こうしてリアルタイムで観ることもある。
このアニメは4コマ漫画が原作で、優奈も俺も原作漫画を持っている。なので、キャラクターやストーリーなどで話しながら観ていった。
「今週のエピソードも面白かったですね!」
「面白かったな」
放送が終わり、優奈と俺はそんな感想を口にした。とても面白くて、あっという間にエンディングになっていた。
「温泉でまったりしているみんなが可愛かったです。このエピソードは好きなので、アニメで観られて嬉しかったです」
「そっか。優奈がそう言う気持ち……分かるなぁ。俺も温泉のエピソードは好きだから」
さっき放送されたエピソードは、メインキャラの一人の親戚が経営している旅館に、主人公達が泊まりに行くという内容だった。その中で、主人公達がみんなで温泉に入るシーンがあって。こういうエピソードは温泉回とも呼ばれる。
みんな気持ち良さそうだし、肌色成分も多いので原作漫画を読んだときから好きなエピソードだ。
「今週のエピソードを観たら、和真君と一緒に温泉に入りたくなってきました」
「ははっ、そうか。優奈らしいな」
そう言うのも、以前、別の作品の海で遊ぶエピソードを観たとき、優奈は「海やプールで遊びたくなってました」と言ったことがあるからだ。また、それをきっかけに、屋内プールにプールデートへ行った。
「ただ、優奈がそう言う気持ちも分かるよ。アニメではみんな気持ち良さそうに入っていたし。それに、普段から優奈とは一緒にお風呂に入っているし。俺も優奈と一緒に温泉に入ってみたいな」
「そうですかっ」
優奈は弾んだ声でそう言う。俺も同じ気持ちだと分かったからか、優奈の顔には嬉しそうな笑みが浮かぶ。
「さっき観たアニメのように、いつか旅行に行って、旅館やホテルで一緒に温泉に入りましょうねっ」
「ああ、そうしよう。混浴しような」
俺がそう言うと、優奈は笑顔で俺を見つめながら頷いた。
自分で言ったけど、混浴……いい響きだな。いつか、旅行に行って、旅館やホテルの温泉で優奈と一緒に混浴したい。
あと、アニメの温泉回を観た直後なのもあり、
『わぁっ、素敵な雰囲気の温泉ですね!』
『あぁ……気持ちいいですねぇ……』
と、温泉を見てワクワクとした様子になっている優奈や、温泉に浸かってまったりしている優奈が頭に思い浮かぶ。ドキドキしてきた。
「あの、和真君」
「うん?」
「明日、入浴剤を買って、うちのお風呂で温泉気分や旅行気分を味わいませんか? 和真君と一緒に味わいたいなって」
「おっ、いいな。お湯の色とか香りとか、いつものお風呂と違うところがあると特別感があるし。贅沢な感じもして」
「その気持ち分かります。実家にいた頃は、たまにお風呂に入浴剤を入れることがありましたので」
「そうだったんだ。俺の実家でもたまに入れてたよ」
真央姉さんや母さんが入れることが多かったな。俺が小さい頃は、入浴剤を入れたお風呂に一緒に入ったっけ。特に姉さんとは。
「俺も優奈と一緒に旅行気分や温泉気分を味わいたいな」
「そう言ってくれて嬉しいです! では、明日のお風呂では入浴剤を入れましょう!」
「ああ、そうしよう! ……入浴剤はどっちが買う? それとも一緒に選んで買う? 明日はバイトがあるから、バイトが終わった後になるけど」
「一緒に買いに行きましょう。せっかく一緒に入るのですから、どんな入浴剤にするか一緒に選びたいです。確か、マンションの近くにあるドラッグストアで売っていたはずです」
「了解。じゃあ、バイトが終わったら、ドラッグストアに入浴剤を買いに行こう」
「はいっ」
優奈はニコッとした笑顔で返事をした。
明日は優奈と一緒に入浴剤を買って、その入浴剤を入れたお風呂に一緒に入れるのか。楽しみだなぁ。明日も8時間バイトをする予定になっているけど、これを楽しみに頑張れそうだ。
温泉のことが話題になったのもあり、それから寝るまでの間は、優奈も俺も好きないくつもの作品の温泉回を観た。どれも好きな作品なので話が盛り上がって、とても楽しい時間になった。
7月9日、日曜日。
昨日と同じく、今日も午前10時から午後6時までバイトのシフトに入っている。
昨日8時間のバイトをしたけど、帰宅して優奈の胸を堪能したし、優奈と一緒に楽しく過ごしたので昨日の疲れは残っていない
また、今日はバイトが終わったら優奈と一緒に入浴剤を買って、その入浴剤を入れたお風呂に一緒に入る予定になっている。それを楽しみに仕事に勤しんでいった。
「お先に失礼します。お疲れ様でした」
午後6時過ぎ。
シフト通りに今日のバイトが終わり、俺は従業員用の出入口から外に出た。今日も8時間のバイトだったけど、楽しみなことがあるから昨日よりも時間の進みが早く感じられたな。
今は雨が降っているので、傘を差して優奈との待ち合わせ場所であるマンション近くのドラッグストアに向かって歩き始める。
ちなみに、優奈にはバイトが終わって更衣室で私服に着替える際に、バイトが終わったと連絡している。すぐに了解の返事が来たので、優奈は既にドラッグストアの前で待っている可能性は高い。そう思いながらドラッグストアに行くと、
「和真君っ!」
ドラッグストアの入口前に、ジーンズパンツにノースリーブの縦ニット姿の優奈がおり、笑顔で俺に向かって手を振ってくれる。その姿がとても可愛いなぁと思いながら優奈に向けて手を振った。
「優奈、お待たせ。待ったかな」
「いいえ。ついさっき来たところですから。和真君、バイトお疲れ様でした」
「ありがとう、優奈」
お礼を言って、俺は優奈にキスをする。自宅ではないけど、バイトが終わって優奈に会えたからキスしたくなったのだ。
2、3秒ほどして俺から唇を離すと、優奈は俺のことを見つめながら嬉しそうに笑う。
「このタイミングでキスされるとは思わなかったです。嬉しかったですけど」
「バイトが終わって優奈に会えたからな。キスしたくなったんだ」
「ふふっ、そうですか。では、入りましょうか」
「ああ」
俺達はドラッグストアの中に入る。
2、3分くらいだけど、蒸し暑い中歩いてきたので、店内の涼しさがとても快適だ。そんなことを思いながら、優奈と一緒に入浴剤のコーナーに向かう。
「ここですね」
優奈がそう言ったので、俺達は立ち止まる。
目の前にある陳列棚には温泉成分が入った檜の香りがするもの、炭酸系、肌の保湿成分が入ったミルク入り、濁り湯、メントールが入ったクール系など様々な入浴剤が置かれている。あと、いくつかの入浴剤は実家にあったやつだ。
「いっぱいあるな」
「そうですね。あと、何種類かは実家にあって使ったことがあります」
「そうなんだ。……俺もそうだな。このミルク入りのやつは、何度か真央姉さんと母さんが入れてた」
「うちでも何度か入れたことあります。特に秋や冬に。お肌が乾燥しやすい季節は保湿成分がある入浴剤を入れることがありましたね」
「そうなんだ。……俺の実家でも、お肌のためにって入れることがあったな」
何回か、風呂上がりの真央姉さんに「お肌潤ってるでしょ?」と肌を触らせられたことがあったな。
「いっぱいありますけど、どの入浴剤にしましょうか。実際に使って良かった入浴剤もいくつかありますし、興味のある入浴剤もありますし……迷っちゃいますね」
「そうか。優奈らしいな」
優奈はお店に行って好きなものや興味のあるものがいくつもあると迷う傾向がある。そこも優奈の可愛いところの一つだと思っている。陳列棚を見ながら「う~ん」と迷う優奈を見ていると、気付けば頬が緩んでいた。
「和真君は興味があったり、使ってみたいと思ったりする入浴剤はありますか?」
「そうだな……この温泉成分が入った檜の香りがする入浴剤が一番興味があるな。ホテルや旅館に行くと、大浴場に檜風呂ってあるところが多いし。それに、旅行気分や温泉気分を味わおうっていうのが入浴剤を買うきっかけになったから」
「なるほどです。確かに、檜風呂があるホテルや旅館って多いですよね。この入浴剤なら、旅行気分や温泉気分が味わえそうです。私もどんな感じなのか興味がある入浴剤の一つです」
「そうなんだ。じゃあ、この入浴剤にする?」
「はい、そうしましょう!」
ニコッと笑ってそう言い、優奈は檜の香りがする入浴剤が入った箱を手に取った。
「この入浴剤を入れたお風呂に和真君と一緒に入るのが楽しみです」
「ああ、俺も楽しみだ」
いつもと違うお風呂を優奈と一緒に楽しみたい。そう思いながら、俺は優奈と一緒にレジに向かって、檜の香りがする入浴剤を購入するのであった。
明日公開の後編2で特別編5は完結する予定です。
最後までよろしくお願いします。