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第12話『和真君の浴衣を着てみたいです』

 短冊に願いごとを書いた後、みんなで少し屋台を廻ってから七夕祭りの会場を後にして、最寄り駅の笠ヶ谷駅に向かう。

 駅から会場に行くときは空がまだ明るかったけど、今は午後8時半過ぎなのですっかりと暗くなっている。夜空の下で見る浴衣姿の優奈はとても綺麗だ。

 笠ヶ谷駅に到着し、俺達は東京中央線各駅停車の電車がやってくるホームへ。端の車両が到着する場所まで向かった。

 ホームで雑談していると、西山だけが乗る下り方面の電車が先にやってきた。


「今日は楽しかったです。試験勉強のいい気分転換になりました。では、また。長瀬達4人は試験勉強を一緒にするからまた明日な」


 西山は爽やかなそう言って、下り方面の電車に乗った。楽しめて、いい気分転換になって良かったよ。

 俺達6人は西山の姿が見えなくなるまで手を降った。

 下り方面の電車が発車してから数分ほどして。俺達6人が乗る上り方面の電車が到着した。

 端の車両なのもあって、乗車すると席が空いている場所はいくつもある。中には連続で空席の場所もある。運良く4席連続で空席となっている場所があったので、行きと同じく、陽葵ちゃん、井上さん、佐伯さん、真央姉さんの順番で座り、優奈と俺が4人の前で立つことに。

 笠ヶ谷駅から、俺、優奈、井上さん、佐伯さん、真央姉さんの最寄り駅である高野駅までは4分だ。

 みんなと一緒に今日の七夕祭りのことを楽しく話していたのもあり、高野駅まではあっという間だった。


「今年も七夕祭りを楽しめました! 和真さんと真央さんと西山さんも一緒でしたし。また一緒に出かけたり、遊んだりしましょうね!」


 俺達5人が降りる直前、このまま電車に乗り続ける陽葵ちゃんは持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれた。七夕祭りをとても楽しめたことがよく伝わってくるよ。

 俺達5人は陽葵ちゃんに「楽しかったよ」とか「気をつけて帰ってね」と言って、電車から降りた。電車が発車し、陽葵ちゃんの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

 陽葵ちゃんの乗る電車を見送った後、俺達5人は改札口に向かった。


「じゃあ、ここで解散しましょうか」


 改札を出たところで、佐伯さんはそう言った。俺達4人は賛成する。


「今年もとても楽しい七夕祭りでした! みんなと一緒に行けて良かったです!」

「私もとても楽しかったです。体調が良くなって本当に良かったなって思いました」

「私もとても楽しい七夕祭りでした。途中で和真君とお祭りデートできましたし。最高でした!」

「俺も楽しくて最高な七夕祭りだったよ。優奈とお祭りデートもできたし。本当に良かったよ。試験勉強のいい気分転換にもなった」

「カズ君達みんなと一緒に行けて楽しかったよ!」


 俺達はそれぞれ今日の七夕祭りの感想を言った。

 みんなにとっても楽しい七夕祭りになって良かったし、嬉しいよ。特に優奈が「最高でした!」と言ったことに。

 井上さんと佐伯さんとは駅で、真央姉さんとは北口を出て少し歩いたところで別れた。

 優奈と2人きりになって、俺達が住むマンションに向かって歩いていく。


「行くときとは違って暗くなっていますから、随分と久しぶりな感じがします」

「そうだな。あと、暗くなったから、行くときよりも涼しくなったな」

「そうですね。浴衣姿なのもあって快適ですね」

「ああ」


 今日は雨が降っていないので、空気も蒸しておらず本当に快適だ。梅雨が明けて、夏本番になっても夜がこのくらい涼しいといいんだけどな。


「涼しいですから、お風呂がとても気持ち良さそうです」

「そうだな。帰ったらすぐに風呂のスイッチを入れよう」


 その後、優奈と一緒に帰宅して、すぐにお風呂の給湯スイッチを入れた。

 部屋には夕方まで着ていた服があるけど、15分もすればお湯張りが完了するので、着替えることはしなかった。優奈も同じ考えで浴衣姿のままでいた。ただ、優奈は髪飾りを外し、お団子にしていた髪を解いてストレートヘアーになっていた。

 ストレートヘアーでの浴衣姿の優奈も可愛くて似合っているので、優奈にお願いしてスマホで写真を撮らせてもらった。

 給湯スイッチを入れてから15分ほどして、お湯張り完了を知らせるチャイムが聞こえてきた。なので、俺達は下着や寝間着を持って洗面所に向かった。

 俺達は浴衣を脱いでいく。

 一緒にお風呂に入っているので、優奈が衣服を脱ぐ姿はたくさん見ている。ただ、今日は浴衣なので特別感があって。なので、いつも以上にドキドキする。


「和真君の浴衣……」


 下着姿になった優奈はそう呟くと、俺が着ていた浴衣を手に取って、

 ――すーはー。

 俺の浴衣に顔を埋めて深呼吸する。

 優奈は汗を含めて俺の匂いが好きだ。なので、入浴する前に服を脱ぐと、今のように俺の着ていた服を嗅ぐことがあるのだ。

 何度か深呼吸をすると、優奈は俺の浴衣から顔を離し、


「汗混じりのいい匂いです……」


 と、幸せそうな笑顔でそう言った。俺の服の匂いを嗅ぐと、たいていは今のような笑顔になるのだ。


「そうか。嬉しいよ」


 大好きな優奈が好きだと思える匂いで良かったよ。


「和真君も私の浴衣を嗅いでいいんですよ?」

「ああ。じゃあ、お言葉に甘えて」


 俺は優奈が着ていた浴衣を手に取り、匂いを嗅ぐ。……汗混じりだけど、優奈の甘い匂いが感じられる。いい匂いだ。

 ちなみに、俺も今のようにお風呂に入る前に優奈の着ていた服を嗅ぐことがある。ただ、優奈ほど多くはない。嗅ぐときも、今のように優奈が「嗅いでいいですよ」と言ってから嗅ぐことが多い。


「いい匂いだよ、優奈」

「ふふっ、良かったです。あの……和真君。和真君の浴衣を着てみたいです。素敵な浴衣ですし……」


 優奈は俺の目を見つめながらそう言ってくる。

 匂いを嗅ぐほど多くはないけど、優奈は俺が着ていた服を着てみることが何度かある。特に優奈の前で初めて着る服だと。今日の浴衣は優奈の前では初めて着たし、浴衣を着ることは滅多にないから着てみたいと思ったのだろう。


「いいよ、優奈」

「ありがとうございますっ」


 優奈は嬉しそうにお礼を言うと、俺の浴衣を着ていく。浴衣を着て、帯を締める姿はとても綺麗で。

 あと、さっきまで俺が着ていた浴衣を優奈が着ているという事実にドキドキする。

 ちなみに、俺が優奈の服を着ることはない。単純に俺の方が体が大きいからだ。着られないだろうし、着られたとしてもキツくて服を伸ばしてしまったり、破ってしまったりかもしれないし。まあ、浴衣なら普通の服よりは着られる可能性はありそうだけど、着ないでおこう。


「着られました。ふふっ、夫浴衣です」


 ニコッとした笑顔で優奈はそう言った。

 俺の浴衣だけど、よく似合っている。黒いのもあり大人っぽさが感じられて。ただ、優奈にはサイズが大きく、袖からは指しか出ておらず、裾の方は床に付くかどうかで。個人的にはこのサイズのミスマッチ感がいいなと思えて。何よりも、俺の浴衣を着て笑顔でいるからとても可愛い。


「似合っているよ。黒い浴衣だから大人っぽくて。ただ、サイズが大きいから可愛くもある」

「ありがとうございます! 私の浴衣のような花柄のものもいいですが、この浴衣のように無地のものもシンプルでいいですね」

「そう言ってもらえて何よりだよ」

「あと……ついさっきまで和真君が着ていたので、和真君の匂いや温もりが感じられるのがとてもいいですね。あと、和真君に包まれている感じがしてとても心地いいです」


 優奈は恍惚とした笑顔でそう言うと、袖の匂いをクンクンと嗅ぐ。匂いがいいのか、優奈は「あぁ……」と甘い声を漏らす。可愛いな。


「嬉しいよ。……その浴衣も似合っているから、写真を撮らせてくれないか?」

「はいっ、いいですよ。その写真を送ってもらえませんか?」

「分かった」


 その後、俺は部屋からスマホを持ってきて、俺の浴衣を着ている優奈の写真を何枚か撮影した。約束通り、その写真はLIMEで優奈のスマホに送った。

 写真を撮り終わり、俺達は服を全て脱いで浴室に入る。

 優奈、俺の順番で髪や体、顔を全て洗い、2人で一緒に浴槽に浸かる。


「あぁ……温かくて気持ちいい」

「気持ちいいですよね~。今夜は涼しいですし」


 優奈はまったりとした笑顔でそう言う。今の優奈を見ていると、俺もまったりとした気分になっていくよ。


「今日の七夕祭りはとても楽しかったですね!」

「楽しかったな! みんなで廻るのも楽しかったし、優奈と一緒に初めてのお祭りデートができたからな。姉さん達と別れるときにも言ったけど、最高の七夕祭りだった」

「ええ、最高でしたね!」


 優奈は満面の笑顔でそう言ってくれた。そのことにとても嬉しい気持ちになる。優奈は七夕祭りのときにたくさん笑顔を見せてくれたな。


「七夕祭りを楽しめましたし、試験勉強のいい気分転換になりました」

「俺もだ。リフレッシュできたし、試験勉強を頑張れそうだ」

「私もです」


 明日からまた、優奈、井上さん、佐伯さん、西山と一緒に勉強会をする予定だ。優奈達と一緒に試験勉強を頑張っていこう。


「来年以降も一緒に七夕祭りに行きましょうね」

「ああ。行こうな」


 何歳になっても、笠ヶ谷の七夕祭りに一緒に行って、今日のように楽しみたい。

 それからも、今日の七夕祭りのことを中心に話しながら、優奈と一緒にお風呂の時間を楽しんだ。たまに、優奈のことを抱きしめたり、キスしたりもしたので、心身共に温まることができた。

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