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第10話『七夕祭り③-お祭りデート・後編-』

 かき氷を食べ終わり、容器とスプーンを所定のゴミ箱に入れた後、俺達は屋台が並ぶエリアに戻る。


「かき氷美味しかったですね!」

「そうだな! 優奈と一緒に食べたから本当に美味しかった」

「嬉しいですっ。私も和真君と一緒に食べたので本当に美味しかったです」

「嬉しいな。……次はどこの屋台に行こうか? かき氷は俺の希望だったから、今度は優奈の行きたい屋台がいいな」

「ありがとうございます。……ただ、パッとは思い浮かばないので、歩きながら選んでもいいですか?」

「ああ、いいぞ」

「ありがとうございますっ」


 その後、ゆっくりとした歩みで屋台が並ぶエリアを歩いていく。もちろん、さっきまでと同じく、優奈と腕を組んで。かき氷を食べて体がひんやりとしていたので、浴衣越しに伝わってくる優奈の温もりがとても心地良く感じられる。

 優奈は俺と話しながら歩くけど、周りにある屋台をキョロキョロと見ていて。それが可愛くて。優奈はどこの屋台に行きたいって言うかな。

 優奈と話しながら歩いていると、


「あっ……」


 と、優奈が声を漏らして、歩みを止めた。


「どうした? 優奈」

「あそこの屋台にある猫ちゃんのぬいぐるみが視界に入りまして」


 そう言い、優奈はある方向に指さす。

 優奈の指さす先にあるのは……射的の屋台だ。景品の台には黒白のハチワレ猫のぬいぐるみが入った箱がある。箱に入っているけど、優奈が抱きしめるのにちょうど良さそうな大きさに見える。


「箱に入っている黒白のハチワレ猫のぬいぐるみか」

「はい。可愛いので気になって。猫ちゃんも猫ちゃんのぬいぐるみも好きですし」

「好きだよな。中間試験が終わった日のデートでゲームセンターに行ったとき、クレーンゲームで三毛猫のぬいぐるみを取ったっけ」

「取ってくれましたね。あのぬいぐるみを見たり、抱きしめたりすると癒やされます」

「そうか。取った身として嬉しいな。……あのハチワレ猫のぬいぐるみを取りたくなるな。俺、射的は結構得意なんだ。真央姉さんとか、西山とか友達のほしいものを取ったことがあるし」

「そうなんですか! そう言ってもらえて嬉しいです。私、射的は得意ではなくて。なので、和真君が射的を好きだったり、得意だったりしたらお願いしたいと思っていたんです」

「そうだったのか。じゃあ、俺がハチワレ猫のぬいぐるみを取るよ」

「はいっ。お願いします!」


 優奈はニコッと笑顔でお願いしてきた。

 よし、大好きなお嫁さんのために頑張るぞ。ぬいぐるみをゲットして、優奈をもっと笑顔にしたい。……あと、優奈にかっこいいと思われたい気持ちもある。

 俺達は射的の屋台へ向かう。

 屋台には『3発100円』と料金が書かれた紙が貼られている。

 お願いしていますので、と優奈が屋台にいるおじさんに100円を払った。

 屋台のおじさんはコルク3つが乗ったトレーと銃を俺達の前に置いてくれた。その際、景品を後ろに倒したらゲット判定になると説明された。


「優奈のお金でやるし、100円でゲットできるように頑張るよ」

「頑張ってください!」

「ああ。俺の巾着袋、持っていてくれるかな」

「分かりました」

「ありがとう」


 優奈に自分の巾着袋を渡し、俺は銃口に1発目のコルクを装着する。

 狙っているハチワレ猫のぬいぐるみは箱に入っている。箱ものは、箱の右上の部分に当てると後ろに倒れやすくなるのだ。そのあたりにコルクが当たるように銃口を向けて、

 ――パンッ。

 1発目のコルクを放つ。

 銃口から放たれたコルクはぬいぐるみが入っている箱に向かって飛んでいき……箱の右側に当たったけど、高さは中央。なので、箱が少し後ろに傾く程度で倒れることはなかった。


「倒れなかったか」

「そうですね。ただ、1発目から目的の景品に当たるなんて凄いですよ! 私なんて、1発目から当たることなんて滅多にないですし! どんなに運が良くても、明後日の方向に飛んで別の景品が倒れるくらいですから!」


 優奈は興奮した様子でそう言ってくれた。1発では倒せなかったけど、凄いって言ってくれるからがっかりした気持ちは全くなく、むしろ嬉しい気持ちに。


「そうか。あと……別の景品でも一発で倒せるのは凄いな」

「ふふっ。……それと、銃を持ってぬいぐるみに狙いを定めている和真君がかっこよくてキュンとなりました」


 優奈はうっとりとした様子で俺を見つめながらそう言ってくれる。

 まさか、狙いを定めている姿にかっこいいと言ってもらえるとは思わなかったな。それでも、優奈にかっこいいと言ってもらえてとても嬉しい。


「そうか。嬉しいよ。……俺達から見て箱の右上部分を狙っているんだ。1発目で箱には当てられたから、ここから修正して箱を倒すよ」

「頑張ってください! ファイトですっ!」


 優奈の可愛いエールを受け、やる気がさらに増す。

 俺は2発目のコルクを銃口にセットして、ぬいぐるみの箱に向ける。

 1発目は、左右に関しては狙い通りだった。ただ、狙っていた場所よりも低い場所に当たっていた。だから、1発目よりも少し上に行くように調整して――。

 ――パンッ。

 2発目のコルクを放つ。

 銃口から放たれたコルクはぬいぐるみの箱に向かって飛んでいく……けど、コルクは1発目よりもかなり高いところを飛び、箱の右上をかすって奥の壁に当たった。なので、箱は全く動かず。


「かすったかぁ」

「ですね。ただ、かするのも凄いですよ! それに、1発目よりも、狙っている右上部分に近かったですし!」


 1発目と同じく、優奈は興奮した様子でそう言ってくれる。そのおかげで、2発目でも倒れなかったのに、ガッカリした気持ちはあまりない。優奈は褒め上手でフォロー上手だな。


「ありがとう。優奈の言う通り狙っている部分に近づいているから……次で倒すよ」

「頑張ってください! 3発目ファイトですっ!」


 再び、優奈は可愛いエールを送ってくれる。

 優奈のお金で射的をしているし、次の3発目でぬいぐるみの箱を倒したい。

 3発目のコルクを銃口にセットして、ぬいぐるみの箱に向ける。

 2発目は箱の右上部分をかすったから、2発目よりも少し低いところを狙って――。

 ――パンッ。

 3発目のコルクを放つ。

 銃口から放たれたコルクはぬいぐるみの箱に向かって飛んでいき……狙っていた箱の右上部分に見事に当たった!

 俺の読み通り、右上部分にコルクが当たった箱はゆっくりと後ろに倒れた。


「よしっ! 倒れた!」

「凄いです、和真君! しかも100円でゲットできるなんて! 本当に凄いです! それに、宣言通り3発目で倒してかっこいいです!」


 優奈はとっても嬉しそうな笑顔でそう言ってくれた。

 ゲットできたことも、優奈がかっこいいと言ってくれたことも嬉しい。ただ、優奈の嬉しそうな笑顔を見られたのが一番嬉しいよ。

 今までも射的で真央姉さんや羽柴など友人達の欲しいものをゲットして、今のようにかっこいいとか凄いって言われたけど、今回が一番嬉しい。


「ありがとう、優奈。優奈が応援してくれたおかげだよ」


 お礼を言って、優奈の頭をポンポンと優しく叩く。


「いえいえ。ゲットしてくれてありがとうございます」


 優奈は柔らかい笑顔でお礼を言い、俺にキスをした。唇が一瞬重なる程度のキスだったけど、優奈からはさっき食べたいちご味のかき氷の甘い匂いがした。


「お二人さんラブラブだな!」


 わははっ! とおじさんは明るく笑ってくれる。屋台の前でキスしたからおじさんに見られていたか。ただ、おじさんの明るさもあって、気恥ずかしさは全然なかった。優奈も同じようだった。


「そして凄えな、旦那さん! おめでとう!」


 おじさんはニッコリとした笑顔でそう言ってくれた。嬉しいな。

 あと、俺のことを旦那さんと言ったな。おそらく、結婚指輪が見えたからだろう。優奈のことが大好きなのもあり、旦那さんって言われることにも嬉しさを抱く。


「紙の手提げに入れるからちょいと待ちな」

「はい」


 屋台のおじさんは紙の手提げを取り出して、俺が倒した猫のぬいぐるみが入っている箱を手提げに入れた。今の俺達の会話を聞いていたのか、優奈に手渡した。


「はいよ、奥さん」

「ありがとうございますっ!」


 優奈は満面の笑顔でぬいぐるみの入った手提げを受け取った。手提げの中を見て優奈はニコニコしていて。ゲットできて良かったなって思えるよ。


「あぁ……猫ちゃん可愛いですぅ。本当にありがとうございます!」

「いえいえ」

「何かお礼をさせてください!」

「じゃあ……ベビーカステラを奢ってもらおうかな。ベビーカステラも好きだし」

「分かりました!」

「うん。あと……射的で優奈のほしいものを初めてゲットできた記念に、ぬいぐるみを抱きしめた優奈の写真を撮りたいな」

「いいですねっ。いい思い出になりましたし、写真を送ってもらえますか?」

「もちろんさ」

「ありがとうございますっ」


 その後、近くにある休憩スペースまで移動し、箱から取り出したハチワレ猫のぬいぐるみを抱きしめる優奈の写真をスマホで撮影した。ハチワレ猫のぬいぐるみはもちろん可愛いけど、嬉しそうに抱きしめる優奈はもっと可愛くて。いい写真が撮れた。

 また、約束通り、LIMEで優奈のスマホに写真を送った。


「写真送ったよ」

「ありがとうございます! ……和真君、ぬいぐるみ抱きしめてみますか? このぬいぐるみ、抱き心地がいいですよ。あと、和真君が抱きしめている姿を見たくて、写真を撮りたいのもあります」

「ははっ、そうか。分かった。抱きしめさせてもらおうかな」

「どうぞ!」


 優奈からハチワレ猫のぬいぐるみを受け取り、抱きしめる。


「……優奈の言う通り、抱き心地がいいな」

「でしょう? あと、ぬいぐるみを抱きしめる和真君可愛いですよ! さっき、射的をした和真君は物凄くかっこよかったので、そのギャップにキュンとなってます!」

「そっか。そう言ってくれて嬉しいよ」


 優奈が喜んでくれているから、可愛いと言われるのも嬉しく思える。

 優奈はぬいぐるみを抱きしめる俺をスマホで撮影し、LIMEで送ってくれた。


「写真を撮らせてくれてありがとうございます」

「いえいえ。じゃあ、ベビーカステラの屋台に行くか」

「はいっ」

「あと、優奈さえ良ければ、家に帰るまで俺が手提げを持つよ。大きめだし」

「ありがとうございます。では、お願いします」

「ああ」


 その後、優奈と一緒にベビーカステラの屋台に行き、ベビーカステラを奢ってもらった。優奈の希望でベビーカステラを食べさせてもらって。屋台のベビーカステラは今までに何度も食べたことがあるけど、今回が一番美味しかった。

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