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第7話『七夕祭りに行きましょう!』

 7月1日、土曜日。

 7月になり、今年も下半期に突入。残り半年の間にどんなことが待ち受けているだろうか。

 今日は七夕祭り当日。

 今日の天気は朝から曇りだ。天気予報によると、今日はずっと曇り予報で降水確率は10%とのこと。雨が降る心配がなくて良かった。

 みんなお祭りで浴衣を着るつもりなのもあり、井上さんの家での試験対策の勉強会は午後4時頃に終わらせた。

 優奈と一緒に帰宅して、アニメを観るなどしてゆっくりした。

 午後6時に、高野(たかの)駅の改札前で井上さんと佐伯さんと真央姉さんと待ち合わせをする約束をしている。なので、午後5時20分頃なって、優奈と俺はそれぞれの部屋で浴衣に着替えることに。着替え終わったらリビングで待つことになっている。

 俺は自分の部屋で浴衣に着替えていく。ちなみに、俺の浴衣は黒い無地の浴衣だ。気に入っているし、優奈に似合っているって思ってくれたら嬉しいな。

 スマホや財布、ハンカチなどを入れた黒い巾着袋を持ってリビングに行く。


「優奈はまだいないか」


 優奈は浴衣を着るだけでなく、浴衣に合わせて髪型をセットしていたり、メイクをしたりしているかもしれない。俺の記憶だと、去年、七夕祭りで見かけた優奈は髪をお団子の形に纏めていたし。気長に待っていよう。


「涼しいなぁ」


 エアコンで涼しくしているのはもちろん、浴衣を着ているので結構涼しい。

 ソファーに座ってスマホを弄りながら待っていると、


「お待たせしました、和真君。浴衣を着るだけでな髪をお団子に纏めたり、メイクをしたりしたのでちょっと時間がかかっちゃいました」


 優奈の声が聞こえたので、扉の方を見ると……白い浴衣を着た優奈がソファーの近くまでやってくるのが見えた。浴衣は赤やピンクの朝顔の花びらの模様があしらわれていて。赤い巾着袋を持っていて。また、お団子に纏めたと言ったからか、顔を横に向けてお団子に纏めた髪を見せてきて。浴衣に合わせたメイクも素敵だ。去年、七夕祭りの会場で遠くから見かけた優奈が目の前にいる。……いや、1つ明確に違うところがあるか。左手の薬指に嵌められた結婚指輪を見てそう思う。気付けば頬が緩んでいた。

 浴衣もお団子の髪型もよく似合っていて、凄く可愛いし綺麗だ。

 俺と目が合うと、優奈はニコッと笑いかける。そのことでもっと可愛い印象に。


「優奈……浴衣もお団子の髪型もよく似合ってるよ。メイクも素敵だ。凄く可愛くて綺麗だよ」

「ありがとうございます。お気に入りの浴衣なので嬉しいですっ!」


 えへへっ、と優奈は嬉しそうに笑う。本当に可愛い。


「和真君も黒い浴衣がとても似合っていて素敵です! かっこいいです!」

「ありがとう。俺もお気に入りだから嬉しいよ」


 大好きなお嫁さんの優奈から、似合っているとかかっこいいと言ってもらえて凄く嬉しい。優奈もさっきはこういう気持ちだったのだろうか。

 俺はソファーから立ち上がり、優奈の両肩にそっと手を置いてキスをした。キスはたくさんしているけど、今はお互いに浴衣姿だから特別感が感じられる。

 2、3秒ほどして俺から唇を離すと、目の前には頬をほんのりと赤くした優奈の可愛い笑顔があった。


「浴衣姿が似合っているとかかっこいいって言ってくれたのが嬉しかったから……キスしました」

「ふふっ、そうでしたか。……写真撮ってもいいですか? 浴衣姿の和真君が素敵ですし。ツーショット写真も撮りたいです」

「もちろんさ。俺からお願いしたいくらいだ。あと、優奈の写真も撮っていいかな?」

「もちろんです! ありがとうございます!」


 その後は優奈のスマホと俺のスマホを使ってお互いの浴衣姿を撮影し合ったり、優奈のスマホでツーショットの自撮り写真を撮ったりした。それらの写真はLIMEでアップし合った。

 写真に写っている浴衣姿の優奈はどれも素敵な笑顔で写っていて。本当に可愛くて綺麗なお嫁さんだと思う。


「……あっ、5時45分を過ぎていますね。もう出発した方がいいですね」

「午後6時集合だもんな。行こうか」

「はいっ。七夕祭りに行きましょう!」


 俺達はリビングを出て玄関に向かう。

 浴衣なのもあり、俺達は下駄を履いて家を出発する。その際、


『いってきます』


 と声を揃えて言い、いってきますのキスをして。

 俺達の住むマンションを出て、高野駅に向かって歩き出す。今は下駄を履いているので、普段よりもゆっくりとした速さで。

 夕方だし、雨も降らず曇っているから、蒸し暑さはあまり感じず快適だ。

 また、優奈も俺も浴衣姿だし、「カタ、カタ……」と下駄による独特の足音が響くから、夏の風情を感じられる。


「雨が降らなくて良かったですよね。会場にはアーケードがありますけど」

「ああ。それに、浴衣を着ているからな。濡れる心配がないし。あと、梅雨の時期だから、雨が降らないのは運がいいなって思うよ」

「そうですね」


 梅雨の時期に開催されるのもあり、雨が降る中で七夕祭りに行ったことがこれまでに何度かあった。だから、今年は運がいいと思う。


「浴衣姿のみなさんに会うのが楽しみですね」

「楽しみだな」


 みんなはどんな浴衣を着てくるのだろうか。楽しみだ。

 その後も優奈と喋りながら高野駅に向かって歩いていく。

 夕方の時間帯だけど、土曜日だし、雨が降っていないのもあって駅前は多くの人達が行き交っている。俺がバイトしているマスタードーナッツというドーナッツ屋に入っていく人の姿も見える。

 それから程なくして、北口から高野駅の構内に入る。

 高野駅の改札口では、高野駅が家の最寄り駅である井上さんと佐伯さん、真央姉さんと待ち合わせをする約束になっている。

 また、会場の最寄り駅は高野駅から下り方面にある。そのため、高野駅よりも上り方面に家の最寄り駅がある陽葵ちゃんとは電車の中で会い、笠ヶ谷駅よりもさらに下り方面に最寄り駅がある西山とは笠ヶ谷駅の改札を出たところで会うことになっている。

 改札口が見えてきた。井上さんと佐伯さんと真央姉さんはもういるだろうか。


「あっ、3人いましたね」


 そう言い、優奈は改札の方を指さす。

 優奈が指さす方を見ると、浴衣姿の井上さんと佐伯さんと真央姉さんが見えた。

 井上さんは赤い浴衣を着ており、桜の花びらがあしらわれた模様だ。髪型はいつもと変わらぬショートボブだけど、浴衣に合わせてか花の髪飾りをしている。井上さんらしい可愛らしい雰囲気だ。

 佐伯さんは水色の浴衣を着ており、青や紫のあじさいの花びら模様がたくさんあしらわれている。髪型は普段と違って編み下ろしている。爽やかな雰囲気だ。

 真央姉さんは黒い浴衣を着ており、白い乱菊の花びら模様があしらわれている。優奈のように髪をお団子の形に纏めている。浴衣は姉さんのお気に入りで何年も前から着ている。以前から大人っぽさを感じていたけど、20歳になったのもあってより大人らしい雰囲気だ。

 3人とも浴衣がよく似合っているなぁ。そう思う人は多いようで、男性を中心に3人のことを見ている人が多い。


「俺も見つけた」

「そうですか。……萌音ちゃん! 千尋ちゃん! 真央さん!」


 優奈は普段よりも大きめの声で3人の名前を呼ぶ。

 優奈の声が聞こえたようで、3人はすぐにこちらに振り向き、笑顔で手を振ってきた。そんな3人に優奈と俺も手を振りながら、3人のところへ向かった。


「お待たせしました。みなさんの浴衣姿素敵ですね! よく似合っています!」

「お待たせ。優奈の言う通り、みんな浴衣がよく似合ってるよ」

「ありがとう、優奈、長瀬君。今年もこの浴衣を着たけど、そう言ってもらえて嬉しいわ。気に入っているから」

「あたしも嬉しいよ! この浴衣はお気に入りだから、去年に続けて着たんだ。優奈も長瀬もありがとう!」

「カズ君、優奈ちゃん、ありがとう! 私もお気に入りの浴衣だから似合っているって言ってくれて嬉しいよ!」


 井上さんも佐伯さんも真央姉さんも嬉しそうな笑顔でお礼を言った。それもあって、3人とも浴衣がより似合っている印象に。

 あと、真央姉さんだけじゃなく、井上さんと佐伯さんもお気に入りの浴衣を去年に続けて着ているんだ。俺もこの浴衣が気に入っているから、続けて着る気持ちは分かる。


「優奈と長瀬君の浴衣姿もよく似合っているわ。優奈は去年までもその浴衣を着ていたから、ちょっと懐かしい感じがする」

「萌音がそう言うの分かる。もちろん似合ってるよ、優奈。長瀬もね」

「カズ君、今年もその黒い浴衣がよく似合ってるよ! かっこいい! 優奈ちゃんも白い浴衣がよく似合っていて素敵だね! 可愛いし綺麗だよ!」

「ありがとうございます! みなさんにそう言ってもらえて嬉しいです!」

「みんなありがとう」


 姉や友人達に浴衣姿を褒めてもらえて嬉しいよ。

 優奈は嬉しそうな笑顔になっていて。優奈の笑顔を見ると嬉しい気持ちが膨らんでいく。

 この後、陽葵ちゃんから、七夕祭りに行く人がメンバーのグループトークに自分の乗った電車の種別と最寄り駅の琴宿(きんじゅく)駅の発車時刻、乗っている場所を伝えてもらうことになっている。

 陽葵ちゃんからメッセージが届くまで、改札前で談笑する。その中で、


「浴衣越しでも、優奈の胸の柔らかさが感じられるわ」


 と、井上さんは浴衣越しに優奈の胸を堪能していた。ちなみに、佐伯さんと真央姉さんの胸は既に堪能したらしい。

 ――プルルッ。

 巾着袋の中に入っているスマホが鳴っている。

 巾着袋を開き、スマホを手に取る。優奈達4人も自分のスマホを手に取っている。この様子だと、七夕祭りのグループトークに陽葵ちゃんがメッセージを送ったかな。

 スマホを確認すると……予想通り、陽葵ちゃんからグループトークにメッセージが送信されたと通知が。それをタップすると、トーク画面が開き、


『東京中央線各駅停車、琴宿駅を18時2分に発車する四鷹(よたか)行きの電車に乗りました! 進行方向に向かって、先頭車両の一番前の扉です』


 という陽葵ちゃんのメッセージが表示された。

 電光掲示板を見ると、東京中央線各駅停車の下り方面は……次は18時9分発の四鷹行き。各駅停車は琴宿から高野まで7分だからあの電車だろう。

 俺達5人は了解の旨のメッセージを送った。


「では、行きましょうか」


 優奈のその言葉に、俺達4人は頷いた。

 改札を通り、東京中央線各駅停車の下り方面の電車がやってくるホームへ。

 ホームに行くと、電車を待つ人がちらほらと。中には俺達と同じく笠ヶ谷の七夕祭りに行くのか、浴衣姿の人もいた。そんなことを思いながら、優奈達と一緒に先頭車両の一番前の扉が停車する場所へ向かった。

 それからは優奈達とお祭りのことなどで談笑していると、


『まもなく、1番線に各駅停車・四鷹行きの電車がまいります。まもなく――』


 陽葵ちゃんが乗っていると思われる電車がもうすぐやってくるとアナウンスが。

 それから程なくして、四鷹行きの各駅停車が到着した。

 扉が開いて乗車すると、


「みなさん、こんばんは!」


 扉の近くのシートに浴衣姿の陽葵ちゃんが座っていた。俺達に会えたからか、陽葵ちゃんは嬉しそうな笑顔に。

 陽葵ちゃんは白い浴衣を着ており、黄色い向日葵の花びら模様があしらわれている。優奈と真央姉さんのように髪を後ろでお団子の形に纏めていて。陽葵ちゃんらしい明るく元気な雰囲気があって可愛らしい。


「みなさんよく似合ってますね! お姉ちゃんと萌音さんと千尋さんは去年と同じ浴衣姿をまた見られて嬉しいです! 和真さんはかっこよくて、真央さんは大人っぽさもあって凄く綺麗です!」


 陽葵ちゃんはニコニコとした笑顔でそう言ってくれる。義理の妹からかっこいいと褒められて嬉しいな。


「ありがとうございます、陽葵。陽葵も去年と同じ浴衣ですがよく似合っています! 可愛いです!」

「ありがとう、陽葵ちゃん。陽葵ちゃんも似合ってるよ」

「ありがとう、陽葵ちゃん。今年も向日葵模様の浴衣がよく似合ってるわね。可愛いわ」

「陽葵ちゃんありがとう! 今年も浴衣姿が可愛いよ、陽葵ちゃん!」

「陽葵ちゃんにも似合っているって言ってもらえて嬉しいよ! 向日葵模様の浴衣が素敵だし、よく似合ってるよ」

「みなさんありがとうございますっ!」


 陽葵ちゃんはとても嬉しそうな様子でお礼を言った。


「あと、お姉ちゃんと真央さんがお団子ヘアーですから、義理の三姉妹でお揃いですねっ。それが何だか嬉しいです」

「ふふっ、そう言われると嬉しいですね」

「そうだね、優奈ちゃん」


 確かに、義理の三姉妹の優奈と陽葵ちゃんと真央姉さんは、髪を後ろでお団子にまとめている。みんな笑顔だし、何だか微笑ましい光景だ。

 各駅停車の先頭車両なのもあってか、車内は空いており、空席もある。連続で空いている箇所もあって。陽葵ちゃんの横は3席連続で空いていたので、陽葵ちゃんの隣から井上さん、佐伯さん、真央姉さんの順番で座った。俺と優奈は4人の前に立って吊革に掴まる形に。

 また、井上さんは触ったり、顔を埋めたりする形で浴衣越しの陽葵ちゃんの胸も堪能していた。ほんと、井上さんはブレない人だ。

 それから程なくして、俺達の乗る電車は定刻通りに高野駅を発車した。

 扉の上にはモニターが2つあり、1つはCM、もう1つはこの先の停車駅とその駅までの所要時間が表示されている。それによると……笠ヶ谷駅は高野駅から2つ目で、4分で到着するとのこと。4分だし、優奈達と一緒だからすぐだろう。

 ――プルルッ。

 巾着袋の中に入っているスマホが鳴る。

 スマホを取り出して確認してみると、LIMEで西山から七夕祭りに行く人がメンバーのグループトークにメッセージが届いたと通知が。通知をタップするとトーク画面が開き、


『笠ヶ谷駅に着きました。駅の改札を出たところで待ってます』


 というメッセージが表示された。西山は笠ヶ谷に着いたのか。

 グループトークにメッセージが届いたのもあり、優奈達もスマホを見ている。


『了解だ、西山。今は6人で電車に乗ってるところだ。あと数分くらいで笠ヶ谷に着くよ』


 と、グループトークにメッセージを送った。優奈達も同じようなメッセージを送っていた。それを受けてか、西山は『了解です!』という文字付きのサムズアップの形をした手のイラストスタンプを送ってきた。

 その後は最近の学校生活のことなどを話しながら、電車の中での時間を過ごした。それが楽しかったのもあり、笠ヶ谷駅に到着するまではあっという間だった。


『笠ヶ谷。笠ヶ谷。ご乗車ありがとうございました』


 定刻通りに、笠ヶ谷駅に到着し、俺達は降車した。

 七夕祭りに行く人なのだろうか。電車から降りた人は俺達のような浴衣姿や甚平姿の人が多い。普段は見ない光景なので、早くもお祭り気分を味わっている。

 ホームを離れて、俺達は改札を出る。すると、


「みんな!」


 浴衣姿の西山が、俺達に向かって手を振ってきた。

 西山は紺色の浴衣を着ている。一昨年や去年もあの浴衣を着ていたな。あと、西山はイケメンだし、浴衣姿が似合っているからか、多くの女性が西山のことを見ていて。中にはうっとりと見つめている女性もいるぞ。


「おう、西山。今年も紺色の浴衣似合ってるな」

「浴衣姿が素敵ですね、西山君」

「似合っているわね」

「かっこいいね、西山」

「とってもかっこいいですよ、西山さん!」

「かっこいいよ、西山君」

「ありがとうございます! みんなも浴衣似合ってますよ!」


 西山は彼らしい爽やかな笑顔でそう言った。嬉しそうにも見えて。推しの優奈が浴衣姿を褒めたのもありそうだ。

 俺達6人は「ありがとう」とお礼を言った。


「全員揃いましたし、スマホで写真を撮りませんか? この7人で七夕祭りに行く記念に」


 佐伯さんがそんな提案をしてきた。

 俺達6人は優奈の提案に快諾し、スマホを使っての写真撮影会をすることに。

 7人みんなでの自撮りはもちろんのこと、俺と優奈のツーショット写真、男2人でのツーショット、女性5人での5ショット、優奈と陽葵ちゃんと真央姉さんの義理のお団子三姉妹ショット、俺や優奈などクラスメイトショットなど様々な写真を撮った。それらの写真はこの7人がメンバーのグループトークにアップした。


「素敵な写真をいっぱい撮りましたね! ……あっ、みなさん。おじいちゃんからお祭りのお小遣いを預かっていますので渡しますね」


 そう言い、陽葵ちゃんは巾着袋から白い封筒をいくつも取り出した。

 何日か前に、陽葵ちゃんから、陽葵ちゃんと優奈の祖父の総一郎(そういちろう)おじいさんがお祭りのお小遣いをくれるメッセージが来たのだ。優奈曰く、おじいさんは毎年お小遣いをくれるらしい。


「はい、和真さん」

「ありがとう」


 陽葵ちゃんから封筒を受け取った。封筒にはボールペンで書かれた綺麗な字で『長瀬和真君へ』と書かれていた。

 封筒の中身を見ると……千円札が10枚。ということは1万円か。とても有り難いな。中学まではお祭りに行くときは両親がお小遣いをくれたけど、だいたい3、4000円くらいだった。もちろん、その額でも有り難かったけど。


「1万円もくれるのか。凄く有り難いなぁ」

「有り難いですよね。ちなみに、私も1万円です。おじいちゃんは同じ金額を渡すことが多いですから、今回もみんな同じだと思います」


 優奈は穏やかな笑顔でそう言う。その通りのようで、西山や真央姉さん達もみんな「1万円入ってる」と言った。7人に1万円ずつってことはトータル7万円か。それをすぐに用意できるおじいさんが凄い。さすがは日本有数の企業グループである有栖川グループの会長さんだ。

 あと、お祭りの屋台で使うことを考えてなのか、一万円札ではなく千円札で渡すところにおじいさんの気配りが感じられる。


「毎年感謝だわ、優奈と陽葵ちゃんのおじいさんには。今は長瀬君の義理のおじいさんでもあるか」

「あははっ、そうだね、萌音。毎年、じいさんがお小遣いをいっぱいくれるのもあって、お祭りを本当によく楽しめてるよ。感謝だね」

「一緒に行く友達ってだけで俺にも1万円くれるとは。すげえな。本当に感謝だぜ」

「そうだよね、西山君。私は大学3年だしバイトをしているけど、1万円は大きいよ。大切に使わないと」

「ふふっ。あと、残ったら自分のお金にしていいとおじいちゃんが言っていました」


 陽葵ちゃんのその言葉に、初めてお小遣いをもらった俺と西山と真央姉さんは「おおっ」と声を漏らす。1万円あったら、お小遣いはほぼ確実に残るだろうから。

 西山以外はおじいさんの連絡先を知っている。なので、おじいさんにお小遣いのお礼のメッセージを送る。俺は西山も感謝している言葉を伝えて。

 すると、おじいさんからすぐに、


『いえいえ。喜んでくれて嬉しいぞい。七夕祭りを楽しんできなさい。西山君にもそう伝えておいてくれ』


 とメッセージをくれた。

 西山にメッセージを見せると、通話をしていないのに、西山は俺のスマホに向けて「ありがとうございます!」と元気良くお礼を言っていた。そのことで、俺達は笑いに包まれた。


「では、そろそろ行きましょうか」


 優奈の言葉に俺達は賛成して、七夕祭りの会場に向かって歩き始めるのであった。

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