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第10話『お嫁さんと義妹がやってきた。』

 4月30日、日曜日。

 今日は午前10時からマスタードーナッツのバイトをしている。午後4時までのシフトだ。

 今朝、優奈からメッセージがあり、優奈は午後3時頃に陽葵ちゃんと一緒に来店してくれる予定だ。俺のバイト先に行くと陽葵ちゃんに話したら、一緒に行きたいと言われたのだそうだ。今日はいつもの休日以上に頑張れそうだ。

 また、バイトの後に、優奈と一緒に住む新居の候補になっている物件の内覧をすることになった。高野駅前の高層マンションの一室とのこと。内覧にはおじいさんも同行する。物件がどんな感じなのか楽しみだ。

 今日は日曜日でゴールデンウィーク2日目。おまけに朝から快晴なのもあって、シフトに入ってからひっきりなしに接客している。いつもの日曜日よりも多いかもしれない。仕事に慣れているのもあるけど、お客様が多いと時間の進みが早いので、こういうのもいいなって思える。

 休憩を何度か挟んだり、正午過ぎにはまかないを食べたりして、今日のバイトをこなしていく。

 そして、約束の午後3時過ぎ。


「こんにちは、和真君」

「こんにちは、和真さん! 来ました!」


 優奈と陽葵ちゃんが来店してくれた。陽葵ちゃんは元気がいいな。2人が来てくれたおかげで、店内の雰囲気が華やかになった気がする。

 優奈は膝よりも少し長めのスカートに長袖のブラウス。陽葵ちゃんはジーンズパンツに長袖のパーカーだ。2人ともカジュアルな雰囲気でよく似合っている。俺と同じような感想を抱く人が多いのか、店内にいるお客様の多くが2人のことを見ている。

 今は午後のおやつ時だけど、幸いにもカウンターの前にはあまり人はいない。なので、多少話しても大丈夫だろう。


「いらっしゃいませ。2人とも来てくれてありがとう。今日の服装もよく似合っているね。可愛いよ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございますっ! 和真さんもこのお店の制服似合ってますよ!」

「わ、私もそう思っていますよ。今まで言ったことがないかもしれませんが」

「この制服が話題になったのは初めてかもな。ありがとう」


 バイトの制服でも、お嫁さんと義妹から似合っていると言われると嬉しいな。紺色をベースにした落ち着いた雰囲気のこの制服を気に入っているからかもしれない。


「ここまでバイトお疲れ様です」

「お疲れ様です、和真さん!」

「ありがとう。5時間バイトして少し疲れてきたところだったけど、2人が来たら疲れが吹っ飛んだよ」

「それは良かったです」

「いいタイミングだったみたいですねっ」


 優奈と陽葵ちゃんはニッコリと笑う。2人の可愛い笑顔を見ると、疲れが取れるだけでなく気持ちが癒やされていくよ。お嫁さんと義妹の力って凄いな。


「俺が接客するのは初めてだけど、陽葵ちゃんって今までにこのお店に来たことはある?」

「今日みたいに、休日にお姉ちゃんと一緒に来たことは何度かあります。お店で食べたこともあれば、萌音さんや千尋さんの家で食べたこともありますね」

「お二人とも、ご自宅は高野駅の南側の方にあって。ですから、遊びに行くときに、お土産で買っていくこともあるんです」

「そうなんだ」


 井上さんと佐伯さんの自宅は高野駅の南側なのか。全然知らなかった。2人とは3年生になるまで同じクラスじゃなかったからな。それに、この地域は高野駅や線路を境に北と南で小学校と中学校の学区が違うし。

 井上さんはもちろん、佐伯さんも優奈と一緒や部活帰りで来店することがある。2人がドーナッツ好きだと分かっているから、お土産でドーナッツを買うことがあるのだろう。

 ちなみに、ドーナッツ屋なのもあって、ドーナッツを店内で食べるお客様もいれば、テイクアウトするお客様も結構いる。


「和真さんはバイト中だし、そろそろドーナッツを決めようか」

「そうですね」

「ただ、美味しそうなドーナッツがいっぱいあるから迷っちゃうな。パイとかもあるし。今日のためにおじいちゃんからお小遣いをもらったけど、さすがに全種類は頼めないし」

「お金さえあれば全部食べられそうな言い方だな」

「甘いものは別腹ですから!」


 と、陽葵ちゃんはパーカー越しでも確かな膨らみを感じられる胸を張る。女性中心に甘いものは別腹とよく言うけど、ショーケースの中にあるスイーツを全部食べられたら凄いと思うぞ。30種類以上あるから。


「陽葵はテニス部でたくさん運動するのもあってよく食べますし、甘いものが大好きですからね。さすがに全種類は陽葵でも無理でしょうけど」

「そういえば、食事会でもお寿司を結構食べていたな」

「あそこのお寿司は凄く美味しいですからね! ……あぁ、絶賛迷い中だからお姉ちゃんが先に注文して!」

「ふふっ、分かりました」


 ショーケースを眺める陽葵ちゃんを見ながら、優奈は優しい笑顔でそう言った。妹の陽葵ちゃんがいるから、いつも以上に大人っぽい雰囲気だ。

 あと、甘いものを目の前にすると迷ってしまうところは姉妹だな。可愛いところが似たなって思う。


「優奈は決まったか?」

「はい。この前、和真君にオススメしてもらったおかげで。オールドチョコファッション1つともちもちドーナッツ1つください。あと、アイスティーを。店内でいただきます」

「オールドチョコファッションお一つと、もちもちドーナッツをお一つ。アイスティーをお一つですね。ガムシロップとミルクはいりますか?」

「どちらもいりません」

「かしこまりました。合計で570円となります」


 その後、優奈から1000円札を受け取ったので、430円のお釣りを渡す。

 お釣りを渡した後は、優奈から注文を受けたドーナッツをトングでショーケースからお皿に移す。アイスティーも用意する。それらをトレーに乗せて、優奈に手渡す。


「お待たせしました。オールドチョコファッション、もちもちドーナッツ、アイスティーになります」

「ありがとうございます」

「ごゆっくり」

「はい。バイトが終わるまで陽葵と一緒に店内にいますね。陽葵、先にテーブル席に行って確保しておきますね」

「分かった、お姉ちゃん!」


 陽葵ちゃんが元気良く返事すると、優奈はトレーを持ってテーブル席の方へ向かっていった。

 店内にお客様が結構いるけど、空席もちらほらとあるので大丈夫だろう。そう思っていたら、優奈はカウンターから近い2人用のテーブル席に腰を下ろした。

 視線を陽葵ちゃんの方に向けると、陽葵ちゃんは今もショーケースとにらめっこ。可愛いな。ずっと見ていられる。


「……よし、決まりました!」

「おっ、決まったか」

「お姉ちゃんがオールドチョコファッションともちもちドーナッツを頼みましたからね。それで絞り込めました」

「ははっ、そうか」


 この言い方からして、優奈とドーナッツを一口交換するつもりでいるのかな。

 陽葵ちゃんは俺の目の前まで移動する。


「ご注文をお伺いします」

「ココナッツチョコレートドーナッツに、もちもちストロベリードーナッツ、オールドハニーファッションを1つずつお願いします。あと、飲み物にアイスロイヤルミルクティーをお願いします」


 おぉ、陽葵ちゃんは3つ注文したか。もちもちストロベリードーナッツは酸味があってさっぱりとしているけど、それ以外は飲み物を含めて甘い系だ。糖分過多な気がするけど、普段、テニス部でたくさん運動しているなら、このくらい食べても大丈夫なのかも。


「ココナッツチョコレートドーナッツに、もちもちストロベリードーナッツ、オールドハニーファッションを1つずつ、アイスロイヤルミルクティーですね。合計で780円になります」


 合計金額を伝えると、先ほどの優奈と同じく陽葵ちゃんは1000円札を出す。そのため、220円のお釣りを渡した。

 陽葵ちゃんから注文を受けたドーナッツをショーケースから取り出し、お皿に移す。そのお皿とアイスロイヤルミルクティーをトレーに乗せて、陽葵ちゃんに渡した。


「お待たせしました。ココナッツチョコレートドーナッツに、もちもちストロベリードーナッツ、オールドハニーファッションを1つずつ、アイスロイヤルミルクティーになります」

「ありがとうございますっ! 美味しそうです。お姉ちゃんと一緒に、和真さんのバイトが終わるのを待っていますね」

「うん。ありがとう。優奈と一緒にごゆっくり」

「はいっ。和真さん、残りのバイトを頑張ってくださいね!」

「ありがとう」


 俺がお礼を言うと、陽葵ちゃんはニッコリとした笑顔で軽く頭を下げて、優奈が待っているテーブル席に向かった。2人用のテーブル席なので、優奈と向かい合う形で座る。


『いただきます!』


 と、声を揃えてそう言うと、優奈と陽葵ちゃんは自分のドーナッツを食べ始める。ちなみに、優奈はオールドチョコファッション、陽葵ちゃんはココナッツチョコドーナッツを食べている。美味しいのか2人とも幸せそうだ。店員として、家族として嬉しく思う。

 それからも、たまに優奈と陽葵ちゃんのことを見ながら、残りのバイトをしていく。

 優奈と陽葵ちゃんはドーナッツを食べながら談笑している。また、俺の予想通り、2人は自分の買ったドーナッツを一口ずつ交換していて。2人がこちらを向いて手を振ってくれることもあって。そのおかげで、2人が来てからの小一時間ほどのバイトの時間があっという間に過ぎていった。

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