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手抜きレシピと消えた弁当の謎(3)

 その異変は偶然気づいた。


 毎週火曜日の2限目は、体育なのだが、途中で美月は具合が悪くなり、教室に一旦戻った。まあ、単に生理が来ただけだったようで、すぐに授業の戻りたかったが。


「あれ?」


 生理用品を出す為のカバンを開けたが、弁当が丸ごと消えていた。


「え? 嘘」


 秋人からもらった食材で作った最高に美味しく、その上ほぼタダの弁当が消えている。保冷素材の弁当袋に入れて置いたはずだが。


 ただ、今はトイレに行く方が先だ。その後、授業に戻った。やはり授業料をタダになっていると思うと、休むのももったいない。ドケチな美月は授業はしっかりと聞き、教師にも質問し倒していた。それにトイレに行ったら、おなか痛いのも治っていた。


 体育の授業も体育館でバスケットボールでなかなか楽しく、すっかり弁当の事を忘れていた。美月は意外と運動神経が良いので、体育の時間も嫌いではなかった。


「楽しかったわー」


 汗を流しながら、教室の戻ると弁当が消えていた事を思い出した。


「あれ? 見間違い?」


 しかし、消えたと思っていた弁当はカバンに戻っていた。中見も異常がない。


「は?」


 思わず声が漏れるが、どういう事かさっぱりわからない。たぶん、自分の見間違いの可能性が一番高いわけだが、どういう事???


「美月ちー、どうしたの?」


 桜に声をかけられたが、見間違いの可能性がある事は口にできない。


「いや、何でもない」


 そう言う事しかできなかった。


 どういう事?


 その日、美月は弁当を普通に食べたが、何も異常はなかった。母から書いたコージーミステリでは、ランチボックスに毒を仕込むトリックがあった事を思い出したが、別に平和な日本でそんな事はあるわけはない。


「それは事件よ」


 その夜、母から電話があったのでこの事を相談すると、興奮して言われた。向こうは時差があり、朝だが、母は作家なので時間の都合は会社員よりつきやすい。


「いや、そんなわけないと思うけど」

「誰かが毒を入れるつもりよ。早いところ犯人を見つけた方がいいわ」

「って、私を殺す動機がある人いる?」


 母は興奮気味だったが、冷静に考えると誰が自分を殺すだろうか。美月は勉強と運動が出来る為、クラスのいじめっ子からはターゲットにされていなかった。貧乏臭い事ばかりやっいるので、嫉妬の対象にもならないはずだが。


「あれよ、あなた。最近イケメン料理王子と仲良しになったんでしょ。ジェラシー受けてる可能性あるじゃない?」

「えー、ないでしょ」


 秋人は確かにイケメン料理王子として人気者だったが、ファン層は圧倒的に主婦層と高齢者層だ。学園にも講演会の予定があるが、現役女子高生の間では、そこまで熱狂的にキャーキャー言われていない様子だった。


 それに秋人の家に通っている事は、桜ぐらいしか知らない。あの桜は悪意を持って弁当を隠すと思えない。弁当はちゃんと帰ってきているのもどういう事だろう。


 その事を冷静に言うと母は、少しおとなしくなってきたが、事件だと言い張った。


「そんなコージーミステリみたいな事は日本では起きないって」

「いいえ。これは事件よ。美月、調査しましょ」


 母は調査方法まで提案してきた。まず体育の授業をサボり、犯人を見つけろと言う。


「えー、サボるの嫌だよ。っていうか母親が学校の授業をサボるよう唆すってどういう事?」


 しかし、母は譲らなかった。


「美月、コージーミステリのヒロインみたいに犯人を捕まえましょ」

「嫌だよ!」


 美月の呆れ声が事故物件の家の中に響いた。


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