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手抜きレシピと消えた弁当の謎(2)

 手抜きレシピを考案中の秋人は、家の厨房に篭り、出てくる事が減ってしまった。ただ、レシピ開発中なので、余った食材をいっぱい貰えた美月は、毎日ほくほく顔だった。


 弁当も秋人から余った食材をもらい、冷凍して保存し、弁当に詰めて持っていった。


 朝、美月は自宅のキッチンでそんな食材を使った弁当を作っていた。


 ご飯、卵焼き、ブロッコリーのサラダににんじんの肉巻きという内容だった。


 どれも秋人開発中の手抜きレシピで、あまり手間がかからないという話だったが、その割には彩りもよく映える弁当箱になった。


 嬉しくなった美月は、出来上がった弁当の写真を撮り、SNSにあげ、学校に向かった。


「美月ちー、おはよう! 何か最近美月ちーって機嫌が良くない?」


 朝、教室につくと桜に声をかけられた。秋人の家に通うようになってから、桜とも自然と親しくなってしまった。桜と親しい直恵とも何となく仲良くなり、時々聖書研究会の部室で昼ごはんを一緒に食べるようになっていた。


「ええ。あなたのお兄さんのお陰で、食費が浮いて大助かり!」


 目をうるうるさせて桜の両手を握って礼を言う美月に、周りのクラスメイト達はドン引きしていた。天然でおっとりとした性格の桜は、そんな周囲の目は全く気にしていなかったが。


「そうなんだ。逆にうちのお兄ちゃんもお礼言ってたよ」

「え?お礼?」


 心あたりは全く無いので、美月は目をパチクリとさせてしまった。


「うん。美月ちーのママが書いた小説にすっかりハマっているみたい。コージーミステリっていうの? 自分も料理をテーマにした探偵になりたいとか言ってた」

「えー?本当?」


 自分の母が書いた小説などあまり喜ばれないと思っていたので、意外だった。母によるとコージーミステリでは、料理をテーマにした作品も多いらしい。確かに料理や食べ物が好きな秋人が好む要素は確かにある。


「それとお兄ちゃん、文化講演会でうちの学校くる事になったって」

「文化講演会?」

「ほら、毎年秋頃、学園の縁のある文化人に講演聞く機会あるじゃない?」


 桜に言われてそんな企画が毎年ある事を思い出した。去年は卒業生の絵本作家が来て、我々生徒達に夢を語り、サイン会を開いている事を思い出した。


「へぇ。秋人さんって有名人だったんだね」

「そうねぇ。いつもの冴えない感じに見慣れると、世間から料理王子なんて言われているのが信じられないわね」


 そう言って二人で笑ってしまった。


 こんな風に美月の学園生活は、平和そのものに見えた。


 あの小さな「謎」が生まれるまでは。

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