番外編短編・ドケチ娘のレシピ
正月はまだまだ続いていた。
こたつのせいでダメ人間なった美月、秋人、浩は、ウトウトしながらテレビを見ていた。
テレビも退屈になり始めた頃、3人とも眠っていた。完全にダメ人間だった。
「あれ!? もう夕方!」
美月が目を覚ますと、窓の外は夕方になっていた。オレンジ色の光が、リビングを満たしていた。
「ちょ、秋人さんも浩も起きてー」
まだまだ眠気を残っていた美月だが、二人とも揺さぶって起こした。
「ほぇ、おはよう」
実にだらしない顔で秋人は起きてきた。
「っていうかー、お腹減ったよ」
浩も起きてきたが、お腹が減っているようだった。
そういえば美月もお腹が減っている事に気づいた。
「ご飯作るのはめんどくさいなぁ。デリバリーでいいや」
秋人はスマートフォンをいじってデリバリーを注文しようとしたが、いつも頼んでいる店は閉まっているようだ。どうやらコロナのせいで臨時休業になったらしい。
「はぁ。飯作るのめんどくさいな」
「ちょ、秋人さん! 料理研究家がそんな事言っていいの?」
浩は激しくつっこんでいたが、こたつは人をダメにする威力があるので仕方がない。
美月はこたつのテーブルの上に緑茶が入った急須に気づく。
「だったら茶殻でパッとご飯済ませようよ」
「茶殻?」
美月から茶殻と聞いた秋人は、どうせ貧乏メシだろうと悪寒がしたが、食事を作るのがめんどうなので、美月の好きにさせた。
調理室に駆け込んだ美月は、冷蔵庫の中にクリームチーズがあるのに気づき、小さくガッツポーズをした。
茶殻の水分を軽く拭き取り、クリームチーズと混ぜた。これだけだと腹は膨れないので、食パンをトーストしれ小さく切った。あとジャムがあれば完成だ。
「じゃじゃーん! ドケチご飯の茶殻のクリームチーズトーストです!」
美月は、出来上がったそれをこたつの上に並べた。トーストに茶殻クリームチーズとジャムを塗って食べる料理だ。あまりにも手抜き&コストが掛かっていないので、料理と言っていいのか疑問だが。
「お、おぉ」
秋人は美月のドケチっぷりに呆れていたが、浩は気にせず茶殻クリームチーズをトーストに乗せ、ジャムもその上に薄く塗って食べていた。
「あれ? 美月ねぇちゃん、案外美味しいよ!」
「でしょう。さっぱりしていて美味しいよね。トーストじゃなくてクラッカーでも合うよ」
美味しそうに食べる浩と美月を横目に見ながら、秋人の気持ちも動いた。
同じように食べてみると、案外不味くはなかった。
「おぉ! 癖になるじゃないか。美味しいじゃん」
秋人もニコニコ顔で、このドケチご飯を食べていた。
お陰で秋人は、貧乏レシピを開発する意欲が湧いてしまった。茶殻でチヂミやマフィンなどのレシピを作り、ドケチの美月をとても喜ばせていた。