料理王子vs自然派ママ(12)
こうして白子と秋人の仲は良くなった。
一時は毎日のように秋人のSNSには、アンチのメッセージも届いていたそうだが、すっかり止まったようだ。自然派ママのリーダー格である白子が呼びかけたのも大きいらしい。
こうして24日が終わり、25日になった。世間ではクリスマスの日だが、なぜか24日が終わると正月ムードが始まってしまう。
美月がよく行くスーパーも、正月用に練り物やお菓子が入った福袋を売るようになった。
「ショックだー」
いつもより顔が暗くなった美月が、そんなスーパーに入店していた。さっき、鈴蘭商店街の福引を引いたら、一等どころか三等のお米も外れてしまった。
貰えたのは飴玉一個と鈴蘭商店街のチラシだけで、ドケチな美月のショックは大きい。
仕方ないので、スーパーに行き割引になったクリスマスケーキを漁ることにした。結局昨日もいつも通りに過ごしてしまう、何のクリスマスムードはなく、残念だった。まあ、白子の件が解決してよかったと思うべきだが。
「よし! 半額ケーキゲットだわ」
スーパーにチルドスイーツコーナーに行くと、さっそく半額になったショートケーキをゲットできて、福引で沈んでいた気持ちがようやく晴れた。
そこに秋人と抹茶がいるのが見えた。惣菜やドリンクなどを買い込んでいた。
いつもにようにニートバージョンの秋人だったが、白子の件が解決してニコニコと機嫌が良さそうだった。
「秋人さん、何買ってるの?」
「これ? これから教会でクリスマス礼拝終わったら、プチパーティーするから皆んなの分の惣菜とか買ってるんだ」
「へぇ。ケーキも半額になってるわよ!」
美月が鼻息荒く言うと、秋人と抹茶は呆れつつ半額ケーキをカゴに入れていた。
「それにしても白子さんの件が解決してよかったね。逆に仲良くなってない?」
一昨日の事を思い出しながら、美月はそういった。
「そうですねぇ。話せば白子さんは悪い人じゃなさそうです」
抹茶も半額ケーキをカゴに入れつつ、つぶやいた。気づくとスーパーに流れるBGMもクリスマスソングから、子供の合唱音楽に代わっている。年末用なのか、おめでたい雰囲気のする曲だった。
「うん、白子さんは料理上手だし、学ぶところは多い。もっと早く仲良くなればよかったー。一緒にレシピ本出してもいいかも。本当、聖書の言うように敵を愛せだな。っていうか白子さんは敵じゃなかったわ」
すっかり白子と仲良くなれたようで、美月もホッとしながら胸を撫で下ろした。やっぱり人々が敵対したり、分断するところは見たくないと思った。
「ところで美月ちーも教会行く? クリスマス礼拝で、イエス様の生い立ちとかのビデオを見るよ」
ニコニコ顔の秋人に誘われた。
「えー、教会? 洗脳されそう」
「美月さん、偏見は良くないですよ。我々の教会が、きちんとした福音派の教会です」
ピシャリと抹茶に注意されて、美月は押し黙ってしまう。美月の周りは情け無い大人か妖怪系しかいないが、抹茶に関しては勝てそうにない。
「美月ちー、今日はクリスマス礼拝だからクッキーとチョコレートをタダで貰えるぞ」
「え!? 秋人さん、本当ですか? 行きます、行きます。敵も愛します!」
「本当美月さんは、ドケチで調子がいいですね。聖書もタダで貰えますが、欲しがりそうですねぇ」
抹茶の呆れ声を聞き、思わず美月も秋人も吹き出してしまった。
少し寂しさを感じていたクリスマスだが、今年は賑やかになりそうだった。




